バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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予告通りに他の小説との大きな違いが出始める時期まで進みました。今回は明久が美波と一緒に戦っている裏でのFクラスが舞台です。このお話で初めて明確な独自解釈・独自設定が現れます。自分なりには結構説得力があると思っているのですが、少し不安です。



第七話:切札を切るタイミングは?

「『神父はジャン・ヴァルジャンがいつの日か改心できることを信じていたため』っと」

 

 私は今、現代国語の補給試験を受けている。……無記名だったのは英語の試験だけなのになぜかって? その理由を知ってもらうには一時間近く前にあったことを話さなくてはならない。

 

 

――1時間半前――

 

「夏樹。お前がFクラスに入るために英語を無記名で出したことは知っているが、現国と数学はどうだったんだ?」

 

 私の英語の試験が終わったのを見計らってもっちーが尋ねてきました。

 

「えっと、数学はまずまずで、現国は相性最悪だったよ」

 

 聞いてくる意味は全く分かりませんでしたが、無視するというのも酷いと思うので正直に答えました。

 

「まあ、現国はあの問題ならそうだろうな。よしっ! 折角だ。数学と現国の試験も受けていけ。もしかしたら振り分け試験より相性が良いかも知れんからな」

 

 それを聞いた私は多分ものすごいしかめっ面をしていたと思います。……見れないから確認しようがなかったけど。

 

 今は少しでも早く戦場に行かなければならず、そのために隣の席のひめひめはハイペースで試験を解いているのに、私に英語以外の試験もさせる意味が分かりません。相性最悪だった現国ならまだしも、まあまあだった数学をDクラス戦のために受ける意味があるとは思えません。そんなことをしている間にも戦争は大詰めに……、

 

「……もっちー。なんだかんだ理由をつけて私をDクラス戦に出さない気?」

「なんでそう思うんだ!?」

 

 もっちーは明らかに驚いた表情をします。そして、心外だと言いたげな感じが口調にも表れる。でも、私にそんなのは通じません。たぶん、今言った二つが終わっても他の科目をだしにして私をこの教室に留めておくつもりでしょう。

 

「ダウト。バレても良いって思っている程度の嘘なら、少し表情を見ていればそれが嘘か本当かは分かるよ」

 

 まぁ、本気で観察していれば大抵の嘘は見破れるんですけど、言う必要はないですよね。

 

「ふっ、まあな。別にお前なら話してもいいと思っていたから否定はしない。ちょっと、こっちに来い」

 

 もっちーに手招きされ、教室の隅の方に二人で移動します。

 

「なんで私をDクラス戦に出したくないのさ。次にAクラスと戦うまでにあっきーとの連携を練習しなきゃいけないし、他の皆も私の召喚獣の特性を知っとかなきゃダメでしょ?」

「お前は他言するような奴じゃないし、お前が言う通りどうせバレても良いからはっきり言うが、次の相手はAクラスじゃない。加えて言うなら、そもそもAクラスとクラス単位で戦う気はない」

「はいぃ?」

 

 もっちーの言っている意味が分からない。私たちの最終目的はAクラスのはずだし、クラスで戦争をしないでどうやって試召戦争をする気なのだろうか。それに、もっちーは私の質問に答えているようで答えていない。百歩譲って最終目標としてAクラスを狙わないにしても次がDクラスより上のクラスであることは間違いない。だったら、ここで連携の練習をするべきというのは変わらない。

 

「意味が分からないって顔だな」

「そりゃそうでしょ。最終目標を変えるにしても、やっぱりここで練習は――」

「バカを言うな。最終目標を変えたりはしない。俺の狙いはあくまでAクラスとの代表同士の一騎打ちだ」

「もっちーの考えが全然分からないよ。それと私がDクラス戦に出ないのと何の関係があるのさ」

「正直に言うと、お前の召喚獣はギリギリまで隠しておきたい。Aクラス確実であり、学年中で有名な姫路の存在はどうせ明日には全クラスにバレる。隠し玉として使えるのは今日だけだ」

