バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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他の小説との違いが出てくる部分まで早めに出すために本日2本目の投稿です。

今回は主人公の夏樹の出番は始めの数行だけで、残りは原作主人公の明久に頑張っていただきます。昔はSideで分けていたのですが、何やらSide表記は余所では不評なのでバカテス原作のように多めにスペースを空けることで視点の変化を示しています。

それでは、本編の開始です。


第六話:懐かしくも嫌な感覚

「採点をお願いします!」

 

隣でひめひめがテストをどんどん終わらせていくのをしり目に私は時間をめいっぱい使ってテストを解いていきます。

 

ひめひめは途中退席で全てのテストが0点だし、私はFクラスに入るために英語を無記名で提出したからそれらの補給試験を行って点数を回復させなければなりません。

 

私もひめひめみたいに短時間で数をこなせればいいんだけど、私は召喚獣の特性上相性の良いテストでも、いや、相性の良いテストだからこそ制限時間を余すことなく使用して少しでも点数を稼がなければならないのです。

 

点数を稼いでる間に全滅したら意味がないのは分かっているけど、今は仲間の力を信じます。がんばってね、あっきー。

 

 

 

 

 僕はついさっき秀吉と別れて戦場に向かっている。まあ、尊敬する人は二宮金次郎、趣味は勉強にするっていう鉄人の補習は怖いし、実際2回ほど撤退しようと思ったけど――2回目は島田さんの発案だけどね――考えを読まれていたのか雄二に手紙で脅されてしまった。補習の方が奴の粛清よりはマシだろうし、裏面にあった夏樹からの激励を見たら流石の僕でも期待に応えたくなるというものだ。

 

「吉井、見て!」

 

隣を走る島田さんが叫ぶ。なんだろう?

 

「五十嵐先生と布施先生よ! Dクラスの奴ら、化学教師を引っ張ってきたわね!」

 

 見ると二年生化学担当の五十嵐教諭と布施教諭が渡り廊下にいた。

 連中は立会人を増やして一気に片をつけるつもりらしい。

 

「島田さん、化学に自信は?」

「全くなし。60点台常連よ」

 

 うーん、流石はFクラス。お世辞にもよい点数だなんて言えないな。

 

「よし、五十嵐先生と布施先生に近づかないよう注意しながら学年主任のところに行こう」

「高橋先生のところね? 了解!」

 

 既に戦闘が行われている渡り廊下で目立たないように隅へ移動する僕と島田さん。

 皆、見るがいい。これが中堅部隊隊長と副官の勇姿だ!

 それにしても、隊長と副官ということで島田さんと一緒に行動しているんだけど、何故か嫌な予感がする。でも、撤退しようとして眼つぶしを食らったけどそれは過去のことだし、島田さんはいつも一緒にいる夏樹と比べると母性の象徴が悲しいことになっているから――これについては既に回避済みだ――いつもほど嫉妬を受けることは無いはずだ。

 

「あっ、そこにいるのはもしや、Fクラスの美波お姉さま! 五十嵐先生、こっちに来てください!」

「くっ! ぬかったわ!」

 

そんなことを考えているとDクラスの一人に島田さんが見つかってしまった。その娘は化学担当の五十嵐教諭を伴ってこちらにやって来る。マズい。こっちも召喚獣を出して応戦しないと、二人揃って一撃で補習室送りだ。

 

「よし。島田さん、ここは君に任せて僕は先を急ぐよ!」

「ちょっ……! 普通逆じゃない!? 『ここは僕に任せて先を急げ!』じゃないの?」

「そんな台詞現実じゃ通用しない! それに、その人が来てから懐かしくも嫌な感じがして一刻も早く離れたいんだ!」

 

 彼女とは初対面なはずなのになぜだろう。彼女と会ってから先ほどまで感じていた嫌な予感が強まるのを感じ、体中から嫌な汗が出ている。

 

「よ、吉井! このゲス野郎!」

「お姉さま! 逃がしません!」

「くっ、美春! やるしかないってことね……!」

 

 五十嵐先生から10メートル以上離れてからゆっくりと島田さんの様子を伺う。既に呼び出されていた相手の召喚獣に応じるように島田さんもそちらを見据えて声を出す。

 

