バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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どうも、前回の投稿からあいてしまってすみません。とある方への返信にも書きましたが、ストックの数が10を切っているので少しペースを落とそうと思います。そうでないと、1,2ヶ月更新無しとかになりそうなので。一応、目安は2,3日に1話。書きためが思うように進まなかったら4,5日に1話位のペースを考えています。

独自色が現れるところまで出したい一心でペースを上げ過ぎてしまい申し訳ありませんでした。こんな情けない作者ですが、できれば末長くこの小説にお付き合いいただきたいと思っています。それでは本編始まります。


第二十四話:夏樹がいない戦場

「ドアと壁をうまく使うんじゃ! 戦線を拡大させるでないぞ!」

 

 秀吉の指示が飛ぶ。僕はその指示を聞きながら夏樹のことを考えていた。

 

 今回夏樹が戦争に参加しないという事実は始めはFクラス中に衝撃を与えた。学力こそ姫路さんがうちのクラスで一番だけど、撃破数としては夏樹が一番貢献しているし、夏樹の小隊指揮は群を抜いて上手かったから当然だ。いつの間にか夏樹は僕たちの試召戦争の中心に立っていた。それが抜けたショックは凄まじいものだろう。だが、そこは雄二(ぺてんし)

 

『夏樹は体調不良ながらもFクラスのことを心配していた。だからこそ、ここで活躍してあいつを安心させてやればあいつからの好感度は鰻上りだ!』

 

要約するとそんなことを言っていた。その効果は絶大で、僕や秀吉、ムッツリーニ以外の男子はテンションだけなら昨日までより高くなっていた。流石はFクラス、単純だ。……って言うか勝手に人の親友をエサにしないで欲しいんだけど。

 

 そのテンションと夏樹が庇った人員、夏樹の策で減らした敵のおかげで姫路さんが作戦のために温存しながらでも十分以上にカバーできるはずだった。だけど、ここで新たな問題が発生した。姫路さんの様子がおかしい。

 

 今回も総司令官であるはずなのに、今日は一向に指示を出す気配がない。それどころか何にも参加しないようにしているように見える。何かあったんだろうか。いなくなった途端ここまで悪影響を与えるなんて。夏樹、君は座敷わらしか!

 

「勝負は極力単教科で挑むのじゃ! 補給も念入りに行え!」

 

 そんなわけで今は副指令の秀吉が指揮をとっている。ここ数時間は雄二の指示通り上手くやれてはいるが、Fクラスの二枚看板が使えないだけあってかなり苦戦している。

 

「左側出入り口、押し戻されています!」

「古典の戦力が足りない! 援軍を頼む!」

 

 実際、今だって戦局は本当にギリギリで維持している状態だ。

 

 出入り口の片方に古典の竹中先生がいるのはまずい。Bクラスは文系が多いので、強力な個人戦力で流れを変えないと一気に突破される恐れがある。ここは姫路さんに頼るしかない。

 

「姫路さん、左側に援護を!」

 

 雄二の作戦では姫路さんは午後に大事な役割があるらしいのであまり姫路さんに頼ることはできないけど、今はそんなこと言っていられない。

 

「あ、そ、そのっ……!」

 

 しかし、姫路さんは戦線に加わらず泣きそうな顔をしてオロオロしている。マズイ! 突破される!

 

 僕は掛け声と共に人ごみを掻き分け、左側の出入り口にダッシュする・

 

 そして立会人をやっている竹中先生の耳元でささやく。

 

「……ヅラ、ずれてますよ」

「っ!?」

 

 頭を押さえて周囲を見回す竹中先生。

 

 いざという時の為の脅迫ネタ~古典教師編~をこんなところで使う羽目になるなんて。これは計算外だ。

 

「少々席を外します!」

 

 竹中先生が離れていき、少しの間ができた。

 

「古典の点数が残っている人は左側の出入り口へ! 消耗した人は補給に回って!」

 

 応急処置だけど、これで少しは持ち直すはずだ。その間に、

 

「姫路さん、どうかしたの?」

 

 姫路さんに声をかける。その後もしばらく姫路さんと問答したが、姫路さんは何でもないと否定するだけだ。そんな泣きそうな顔をして何でもないはないだろうに。そんなとき、状態はさらに悪化した。

 

「右側出入り口、教科が現国に変更されました!」

「数学教師はどうした!」

「Bクラス内に拉致された模様!」

 

 右側までBクラス得意の文系に切り替えられるなんて。かなりピンチだ!

