それでは、本編を開始します。
さて、ひめひめと私で5人補習室送りにしましたから大分楽になりましたね。そして、ひめひめが来てくれたので私の仕事はあくまで小隊長としての司令官補佐。やっと肩の荷が下りました。
「み、皆さん、頑張ってください!」
……Really? あれ、前線指揮ってこんなんでしたっけ? こんなんで部隊がまともに動ける訳――
「やったるでぇーっ!」
「姫路さんサイコーッ!」
ああ、
「姫路さん、夏樹、とりあえず下がって」
「あ、はい」
「ありがと」
敵の士気は挫いてるのですからひめひめの点数を無駄に減らすことはないですし、ここで私も使えるのは物理だけになってしまいました。今後のことを考えて、戦闘には参加せずに指揮に専念しましょう。……ひめひめを信用しない訳じゃないですけど、さっきのを見ると心配で精神的疲労が溜まりすぎます。なので、ちょっと手を打ちますか。
「ひめひめぇー。結構消耗が大きい人がいるから部隊の再編成をしていいかな?」
「えっ? だ、大丈夫なんでしょうか。勝手にそんなことして」
「ちょっとは問題あるかもしれないけど、戦力が減るよりマシでしょ。そもそもそんなに大きくは変えないし」
「じゃあ、お願いします」
数学班と物理班は接戦だったからこれ以上は無理させられない。逆に英語班は小隊長の私の点数の消費は大きいけど、他の人はほぼ無傷。だったら!
「物理班と数学班はお互いに入れ替わり! それで、私は英語班の小隊長から物理班の小隊長に変更。英語班は構成はそのままで私の代わりはあっきーで。あっきーのサポートでしまっちと須川君が入って。英語班の中に数学が得意な人がいたら苦手な人と交換して! それと、ひめっちは前線指揮と数学班を兼任でお願い」
これで物理と数学でもしもの事態があれば私とひめっちが対処できますし、試召戦争に不慣れなひめっちを数学班とういう小隊に専念させることで指揮能力も鍛えられるでしょう。クラス最高得点保持者のひめっちは今後こういう仕事が増えるでしょうからここで練習しておいて損はないです。問題は高得点者がいない英語ですけど、今のBクラスは積極的に責めてくるくらいなら少しでも逃げるはずですし、あの三人はDクラス戦で相当慣れているはずですからなんとかなるでしょう。
「中堅部隊は急げ!」
「中堅部隊が来るまで全力でこらえろ! とにかく、戦死だけはするな!」
やっぱり消極的ですね。流石に前線部隊の半分を一気に失ったのは予想外なのか完全に撤退を優先しています。そこで私たちは深追いで戦死することに注意ながら攻めて戦線を徐々に推し進めていきます。これならここの戦いは難なく終えられそうです。ふと、視界の端できのっちがあっきーに声をかけているのが見えます。一体なんでしょう?
私は部隊の人に断りを入れて二人のそばに近づきます。
「二人とも一体どうしたの?」
「うん。ここも大分落ち着いたし、僕たちは教室に戻ろうと思ってさ」
「なんでまた?」
「うむ。ワシが聞いたところによるとBクラスの代表は根本らしくてのう。あやつのことじゃから教室に手を出していてもおかしくなかろう?」
「まあ、そうかもね。一応ひめひめには私から伝えておくからよろしく」
『了解(じゃ)!』
あっきーと秀吉君を送り出してからしばらく経ちました。渡り廊下の戦いはFクラス有利に進んでいますが、補給に行った生徒の帰りが遅いのが気になりますね。でも、それ以外に問題は起こらないはず。
「神谷さん! 英語班の援護をしてくれ。島田が人質にとられた!」
……起こらないはず……だったのになぁ。もう、全部投げ出していいですかねぇ?
