あっ、それと今回のお話では独自解釈と言うか独自設定が入りますが、どうぞご容赦ください。
それでは、本編始まります。
とりあえず英語フィールドは片付けたので、周りを見渡すとかなりピンチです。私たちが三人仕留めたとはいえ流石はBクラス。桁違いな点数で仕留めていきます。クラスの差が如実に現れる総合科目フィールドはもとより、主戦場の数学も苦戦しています。運動が苦手なひめひめがまだ少し離れたところにいることが大きな原因です。しまっちが何とか頑張っていますが、同じBクラスレベルでは思ったような戦果は得られません。まあ、一昨日戦争をしてBクラスよりは操作に慣れているのでしまっち個人としては決して劣勢ではありませんが。
そして、ある生徒の目が私を捉えます。ま、不味い。嫌な予感がした私は気配を極限まで薄くし英語班の中に溶け込もうとします。しかし、神様は無情でした。
「おい、お前ら! 今こそ姐さんに蹴散らしてもらうときだ!」
「姉御! ささっ、どうぞここは俺たちに任せて数学フィールドに」
「い、いや。小隊長が部隊を離れるわけには……」
「そんなことよりも数学で勝つほうが先です!」
数学部隊の要請を受けて、英語部隊のみんなが私の背中を押してきます。ちくしょう! 折角もっちーが上手いこと誤魔化してくれたのにぃ!
必死に踏ん張りましたが流石に男子数人の力には敵わず、私は数学フィールドへと押しやられます。
「ちょっ、や、やだ。お、押さないでよ。お願い、本当にダメなんだって!」
私の必死の懇願も空しく、とうとう数学フィールドの中に。そして、元からいた人たちは脱出の時を今か今かと待ちわびています。うぅ、そんな目で見られてもムリなものはムリなんだってばぁ。
「Bクラス岩下律子です。Fクラス神谷夏樹さんに数学勝負を申し込みます」
消極的な私の態度で強気になったBクラスの生徒が私に勝負を挑んできます。多分一昨日の戦いで私が数学では腕輪を持っていなかったことを知っているのでまだ気が楽なんでしょう。
「律子、私も手伝う!」
なぁ!? ひ、一人でも大変なのにぃ。十人……今は七人か。七人中二人も来るってことはそれだけ私を危険視してくれているんでしょうけど、迷惑ですよう。
『
喚声に応えて二人の召喚獣が現れます。嫌だけど、代わりに受けてくれる人もいないし、出さないと戦闘放棄になってしまいます。
「うぅ、さ、サモン!」
私の声に応えて幾何学的な模様が足元に広がり、燕尾服を着た私の召喚獣が再び竹笛を手に現れます。
「おっしゃぁぁー!」
「また、腕輪もちじゃあぁーー!」
人の気も知らずに男共が雄叫びを上げます。っのぉ! 人の気も知らないで。この後の展開を想像すると泣きたくなってきます。そして、悪夢の瞬間、つまりは点数表示のときが来ます。
Fクラス 数学 神谷夏樹 71点
『えっ?』
誰とも無くつぶやいた言葉。そして、重苦しい沈黙が場を支配します。あぁ、だから数学フィールドには入りたくなかったのに。
「ちょぉーー!? 神谷さん、一体どうしたんすかぁ!?」
「手ぇ抜いてる場合じゃないっすよ!?」
皆の非難の声が響き渡ります。低い点数なのは自分で分かってますよ! でも、実力なんだからしょうがないじゃないですかぁ! ……それにしても、あまりの恥ずかしさに涙が滲みます。
「だから、やだって言ったのにぃー」
『ぐはっ!』
自陣に振り向いて抗議をすると皆がなぜか悶えています。
パシャッパシャッ
突如鳴り出したシャッター音。そこには本陣で待機しているはずのむっつーの姿が。
「……むっつー。なんでここにいるの?」
「…………前線の戦況確認」
「じゃあ、そのカメラには全体の様子とかが写ってるんだよね? 見せて」
「…………(シュバッ!)」
私が指摘すると凄まじい速度で本陣に戻っていきました。……いや、別にコスプレとか着替えとか撮られた訳じゃないからそこまで怒る気は無いんだけどね?
