バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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今回は夏樹の召喚獣についての説明とBクラスへの宣戦布告になります。例のごとく、宣戦布告以後はあっきーに地の文を担当していただいています。

そう言えば、夏樹の召喚獣をチートだと思った人どのくらいいますかね? 冷静に考えると試召戦争ではしようが難しい召喚獣なんですよ。

それでは、どんな風にしようが難しいか、ご覧ください。


第十五話:戦力分析と天使の降臨

「まあ、夏樹のネーミングセンスはどうでもいい。それよりも明日のBクラス戦についてだ」

 

 もっちーがそう言って話を切り替えます。でも、私にとっては物凄くどうでもよくないことなんだけど。くぅ、絶対後で撤回させてやるからな。

 

「あれ? 坂本。次の目標はBクラスなの?」

「ああ。そうだ」

 

 しまっちの問いかけにもっちーがなんでもないように答えます。まあ、私は既にもっちーから聞いていたから驚きはないんですけどね。ですが、他のみんなは初めて聞く情報なので困惑しています。

 

「どうしてBクラスなの? 目標はAクラスなんでしょう?」

「正直に言おう」

 

 あっきーの問いかけに対してもっちーが神妙な面持ちになります。

 

「どんな戦力でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」

「えっ? 夏樹の召喚獣を使えばかなりの人数を倒せるでしょ? そうでなくても、霧島さんと近衛部隊の召喚獣を僕たち並の点数に削れるだろうし」

「そうね。夏樹の召喚獣なら相手がどんなに立派な装備でも関係ないし」

 

 あっきーがもっちーの意見に反論し、しまっちが同調します。確かに、私の召喚獣は防御力を無視した攻撃をフィールド全体に行うことができますからそれなりの武器にはなるでしょう。頼ってくれるのは嬉しいけど、もう少し考えて発言して欲しかった。もっちーも同じように呆れたような顔をしています。

 

「あのなぁ、明久。お前は夏樹の召喚獣を過大評価しすぎだ。夏樹の召喚獣は攻撃が強力すぎて弱点が霞むが、本来はデメリットだらけで試召戦争に向かない召喚獣なんだよ」

「なんでさ。あんな反則じみた攻撃があるのに」

「はぁ。お前(バカ)でも分かるように説明してやる。まず1つめに攻撃の燃費が悪いことだ」

 

 もっちーが発言と同時に指を1本立てた。

 

「夏樹の召喚獣は曲による攻撃時に倍の点数を消費する。つまり、相手がAクラスともなれば1回の戦闘でその教科が戦死寸前になるということだ」

 

 化学の時の私がいい例ですね。みんながうなずくのを確認してもっちーがもう1本指を立てます。

 

「2つめに曲による攻撃しかできないこと。相手が少ないときには点数任せで倒した方が効率がいいが、コイツは相手がどんなに弱くても、どんなに少なくても点数を消費して倒さなけりゃいけない」

「そっか、例えるならスライム一匹相手でも極大魔法しか使えないってことだね」

「まあ、ゲームに例えるのはどうかと思うし、使うのが魔力じゃなくて体力だから余計に厄介だが、あながち間違いじゃないな」

「そして、3つめが味方を巻き込むことだ。そうなると夏樹は必然的に一人で演奏をしながら多人数による攻撃をよけ続けなければならない。なんたって、一発でも食らうとその点数のパラメーターに変わっちまうからな」

「え、でも、僕の召喚獣には効かないんだし、Dクラス戦みたいに僕が組めば――」

「明久。お前はAクラス5,6人に囲まれても夏樹を守り続けられるのか?」

「僕だってそのくらい」

「無理じゃろうな。ましてや、近衛部隊相手なら一瞬で終わる光景が容易に想像できるぞい」

「うん。私もあっきーにそこまでは求めてないよ」

「夏樹!?」

 

 あっきーが騒いでいますが、私は戦略に私情は挟みませんから。もっちーも私同様あっきーを無視して説明を続けます。

 

「最後に、これが最も重要なんだが夏樹がAクラスに対抗できる教科が少ない。基本的には英語くらいしかまともな武器が無い状態だからな」

「あれ? 坂本。夏樹は数学も得意なんじゃないの? Dクラス戦ではそれで何人も倒したんだし」

「いや。コイツの数学は点数のバラつきがでかい。実際、振り分け試験のときは200点台前半だったしな。普通の戦闘ならまだしも、夏樹の能力を使うことを考えたらその程度の点数は何の役にも立たん」

