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人は、生まれながらにして平等ではない。
それは、この世界に生きる全てのものが齢四歳で知る現実。
――――少年の、最初で最後の挫折。
「くるんじゃねぇえええええええ!!」
突如街中に轟音と、猛獣の咆哮のような叫び声が鳴り響いた。人々は逃げるでもなく、むしろ近くへ駆け寄る。警察がそれ以上近づかぬようにと道を塞ぐが、人々はまるで意に介していない。しかしそれも当然だ。
人垣越しでもよく見えるほどに巨大な―――家すら簡単に踏み潰せそうなサイズの怪獣が暴れまわっているのだ。映画の撮影ではない、現実の出来事である。
「でっけー敵!! 誰が戦ってるんだろ」
モサモサとした癖っ毛が特徴的な学ランの少年は人垣越しに敵を見やると、潜るように人垣の中を進む。
少年の名は緑谷出久。“ヒーローオタク”の14歳、中学3年生である。背中に担いだ大きめのリュックを揺らし人垣をかき分けるとやっと人垣の突破に成功した。
「怪獣化か、すっげー”個性”だな……。一体何やらかしたんだ?」
「ひったくりだとよ。」
「電車もとまってらぁ、会社に電話しねーと……。」
大人たちの呆れたような会話も、少年の耳には入らない。
「誰、戦ってます!?」
「キャー!! シンリンカムイ、頑張ってぇー!!」
少年が誰に聞くでもなく尋ねると同時に、黄色い声援が人垣の中から発せられた。
「「シンリンカムイ」!! 人気急上昇中の若手実力派!!」
「聞いといて自分で解説とは……兄ちゃんオタクだな!!」
ファンから出た「シンリンカムイ」の名に思わず叫んだ解説に、隣の見知らぬおじさんが愉快そうに突っ込んだ。
誰もが暴れる怪獣から逃げること無く、むしろ状況を楽しむようにその場にとどまる。逃げる必要など無い。
「通勤時簡単に能力違法行使、及び強盗致傷。まさにじゃ悪の権化!!」
若手実力派と評され、全身を黒と木目柄のスーツで包んだ“シンリンカムイ”は叫ぶ。なおも威嚇する敵に、シンリンカムイは続けて叫んだ。
「もう逃げられぬぞ!! なぜなら此処には――――
◆
事の始まりは、世界中に報道された『中国・軽慶市にて発光する赤子が生まれた』という信じられないニュースだ。
最初は何らかのトリックであろうと疑った人々もいたが、それ以降、各地で発見された『超常』の数々がそれが現実であることを知らしめた。そして今なお、「超常」の原因は判然としないまま時は流れ、いつしか「超常」は「日常」へ……「架空」は「現実」へと姿を変えた。
氷を身にまとう個性、触れずに物を動かす個性、炎を身にまとう怪獣に変身する個性……。
8割の人間が超常を有する現在の社会において、「超常」は「日常」……すなわち「個性」と呼ばれるようになり、そういった特異体質の人間が集まる超常社会において、犯罪は爆発的な増加と、多彩化の一途をたどる。
そんな中。
遅れる法の抜本的改正を待てぬと、勇気ある人々がコミックさながらに善意で立ち上がった。
超常への警備、悪意からの防衛、平和のために戦う戦士。
かつて誰もが憧れ、空想し、望んだ『職業』
◆
―――『ヒーロー』が、居るのだから!!」
叫ぶと同時に、シンリンカムイの右手が大量の木の根のようなものに包まれる。瞬間。ワァッと人々から歓声が上がった。
「一発ハデに見せろよ!! 樹木マン!!」
先ほどのおじさんが、期待を込めたやじを飛ばす。
「あ! 出ますよ。『一撃必縛』!!」
「ウルシ鎖牢!!!」
右手にまとった木の根が瞬間的に伸び、数瞬後には怪獣を取り囲んでいた。「決まった!!」と誰かが叫んだ、その瞬間。突如巨大怪物を凌ぐほどの巨大な影が、飛び出した。
「キャニオンカノン!!!!!」
鮮やかな金色の長髪を揺らし、一昔前のようなデザインのボディースーツに身を包んだ美女が、突然飛び蹴りを怪獣敵にブチかます。
ズドッという、到底聞いたことのないような破壊音があたりに響く。とても勝利を祝う音には聞こえないが、どうやら決着はついたらしい。
気を失い通常サイズに戻った敵は、警察により即逮捕され連行。突如湧きでた報道のカメラや、カメラ小僧たちに溢れんばかりの笑顔を振りまき、ヒーロー名『Mt.レディ』と名乗った美女は一瞬だけ下卑た笑顔を見せた。
「巨大化……」
少年が呟く。ほとんど無意識に、ノートとペンを取り出し、つらつらとノートに文字を綴り始めた。
「人気も出そうだしすごい個性ではあるけど、巨大化ともなればそれに伴う街への被害も大きいし、それを考えると割りと限定的な活用になっていくか? いや……大きさは自在かそれか―――」
ぶつぶつぶつぶつ、ともはや恐怖を覚えるレベルの独り言。
「おいおいメモて!! ヒーロー志望かよ、イイネ!! 頑張れよ、兄ちゃん!!」
「……っはい!! 頑張ります!!」
見知らぬおじさんの台詞に、思わず少年の手が止まった。頬を染め、心の底から嬉しそうに返事をする。未来のヒーローか、と小さくつぶやき見知らぬおじさんは踵を返した。
そういえば遠い昔、ヒーローを志していた事もあった。と、空を仰ぐ。現在の個性持ちの人間は全人口の八割だが、残りの二割の殆どが年寄りのため若者はほぼ全員個性持ち。しかも、俗に「複合個性」と呼ばれる強力な個性を保有するものも少なくない。
「若者ってのはいいねぇ、夢があって。……ちょっと怖いけどな」
トコトコと歩きながら呟く。ヒーロー志望の少年など珍しくもないが、あれはちょっと特殊だ。―――と、考えた瞬間。先ほどと全く同じ光景を目にする。
「フフフフフffffFFFFFF。なるほどなるほど。巨大化とはすごい個性ですが、ただ巨大化するだけではちょっと物足りないですよねぇ。当然といえば当然ですが服も伸縮性のあるものでないと行けませんし、第一巨大化という個性は――――」
ペラペラペラペラ、と。ピンクの髪を揺らし隣に立つ学友にマシンガントークを炸裂する一人の少女。学友は「またか」と言わんばかりにうんざりした顔をしているので、話の半分も聞いてはくれていないだろう。
「もしかして……これが今の若者のスタンダードなのか?」
会社遅刻しそうなんで添削甘いです。
すみません。
発目ちゃんでてくるのもう少し後です……。