無個性ヒーロー IF僕のヒーローアカデミア   作:冷椰子

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No.1-2 過去

 とある学校、とあるクラス。

 ざわざわとする生徒達の前で教師はゆっくりとその口を開いた。

 

「お前らも3年、真剣に将来を考えるべきだろう。今から進路希望のプリントを配るが!! ……まぁ、だいたい皆ヒーロー科志望だよねぇ」

「はーい!!」

 教師が進路希望のプリントを数枚、ばらまくように投げると生徒が自分をアピールするように個性を発動した。

 教師や生徒の希望に満ちた声に、更に身を屈めた。少年は教室では、できるだけ姿勢を低くするようにしている。 それでも手が上がってしまうのは、夢を諦めきれないからか。

 

「うんうん、皆良い個性だ。でも校内での個性発動は原則使用禁止な」

「皆……?」

 突然、教室内に爆音が響く。

 

「せんせぇー、皆とか一緒くたにすんなよ!」

 爆発の発生源の方に生徒らの視線が集まる。視線の先に居る机に足を載せた逆だった灰色髪の少年は皆の視線など物ともせず更に言葉を続けた。

 

「俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんかいかねー――――よ」

「そりゃねぇだろカツキ」

「爆豪くん、ひどーい」

 クラスメートの不満の声も「モブがモブらしくうっせー」とまるで意に介していない少年の名は、爆豪勝己。ざわざわと騒ぐクラスメートを『モブ』と形容し、愉快そうに笑う。

 

「そういや爆豪は、雄英志望だったなぁ」

 思い出したように発せられた担任の言葉に一瞬だけ教室内に静寂が走る。次の瞬間には先程以上にざわざわと騒ぎ始めるクラスメートを更に見下すように、爆豪勝己は机の上に飛び乗った。

 

「そのザワザワがモブたる所以だ! 模試じゃA判定!! 俺はこの中学で唯一の雄英圏内! 俺はあのオールマイトおも超えてトップヒーローと成り、必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!」

「あ」

 高らかに叫ぶ爆豪とほぼ同時。教師がそういえば、と口を開いた。続く言葉に、爆豪の動きがピタリ、と止まる。

 

「そういや、緑谷も雄英志望だったな」

「……はああ!? 緑谷!?」

「無理っしょ、無理無理!!」

「勉強できるだけじゃヒーロー科には入れねんだぞー!」

 一斉に注がれるクラスメイトからの視線と、言葉の嵐。

 

「べ、別に前例が無いだけでそういった規定は無いよ――うわぁああっ!?」

 少年の反論を、紅い爆発が阻む。

 

「こらデク!! テメェ、”没個性”どころか”無個性”がぁ~~~、なんでこの俺と同じ土俵に立てるんだよ!!!?」

「待っ、違うまって……かっちゃん。別に張り合おうとかそういうのは全然!! ……ただ、目標なんだ。小さい……頃からの。」

 爆発の衝撃で吹き飛ばされた身体を更に後退させながら、必死に弁解するが爆豪が納得する様子はない。

 

「そ、それに」

「それに?」

 おどおどと紡がれた言葉に、するどい眼光のまま爆豪が聞き返した。

 

「やってみないと……わかんないし。」

「なぁにがやってみないとだ!! 記念受験か!!」

 少年の言葉に、クラスメイトらからも失笑が漏れる。同時に、全ての生徒が「お前と俺らでは違うのだ」と言わんばかりに個性を発動した。ぞくり、と少年の背中に悪寒が走る。

 怯んだ少年に、爆豪は静かに、それでいて蔑むように高圧的に言い放った。

 

 

「テメェが一体、何をやれるんだ?」

 

 

 無常で、それでいて的確なその言葉に、少年は視線を落とす。

 視線の先には、”忌々しい”小指があった。

 

 

PM0:02 同市内

 突如、女性の悲鳴があたりに響いた。

 

「強盗だぁあああ!! 誰か!!」

「捕まえれるものなら捕まえてみな!!!」

 次に男の声が響く、悲鳴の発信源付近から逃げ去るのは身体が泥水の敵(ヴィラン)。しかし、市民は動ずる様子もない。

 