 

 男子達は私の成績状況を知っているだけあって、もっちーの言葉に頷いています。

 

「確かにそれじゃあ厳しいかも知れませんね」

「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

 

 しまっちがもっちーに尋ねています。BクラスだってAクラスほどではないけどいい設備なのでみんなも同じように考えているみたいです。まあ、私も同じことを考えましたしね。でも、もっちーはAクラスに特殊な方法で挑むって言ってたけど。

 

「いいや、そんなことは無い。Aクラスをやる」

「雄二、さっきと言っていることが違うじゃないか」

「クラス単位では勝てないと思う。だから一騎打ちに持ち込むつもりだ」

 

 なるほど、そうすればクラス全体の戦力が劣っていても少しは勝機がありますね。でも、一体どうやって?

 

「一騎打ちに? どうやって?」

 

 あっきーも私と同じ疑問を抱いたようです。

 

「Bクラスを使う」

「明久。試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」

「え? も、もちろん!」

 

 この野郎。ウソつきましたね。表情でバレバレですよ。あっきーがまごまごしていると、見かねたひめひめがあっきーに耳打ちします。うん、やっぱりひめひめは優しいね。

 

「設備のランクを落とされるんだよ」

「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」

「そうだね。常識だね」

 

 どの口がそんなことを言うのでしょうか? もっちーも心なしかイラついています。

 

「では、上位クラスが負けた場合は?」

「悔しい」

「ムッツリーニ、ペン「もっちー?」チはいらないな。拳骨で十分だ」

「全く。昨日も言ったけど友達に拷問なんてダメだからね?」

 

 もっちーは本当に反省しているのかな?

 

「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

 

 ひめひめがフォローに入ります。あっきーももっとしっかりしないと。

 

「つまり、うちに負けたクラスは最低の設備と入れ替えられるわけだね」

「ああ、そのシステムを利用して、交渉する」

「交渉、ですか」

「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラスの設備で済むからな。まず上手くいくだろう」

「ふんふん。それで?」

「それをネタに交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」

「なるほどねー」

 

 確かにいい案だと思うし、交渉次第では高確率で一騎打ちに持ち込めるかもしれない。でも、それ以前に気になることがある。

 

「もっちー。仮に一騎打ちに持ち込めたとしても勝てる人がいるの? ひめひめでも五割を切るだろうし、知っての通り私の数学を頼られても困るよ」

「そのへんに関しては考えがある。心配するな」

 

 何か不安は残りますけど、ここは代表であるもっちーを信じましょう。

 

「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」

「ふーん。勝算があるならいいけど」

 

 あっきーも一応納得したようです。

 

「で、明久。今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告して来い」

 

 この男はまたですか。

 

「断る。雄二が行けばいいじゃないか」

「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」

「ジャンケン?」

 

 まあ、それなら公平ですかね? もっちーがなにか企んでなきゃいいですけど。

 

「よし、負けたほうが行く、で良いな?」

 

 もっちーの言葉にあっきーが頷きます。

 

「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」

 

 心理戦? それって、次に出す手を言って混乱させるってやつですかね? あっきーも笑顔になっていますし、それでいいみたいですね。

 

「わかった。それなら、僕はグーを出すよ」

「そうか。それなら俺は――お前がグーを出さなかったらブチ「もっちー?」……のめす」

「行くぞ、ジャンケン」

「わぁぁっ!」

 

パー(もっちー) グー(あっきー)

 

 一応もっちーにブレーキはかけたんですけど、それでも混乱してしまったみたいですね。

 

 その後、あっきーがかたくなにBクラスに行くのを拒んでいます。簡単に騙されないように成長したみたいで本当によかったです。友達の成長が我がことのように嬉しいとは驚きです。

 

「それなら今度こそ大丈夫だ。保証する」

 

そんなあっきーをもっちーがまっすぐな目で見ています。

 

「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしいからな」

「そっか。それなら確かに大丈夫だねっ」

 

 あっきーは本気でもっちーの言葉を信じているみたいです。えっ!? 折角成長したと思ったのに、こんなに簡単に騙されないでよ。返して! さっきの私の感動を返して!

 

「でも、お前不細工だしな……」

 

 もっちーのため息にあっきーが憤慨します。だから、あっきー。乗せられてるってば!

