バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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昨日のうちに上げたかったのですが、一昨日から少々忙しくタイミングを逃してしまいました。今回のお話はAクラス戦のためのミーティングの後の話になります。いよいよクライマックスが近づき、……ストックもやばくなってきました(残り5話)。ちなみにそんなにあるのにまだムッツリーニの試合にすらなっていないんですがね。1巻分が終わるころには40話まで行きそうです。こんなに1巻に話数をかけて良いのか不安になります。

そう言えば、あらすじにも書いた方が良いのかもしれませんが、この作品はアニメ版と決定的に矛盾する設定があります。それに伴い原作よりちょっと下衆度の上がる人が……。

今回はオリジナルの山場のためのきっかけの回。今回の話の盛り上がりはいまいちかもしれませんが、次話にも山場を用意しているので楽しみにしていてください。

それでは、本編始まります。


第三十話:一騎打ちのお誘い

「一騎討ち?」

「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」

 

 皆に作戦を伝えた後は以前一緒に昼食を食べたメンバーでAクラスに宣戦布告に来ました。正直に言うと私は参加するつもりはなかったんですけど、私がいるのといないのとでは成功率が大違いだからと拝み倒されました。まあ、ちょっと引っかかりはありますけど、今回の戦いはそれほど卑怯じゃないので少しくらい協力するべきだとも思いましたしね。

 

「うーん、何が狙いなの?」

 

 現在交渉のテーブルについているのはきのっちの双子のお姉さんの木下優子さんです。……吉井君がなにやら葛藤していますけど、多分馬鹿らしいことなんでしょうね。

 

「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」

 

 木下さんの問いに対してもっちーは何でもないように答えますが、木下さんは当然疑っていますね。最低クラスが学年トップである霧島さんに一騎討ちを挑むなんて不自然ですし、普通に戦争してもほとんど負けることはないですからね。

 

「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを犯す必要もないかな」

 

そう思っていると、木下さんも一騎討ちのリスクについて言及してきました。さて、もっちー? ここからが本番ですよ。

 

「賢明だ、と言いたいところだが本当にそうかな?」

「どういうことかしら?」

「ところで、Cクラスの連中との試召戦争はどうだった?」

 

 もっちーは木下さんの神経を逆なでするかのように聞かれたことには答えず、一昨日の戦争について訊きます。

 

「……時間は取られたけど、それだけだったわよ? 何の問題もなし」

「Bクラスとやりあう気はあるか?」

「Bクラスって……、一昨日来ていたあの……」

 

 ん? 木下さんの表情が苦々しげですけど一体どうしたんでしょうか? こんな始業式開始直後なら振り分け試験の結果が実力差を明確に表していますし、そんなに身構えることではないと思いますが。皆理解しているのに私だけ分からないなんて何か悔しいな。でも、そんな私の心中を知る由もない二人は交渉を続けています。

 

「ああ。アレが代表をしているクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」

「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争は出来ないはずだよね?」

 

 試召戦争には戦争に敗北したクラスがすぐに再戦をして泥沼化することを防ぐため、敗北後は三ヶ月の準備期間が経たないと自分達から戦争を申し込むことができないというルールがあります。でも、この男のことだから。

 

「知っているだろう? 実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』ってなってることを。規約にはなんの問題もない。……Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」

 

 やっぱりね。設備を入れ替えなかったからこそこんな言い訳が通じる。本当にこの男は詐欺師並に頭が回るね。

 

「それって脅迫?」

「人聞きが悪い。ただのお願いだよ。それに正直に言うと一騎討ちでなくてもそれなりの勝算はある」

「勝算?」

「そこにいる神谷夏樹だ」

 

 そう言ってもっちーは親指で肩越しに私を示しました。その言葉を聞いた木下さんは私を品定めするような目で見てきます。まあ、予想していましたけどいい気分じゃないですね。

 

「えっと、神谷さん? その人ってそんなに有名じゃないと思うけど」

 

 こういう反応もさっきの視線も甘んじて受けましょう。さあ、私という札をどこまで強く見せるか。お手並み拝見ですよ。

 