今、私はしまっちが人質にとられている現場に来ています。しょうがないじゃないですか。現実逃避していても何も進展しないんですから。
「はぁー。何やってるのさ、しまっち」
「うぅ、しょうがないじゃない。誰にでもミスはあるんだから」
ウチのクラスの場合多すぎです。
「とりあえず、突撃するんで補習がんばってぇー」
「ちょ、ちょっと! こういう場合ウチを助けるんじゃないの」
「私は戦場に私情を持ち込むほど無能じゃないよ。それに別に死ぬわけじゃないし」
「死ぬわよ! 今日までの人生で形成されたウチの何かが死んじゃうわよ!」
えぇー。でも、しまっち一人でBクラス二人を倒せるならメリットは大きいし、しまっちの尻拭いで部隊を危険にさらすのもなぁ。
「島田さん!」
「よ、吉井!」
そんなことを考えていたらいつの間にかあっきーが合流していた。どうでもいいけど、なんか今のやり取りドラマみたいだね。
「あっきー、私はここはしまっちには大人しく補習を受けてもらって相手を倒すべきだと思うんだけど」
一応しまっちの上官はあっきーなので確認をとります。あっきーは目を閉じて私の提案について考えている。しばらくしてあっきーの目が開きました。どうやら作戦が決まった見たいです。
「総員突撃用意ぃーっ!」
「よしっ!」
「二人ともそれでいいのか!?」
何を言っているんでしょうか。今までだって戦死寸前の仲間を切り捨てたことはあったでしょうに。
「ま、待て、吉井!」
相手から待ったがかかります。……往生際が悪い。
「コイツがどうして俺達に捕まったと思ってる?」
「馬鹿だから」
「殺すわよ」
いや、捕まっている時点で馬鹿は否定できないでしょうに。
「コイツ、お前が怪我をしたって偽情報を流したら、部隊を離れて一人で保健室に向かったんだよ」
あっきーが心配になったっていうのは恋する乙女としていいけどさ、お願いだから戦争中は集中して。
「島田さん……」
「な、なによ」
さあ、言ってやりなさい!
「怪我をした僕に止めを刺しに行くなんて、アンタは鬼か!」
「違うわよ!」
あっきーに期待した私がバカだった。なんでそんな結論に……なるか。普段あれだけ殴ってればねぇ。
「ウチがアンタの様子を見に行っちゃ悪いっての!? これでも心配したんだからね!」
「島田さん。それ、本当?」
「そ、そうよ。悪い?」
ぷいっと顔を背けるしまっち。お願いだからラブコメは後でやって。
「へっ。やっとわかったか。それじゃ、おとなしく」
「総員突撃ぃーっ!」
「どうしてよっ!?」
確かに私はともかくお人よしのあっきーは自分を心配してくれた相手を見捨てることはない気がしますが。
「あの島田さんは偽者だ! 変装している敵だぞ!」
……あとでフォロー入れたほうがいいのかなぁ。しまっちの怒りは分かるけど、普段の行いが原因だもん。
「おい待てって! コイツ本当に本物の島田だって!」
「黙れ! 見破られた作戦にいつまでも固執するなんて見苦しいぞ!」
「だから本当に――」
Bクラス 鈴木次郎 英語41点
VS
Fクラス 田中明 英語69点
Bクラス 吉田卓夫 英語14点
VS
Fクラス 田中明 英語48点
これで残っていた二人を撃破。戦いも大分楽になります。すると、教室の様子を見てくるように頼んだ物理班の一人が近づいてきました。そこで聞いたFクラスの現状。Bクラスがここまで卑怯な手を使ってくるとは思いませんでした。こうなったら、ちょっと卑怯で、味方と特にもっちーがかわいそうだから最後の手段と思っていたあれをやろうかな。
「本当に、『吉井が瑞希のパンツを見て鼻血が止まらなくなった』って聞いて心配したんだから!」
「包囲中止! コレ本物の島田さんだ!」
考え事をしているとそんな叫び声が聞こえてきました。はぁ? しまっちはそんな嘘で捕まったの?