「ま、まあ、いいわ。数学の点数が低いのは予想外だけど、逆に好都合ね」
「そうね、真由美。あいつの召喚獣が厄介なのは変わらないし、点数が低い数学でしっかり倒しちゃいましょう」
うっ、相手が重苦しい雰囲気から回復してしまいました。この状況はマズすぎです。
相手はこちらの事情など気にせずに飛び掛ってきました。律子という人の召喚獣が手に持つ剣を大上段に振り上げ、飛び掛ってきます。そして、その後ろから真由美という人の召喚獣が槍を手に駆けてきます。かなりのコンビネーションです。これでは律子さんの召喚獣をよければ左右どちらに動いても真由美さんの召喚獣の槍に貫かれます。かといって、動かなければそのまま律子さんにやられるだけです。
……演奏家の端くれとしてのプライドは痛みますが、ここは四の五の言っている場合ではありません。私の召喚獣に物理干渉能力があれば「バキッ!」という音がしそうな勢いで竹笛を圧し折ります。相手がいきなり武器を圧し折った奇行に驚いている隙に折れた竹笛の半分を全力で投げつけます。竹笛は見事に律子さんの召喚獣の顔面に直撃。体勢が崩れたせいで後ろに続いていた真由美さんの召喚獣と衝突します。
「律子、大丈夫!?」
「大丈夫、全然ダメージはないから」
相手が気遣いあっている間に私の召喚獣は燕尾服のボタンを引き千切り、袖から腕を抜きながら相手召喚獣に近づきます。ここだけが、唯一の死角!
「あ、あいつの召喚獣がいない!」
「慌てないで! 私たちの召喚獣の正面にいるだけ。律子、思いっきり剣を振り下ろして!」
それを聞いた律子さんは召喚獣に命令して威力の高い振り下ろしをするために剣を上に掲げます。その瞬間、彼女たちの召喚獣から見て右から黒い影が低い位置を滑る様に飛び出します。
「残念ね。私はあなたの召喚獣が脱ぎ始めるのを見てたの。だから、それは燕尾服で本命は左ね」
そういって、真由美さんは召喚獣を左へと進ませました。ええ、半分は予想通りです。真由美さんの召喚獣が動くと同時に私の召喚獣も律子さんの召喚獣の攻撃を回避すべく動き出します。彼女たちから見て
「そんなのはこっちも気づいていますよ」
隙の多い大振りの攻撃をした律子さんも反対方向に動かした真由美さんもすぐには対応できません。その間に少しでも距離を置き、
「ちょっと、みんなぁ、傍観してないで助けてよぅ」
Fクラスの皆に応援を頼みます。
『は、はい』
『待つんだ。ここを逃せば涙目の神谷さんはもう見れないかも知れないぞ』
『た、確かに。な、涙目の神谷さんはレアだ』
『ああ、普段の気の強いのもいいが、こういう顔もなかなか』
『ああ、もう少し鑑賞してから……』
「あんたら、後で覚えてろよぉ!」
こ、ここまで味方が頼りにならないとは思いませんでした。須川君の熱弁を受けて(物理班の指示はどうした!?)、みんなが観戦ムードに入ります。おかげで船越先生をけしかけた罪悪感も吹っ飛びましたよ。そして、その光景に相手の目も確かな哀れみの色が見て取れます。
「ま、まあ、最低なクラスだったことが運のつきね」
「あなた自体は結構優秀なのにね。でも、これは戦争だから覚悟してね」
そういって、今度は二人の召喚獣が並んで飛び掛ってきます。時間差をつけることでさっきの二の舞になることを警戒してですね。見事に作戦にはまってくれました。
私の召喚獣はズボンからベルトを抜き、『おぉぉーー!』……外野、うるさい。髪留めゴムで竹笛のもう半分を金具の反対側に括りつけ、二体の召喚獣の間を狙って投げつけます。ベルトは回転しながら相手に近づき、私から見て右を飛んでいた真由美さんの召喚獣の右足に当たります。すると、ベルトの進行は止まりましたが、回転は止まるはずも無く、隣を飛んでいた律子さんの召喚獣の左足も巻きこみ、彼女たちの召喚獣の足に巻きつきました。すると、空中で突然二人三脚にされた相手は当然バランスを崩して、地面と熱いベーゼを交わしました。
こ、これでいよいよ策は打ち止めです。手元には先ほど引き千切ったボタンと回収した燕尾服がありますが、相手が観察処分者でなければボタン程度では足止めできませんし、召喚獣に燕尾服をかぶせても、召喚者の視界が遮られるのではないので、無意味です。いよいよ、これまでですか……。
「お、遅れ、まし、た……。ごめ、んな、さい……」
神様、ありがとう!