 

「私が行きますっ!」

 

 姫路さんが戦場に加わろうと駆け出した。でも、

 

「あ……」

 

 急にその動きを止めてうつむいてしまった。

 

 なんだろう。何かを見て動けなくなったようだけど。

 

 その視線の先を追ってみると、その先には窓際で腕を組んでこちらを見下ろす卑怯者――根本君の姿があった。彼がどうかしたのだろうか。見えにくいながらも必死に目を凝らしてみる。

 

「っ!!」

 

 そこでようやく僕は目撃した。彼が手にしているもの――何の変哲も無い封筒を。確かにそれは何の変哲も無い封筒だが、人によっては何にも換えられないほど大事なもの。三日前の放課後に姫路さんが恥ずかしがって僕から隠したあの封筒だ。

 

「なるほどね。そういうことか」

 

 どうして根本君があんな協定を結んだのかようやく分かった。最初はCクラスと組んで少人数で同盟を結びに来た雄二を討つ作戦だったんだと思った。そして、それを夏樹の機転で上手くかわしたと思っていた。でも、違ったんだ。あいつはあの作戦にそれほど執着していなかった。だからこそ、夏樹曰く穴だらけの論理に食い下がることなくあっさりと引き下がった。どの道、あの時点で姫路さんを無力化する策はあったんだから、無理をして雄二を倒す必要はない。後は姫路さんとコンタクトをとる時間さえあればいい。上手い方法だ、なかなか策士じゃないか。夏樹と話してから芽生えてた罪悪感が吹き飛んじゃったよ。

 

「姫路さん」

「は、はい……?」

「具合が悪そうだからあまり戦線には加わらないように。試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気をつけてもらわないと」

「……はい」

「じゃ、僕は用があるから行くね」

「あ……!」

 

 姫路さんは何か言いたげだったけど、気にせず背を向けて駆け出す。大事な用ができたから。

 

「面白いことしてくれるじゃないか、根本君」

 

 そんな台詞が口からこぼれる。

 

 あの野郎、ブチ殺す。

 

 

 

「雄二っ!」

「なんだ! 戦場はどうした!」

 

 教室に飛び込むと、雄二はノートに何か書き込んでいるが、いつになく不機嫌だった。まるで入学してすぐに教科書のことで喧嘩したときみたいだ。そんな雄二につられて僕の表情も硬くなる。

 

「話がある」

「……こんなタイミングで言うなら戦争に関係しているんだろうな」

「根本君の制服が欲しいんだ」

「貴様はそんな用事で戦争を抜けてきたのか?」

 

 し、しまった! これだと僕はただの変態だ。

 

「ああ、いや、その。えーっと……」

 

 本当は制服の中にしまってある手紙が欲しいんだけど、そんな事情は話せないし……。どうしよう。このままだと、僕は男なのに男が来ている制服を欲しがる変態だと思われてしまう。きっと根掘り葉掘り事情聴取を受ける羽目に――

 

「……勝利の暁にはその程度のことは叶えてやる。だから、さっさと戻って少しでも勝率を上げろ」

 

 受け入れられた!? あれ? なんか面倒だからさっさと終わらせたって感じだ。やっぱり、いつもと様子が違う。

 

 不思議そうに自分を見ている僕に気づいたのか雄二が不機嫌なまま口を開く。

 

「用件はそれだけか? だったら、さっさと戻れ」

 

 つっけんどんな態度の雄二。しかし、今はそれを気にしている場合じゃない。

 

「それと、姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」

「姫路だと? 理由は?」

 

 雄二は睨み付けるように詰問してくるが、その視線を真っ向から受け止める。

 

「理由は言えない」

 

 いずれは伝わるのかも知れないけど、僕が口にするものじゃない。

 

「それは本当に必要なことなのか?」

「うん。どうしても必要なことだ」

 

 雄二は額に手を当て、目を閉じて考え込む。それは当然だ。姫路さんが抜ければ戦力ダウンなんてレベルじゃない。そんな状態じゃあこの戦いに負ける可能性もある。そして、その責任を問われるのは代表である雄二だ。