なんとなくこの後の展開が読めるので私は二人に近づきます。
「――にしても、卑怯な連中だね。人として恥ずかしくないのかな?」
「…………」
しまっちのリアクションがない。あれは相当怒ってるよ。
「あー、島田さん。実はね」
「……なによ」
あのバカは一体何を言うんだろうか。変なこと言わずに素直に謝ればいいんだけど。そして、
「僕、本物の島田さんだって最初から気付いていたんだよ?」
その瞬間、修羅が舞い降りた。まったく、あいつは。そんなことを言ったら火に油を注ぐだけでしょうに。私はとりあえずバカに殴りかかっていたしまっちの首に左手を回し、その掌を右ひじの裏に当て右掌はしまっちの後頭部へ。これでいつでも落とせます。
「……離しなさい。夏樹。ウチはこのバカを殺さないといけないの」
「いくら心配だからって部隊を離れて捕まったのは自分のミスなんだから少しは反省しなさい!」
そう怒鳴ると少しは反省したのか暴れ方が収まります。……耳元で大きな声を出されて怯んだだけかもしれませんけど。そして、私は安心しているバカに目を向けます。
「何安心してんのさ。いくら敵に捕まったとはいえ偽者扱いしたんだからそれは素直に謝りなさい。いくら普段の行動からそう思っても仕方ないとしても」
最後の台詞でしまっちが抗議の目を向けてきますけど知りません。一度、普段の行動を見直しなさい。
「だから、まあ、偽者扱いとそれをごまかそうとしたってことであっきーがしまっちのお願いを何個か聞くって事でここは手打ちにしない?」
「ま、まあ、それなら」
「えぇー、酷いよ夏樹! そんなことになったら僕の安全が」
「ならここでしまっちを開放しようか?」
「謹んで聞かせていただきます」
「さて、何個にしようか?」
「じゃあ、あれでいいんじゃない。ランプの魔人みたいに三つで」
「うーん、じゃあそこからしまっちのミス分を引いて二つで」
「あんたらがウチを見捨てた分が入ってないんだけど?」
いや、それは現場を預かる隊長としては当然なことだと思うんだけど。
「わ、分かった。それでいいよ」
私が断る前にしまっちの迫力に押されたあっきーが承諾していました。まあ、本人同士が納得しているならいいか。
「まず、一つ目は呼び方から変えさせてもらいましょうか」
「呼び方?」
「今度からウチはアンタのことを『アキ』って呼ぶから、アンタはウチのことを『美波様』って呼ぶように」
しまっちにそんな趣味があったとは知りませんでした。……ちょっと距離を置きたくなりますね。
「うぇえ!? クラスメイトなの「文句あんの?」美波様! これでいい!?」
「今度の休み、駅前の『ラ・ペディス』でクレープ食べたいなぁ~」
「おのれ! 僕が塩水で生活しているというのになんという贅沢を(ギンッ!)奢ります! 奢らせていただきます」
私が拘束しているっていうのに視線だけであっきーを脅すとは。相当怒ってるんだね。
「最後のお願いね。ウチのことを愛してるって、言ってみて」
意外に乙女だねしまっち。でも、そんなお願いすると好きなのがバレ……るはずがないか。あっきーだもん。しかし、まさに現実は小説より奇なり。あっきーは私の予測の数段上を行っていました。
「ウチのことを愛してる!」
あまりの事態に力の抜けた私の拘束を抜け出したしまっちのアッパーが見事にクリーンヒット。うーん、これは当分起きませんね。その上、しまっちの怒りはまだ収まっていないようす。どうやって止めましょうかね。正直暴力は嫌いなんですけど。
しかし、そんなことで迷っている暇はなく、しまっちは気絶したあっきーにさらに追い討ちをかけており、あっきーの体にどんどん傷が増えていきます。私はため息をつきつつ近づき、
「しまっち、ごめんね」
両手を顎と側頭部に当て一気に力を入れます。うん、綺麗に入りました。これならしまっちは全く痛みを感じていないはずです。……しまっち、痛みがないだけましってことで許してね。
私は近くの人に二人を保健室に運ぶように頼んで、次の仕込みのために4階へ向かいます。
今回はイベントを前倒しにしました。今回で予想がつくと思いますのでバラしてしまうと、cクラスでのBクラスとの対立イベントを変化させるので、ここでこのイベントをやっておかないといつまでも「島田さん」、「吉井」の関係なので。
前書きにも書いたとおり美波嬢は夏樹の手にかかることとなりました。ああしないと明久が原作以上にボコボコになった(元の見捨てた分+お願いの誤解釈)とはいえ、夏樹が暴力をふるってショックと言う方や美波ファンの人には深くお詫び申し上げます。ちなみに、夏樹が美波に行ったのは昔ガ○ガンで連載されていた「ハ○グゥ」で主人公の母親とボディーガードを探すために、グ○が○レを幽体離脱させるときに使ったあれです。マイナーなマンガなので知っている人は少ないかもしれませんが。
さて、夏樹が言う雄二がかわいそうという作戦とは一体何なのか? 今夜の更新をお楽しみに。