魔法の世界と指輪の魔法使い(仮)   作:魔戒

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高畑先生VS龍磨です。
上手く戦闘描写が出来ていればいいのですが…


デスメガネVS指輪の魔法使い

私、桜咲刹那は世界樹のある広場にいる。

いや、私だけではない。

殆どの魔法先生や魔法生徒が集まっていた。

普段なら警備の担当する所にそれぞれ集まり、侵入者と戦うのだが、今日は違った。

何でも学園長から話があるらしい。

だが、それにしても…

 

「中々、話が始まらないな」

 

「ああ」

 

私のルームメイトであり、同僚である龍宮真名がそう言い放った。

当の学園長は「遅いのう…」としきりに呟いている。

一体、何が始まるというのだ?

そう考えている内に聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 

「なあ…ムグ…本当にソードガン使って…アム…大丈夫なのか?」

 

「しつこいぞ、気や魔力で体は強化されているから大丈夫だ。というか、貴様いつまで食っている」

 

「いやあ、やっぱこれ食わないと落ち着かなくて」

 

「龍磨さん、後で作ってあげますので今は…」

 

「分かってないなあ、たい焼きは買い食いしてこそだよ。あ、もう無くなっちゃった…」

 

呑気な会話が聞こえてきて、少しイラッときた。

しかし、エヴァンジェリンさんや茶々丸さんは兎も角、あの男の人は一体誰だろう。

紙袋をひっくり返して項垂れている彼は今まで見た事がない。

 

「おお、やっと来たかの龍磨君」

 

と学園長が声を上げた。

どうやら話というのは彼の事らしい。

学園長の下へ赴き、一言、二言交わした龍磨と呼ばれた人は私たちに向き直った。

 

「ごほん…皆、彼は紅輪龍磨君じゃ。遠く辺境の地で隠れ住んでいたのをワシが呼び寄せた。我々の物とは全く違う独自の魔法を使うが、実力は本物じゃ。此れからは此処の警備を皆と共にしてもらう。宜しく頼むぞ」

 

「紅輪龍磨です。宜しく」

 

成る程、新しい警備の人だったのか。

最近、少々人手が足りないと聞いていたからそれだろう。

しかし、彼は本当に強いのだろうか?

 

「学園長、どれほど彼が強いのか分からなければ、我々もどのようにしていいのか分かりません」

 

私の考えを葛葉刀子先生が代弁してくれた。

その通りだ。

ある程度実力が分からなければ、どこに配属できるのか決めようがない。

その答えを見通してたのか、学園長が笑いながら答えた。

 

「ほほほ、そう言うと思ってのう、彼の実力を見るための模擬戦をここで行う。タカミチ君お願い出来るかのう」

 

「了解しました。学園長」

 

高畑先生が出るのか…それほどの相手という事なのか?

周りも高畑先生が戦うという事でざわついている。

 

「なんだ、高畑さんが相手か」

 

「僕も君とは戦ってみたいと思ってたからね、君の実力みせてもらうよ」

 

「はは、こりゃ相当キツイ事になりそうだ。でも、指輪の魔法使いとして負けるつもりはないよ」

 

<ドライバーオン、プリーズ>

 

紅輪さんが腰のベルトに手を当てるとそのベルトが立体になり、手が型どられた大きなベルトがその姿を現した。

一体、何が始まるんだ?

 

<シャバドゥビタッチヘンシーン、シャバドゥビタッチヘンシーン…>

 

…なんだあれは。騒がしい何て物じゃない。

とてつも無くうるさい。

 

「これは…何とも愉快なベルトだな」

 

隣で龍宮が苦笑いしながら言った。

それはそうだ、自分じゃわからないが私も苦笑いしてるだろう。

あんなものを聞かされたら誰だってそうなる。

 

「変身」

 

<フレイム!プリーズ…ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>

 

燃え上がる様な魔法陣が紅輪さんの体を通り抜けたかと思うと、そこに紅輪さんの姿は無かった。

宝石の様に赤く輝いた仮面と装甲を纏った一人の戦士がそこにいた。

 

「さあ、ショータイムだ」

 

腰から伸びたマントを翻してそう言い放った。

あれが彼独自の魔法という事だろうか。

 

「相変わらず、凄い騒がしいベルトだね」

 

「仕様だからね。俺にはどうしようもないさ」

 

仕様なのか、何とも迷惑な。

離れた所でエヴァンジェリンさんが「何度聞いてもあれは慣れん」と言っている。

確かに、慣れるのは難しいだろう。

…慣れたくもないが。

 