「――試獣召喚(サモン)っ!」

 

そして、軍服姿でサーベルを持ち、体長80センチほどの『デフォルメされた島田美波』といった感じの召喚獣が姿を表した。

 

「お姉さまに捨てられて以来、美春はこの日を一日千秋の想いで待っていました……」

「ちょっと! いい加減ウチのことは諦めてよ!」

 

 いよいよ戦闘が始まる。

 

「ところで島田さん、お姉さまって――」

「嫌です! お姉さまはいつまでも美春のお姉さまなんです!」

「来ないで! 私は普通に男が好きなの!」

「嘘です! お姉さまは美春のことを愛しているはずです!」

「このわからずや!」

 

……なんだか、島田さんが遠い。そして、僕の中の警戒アラームの音量が大きくなった気がする。

 

「行きます、お姉さま!」

 

 二人の召喚獣の距離が詰まり、いよいよ戦闘が始まる。

 

「はあぁぁっ!」

「やあぁぁっ!」

 

 二人の気合が廊下に響く。

 

 それぞれの召喚獣が武器を構えて正面からぶつかり合い、力比べが始まった。

 

「こ――のっ!」

「負けません!」

 

 見ている方まで力が入りそうな鍔迫り合いを繰り広げる二人の召喚獣。

 

「島田さん! 向こうの方が点数が高いんだから、真正面からぶつかったら不利だ!」

「そんなこと言われなくてもわかってるけど、細かい動作はできないのよっ!」

 

 直後、均衡が崩れて、力負けした島田さんの召喚獣が武器を取り落とした。

 

「ここまでですっ!」

「くぅっ!」

 

 そのままの勢いで島田さんの召喚獣が押し倒される。その頭上には参考として二人の戦闘力(点数)が浮かび上がっていた。

 

Fクラス 島田美波 化学 53点

VS

Dクラス 清水美春 化学 94点

 

 島田さん、サバ読んでたな。本当は60点にすら届いてないじゃないか。

 

「さ、お姉さま。勝負はつきましたね?」

 

 刀が島田さんの召喚獣の喉元に突きたてられる。腕や足を刺された程度なら点数が減るくらいだけど、首や心臓をやられたら即死して、補習室行きだ。これは下手に動けない。

 

「い、嫌ぁっ! 補習室は嫌ぁっ!」

 

島田さんが取り乱す。当たり前だ。僕だって嫌だもの。

 

「補習室? ……フフッ」

 

 楽しそうに笑いながら、清水さんが島田さんの手を引っ張る。

 

 あれ? 清水さん、そっちにあるのは保健室ですよ?

 

「ふふっ。お姉さま、この時間ならベッドは空いていますからね」

「よ、吉井、早くフォローを! なんだか今のウチは補習室行きより危険な状況にいる気がするの!」

 

 そうだろうね。僕もそんな気がするよ。でも、

 

「殺します……。美春とお姉さまの邪魔をする人は、全員殺します」

 

 ごめん、僕にソコに飛び込む勇気はない。清水さんの視線に体が無意識に逃避行動をとろうとする。あの視線は僕が中学校のころに何度も浴びてきた視線と同質のものだ。なんで今まで気付かなかったんだろう。……気付きたくなかったんだろうなぁ。

 

 夏樹は友達として付き合ってみると天真爛漫で子供っぽい性格とコロコロ変わる表情で可愛いという印象を受ける。しかし、170cm付近という女子にしては高い身長と整った顔立ち、切れ長の目という見た目のせいで黙っていると男の僕から見ても非常にカッコいい。そのうえ、夏樹はしっかりした性格で誰にでも優しく、面倒見が良いから中学時代は同い年や年下の、特に同性のファンがたくさんいた。

 

 そんなカッコいい女性の隣に平凡な男に過ぎない僕が立っているのが気に食わないらしく、下級生の女の子の何人かから嫉妬の視線を向けられ続け、その視線に敏感に反応するようになってしまった。

 

 しかも、清水さんの視線はその何人もの視線を集めて凝縮したような強さを持つ。そんな人に歯向かうなんて僕にはできない。よって、僕にできるのは、

 

「島田さん、君のことは忘れない!」

 

「ああっ! 吉井! なんで戦う前から別れの台詞を!?」

「邪魔者は殺します!」

 

 島田さんの召喚獣の手足に攻撃を加えて動けなくすると、今度は敵がこっちにやって来た! 畜生、僕は一切手を出す気が無いのにっ!

