「ふぅ、ようやく終わりか」
「よぅ! ちょっと良いか?」
「ん?」
1時間目の授業を終えて一息ついていたゼロだったが、前から来た青年に声をかけられて顔を上げる。
その青年の顔を見てゼロはすぐに誰だかわかった
「おぉ、お前が織斑一夏か?」
「あぁ! そういうお前がもう一人の男性IS操縦者か?」
「おぅ、さっきも紹介したが諸星零だ。まぁ、男性操縦者は俺だけじゃないけどアイツ等は今は職員室か用務員室だからなぁ」
笑顔で声をかけて来た一夏にゼロも爽やかな笑顔で答える。
一夏は他にも男が居て嬉しいのか少し興奮したように話し始める。
「いや~もう朝から女性の視線しか感じなくて物凄く居心地悪くて胃に穴が開くかと思ってたよ」
「そんなに気にする事か?」
「いや、するだろ!?」
「そういう物か」
ゼロとしてはそういう経験があまり無いので良く分かっていないようだった。
そんな二人が会話していると袖を余らして目が眠そうに細められている姿の女子が近づいてきて話かけてきた。
周りの子は「出遅れた」だの「羨ましい」だのと呟いているがこののほほんとした女の子は気にしていないのか気が付いていないのかゼロと一夏に話しかける。
「シンシンにオリム~、お疲れ~」
「ん? シンシン?」
「お、オリム~?」
「うん、諸星零だからシンシンで~織斑一夏だからオリム~」
「お、おぉ? そ、それって俗にいうアダ名って奴か」
「アダ名なんてつけられた経験殆どないから、なんか嬉しいな」
「あ、そう言えば名前言っていなかったね~私は……」
「布仏本音、だろ?」
「わぁ! シンシン凄いね~どうして知っていたの?」
「何でって……さっき自己紹介してたじゃん」
「おぉ~そう言えばそうだった~」
「そうだったって……お前なぁ」
「でもでも~それでも覚えられているなんて嬉しいよ~」
「いや、それでも30人近かったのによく覚えているな」
「ふっ、なんか雰囲気が凄いほんわかしてて覚えやすかったからさ」
少し嬉しそうに笑ってゼロは布仏に聞く。
「それで? 布仏は……」
「本音で良いよ~そっちの方が仲が良さそうだし~」
「あ、それじゃあ俺はのほほんさんって呼ぶよ」
「おい、一夏。なんでそうなった!?」
「え? だってアダ名の方が仲良さそうで良くないか?」
「あはは~オリム~って凄いね~」
「ん? そうか?」
「あ~うん。俺もそう思うよ。……それじゃあ本音」
「な~に~?」
ゼロから名前で呼ばれて嬉しいのか笑顔でゼロを見る本音。
「次の授業の用意しないといけないから手伝ってくれないか?」
「ん~? 授業の準備って……ノートだけじゃないの?」
「と言うか、何か準備するものなんて有ったか?」
「あぁ、いや……実はな」
「すまない、少し良いか?」
そこに声をかけてくるもう一人の人物が来た。
全員が声のしたほうに振り返ると髪をポニーテイルにした目が鋭い女の子が立って居た。
ゼロは戦士としての目線でその女の子の視線と立ち方を観察した。
(……力は、有りそうだけどまだまだ未熟って感じか?)