「ほほ、それじゃ始めなさい」

 

学園長の言葉を皮切りに両者に緊張が走った。

二人とも相手の様子を伺ってるのか動く気配がない。

拳法の様な構えを取る紅輪さんと、ポケットに手を入れ、一見構えてる様に見えない高畑先生。

先に動いたのは紅輪さんだった。

地面を勢いよく蹴り、凄まじい速さで高畑先生に迫る。

だが、高畑先生が大人しくやられるわけは無い。

高畑先生の見えない拳圧が紅輪さんに迫った。

 

「!?」

 

直前で気付いたのかその体を回転させてその攻撃を受け流した。

それにしても凄い動きだ。

 

「…今のは」

 

「まさか、初見で避けられるとは思ってなかったよ」

 

「こう見えても感覚は鋭くてね」

 

そう言って再び高畑先生に向かっていった。

高畑先生も再び拳を放ち始めた。

紅輪さんは時には、空中で身を捩り、時には大きく前転したりと、アクロバティックな動きで距離を詰めようとするが、高畑先生も動いている為中々距離が詰められない。

しかし、あれ程動けば三半規管がおかしくなるだろうに紅輪さんにはその様子が微塵も感じられない。

一体どんな鍛え方をしてるのだろうか。

 

「高畑先生も攻めづらそうだな」

 

「どういう事だ?龍宮」

 

「あれだけ的に動かれたら、狙いをつけにくい。その上急所が軒並み守られている。あれは私も手こずりそうな相手だ」

 

成る程、拳で狙える急所は頭部や腹部だ。

しかし、頭部は仮面で、腹部は装甲で守られている。

他の所にも急所はあるだろうが、装甲が無い部分にもある程度の防御機能があるだろう。

たしかに、紅輪さんは拳で戦う人にはやり辛いかもしれない。

 

<コネクト、プリーズ>

 

攻め切れない事に業を煮やしたのか、紅輪さんがベルトに右手を当てて魔法陣を出した。

やはり、ああやって手を当てる事で魔法が発動するらしい。

その魔法陣に手を入れると、そこから銀色に輝く銃が現れた。

そして、どういうわけかあらぬ方向に打ち出した。

 

「どこに…!?」

 

高畑先生が疑問の声を上げるがそれは直ぐに解消された。

何と銃弾が高畑先生に向かって角度を変えて向かっていったのだ。

どうやら銃弾の軌道をコントロールできるらしい。

何とデタラメな。

 

<ウォーター!…プリーズ、スィー、スィー、スィー>

 

高畑先生が銃弾を全て弾いた頃には紅輪さんの姿が燃える様な赤から冷たい青に変わっていた。

それだけで無く何処と無く魔力が強まった様に感じる。

 

「はぁ!」

 

今まで握っていた銃を剣に変えて、高畑先生に振り下ろした。

それにしてもあの武器剣にもなるのか、初見殺しの何者でもないな。

手元で剣をクルクルと回転させて斬りつける攻撃はさしもの高畑先生も軌道が読みづらいらしい。

私だってあんな剣は読めない。

どうやら紅輪さんの戦い方は相手に読めない様な動きをする事らしい。

それも何パターンも用意されていて、完全に見切る事は難しいだろう、

 

「くっ!」

 

漸く高畑先生の攻撃が当たり、多少の衝撃があったのか、苦悶の声を上げた。

 

「だったら、これだ!」

 

<リキッド、プリーズ>

 

紅輪さんが腰から下がっていた指輪と手の指輪を交換して、新たな魔法を発動させた。

成る程、手を当てるだけかと思っていたが、指輪が媒体になっていたのか。

一体どんな魔法が?

 

「何かするみたいだけどその前に押し切らせて貰うよ!」

 

高畑先生は先程までよりより多く素早い攻撃を繰り出した。

紅輪さんはなす術もなくその攻撃を身に受けた…かに見えた。

 

「な…!?」

 

その場にいた誰もが驚きの声を上げる。

何と高畑先生の攻撃が紅輪さんの身体をすり抜けたのだ。

そして、紅輪さんの身体は水の様に揺らめいていた。

 

「リキッド…成る程、液体か」

 

龍宮がそう呟いた。

まさか、本当に身体を液体にしたというのか?