「こいつは基礎が出来ていない教科が多いからそれを勉強するって理由で自分からFクラスに来た奇特な奴でな。大体CクラスからBクラス並の総合点数は取っている」

「それで? その神谷さんの考え方は変わってはいてもいい心がけだとは思うけどBクラスレベルじゃ全然怖くないわよ?」

「分からねぇか? そんなにダメな教科があんのに最低でもCクラス並の点数は取ってんだぜ?」

「え? まさか!」

「そうだ。コイツはダメな教科も多いが、恒常的に高得点を取れる教科も多いんだよ。特に英語Rで400点を下回ったのは見たことがない」

「それはすごいけど、Aクラスにだって400点越えはそれなりにいるのよ?」

「調子が良ければそうだろうが、当たり前に採れるやつが何人いる? そして、極めつけはコイツの腕輪だ」

 

 コイツ、私の腕輪の能力をバラす気ですか! ……まあ、いいですよ。晒すことで有利になる札があるのは事実ですからね。

 

「そんなに強力な腕輪なの?」

「ああ、強力だぜ? なんたって召喚獣操作のジャミングだからな。発動までに時間はかかるが一度発動すればフィールド内の人間は召喚獣をまともに前進させることさえできなくなる」

「そんな出鱈目な能力が認められていいの!?」

「きちんとデメリットはあるさ。フィールド全体への効果だから敵味方問わずに影響する」

「それなら「だが」えっ?」

「発動後に召喚した召喚獣は召喚後に同じだけの時間が経つまでは影響を受けねぇし、そこの観察処分者は夏樹の召喚獣の影響を一切受けない。学園一のバカとは言え、迎撃どころか回避もできねぇ相手ならまず負けねぇさ」

「でも、それは神谷さんが代表のところに行けたらの話でしょ? そんなことが簡単にできるとは思えないけど」

 

 まあ、正論ですよね。それが出来るほどの作戦がないからこその一騎討ちですし。

 

「知ってるか? Fクラスは神谷夏樹と姫路瑞希の二枚看板でDクラスを倒したんだぜ? と言うよりも撃破数で言うなら姫路は夏樹の足元にも及ばん」

「それがどうしたの?」

「だが、Bクラス戦ではとある事情で夏樹が途中退場してな。後半戦はコイツ抜きで戦ったんだよ。つまり、夏樹だけでDクラスのほとんどを相手取れるし、夏樹を抜いたFクラスだけでも上位クラスに食い下がることはできる。ってことはだ。BクラスやDクラスとやって疲弊しているAクラス相手なら可能性は低いが、やり方しだいではコイツを無傷でそっちの代表のところまで送れる可能性は決してゼロじゃないんだよ。そして、一度たどり着けば俺達の勝ちはほぼ確定だ」

 

 ここが勝負の分かれ目だ。確かに私が霧島さんのところに行ける可能性はゼロではないと思う。でも、その可能性も1%あるかないかという程度の僅かなもの。このハッタリで木下さんを(あざむ)きとおさないとこの戦争は最後の最後で失敗に終わる。

 

「だが、正直言うとBクラスをけしかけるのはBクラスがかわいそう過ぎるから避けたいんだよ。なんせ、ウチのクラスには一人、そういうことに敏感に反応する奴がいるしな。現に似たようなことが原因でBクラス戦を途中で抜けやがった」

 

 そう言いながらちらりと私に視線を向ける。やっぱりもっちーは詐欺師みたいに嘘がうまいね。こっちの弱みを隠しているのもそうだけど、嘘の中に本当のことを入れてばれにくくしてる。そんなもっちーをしばらく見ていた木下さんはため息をつきつつ口を開きました。

 

「分かったよ。何を企んでいるのかは知らないけど、代表が負けるなんてありえないからね。その提案を受けるよ」

「え? 本当?」

 

 会話に参加していなかった吉井君が咄嗟に声を上げていた。

 

「まあ、一騎討ちじゃなくても勝算がそれなりだなんてのは、十中八九はったりだとは思うけどね」

「えっ! それならどうして?」

 

 うぅ、やっぱり私の知名度の問題ですかね。このはったりはそれほど効果がなかったみたいです。なので、嘘だと分かっているのに一騎討ちを受けるということを聞いて今度は私が声を上げてしまいます。

 

「だって、あんな格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」

 

 えっと。本当に一昨日何があったんでしょうね。木下さんがあそこまで嫌な顔をするなんて。でも、優等生ぞろいのAクラスで交渉役についているだけあって彼女はさすがに甘くはありませんでした。今度は彼女の方から切り込んできます。

 