「来たぞ! 姫路瑞希だ!」
「姫路さん、来たばっかりで「ひめひめ、助けて!」……夏樹の援護よろしく」
「は、はい、行って、きます」
そして、トタトタとこちらに近づいてくるひめひめ。疲れているのは分かるけど、早く! 召喚獣は細かい作業が苦手だけあってまだベルトは外れてないけど、時間の問題なんだから!
「げっ、神谷さんだけでも大変なのに、姫路さんまで」
「は、早くベルトを取らないと」
「ああ、もう面倒くさい! ごめん、真由美少し掠るかも」
そういって律子さんは二人を絡めとるベルトに剣を振り下ろしました。私たちにとっては運悪く剣はどちらの召喚獣も掠ることなくベルトを両断し、二人の召喚獣は戒めから解かれました。
「姫路瑞希です。よろしくお願いします。
でも、ギリギリでひめひめが間に合いました。その召喚獣は昨日と同じように鎧をまとって、重そうな大剣を軽々と持っています、そして、左腕には先ほどの私の召喚獣と同じように腕輪をしています。
「う、うそ、彼女もなの!?」
「私たちで勝てるわけないじゃない!」
相手の二人がひどく慌てています。まあ、腕輪持ちはAクラスでも本当に珍しいですから無理もないですよね。
そして、ひめひめがその手をキュッと握りこみます。すると、召喚獣もその動きに合わせるように左腕を敵の方に向けました。
「ちょっと待ってよ!? まだ、神谷さんすら倒せてないのに!」
「律子! とにかく避けないと」
そういって大げさなくらいに二人の召喚獣が横に飛びます。まあ、腕輪の能力によっては大げさとは言えないですけどね。その直後、ひめひめの召喚獣の腕輪が光を発しました。
キュボッ!
「きゃあぁぁーっ!」
「り、律子!」
左手から光線がほとばしったかと思った瞬間、逃げ遅れた相手の召喚獣の一体が炎に包まれました。
「ご、ごめんなさい。これも勝負ですのでっ」
そう言って、ひめひめの召喚獣は大きく避けてバランスを崩してもう一人の敵に肉薄し、大剣を振り下ろしました。相手の召喚獣を武器ごと一刀両断し、私があれだけ苦戦した数学フィールドの初戦は一瞬で決着がつきました。
「い、岩下と菊入が戦死したぞ!」
「なっ! そんな馬鹿な!? これで5人だぞ!?」
「姫路瑞希と神谷夏樹、噂以上に危険な相手だ!」
Bクラスの5人に驚愕の表情が浮かびます。半分も倒されれば当然ですよね。でも、本当に寿命が縮むかと思いました。
今回の独自設定とは召喚獣の衣類は着脱可能というものです。まあ、実際の戦闘では脱いでる暇はないですから、おそらくは今回だけ、出てもあと1回くらいの設定ですかね。
そして、予想していた方もおられるかも知れませんが、夏樹の数学の点数は安定しません。良い時は腕輪を使える位の点数がとれますが、調子が悪ければ60点台もあり得ます。ミーティングで言っていた通り夏樹が恒常的に腕輪を使えるのはWじゃない方の英語だけですね。
さて、今回の夏樹は萌えられるようなキャラだったでしょうか? そう思っていただける位に可愛く描けていればよいのですが。
それでは、次のお話もよろしくお願いします。