 

「頼む。雄二!」

 

 僕は雄二に深く頭を下げた。

 

「バカはどうやっても止まらねぇよな。……上等だ。姫路抜きで勝てるところを見せてやろうじゃねぇか」

 

 すると、少しの間考え込んでいた雄二は聞き取れないほど小さな声で何かをつぶやいた。

 

「いいだろう。だが、条件がある」

「条件?」

「姫路が担うはずだった役割をお前がやれ。手段は問わん。絶対に成功させろ」

「もちろんやってみせる! 絶対に成功させてみせるさ!」

「その言葉、違えるなよ」

 

 鋭い目つきで念を押してくる。

 

「それで、僕は何をしたらいい?」

「タイミングを見計らって根本に攻撃をしかけろ。科目は何でもいい」

「皆のフォローは?」

「あるわけないだろう。しかも、Bクラスの教室の出入り口は今の状態のままだ」

「……難しいことを言ってくれるね」

 

 現在Bクラスの2つの出入り口の両方で常に一対一の戦闘が行われている。これは時間稼ぎと雄二の作戦に必要な行動らしいが、そんな状況で教室の奥に陣取っている根本君に近づくには圧倒的な個人の火力が必要となる。例えば、姫路さんのような。でも、僕にはその火力が無い。

 

「もし、失敗したら?」

「そんな事態を許すと思うか? 死んでも成功させろ」

 

 いつになく、冷たく鋭い口調。どうやら失敗はそのまま敗北につながると見て間違いないだろう。どうやって、目的を達成する?

 

「それじゃ、うまくやれよ」

 

 考え込む僕を置いて、雄二が教室を出ようと立ち上がる。

 

「え? どこか行くの?」

「Dクラスに指示を出してくる。……例の件でな」

 

 Dクラス。……室外機のことか。

 

「明久」

 

 教室を出る直前、雄二はこちらを振り向かずにこう言った。

 

「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニ、夏樹のように、お前にも秀でている部分がある。そうでなきゃ、いくら夏樹(あいつ)でもとっくに見限っている。だから、俺も夏樹と同じでお前を信頼している」

「……雄二」

「うまくやれ。作戦に変更はありえない」

 

 そう言い残し、雄二は教室を後にした。

 

 僕の秀でている部分。いくら操作が上手くても狭い場所での戦闘で細かい動作が役に立つはずないし。……あった。優れているってワケじゃないけど、他の人とは違う僕だけの特別がもう一つだけあった。点数の低い僕に出来る。数少ない方法が。あとは腹を決めるだけ。

 

「……痛そうだよなぁ」

 

 想像しただけで体に痛みが走る。でも、不思議と覚悟はすんなり決まった。

 

「――よっしゃ! あの外道に目に物見せてやる!」

 

 頬を叩き、自らを奮い立たせる。

 

 方法がある。勝算もある。根性さえあればやれるのだとしたら、やらない理由はどこにもない。後のことなんか知るもんか!

 

「美波! 武藤君と君島君も、協力してくれ!」

 

 教室内で補給テストをしていた三人に声をかける。

 

「どうしたの?」

「何か用か?」

「補給テストがあるんだけど」

「補給テストは中断。その代わり、僕に協力して欲しい。この戦争の鍵を握る大切な役割なんだ」

「……随分とマジな話みたいね」

「うん。ここからは冗談抜きだ」

「何をすればいいの?」

「僕と召喚獣で勝負をして欲しい」

 




夏樹の撃破数が多いですが、逆に夏樹がいなくなったことで敵の士気が上がっているので原作のような苦戦具合です。姫路と違って。完全な棚ボタですからね。更に、どうでもよい変化かもですが、雄二の機嫌が滅茶苦茶悪いです。当然、前話での夏樹との会話が原因なんですけどね。

さて、次回は1巻の山場の一つ、壁破壊です。ちょっとずつ問題が組み合わさり、1巻なのに大きな修羅場ができそうです。恋愛面ではいろいろ書くつもりですが、それ以外の修羅場が少なくなるので竜頭蛇尾と思われそうで心配です。逆に1巻の内容分は波乱万丈なんですけどね。

それでは次回もお楽しみに。
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