バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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さて、今回は原作1巻の山場の一つ。後の山場はラブレターとAクラス戦の後半3つでせいぜい4つですかね? ですが、この小説は夏樹が主人公。その程度の山場では終わらせません。今まで原作との大きな違いがなかったのはなんだったのかってくらい引っかき回してくれます。今回と次話の前半は原作との大きな違いがないですが、次話の後半からは嵐のように山場が続きます。ここで言うのもなんですが、次話以降、1巻終了まで山場続きなので期待していてください。

それでは、本編始まります。


第二十五話:決着! Bクラス

 私はもっちー(……いつまでこの呼び方が出来るんでしょうね)と話した後もFクラスの隣の空き教室で待機していたんですが、今はその……ちょっとお花を摘みに教室から出てきたところなんです。

 

 それで教室に戻ろうとしたんですが、そのとき視界の端に皆が戦闘をしている姿が見えました。……もっちーの作戦が許せない気持ちは今も変わりませんし、この戦争に参加する気も起きません。だけど、自分のわがままも理解していますし、今まで一緒に戦ってきた仲間の様子が気にならないと言えば嘘になります。なので、無意識に少し近づいて戦場をよく観察してしまいました。

 

 渡り廊下と新校舎の境目の柱の影に隠れて観察しているとおかしなことに気づきます。もっちーが近衛部隊をつれて根本君を挑発しているのは、まあいいです。しかし、そうした戦場から離れたところにポツンと立つひめひめ。もっちーは挑発とかで人の気持ちを操作するのが得意だからああやって根本君の思考をうまく誘導しようとしているのは分かります。でも、ひめひめをあんな戦闘に参加しにくいところに置く意味が分からない。確かに私は「ひめひめのおかげだと思われる」と言ってしまいましたが、あの男はそんな挑発で暴挙に出るような人間ではありません。……一体何があったんでしょうか。ひめひめの様子をいぶかしんだ私はもう少し近づいてみることにしました。するとさらにおかしいことに戦場にあっきーの姿がありません。あいつならひめひめがあんな状態になっているなら傍にいて気遣うか、可能性はより低いですが彼女の分までがんばろうと奮闘するはずです。

 

皆に見つからないギリギリまで近づいたところで辛うじてもっちーと根本君の会話が聞こえてきます。……なんでしょうかこの音は。小さい上にもっちーと根本君の声に隠れていて聞き取りにくいですが、ドンッ、ドンッという何かを叩くような音がBクラスの先――Dクラスから聞こえてきます。

 

室外機の破壊、教室への閉じ込め、教室前の密集地帯、最高戦力(ひめひめ)の戦闘不能、観察処分者(あっきー)……

 

 !? まさか!

 

 最悪の展開に思い至った私はすぐに駆け出した。そして、もっちーにも根本君にも見つからないように人だかりの後ろを通るようにしてBクラス前を駆け抜ける。そして、予想が外れることを祈りながら辿り着いたDクラスの出入り口の前で私は予想できた、それでも衝撃の光景を目撃しました。それを見た私はとっさに叫びました。

 

試獣召喚(サモン)っ!!」

 

 

 

 

 

 あの後僕たちは英語の遠藤先生を呼び出して、Dクラスで僕と美波が召喚対決を行うから立会人になって欲しいと頼んだ。遠藤先生は始めは考え直すように説得してきたが、僕たちの意思が変わらないことを悟り、許可を出してくれた。

 

 そして、僕は大振りなモーションで美波の召喚獣に攻撃したが、避けられて僕の召喚獣の拳は思い切り壁を殴りつけた。その後も力任せに美波の召喚獣を狙うが、横っ飛びで避けられて拳は再び壁に。教室を揺るがすほどの攻撃のフィードバックは半端でなく、僕は痛みで吐き気を覚えた。だけど、もう時間がないと美波に促され、更に力を込めた攻撃を行い、避けられるという行動を繰り返していく。

 

 遠くから根本君と雄二が話しているのが聞こえる。あいつも作戦成功のために動いているんだ。ここで失敗してたまるか!

 

 四度目の攻撃を行った後、拳の先が温かくなっていることに気づいた。見ると、結構な量の出血があり、教室の床に地黙りが出来ていた。

 

『……さっきからドンドンと、壁がうるせぇな。何かやっているのか?』

『さぁな。人望のないお前に対しての嫌がらせじゃないのか?』

『けっ。言ってろ。どうせもうすぐ決着だ、お前ら、一気に押し出せ!』

『……態勢を立て直す! 一旦下がるぞ!』

『どうした散々ふかしておきながら逃げるのか!』

 

 もうすぐ作戦の瞬間だ。急がないと!