 

 確かにそうだ。今日のうちにひめひめがいないことがAクラスで話題になり、そのことが学年中に広がるのにそんなに時間はかからないだろう。

 

「だが、お前の召喚獣は初の召喚獣演習でバグって突然消えてから周りがなんて聞いても問題は解決したとしか言わず、その後はお前だけ別カリキュラムになっただろう。だから、元Cクラスと元Dクラスの奴以外はそもそもお前の召喚獣が特別だと言うことを知らないし、お前の召喚獣の特性を知っているのは元Dクラスでも俺達4人だけだ」

 

 もっちーの言う通りで私の召喚獣は初めて召喚したときにおかしな現象を起こし、その問題は一応落ち着いたけど、とある事情と原因究明のため私だけ別カリキュラムの授業を受けていたし、休日に何度か学園長に呼ばれて実験をしたこともある。……もちろん休日分は研究アシスタントのアルバイト扱いで謝礼はもらってるよ?

 

「だから、そんな謎の召喚獣の存在を土壇場で知っても対策なんて立てられない。むしろ混乱するだけだ。そうなれば、色々と交渉しやすくなる。だから、今回はお前の戦闘を見せるのは避けて、次のクラスのときはお前と明久のコンビをメインに戦略を立てるつもりだ」

 

 なるほど、下位クラスだと侮っていたところにひめひめ以外にも強札が、それも規格外な札があると分かれば戦略は立てにくいよね。それも戦争の前日にギリギリで分かったんじゃあ。でも、出し惜しみしてここで負けたら意味がないと思うんだけど。

 

「大丈夫だ。姫路の準備が整うまで時間稼ぎに徹して戦闘していれば問題ない。まあ、変ないざこざで戦場が乱れれば分からないが、いくらFクラスでも戦争中に関係のない問題を起こすような、そんな救いようのないバカはいないだろう」

 

 私の不安を察したのかもっちーが微笑みながら説得してきます。でも、

 

「もっちーももっちーで十分バカだと思うよ? 狙いを二人も外しているし」

「何のことだ?」

 

もっちーは少し不機嫌そうな顔で私の問いに応じます。確かにバカと言われれいい気分はしないだろうけど私にも言い分はあります。

 

「だって、代表を狙って点数調節したんでしょ? でも、私とひめひめが普通にやってたら他の誰かが代表だったよ?」

「……お前はバカか?」

 

 しかし、もっちーは私の言い分を聞くと、溜息をついた後に私に呆れた目を向けてきます。喧嘩売ってんのか、この野郎。

 

「俺がそんな面倒なことをするか。普通に受けてもFクラスなのは大体分かってたからな。お前が考えたような面倒なことはしてねぇよ。単純にテストの勉強を一切しなかっただけだ」

「えっ? でもそれじゃあ望み通り試召戦争ができるとは限らないんじゃない?」

「俺の代わりに代表になるようなのはFクラスレベルのバカか、Eクラスの部活バカだぞ」

「言葉は悪いけどそうだろうね」

「だったら、俺がそんなバカの手綱を取れないとでも?」

 

 自信満々かつ悪人じみた表情を見て、私は彼の言葉に納得しました。少し想像力を働かせると目の前の男が言葉巧みにクラス代表を操り、傀儡(かいらい)にしている様子がありありと浮かんできました。確かに、この男なら面倒くさい点数調査と点数操作をして代表になるよりは代表者を唆して戦争に誘導する方が自然な気がしました。そう考えると、他人の行動分析や思考誘導に長けたこの男が事前にしっかりと練った作戦なら結構信頼できる気がしてきました。それに、あっきーもいざというときは結構頑張る男なのでもう少しクラスメイトを信頼してゆるり構えていても良いかもしれません。

 

 

 

――回想終了――

 

 

 と、言うわけで私は皆を信じて試験に徹しているのです。既に数学は終わらせ、解答をしてもらっているのですが、振り分け試験よりかなり手ごたえを感じました。今やっている現国にしてもかなり相性がいいです。これなら最高点を大幅に更新できるかも。

