ギルドや騎士団には功績や戦闘能力からランクが存在する。
E~Sまでの6段階があり、Eランクはぶっちゃけギルドに所属さえできれば認定される。
ランクが高くなればそれに応じた危険度や報酬の依頼、なかなか手に入らないような情報も得ることができる。
昇格の方法として主に昇格戦と呼ばれる試験をクリアすること、もしくは重大な依頼を達成すると戦闘能力がなくともお偉いさんから任命されるという2つ。
後者は戦えなくとも高いランクに就くこともあるので一部の人間からは 「名誉○ランク」 と呼ばれる。
主に低ランクの妬みではあるが。
そして、しぶしぶと不満を口には出さずに会計を払うジェントルマンことわたくしロウドバルト・ザナルカスはCランクである。
Cランクである。
グレイスはBランクなので俺よりも収入はあるはずなのだが大体俺が払わされる。
Aランクも近い、と言われているのにだ。
理不尽である。
そもそも俺は昇格戦に失敗してBランクに上がれなかったわけではない。
断じて違う。
子どもの頃は
「俺もSランクになる!」
なんて張り切っていたのだが時が経つにつれ
「あれ? 自分の力だけでも制御できなきゃヤバいのにわざわざランク上げて危険に突っ込んでいくことなくね?」
となったのである。
特に生活にも困ってないしな。
今以上のランクが必要になったら昇格戦受けよう、くらいの気持ちである。
だらしないのではない。
要領がいいと言われたい。
「遅い。」
店を出たらこれである。
「早くラビに会いたいのはわかるがそう焦るなよ。」
「ち、違うし! あんたと一緒にしないでくれる!?」
他愛ない会話をしながらロナの街を後にする。
街の名前を覚えたりするのが苦手で入口の看板を見て今思い出したのは内緒。
ロナから俺たちのギルドがある街、デイラには徒歩で約3時間。
馬車に乗る予定ではあったが利用者が多くほぼ満員だったのでお年寄りに譲ってあげたのだ。
褒めていただきたい。
と、いうこともあったので街道歩いているのだが獣が出てきて困る。
肉食の大きな犬、くらいのものである。
よだれが汚い。
群れに襲われると護衛を雇っていない商人の天敵である。
「邪魔だから追い払いなよ。 ほら、アレだよ、修行の一環だから。」
とってつけたような言い方である。
「はいはい……。」
俺は心が広いので従う。
決して逆らうと怖い、なんてことはないから。
俺の主な武器は両腕の籠手に仕込まれたワイヤー付きのナイフ 「影縫い」
ナイフによる近接戦闘から射出による中距離への牽制で戦う。
そしてこの「影縫い」が特殊な武器であり、なんと影にナイフをさした後引き抜くかを選択できる。
地味と言わないでいただきたい。
実際にはまだ使いこなせていないだけで隠された力はある
と、思われる。
今は刺さったナイフの元にワイヤーを引き戻す力を利用した高速移動、立体的な動きで翻弄しながら戦うのがほとんどだ。
対峙している獣は本来臆病らしく群れていなければ難しい相手ではない。
木々影や獣の影にナイフを射出し、接近、スイングしながら追い払う。
特に誰かが襲われていたわけではないので無闇に命を奪ったりはしない。
優しい俺
縦横無尽に飛び回る俺
「なんか虫みたいで鬱陶しい……。」
無傷の俺にグレイスの余計なひと言が突き刺さった。
そして目的のデイラが見えてきた時に重大なミスに気付く。
ショックなんて受けている場合ではない
「おい! グレイス!」
「……何よ?」
「大変だ! ラビへの献上品(ニンジン)買い忘れてるぞ!」
「……!? 今すぐ引き返すわよ! あんたの虫みたいな動きの出番よ!」
こうして俺たちは全速力でロナに引き返し至高のニンジンを買い求め、デイラには夜中に到着した。
ラビは一足先に寝たらしい。
「神など俺は信じない……!」
「今日は朝まで飲み明かすわよ!」
俺たちは絶望の淵へと落とされた。
まるでごみのようだ