 

「アキ、そろそろよ」

「うん。わかってる」

 

周りにいる皆にも目配せをする。皆は黙ってうなずいてくれた。

 

「吉井君、島田さん。二人とも何をしようとしているのですか?」

 

 状況の分からない遠藤先生が僕らを交互に見る。僕らの偽りの勝負を怪しんで召喚獣を戻される前に決着をつける必要がある。

 

「おおおおおおっ!」

 

 腹の底から雄叫びをあげる。五度目で決める。この先はない!

 

『あとは任せたぞ、明久』

 

 敵の本陣をひきつけた雄二が、壁の向こうから良く通る声でそう告げてきた。午後三時ジャスト。作戦開始だ。

 

「だぁぁーーっしゃぁーっ!」(「試獣召喚(サモン)っ!!」)

 

 召喚獣に持てる全ての力を注ぎ込んで、壁を破壊する。途中で誰かの声が聞こえた気がしてけど、そんなことには構っていられなかった。そして、壁を壊したことでDクラスから直接Bクラスに攻め込む道が出来た。

 

「――ぐぅぅうっ!」

 

 全身に走る痛みに神経がきしむ。

 

 けど、こんなことが出来るのは僕しかいない。痛みが返る代わりに、物理干渉能力を持つ僕の召喚獣だけしか。

 

「ンなっ!?」

 

 崩れた壁の向こうにある、驚いて引きつった根本君の顔。向こうの戦力はほとんど雄二率いる本隊を追って教室から出ている。またとない好機。敵の主戦力は出払い、代表の防御は薄い。ここを逃せば勝ちはない!

 

「くたばれ、根本恭二ぃーっ!」

 

 僕らは呆気に取られている根本君に勝負を挑むために駆け寄ったが、近衛部隊によって行く手をふさがれてしまった。

 

「は、ははっ! 驚かせやがって! 残念だったな! お前らの奇襲は失敗だ!」

 

 取り繕うように僕らをわらう根本恭二。確かに僕ら(・・)の奇襲は失敗だ。だが、あの雄二が近衛部隊の存在を忘れるはずがない。僕たちが封じられることまで計算済みだ。そして、エアコンが壊れ、熱気が篭った教室に涼風を入れるために開け放たれた窓に二人分の足音が響く。そこから屋上よりロープを使って二人分の人影が飛び込み、根本恭二の前に降り立った。ムッツリーニと保健体育の大島先生だ。

 

「……Fクラス、土屋康太」

「き、キサマ……」

「……Bクラス根本恭二に保健体育勝負を申し込む」

「ムッツリーニィーーッ!」

 

Fクラス 土屋康太 保健体育 441点

VS

Bクラス 根本恭二 保健体育 203点

 

 ムッツリーニの召喚獣は手にした小太刀を一閃し、一撃で敵を切り捨てる。

 

 今ここに、Bクラス戦は終結した。

 

 

 

「明久、随分と思い切った行動にでたのう」

 

 終戦後、Bクラスにやってきた秀吉に、まず最初にそんなことを言われた。

 

「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」

 

 

 とにかく今は手が痛い。100%全てが変えるわけじゃないとは言え、素手で鉄筋コンクリートの壁を壊したんだから、その痛みは並じゃない。

 

「なんとも……お主らしい作戦じゃったな」

「で、でしょ? もっと褒めてもいいと思うよ?」

「後のことを考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」

「……遠まわしに馬鹿って言ってない?」

 

 学校の壁を破壊するなんて、問題にならないわけがない。僕の放課後の予定は職員室でのハートフルコミュニケーションで埋まってしまった。初犯でなければ留年や退学になっていたかもしれない。

 

「ま、それが明久の強みだからな」

 

 雄二がバンバンと肩を叩いてくる。馬鹿が強み!? なんて不名誉な!