「でも、こちらからも提案。代表同士の一騎討ちじゃなくて、そうだね、お互い五人ずつ選んで、一騎討ち五回で三回勝った方の勝ち、っているのなら受けてもいいよ」

「なるほど。こっちから姫路が出てくること可能性を警戒しているんだな?」

「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が調子悪くて姫路さんが絶好調だったら、問題次第では万が一があるかもしれないし」

「安心してくれ。うちからは俺が出る」

「無理だよ。その言葉を鵜呑みにはできないよ。これは競争じゃなくて戦争だからね」

 

 交渉の手際もそうですが、雰囲気作りもとても上手い。木下さんは本当にすごいリーダーシップを持っていますね。

 

「そうか。それならその条件を呑んでも良い」

「ホント? 嬉しいな♪」

 

 周りの人たちはもっちーに正気を疑うような視線を向けていますが、あの男が簡単に譲歩するはずがないですよね。

 

「けど、勝負する内容はこちらで決めさせて貰う。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」

 

 やっぱり。一旦相手の条件を呑むことでこちらの要求を聞き入れやすくする。その手の人たちの常套手段です。ただ、感心すると同時に彼の将来が少し不安になりました。

 

「え? うーん……」

 

 流石に悩みますよね。この選択でクラス全員の命運が分かれると言っても過言ではありませんし、さらに彼女はあくまでもまとめ役であって代表ではありませんから軽々しく了承はできません。

 

「……受けてもいい」

「わっ!」

 

 いきなり近くで聞こえた声に驚いてしまいました。

 

「……雄二の提案を受けてもいい」

 

 突然現れた人物はAクラスの代表である霧島さんでした。

 

「あれ? 代表。いいの?」

「……その代わり、条件がある」

「条件?」

「……うん」

 

 霧島さんはそう言ってうなずくと、もっちーを見た後に私を値踏みするかのようにじっくりと見てきます。……そんなに警戒しなくても盗りませんって。

 

「……負けた方は何でも一つ言うことを聞く」

 

 ……恋愛にクラスを巻き込んでいいんだろうか。しっかりしているようで意外にダメなところがある人だな。後ろでバカ二人が混乱しているし、この学校って変人を集めやすいのかな? 仮にも進学校なのに。

 

「じゃ、こうしよう? 勝負内容は五つの内三つそっちに決めさせてあげる。二つはうちで決めさせて?」

 

 その点、木下さんは本当に優秀ですね。妥協点を見つけるのが上手い。でも、三つあればもっちー、ひめひめ、むっつーで何とかなりそうですし、十分でしょう。

 

 私が木下さんの提案について考えていると吉井君が何やら私に話しかけたそうにしているのに気がつきました。一体何なんでしょうか?

 

「交渉成立だな」

「ゆ、雄二! 何を勝手に! まだ夏樹が了承していないじゃないか!」

 

 …………貴様、そんな想像をしていたのか。まったく、この学校は節穴ぞろいなんだから。

 

「心配すんな。絶対に夏樹に迷惑はかけない」

 

 保障してくれるのはありがたいけど、それなら誤解を解いください。私と霧島さんの×××を妄想されていると考えると気持ち悪いんですけど。

 

「……勝負はいつ?」

「そうだな。十時からでいいか?」

「……わかった」

「よし。交渉は成立だ。一旦教室に戻るぞ」

「そうだね。皆にも報告しなくちゃいけないからね」

 

 これで交渉と最後の宣戦布告が終わりました。後は開戦を待つだけ。それにしても、こうして大勢で来れば宣戦布告も無事に終わるのに、吉井君は失敗から何も学習しない……ううん、失敗を覚えていないんだから。…………アレ、失敗?

 




今回はAクラスとの一騎打ちについてのやり取りです。そして、雄二と手をつないだりしたせいでこちらでは翔子の警戒相手が姫路さんではなく、夏樹になってしまいました。一応言っておくと、原作の明久は翔子が姫路を見ていたときに×××を想像して興奮していましたが、ここでは想像はしていますが、そうならないように心配しているだけで興奮はしていませんよ。流石に親友のアレソレを想像して興奮する変態ではないと信じています。まぁ、ムッツリーニは普通に興奮していますがね。

さて、今回のラストで夏樹は前々回のFクラスでのミーティングから引っかかっていたことに気付きかけました。このことが、物語にどんな影響を及ぼすのか。勘の言い方は予測がついているかもしれませんね。でも、予測がついている方でも楽しめるように描写にはかなり力を入れたつもりなので、楽しみにしていてください。

次回の更新は火曜日の夕方を予定しています。それでは次回もよろしくお願いします。
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