しかし、あの状態では高畑先生は全く手が出せない。

水の状態になってるなら打撃は全く効かないはずだ。

すると、紅輪さんはまるで波の様に高畑先生に襲いかかった。

高畑先生に水が絡みつき、紅輪さんが元に戻った時には高畑先生は四の字に固められていた。

 

「ふふっ…」

 

「くっ!」

 

腕を完全に固められ、拳を繰り出せない高畑先生になす術は無かった。

 

「それじゃ高畑さんにはもう少し大人しくしてて貰おうか!」

 

<バインド、プリーズ>

 

紅輪さんが新たな魔法を発動させると、青い魔法陣から鎖が伸びて高畑先生の体を縛り付けた。

 

「よっと」

 

紅輪さんは高畑先生から飛び降りて、また新たな指輪を取り出した。

高畑先生はそれを見て、何とか鎖を外そうとするも、変な体制で縛られた所為で中々外れない。

それにしても強い。

あの高畑先生が押されている。

紅輪さんの魔法が多種多様な所為もあるが、紅輪さん自身の身体能力もかなり高い。

一体どれほどの修練を積んだのだろうか。

私もあれ程強ければ…

 

<ランド…プリーズ、ドッ!ドッ!ドッ!ドッドッドッ!ドッドドッドン!>

 

紅輪さんの姿が青から黄色に変わった。

魔法陣と共に出ていた土塊を見るにこんどは土の属性だろう。

 

<ドリル、プリーズ>

 

「はっ!」

 

高畑先生が鎖を外した頃には、紅輪さんは魔法を発動させ、身体をドリルの様に回転しながら地面に潜っていった。

しかし、潜った跡が無いとか何の冗談だろうか。

普通、地面に潜れば穴ぐらい空くだろうにその跡が全くないのだ。

 

「全く、彼の魔法は出鱈目だな」

 

「ああ…しかし、何でエヴァンジェリンさんが嬉しそうにしてるのだろうか」

 

そう、ふと目に入ったエヴァンジェリンさんがニヤついているのだ。

高畑先生が押されてるのがそんなに嬉しいのだろうか。

耳を凝らすと、からかいのネタが出来たとか何とか言っている気がする。

ん?

 

「何か聞こえないか?」

 

「ん?確かに微かだが聞こえるな」

 

未だ土の下から出てこない紅輪さんを警戒する高畑先生を尻目にその何かに耳を傾けた。

 

<……キャモナシューティング、シェイクハンズ、キャモナシューティング、シェイクハンズ…ランド、シューティングストライク!ドッ、ドッ、ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!>

 

どうやら土の中で紅輪さんが何かしてるようだ。

でも、何で段々音が大きくなって…

 

「うわっ!」

 

高畑先生も気付いた様だが時既に遅し、小さな地響きを立てながら、紅輪さんがその姿を現した。

手にはあの銃を携えながら。

それにしても、つい地震に驚いて声を出してしまった…少し恥ずかしい。

 

「ふっ!」

 

紅輪さんの銃から無数の土塊が高畑先生目掛けて打ち出された。

かなり数が多く、高畑先生も全力で土塊を撃ち落とす。

 

「なっ!」

 

全ての土塊を撃ち落とした高畑先生が前を見ると腹部に銃身を当てた紅輪さんがいた。

成る程、土塊はカモフラージュでこっちが狙いか。

この勝負は高畑先生の負けだ。

 

「そこまでじゃ!」

 

学園長の言葉と共に辺りにどよめきが走る。

当然だ、あの高畑先生が負けたのだ自分だって未だに信じられない。

 

「いやあ、流石だね。まさか負けるとは思わなかったよ」

 

「よく言うぜ、全力じゃ無かった癖に」

 

何と、あれで全力じゃ無かったのか。

 

「はは、ばれてたか。でも、所々全力は出してたさ。今日は龍磨君の魔法に翻弄されちゃったけど、次はそうはいかないよ」

 

「望む所だ」

 

二人はそう言って握手を交わした。

これから彼は夜の警備をする事になるのか。

きっと、同じ担当になる事があるかもしれないが、私には関係無い。

私はお嬢様を守れればいいのだから。

 

「ああ、言い忘れてたよ」

 

「?」

 

「ようこそ、麻帆良学園へ」

 

そんな会話があったのを尻目に私はそんな事を考えていた。




ちょっとウィザードを強くし過ぎた感はあります。
龍磨は地の面でもそれなりに強いので、その補正で考えていただければと思います。
まあ、リキッドを使われたら高畑先生じゃ対処は出来ませんね。
流石リキッド汚い。
この分だと原作開始はかなり先になりそうだな…

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