龍磨が来てから三日が経とうとしていた。
この三日間は色々と買い揃えたり、龍磨の魔法を幾つか見せて貰ったりで、目新しい事は何も起こっていない。
龍磨の魔法はとても興味深かった。
まず、龍磨の魔法は一切精霊というものを使っていない。
本人曰く、指輪と魔力だけで事足りるらしい。
そして、指輪の魔法は変身する姿によって効力が変わるらしい。
例えば、龍磨と出会った時に使っていたキックストライクの魔法はあの時は赤い姿で使ったから火を纏った。
他の姿ではまた別の属性が付加されるらしい。
こちらの魔法使いはそれぞれ得意な属性というものがある。
例えば私の得意とする属性は氷だ。
得意属性以外の魔法は使えなくはないが、習得するのが困難になる。
だが、龍磨は違う。
龍磨には得意属性がない。
いや、得意属性がないというのは不適切だろう。
龍磨は四つの属性を均等に使いこなす事が出来るのだ。
戦況に応じて、属性を変える事が出来るのは、基本的に一つの属性しか使わない魔法使いには十分脅威になりえる事だ。
加えて龍磨の武術はタカミチとも比べても劣らない程卓越していた。
兎に角、龍磨の武術は軌道が読みづらい上にこちらの攻撃が面白い様に受け流されるのだ。
あれは厄介な事この上ない。
龍磨にパクティオーカードを持たせたらどうなるだろうと思ったが、すぐに却下した。
そんな物が無くとも奴は十分に強い。
むしろ、その所為で龍磨の戦法を殺してしまう可能性もある。
大体、遠中近全ての戦法が使える龍磨に新たな武装などいらないだろう。
「エヴァ、次の魔法を試すよ。たぶん発動しないけど」
龍磨に声を掛けられハッと我に変える。
少々、考え事をしすぎたようだ。
それにしても多分発動しないとは如何いう事だ?
「ああ、やってみろ」
「了解っと」
赤い姿のウィザードになっている龍磨はベルトを操作して、手をベルトに当てた。
<ドラゴライズ!…プリーズ>
「ッ!?マズイ!!」
龍磨がいきなり慌て出したと思ったら魔法陣への魔力を断ち切っていた。
何だ?一体如何したというのだ?
「ハァ…ハァ…あービックリした…」
「おい、いきなりどうした?魔法を無理矢理中断なんぞして」
私がそう言うと、龍磨はこちらに向き、頭を掻きながら少し言いづらそうに答えた。
「あー…うん…さっきの魔法…ドラゴライズって言うんだけど…あの魔法ドラゴンを召喚する魔法なんだ」
「ドラゴンだと!?お前そんな物まで使役してるのか!?」
ドラゴンを使役できる物などそうはいない。
余程の実力とドラゴンが忠誠を誓うほどの心がなければ無理だ。
最も、こいつの世界のドラゴンの在り方はしらんが
「使役してるというか…飼ってるというか。切っても切れない関係というか…まあ、それはいいや。俺が驚いたのはこの魔法、一定の条件下にないと発動しない魔法なんだ。今の状況なら発動しないはずなんだけど…どうなってるんだ?」
龍磨は心底不思議そうにその手についた指輪を見つめている。
だが、解せんな。
「なら、何故そんなに慌てる必要がある?そのまま召喚させていれば良かったろうに」
「あぁ…ドラゴンは結構じゃじゃ馬でね。俺もマシンウィンガーがないと完全にコントロール出来ないんだ。さすがにウィンガーでコントロールする前に辺りをメチャクチャにされたくないだろ?」
「マシンウィンガー?」
「俺のバイク」
「成る程」
何だ、奴も簡単にコントロール出来んのか。
だが、あれほどの実力を持っていて拘束具がないと制御出来ないとは…そのドラゴン、一体何れほどの力があるというのだ?
「マスター、そろそろ時間です」
そんな話をしていると茶々丸が側に来た。
…おっと、もう一日たっていたか。
「龍磨、時間だ。出るぞ。お前もジジイのところに行かなきゃだろう」
「もうそんな時間か…よし出よう。俺はこのまま学園長の所にいくけど、二人は如何する?」
「学校に行くに決まってるだろう。全くもって忌々しい」
「…そういえばそうだったな…まあ、頑張れ」
龍磨が私にサムズアップを向けている。
その目は哀れんだ眼差しで私を見ている。
…何か段々腹がたって来た。
「貴様…その哀れんだ目を止めろ!私の魔法の実験台にするぞ!」
「やべっ!じゃ、夜までには戻るから!アディオス!」
そう言って逃げるように別荘から消えて行った。
今から追っても逃げられてるだろう。
「くっ!帰ったら覚えてろ…」
「オゥオゥ、ソウ言イナガラモ、嬉シソウジャネエカゴシュジン。ソンナニアイツガ気ニイッタノカ?」
「あぁマスターがあんなに楽しそうに…」
「うっさい!そこのボケ従者ども!まずは貴様らからだ!」
「図星ジャネェカ。ケケケ」
ずっと黙っていたと思ってたらこんな事を思っていたのか。
このボケどもは!
まあ、確かに奴の事を気に入ったのは確かだ。
一体、奴がこの麻帆良でどのように振る舞うのか見ものだ。
さて、自称正義の魔法使いは奴の目にどう写るだろうな?