 

「吉井、危ない! ――試獣召喚(サモン)っ」

 

 と、脇から割り込んできた声。か、彼は――クラスメイトの須川君! ありがとう! 君がまるで救世主のように見えるよ!

 

Fクラス 須川亮  化学 76点

   VS

Dクラス 清水美春 化学 41点

 

 須川君の召喚獣が敵を切り倒す。

 

 清水さんがさっきの戦闘で消耗していたから須川君が簡単に勝つことができたみたいだ。

 

「島田、大丈夫か?」

「ええ、助かったわ、須川君。本当にありがとう。補習の鉄じ――西村先生、早くこの危険人物を補習室へお願いします!」

「おお、清水か。たっぷりと勉強漬けにしてやるぞ。こっちに来い」

 

 島田さんと違って止めを刺された清水さんが鉄人に連行されていく。

 

「お、お姉さま! 美春は諦めませんから! このまま無事に卒業できるなんて思わないでくださいね!」

 

 とても、危険な台詞を残し、清水さんは補習室へと連行されていった。……っていうかその台詞、宿敵に放つみたいじゃないか。君は本当に島田さんが好きなのかい? 

 

 いろいろな意味で危ない戦いだった。

 

「吉井」

「島田さん、お疲れ。とりあえず一度戻って化学の試験を受けてくるといいよ」

「吉井」

「さ、須川君、行こう。戦争はまだまだこれからだ」

「吉井ぃっ!」

「は、はいっ!」

「……ウチを見捨てたわね?」

「……記憶にございません」

「…………ウチがどうなっても良かったの?」

「…………普段が普段なので」

 

 流石は戦場だ。殺気がヒシヒシと伝わってくる――ただし、後ろにいる島田さんから。

 

「…………」

「…………」

 

 しばしの沈黙。なんだか、とても居心地が悪い。

 

「死になさい、吉井明久! 試獣召(サモ)――」

「誰か! 島田さんが錯乱した! 本陣に連行してくれ!」

 

 冗談じゃない! あんな危険人物と同じ部屋に閉じ込められるなんて真っ平だ!

 

「島田、落ち着け! 吉井隊長は味方だぞ!」

 

 須川君が島田さんを羽交い絞めにしてなだめる。やっぱり、君は救世主だったんだね。

 

「違うわ! コイツは敵! ウチの最大の敵なの!」

 

 ……否定できない。けど、最大の敵は僕よりもさっきの危険な子だと思う。

 

「す、須川君、よろしく」

「了解」

「こら、放しなさい須川! 吉井! 絶対に許さないからね!」

「は、早く連れて行って! なんかその禍々しい視線だけで殺されそうだ!」

 

 なんてことだ。さっきの清水さんって子とほとんど変わらないじゃないか。……なんだ、どっちを選んでも結末は同じだったんじゃないか。

 

「ちょっと、放し――殺してやるんだからぁーっ!」

 

 物騒な台詞を残していったが、ひとまずの身の安全は確保できた。

 

「よし、とにかく秀吉たちが補給をしている間、前線を維持するんだ! 一歩も進ませないように!」

 

怒号や悲鳴が飛び交う廊下で大声を振り上げる。ここからが僕らの正念場だ!

 




今回は明久の美春嬢とのファーストコンタクトと、それを利用した夏樹のビジュアル説明です。ちなみに本文にあるように中学時代の経験・トラウマにより明久の美春嬢への苦手意識は原作の5割増しです。

ちなみにのちの話で表現するはずですが、夏樹の母性の象徴は簡単に示すと
姫路≫夏樹>翔子≫美波
となっています。ですが、口調の女らしさは
姫路≫美波>夏樹
ですので、夏樹が美波より女の子として上と言いきることはできませんね。

次回はタグにもある夏樹と雄二の絡みがメインです。それと、以前の投稿時には無かった自己解釈が入ると思います。次回の投稿は明日の朝を予定していますので、そちらもよろしくお願いします。
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