 

「失礼な! 365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」

「5度多いぞ」

「実質5度じゃな」

「二人なんて嫌いだっ」

 

 そう言ってあっきーは屋上から逃げ出しました。……最後のテストは早めに切り上げようかなぁ。

 

 

 

 

 

――宣戦布告後――

 

「……言い訳を聞こうか」

 

 僕はBクラス生徒の暴行で千切れかけた袖を手で押さえながら雄二に詰め寄った。くぅ、今回は夏樹が助けに来てくれなかったし、散々だよ。

 

「予想通りだ」

「くきぃー! 殺す! 殺し切「はい、はい、怪我人が無理しないの」ぐぇっ」

 

 雄二に殴りかかろうとしたら、後ろから襟を掴まれた。声からすると夏樹だろうけど、止めるにしてももう少し方法を考えて欲しかった。おかげで首が絞まったじゃないか。

 

 抗議をしようと振り向くと、予想通り夏樹がそこにいた。ただし、さっきとは違ってナース服で。本日2回目だけど、一体君に何があったんだい? 心なしかイライラしてるし。さっき、襟を掴んできたのはそのせいなのかな?

 

「夏樹その服は「ほらぁ、さっさと座る。治療ができないでしょ」ああ、うん」

 

 夏樹に促されて畳に胡坐をかく。夏樹は僕の正面に座ると、手に持っていた救急箱を隣に置いて、中から消毒薬と湿布、包帯を取り出した。コスプレに関してはもう諦めたのか昼食中のような不機嫌さは少ない。

 

そのせいか表情が穏やかで、なんていうか、その、可愛い。夏樹に恋愛感情を持たない僕でさえ顔が赤くなるほどに可愛いのだから、他のみんなは陥落寸前だった。そんな夏樹の様子を見ていると、僕との間の床に消毒液を思いっきり噴霧した。

 

 そして、両目を押さえて転がる友人(ムッツリーニ)。ムッツリーニ、夏樹がそういう気配に敏感なのは1年のときに分かっているだろうに。

 

「まったく、先生についてきてもらうとか、きのっちあたりに私と同じことをしてもらうとかすればこんなことにならなかったでしょ」

 

 治療しながら、夏樹が呆れたように話しかけてくる。でも、僕としてはそれに対して反論したくなった。

 

「そんなに言うなら夏樹が昨日みたいにしてくれれば」

「なぁに? あっきーは一生私に付いてて欲しいの?」

「そ、そういうわけじゃないけど」

「だったら私が手を貸しすぎるとあっきーが成長できないじゃない。1回Dクラスで経験したんだから、後のことは自分の責任だよ」

「うぅ、でもそのせいでこんなに怪我をしたんだし」

「私は子供の料理は包丁で手を切ってなんぼだと思ってるから。子供はそうやって失敗して、怪我をして危険なことを覚えていくんだからね。大きな子供にも同じ方法をとらなきゃ」

 

 そう言って、夏樹は優しく笑う。って、僕は子供扱いされてるの? まあ、それは置いておいて、夏樹は本当にしっかりしてるね。これは将来いいお母さんになりそうだ。手当てが終わった後は、救急箱を保健室に返しに行く夏樹を見送って帰路に着いた。

 

 そういえば、夏樹に手当てしてもらっている間、姫路さんが周りを警戒しながら見回していたけど、何だったんだろう? それ以上見ているのがよくない気がして夏樹と世間話することで視界に入れないようにしたけど。……もしかして、昨日の手紙を置く場所を探していたのかな?

 

 

 余談だが、夏樹のコスプレで集中力が低下することを危惧した雄二の命令でBクラス戦開始時の総合得点が振り分け試験の点数を大幅に上げたものは、ムッツリ商会の夏樹の写真(婦警エディション)が割引されることとなり、数人の生徒が点数を伸ばしたらしい。多くのものは午前中の試験にもっと力を入れなかったことを死ぬほど後悔したとか。

 




はい、という訳で夏樹は原作のように一騎打ちで戦おうとしたら相手の倍の点数よりも1点でも多くとらないといけません。Aクラスと戦うことを考えたらムリゲーですよ。うちの夏樹はチートではないので。

今回、みんなと格好よく戦術について話していますが、その時の夏樹は婦警姿(帽子も着用)であることをお忘れなく。想像するとシリアスな空気が台無しです。そして、夏樹のコスプレ第2段! 今回は白衣の天使(ナース)となっています。もちろん、ナースキャップも着用ですよ。常識人で災難に逢うことが少ない夏樹ですので、読者サービスとしてたびたびコスプレしてもらおうと思っています。

それでは、今後ともよろしくお願いします。
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