そう、暇だったのだ
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オルダムの東のはずれにある田舎ジスト
子どもの頃俺はそこで暮らしていた
木々や山の多い自然豊かな小さな村で人口も多くなく、大人や年寄が多かったが年の近い子どもも少しはいたためそれなりに楽しく過ごせていたと思う
大人たちに「この村のいいところってどんなところ?」と聞いてみても「自然がいっぱいでとてもいいところだよ」と返ってくるくらい何もない
だが1つだけどの大人たちも口を揃えて言うことがあった
「いいかい?山のふもとにある祠には絶対に近づいちゃいけないよ。あそこには大昔にいた悪い怪物が眠っているからね。」
小さいころはこの話を信じ怖がっていたが、よく説教の時に引き合いに出されるものだから時が経つにつれ次第に「どうせ嘘なんだろうな」という認識に変わっていった
あの時までは……
俺が8歳の冬の晴れた日のことだ
まだまだ「仕事は遊ぶこと」であったため、その日も他の子供たちと一緒に遊ぶ予定であり集合場所である村の広場にいつものように向かっていた
同い年の女の子リアンをはじめ、2つ年上のみんなの兄的存在トニーと1つ下の弟コニー、そして最近一緒に遊ぶようになった5才の女の子ナナがいつもの仲間たちである
その日はトニーの「今日は祠に行ってみようぜ!」という案からひと悶着ありながらも「少し離れた場所からただみるだけ」に落ち着き、大人たちに見つからないように祠に向かうことになった
山のふもとに近づくにつれ厚着では少し汗をかくくらいだった天気が崩れ始め、雪が降り始めた頃にはナナが「もう帰ろう」と泣きだしそうな表情であったことを覚えている
ふもととはいえ木々に囲まれた山である
まわりにはそう高さはないとはいえ崖もあり悪天候で暗くなれば子供が恐怖するには十分だ
残念そうであったがトニーも折れ、引き返すことになったときである
リアンが雪に足を取られ、隣にいた俺は助けようとするも雪の上では踏ん張りがきかずに一緒に滑り落ちてしまう
上から視認できる程度の高さではあったが子どもの自分たちに登るのは難しい
それでも登ろうと試してはみたがリアンは足をくじいたらしく諦めるしかなかった
トニーたちに「村から助けを呼んでほしい」と大声で叫んだのを覚えている
トニーたちが村に引き返して間もなく天候はさらに悪化し、吹雪をしのぐためにそう遠くない祠のある洞窟へリアンを背負い向かう
初めて祠を目の当たりにしたが聞いていた以上に不気味であった
小さな洞窟の中で何かわからない札や鎖のような物で封じ込められるかのように黒い靄が存在する
――――来たか
そう聞こえたような気がした……
後ろを振り返ってみれば不安そうにしているリアンがいるだけで声に気付いた気配もない
急に振り向いた俺につられ彼女も何かあるのかと思い後ろを見て呟く
「なに......あれ......?」
何のことかわからないままリアンの視線の先、村の方角を見ると赤い光とともに煙が見えた
洞窟を出てもう一度確認する
雪はまだ降っているものの風は弱まっていたおかげではっきりと見えた
村が燃えている
何が起きたのかわからない
傍で泣くリアンに駆け寄ろうとしたとき嫌な風とともに2つの影が降りてきた
それは異形だった
話に聞いたことはあるものの、村を出たことがない自分には信じることができなかった存在
魔物
村の大人たちよりも一回りも大きく岩のように堅そうな深緑色の体、鋭い爪と牙、コウモリのような翼
子どもでも簡単に想像できた
コイツ等が村を襲ったのだ、と
逃げるぞ、とリアンの手を引き走り出そうとした瞬間痛みとともに景色が回る
俺は洞窟、祠のそばまで蹴り飛ばされ、リアンは首を握られ持ち上げられていた
痛みと恐怖で震えが止まらない
彼女を助けたいのに体は動かない
動いているのは魔物と自分の頬をつたう涙だけ
抵抗するリアンも気を失ったのか動かなくなり、もう一体の魔物が、死が近づいてくる
すぐに殺さないのは遊んでいるつもりなのだろう
鋭い爪が眼前に迫ったとき、再びあの声が聞こえた
――――……い……くを……
――――……えば……から……てやる
頭に直接響いてくるような低い声
何を言っているのか完全には理解できなかったがその時の俺には不気味ながらもとても魅力的な提案のように感じられた
返答は決まっている
最悪な結果になろうとも、今よりはずっとマシだ
震えながらも声を絞り出す
「よこせ……!」
祠から黒い風が吹き荒れる
体の芯から凍りつくような冷たさ、痛みとともに体の中に流れ込む
風が止むと自身の左腕が意思とは関係なく前に突き出され口を開く
自分の声かもわからない音で呟く
「久しぶりの馳走だ……」
そこから俺の意識はなく、目覚めたときは巨大な獣に襲われたのではないかと思うほどに荒れた村で強面の男性に介抱されていた
今思い出しても男の膝枕は忘れ去りたい記憶である
駄文
すべては私が悪い