 

「それにしてもおかしいのう。夏樹がお主がそんな怪我をしたと知ったら心配して救急箱を持ってくるか、お主を引きずってでも保健室に連れて行くじゃろうに、一向に現れん」

『うっ!』

 

 それを聞いて僕と雄二は同時に目をそらす。僕と雄二以外は夏樹は体調不良であると認識しているから、その疑問はもっともだ。

 

「あ、あー、多分あんな隙間風だらけのところで休んでたから悪化しちまったんじゃねぇか?」

 

 とっさに雄二が誤魔化す。だけど、おかしいな。最初は僕も夏樹が来なくて当然って思ったけど、夏樹は物事はきっちりと分けて考える性質だからさっきのことで喧嘩してても怪我の心配くらいはしてくれると思うんだけど。……そういえば、夏樹で思い出したけど、Bクラス戦の終わりからずっと引っかかっていることがあるんだよね。何なんだろう?

 

「それならば、皆で様子を見に行くべきではないかのう?」

「い、いや、あんまり五月蝿くすると休めねぇだろう。そっとしておこうぜ。っと、嬉し恥ずかし戦後対談といこうぜ。負け組代表?」

 

 僕が引っかかっていることについて考えている間にも秀吉と雄二の会話が続いていたが、雄二は秀吉の追及を逃れるために強引に戦後対談を始めた。いけない、いけない。根本君から手紙を回収しなきゃいけないんだから、今はこっちに集中しないと。

 

「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない。」

 

 そんな雄二の発言に、ざわざわと周囲の皆が騒ぎ始める。

 

「落ち着け、皆。前にも言ったが俺たちの目標はAクラスだ。ここがゴールじゃない」

「うむ。確かに」

「ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を呑めば開放してやろうかと思う」

 

 その言葉でうちのクラスの皆はどこか納得したような表情になった。

 

「……条件はなんだ」

 

 力なく根本君が問う。

 

「条件? それはお前だよ、負け組代表さん」

「俺、だと?」

「ああ。お前には散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったんだよな」

 

 凄い言い様だけど、そう言われるだけのことを彼はやっている。だからこそ彼をフォローする人間はいない。

 

「Aクラスに行って、試召戦争の準備が出来ていると宣言して来い。そうすれば今回は設備については見逃してやってもいい。ただし、宣戦布告はするな。すると戦争は避けられないからな。あくまでも戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」

「……それだけでいいのか?」

 

 疑うような根本君の視線。当初の計画ではそれだけでよかったんだけどね。

 

「ああ。Bクラス代表がコレを着て言った通りに行動してくれたら見逃そう」

 

 そう言って雄二が取り出したのは、先ほど秀吉が着ていた女子の制服。

 

「ば、馬鹿なことを言うな! この俺がそんなふざけたことを……!」

 

 根本君が慌てふためく。そりゃ嫌だよね。

 

『Bクラス生徒全員で必ず実行させよう!』

『任せて! 必ずやらせるから!』

『それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな!』

 

 Bクラスの仲間達の温かい声援。これを見るだけで根本君が今までどういった行動を取ってきたかがわかる気がする。

 

「んじゃ、決定だな」

「くっ! よ、寄るな! 変態ぐふぅっ!」

「とりあえず黙らせました」

「お、おう、ありがとう」

 

 一瞬で代表を見限って腹部に拳を打ち込んだBクラスの男子。流石の雄二も変わり身の早さに驚いている。

 

「では、着付けに移るとするか。明久、任せたぞ」

 

 雄二に根本君の着付けを任された僕は、途中根本君が目を覚ましかけて追加攻撃をしたり、着せ方が分からないといった事態は起きたが、Bクラス女子が協力してくれることになり問題は解決した。

 

 制服を脱がせた後はその女子に残りの着付けを任せて、僕は彼の制服を手にその場を離れた。

 




どうでしたか? 今回のお話は地味でしたが、今回のことがこれからの山場――連続する爆発の起爆剤です。

現在はストックを温存しつつ書きためを行い、本日執筆分で9話のストックになったのですが、自分で書いている物語ながら感情移入してしまいますね。ぶっちゃけると、Aクラス戦で姫路対久保は原作こそ山場でも、夏樹の影響が少ないので原作通りの勝敗の予定ですが、今日書いた話の影響で久保を負けさせるのに抵抗ができてしまった。こう、1点差の紙一重で久保を勝たせたい欲求が……。いや、やりませんけどね? まだ、ムッツリーニの戦いも書いていないですけど、姫路戦は葛藤しながら書くことになりそうです。

まあ、雑談はこの程度にして。
それでは、次回から山場山場にしているつもりです。
次話の更新は土曜日なので朝か夕方か迷いましたが、今までのパターンで読んでくれる人が多かった夕方更新にします。ただ、時間は少し早めて18時に予約投稿しておきました。そのお話もどうぞお楽しみに。
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