私はそんな事を考えながら茶々丸のネジを巻いていた。
取り敢えずはこのボケどものお仕置きからだな。
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「ふう…」
この数日は実に色々な事があった。
龍磨君がきて、彼に関する事がようやく方がついた所じゃ。
正確には書類上での話なのじゃが…
一番の問題はここの魔法先生や魔法生徒が彼の滞在に納得するかどうかじゃの。
異世界から来たなどと言うわけにもいかんから、ワシが呼び寄せた人知れず活動して来た魔法使いという事にしておるが…果たしてどうなるかの。
…それにしても龍磨君、随分遅いのう。
コンコン
おや、来たようじゃの
「入りなさい」
「よく来てくれたの龍磨君…どうしたのじゃ」
ドアを開けて、入ってきた龍磨君は何やら疲れた顔をしていた。
一体何が起こったのやら…
「いや、途中で中華少女に『お兄さん強いアルな!?私と勝負するアル!』って勝負しかけられて逃げて来た所で…ああ、疲れた…」
「ふぉふぉふぉ…」
聞いた覚えのある特徴に乾いた笑いしか出てこなかった。
十中八九、古菲君じゃろうな。
「彼女は強い人に目が無いからのう…今度相手をしてやるといい」
「…機会があったらね」
げんなりした表情を見る限りあまり戦いたくはなさそうじゃな…
まあ、いい本題にはいらねばなるまい。
「さて、龍磨君。ここでの生活はもう慣れたかのう?」
「ああ、エヴァもよくしてくれてるし、ここが如何いう所なのかは大体分かった。何処に何があるかとかはまだ分からないけど…」
「それは何よりじゃ」
ふむ、エヴァンジェリンも龍磨君を気にいっておったし、その辺は心配なさそうじゃのう。
「所で…深夜の警備とやらはいつやればいいんだ?」
龍磨君の方から切り出してきたか、熱心なようで何よりじゃ。
「そうじゃな。今夜にでも行って貰おうかのう。ただその時少々面倒事に付き合わせてしまうやもしれん」
「面倒事?」
「そうじゃ、ここの魔法先生や魔法生徒は君の実力を分かっておらん。ワシやタカミチ君も全部を知ってる訳じゃないしの。そこでじゃ、龍磨君の実力を模擬戦という形で示してもらう。取り敢えずは実力を他の者達に信用してもらわねばならんからのう。他の部分の信用は龍磨君次第じゃ」
これは魔法先生や魔法生徒達に実力を示すと共に龍磨君の実力が何処までの物かをみるものでもある。
エヴァと共にいる龍磨君が信用を勝ち取るのは難しいじゃろうが…彼の人柄ならきっと大丈夫じゃろう。
一部の正義に凝り固まった先生や生徒達はどうアクションを起こすか、分からん。
これは麻帆良に限った話ではなく、魔法使いによくある問題じゃが、そこはワシがどうにか抑えればいい。
「何だ、そんな事か。OK、了解した。それと、一つ頼みがあるんだ」
ほ?
「頼み?何かの?」
「昼の仕事が欲しい。いくら夜に警備するって言っても、昼に何もしないのは俺の気が収まらない。それに見た目学生の俺がこの中学校…それも女子部を彷徨いてたら怪しいじゃないか。だから、肩書きがほしいと思ってね」
ほほ、真面目じゃのう。
別に気にする事も無いのじゃが、気になるというのなら仕方あるまい。
龍磨君に調度いいのがあるしの。
「分かった。では、広域指導員というのはどうかの?」
「広域指導員?俺は教育なんか出来ないぞ?」
「ほほ、知っての通り、この街は大きな街での、彼方此方で様々な問題が起こるんじゃ。君にはその問題を解決する立場になって欲しいのじゃ。問題を起こすのは血気盛んな者が多いから多少武力で鎮圧しても構わんぞ?」
今、広域指導員にはタカミチ君がやってくれてるのじゃが、出張が多い所為で中々出来ん。
魔法先生は他にもいるが先生としての職業が忙しい所為で広域指導員まで手がまわらない。
いや、龍磨君がやってくれるなら助かるのじゃが、引き受けてくれるかのう…
「分かった、それでいい。広域指導員…引き受けよう」
良かったわい。
なら色々用意しなければのう。
「ほほ、助かるわい。身分証とか色々用意するから明日からやってくれるかのう?」
「ああ、分かった」
さて、話はこれで終わりかのう。
「では、龍磨君。今夜宜しく頼むぞ」
「任せておいてくれ」
龍磨君は不敵な笑みを浮かべて自信に満ちた返答をした。
さて、夜が楽しみじゃのう
遅いわりに、特に進展もありません。
今回でドラゴライズがアンダーワールド以外でも使えることと、龍磨が広域指導員になった事ぐらいですね。
ドラゴライズをアンダーワールド以外でも使えるようにしたのは、こうでもしないとドラゴライズの出番が皆無になってしまうので使えるようにしました。
ドラゴンにも活躍の場を与えたい!
龍磨の昼の職業は宝石職人の案もありましたが、学園で宝石やその装飾など売れるはずも無く断念。いずれ龍磨の宝石加工の腕前は披露できればと思います
次回は数話ぶりに戦います。