「箒か?」
「あぁ、久し振りだな一夏。」
一夏が覚えていてくれたことが嬉しいのか少し頬を緩めるがすぐにキリッとした表情に戻ってゼロと本音に顔を向ける。
「すまない、少し一夏と二人きりで話したいことが有るんだが良いだろうか?」
「私は別に良いよ~」
「俺も別に構わん」
「あれ? 俺の拒否権は無いの?」
「良いからさっさと行ってこい」
戸惑う一夏の背中を押して送り出したゼロは送り出してから気が付いた。
次の授業の準備の手伝いが一人いなくなってしまった、と
「しまった、少し軽率だった」
「どうしたの~?」
「いや、次の授業の手伝……」
「ちょっとよろしくて?」
ゼロが説明をしようとした時、横から声をかけてくる人物がいた
声が聞こえたほうに顔を向けるとそこには金髪でふわふわとロールがかかった長いブロンドの髪、長いまつげに彩られた澄んだ碧眼を持った女子が立って居た。
しかし、ゼロはその目に有る敵意を敏感に感じ取っていた。
「……えっと、君は?」
「まぁ、私を知らない? この英国の代表候補生であるセシリア・オルコットを!?」
「あぁ、すまないな。生憎、IS関係の知識は全くって言い程に無いんだ」
「……信じられませんわ。こんな人がいるなんて」
「むっ、なんか失礼じゃない~?」
セシリアの発言に少しムッとした本音はセシリアに食って掛かる。
その様子は、自分が好きな人物をバカにされておこる女の子の様だった。
「何ですの貴方は? 今、私はこの男に用があるのですけど……」
「別に~? 初対面の人にそういう態度を取るのはいかがなものかな~って思っただけだけど~?」
「何ですって!?」
「だ~もう! 二人とも一旦落ち着けって!」
何やらとても険悪な雰囲気になりそうだったのを慌てて止めるゼロ。
本音はすんなりと引いたがセシリアは止めて来たゼロに食って掛かる
「何なんですの!?」
「いや、入学したばっかりなんだからそう喧嘩して友達無くすような事はしないほうが良いんじゃないか?」
「ふん! 誰が男と何て……」
キーンコーンカーンコーン
「っく、また来ますわ!」
「何だったんだ?」
「さぁ~?」
「って、ヤベェ!! 授業の準備出来てねぇ!!」
「え~次の授業だが担当教師は私でも山田先生でもない」
「え?」
千冬の宣言に教室中が騒がしくなる。
そんな中、1人の女子が手を挙げて質問する。
「あ、あの~織斑先生? その担当教師って……」
「あぁ、それはな」
「俺だぜ!!」
その生徒の疑問に答えるようにゼロが席から立ち、そのまま教壇に向かう。
「え? 零君が?」
「自己紹介の時にはそんなの言っていなかったよね?」
「何の授業するんだろう……」
「あ~静かにしろ」
騒がしくなる教室を静かにさせる千冬。
それを受けて、ざわつきが無くなるのを見計らって千冬はゼロに視線で指示を出す。
「よし! それじゃあ、今からやる授業は……ISの本来の使用方法だ」
ゼロの真剣な表情は見た者を魅了するようなものだった。
そんなゼロの横にはレオとアストラも立っていた。
恐らく、授業のサポートの為であろう。
「ISの本来の使用方法?」
「そうだ。現在で使われているISは本来の用途では無い事はみんなも知っていると思う」
「え? そうなのか?」
「おい、一夏。お前は後で勉強漬けな」
「なんでだ!?」
「さて、そんな一夏は放っておいて授業をしよう」
困惑した一夏を放ってゼロは手元の機械を操作して黒板に映像を移す。
その映像は……宇宙空間だった。
「さて、みんなも知っているようにISとはもともと宇宙での行動を目的に作られたマルチフォーム・スーツだ」
またゼロが手持ちの機械を操作すると今度はISの画像が出てくる。
それを一夏をはじめ数人は真剣に聞いている。
「……って感じだ。まぁ、これがISの本来の使用方法って事だ」
「零君。それは分かったけど、これ何の授業?」
手を挙げて聞いてきたのは眉をひそめた女生徒だった。
「あぁ、悪いな。この授業は……宇宙学って奴だ」
「宇宙学?」
「そう、これからISが本来の宇宙を飛ぶための翼としての使用方法に戻った時の為の勉強さ」
「なぁ、零。それって宇宙がどういう物かって言う感じの授業か?」
「そうだな。それと……他の星に住む生命体についてとかかな?」
ゼロのその発言にその場の全員が目が点になった。
他の星に住む生命体? なんだそれは?
そんな感じの疑問が顔に出ていたのを察知したのかゼロが口を開く。
「あぁ、みんなは知らないのか。宇宙人はいるぞ?」
ゼロの発言を受けて数名が噴き出す。
そしてそれに釣られたのか殆どの人が笑い出した。
「突然何言いだしてるの?」
「馬鹿馬鹿しい」
「こんな奴から一体何を学べって言うの?」
そういう発言をするのは今の世の風潮である女尊男卑に当てられた生徒達だ。
それ以外の生徒は少し不快そうにその生徒達を見ていた。
しかし、ゼロは自分の発言を聞いて笑っている生徒を見ても不快な気持ちにはなっていなかった。
「まぁ、そういう風になるだろうな」
「なぁ、零。そんな風に言うんだったら証拠は有るよな?」
一夏は手を挙げて質問する。
ゼロが一夏の目を見てみるとその目の中には少年のような輝きが映っていた。
それを見てゼロは手持ちの機械を操作してある画像を映し出す。
「あぁ、有るぞ。これを見てくれ」
映し出された画像は……赤と銀の巨人の物だった。