 

『――放しなさい! 私は戻って吉井を殺さないといけないの』

『まずい、島田が錯乱している』

『落ち着け、島田。今は戦争中なんだから仲間割れは――』

『おい、島田が止まらねぇよ。もう1人くらい手伝ってくれ!』

 

 ……なんだろう。廊下がものすごく騒がしい。いや、騒がしいの自体は戦争中だから仕方ないけど、ここは本陣なんだからまだマシなはずだし、明らかに戦争とは関係ない内容な気がする。

 

「夏樹! 試験はどんな感じだ!」

 

 様子を見に行ったもっちーが慌てて教室に戻ってきた。

 

「坂本くん! 試験中です。あなたが神谷さんと話すなら神谷さんはカンニング扱いになりますよ」

「くっ! だったら夏樹。これはあくまで俺の独り言だ。適当に聞き流してくれ。どうやらウチには救いようのないバカ共がいたようだ。島田が暴走してそれを押さえるのに補給試験を受けようとしていた奴が何人か出て行っちまって補給が遅れそうだ」

 

 えっ? 一体しまっちは戦争中に何をやってるのさ。仮にも一部隊の副官なんだからしっかりと責任もって行動してよ。

 

「だから、現国はなるべく早く切り上げてお前も戦線に加わってくれ! 畜生! こうなりゃ、確実性は落ちるが元々の作戦だけでいくしかねぇ」

「わ、分かった。今もらった用紙の半分は漢字の問題だから、それだけ埋めたら採点にまわすよ」

「っ!? 今すぐに……いや。それでいい。だが、なるべく急いでくれ!」

「オーケー! 飛ばしていくよ」

 

 そして、既に試験が終わって採点の順番を待っていた人の列がどんどん短くなり、ようやく私の試験の採点が始まった。一応、私の試験終了と採点を待っているうちにしまっちはなんとか落ち着いて須川君とともに戦場に戻っていた。しっかりやってくれてるといいんだけど……。

 

「はい。これで神谷さんの採点は終わりましたよ」

「ありがとうございます!」

 

 私は慌ててお礼を言うとFクラスの教室を飛び出した。……そういえば、少し前に戦場にいったはずの須川君が教室に入ってきて、もっちーと何か話していたけど、あれは一体なんだったんだろう? いや、今はそんなことは気にせずに戦場に急がなきゃ!

 

「もう少ししたら俺も援軍を連れて合流するが、それまでお前が戦線を維持しろ! こうなったらお前の強さを思いっきり見せ付けてウチのクラスの士気を存分に高めてやれ!」

「了解! 待ってるからね、代表♪」

 

 私はもっちーの言葉を背に受けて戦場へと駆け出します。

 

 

 ――そして、FクラスとDクラスの戦場に最悪にして最弱の召喚獣が解き放たれた。

 




はい、この小説の独自解釈は雄二は点数調節をしてFクラス代表になった訳ではないということです。これは原作では全く語られていないにも関わらず、バカテス二次ではお決まりとなった設定ですが、自分はそこに切り込んでみました。この設定を適用すると原作でも姫路が体調を崩さなければEクラスの最下位が代表になっていて、雄二の計算が狂っているんですよね。さらに、よくあるオリ主物ではオリ主も明久を追ってFクラスに入り、オリキャラの数だけ計算が狂い、雄二の株が落ちてしまうんですよね。

ですが、この作品では雄二はハニトラには弱くても、しっかりとした策士・軍師キャラとして書きたいので代表を狙う気はなかったということにしました。自画自賛かもしれませんが、実際に書いてみると、面倒臭がりの雄二ならこの設定のように狙ってないのに代表になったという方が自然な気がします。

今回のラストは以前のサイトでもちょっと厨二臭かったかな、と思いましたが、以前のサイトの感想でそんな風には思わないと言ってくださった方が多かったのでそのままにしておきました。

次回は夏樹の召喚獣の特性が明らかになりますので、お楽しみに。
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