「すぐ誰か来るのになぁ……」

「今朝の事件に便乗かぁ? ……まぁ、個性持て余してるやつなんていくらでもいるしな」

「キリねぇなー」

「キリならあるさ。何故って?」

 そんな会話をのほほんと交わす青年二人の背後に”突如”現れた2m超えの巨大影は静かに言い放った。

 

「あ、あなたは……」

 気づいた青年が、驚嘆する。同時に泥水の敵の顔があからさまに強張った。

 その男は誰もが認めるヒーローの中のヒーロー。トップオブトップ。

 

 

「私が来た!!」

 No1.ヒーロー、オールマイト

 

 

 水が冷たい。なんて、どうでもいいことを呟き。校舎横に設置された巨大な鯉の水槽に手をいれる。

 

『そんなにヒーローになり就きてーなら、効率がいい方法があるぜ。来世は個性が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!』

 先程の爆豪の言葉が頭から離れない。爆豪の眼光に気圧され、結局何も言い返すことができなかった。

 

「……。ばかやろー……」

 ぼろぼろになったノートが一冊、無機質なコンクリートでできた水槽に浮かんでいる。ノートに書かれた題名は『将来のためのヒーロー研究No.13』。

 学校帰りにネットニュースに取り上げられた今朝の事件をまとめようとカバンから取り出したのがいけなかったのだ。爆豪に見つかり、爆破されて捨てられた挙句上記の暴言を吐かれたのだ。

 

「でも、そうさ。諦める訳にはいかない。」

 思い返すのは、過去の思い出。母に催促し、パソコンを付けてもらい。一万回は見た古い動画。

 昔起きた大災害。その直後の、とあるヒーローのデビュー動画。10分も立たずに百人以上をすくったその男は”笑っていた”。

 

 ヒーローを目指すことと鳴った原点、No1。ヒーロー“オールマイト”

 

 彼のようになりたくて、日々個性が発言してゆく友達を眺めながら夢を語った日々。でも、現実は残酷だった。

 

 「諦めたほうが良いね」と、医師はなんてこと無いように言い放った。個性の発現がなかったことに不安を感じた母が連れて行った病院での出来事だ。医師が言うには、個性発現の有無に「小指の関節論」というものがあるらしい。

 不必要なものは無くなっていく、生物として当たり前にある“進化”。足の小指の関節は、不必要なものであるらしく関節が2つある人間は古く、一つしかない人間は新しい。つまり、簡潔に言うのであれば。

 

 

『お子さんには関節が2つある。この世代じゃ珍しい。何の個性も宿っていない型だよ。』

 

 

 どんなに困ってる人でも、笑顔で助ける“オールマイト”。自分は、”笑うことさえできない”無個性の人間。

 

『ねぇ、お母さん。オールマイトは、どんなに困ってる人でも笑顔で助けるんだ。超格好いいヒーローさ。……ねぇ、僕も、なれるかなあ』

 泣きながらも、母に尋ねた問に、母はただ、謝罪の言葉を並べるばかりだった。

 

 

「違うんだよ母さん、僕があの時言ってほしかったのは……」

 呟き、頬に流れる涙に気がついた。

 

『ただ助けるだけじゃない、救いを求める人に安心を与えるためにも私は笑って言うのです。「大丈夫。私が来た!!」ってね。……でもね、本当はそれだけじゃないんです。私が笑うのは、ヒーローの重圧。そして、うちに潜む恐怖から己を欺くためでもあるのです。』

 テレビ番組で、オールマイトが言った言葉だ。

 オールマイトほどの絶対的な力を『もってして何を恐れることがあるのかと、皆が思っただろう。でも、彼はたしかにそう言ったのだ。

 

「そうさ!!」

 そでで、頬につたる涙を拭う。

 

「あの時決めたじゃないか。周りの言うことなんて気にするな!! ぐいっと上見て突き進め!!」

 胸の前で硬く拳を握る。と、同時に少年の身体は突如現れた黒い影に飲み込まれた。

 




仕事で残業続き。
最近やっとタイムカードを切る良きタイミングの見極めと、「日付超えてないなんて、今日は早く帰れたなぁ」って思える境地まできました。
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