逃げ水の鎮守府-艦隊りこれくしょん- 作:坂下郁@リハビリ中
※戦闘シーンでは艦娘同士が戦い、原作未登場の兵装が一部出ます。そういうのはちょっと、という方はブラウザバック推奨です。
「技本艦隊、こちらを捕捉した模様。機動部隊を下げて水雷戦隊が前に出ようとしてますっ。陣形変更が終わるまでが勝負ですっ! 翔鶴さんと筑摩さんはすでに艦載機発艦済み確認、翔鶴さんは現在位置で待機お願いします。龍驤さん、もう少し彗星さん達を散開させてください、鹿島がナビゲートします。打撃部隊は必ず最低でも二対一で相手に当ってください…みなさん、ご武運をっ!」
-結局俺はウェダ時代と何も変わっていないんだろうな、上の都合で艦娘を差し出すなんざ真っ平御免だ。だけどこの戦いは、俺の力だけではどうにもできない。こんなことに巻き込んで本当に済まないと思っている。それでも、俺にはお前が必要なんだ-
出撃直前の慌ただしい時間の中、南洲と交わした短い会話。鹿島にはそれで十分だった。この人の望む事を叶える、そのためなら何でもできる―――。
現用電子兵装でブーストした鹿島の電探だが、この距離までくると探知距離はもうどうでもよくなる。むしろその探知精度により、敵艦隊と敵航空隊の細かな動きまで漏らさず捕捉し、前線からのフィードバックと合わせ射撃補正用データのリアルタイム伝達と航空隊のナビゲートが重要な役割になる。単なる目標探知ではなく、
その肩にそっと手を置く南洲だが、鹿島の反応はない。普段なら手を握り返したり微笑み返すなどのリアクションがあるが、オペレーションに必死でそんな余裕はないのだろう。南洲もまた緊張した表情で壁掛け式のレーダースクリーンを無言で見つめている。
緒戦の勝負を決める五分間。この僅かな時間の攻防を経て、技本艦隊と南洲隊は乱戦へと突入する。
◇
未だ明けぬ漆黒の海と空だが、それでも水平線の色が僅かに変わり始める。夜の終わりと朝の始まりが交わるこの時間を南洲は狙い、その静寂は、対空電探からの無粋な警戒音と騒然と行動を始めた技本艦隊の艦娘達の声で破られる。
「防空棲姫はまだっ!? 陣形変更なんて待ってらんないよ、とにかく発艦急いでっ!!」
中央に日の丸をあしらった飛行甲板を模した鉢巻を巻いた艦娘が、上空をきっと睨みつけ細身の弓を引き絞る。黄橙色の上着に深緑色の丈の短い袴を履いた飛龍改二が航空隊を発艦させる。そして決然とした目で宣する。
「夜間発艦を出来るのは自分たちだけだと? この海…今度こそ、今度コソ徹底的ニ叩カナキャ…!」
すでに対空電探は三〇機以上の敵が上空に展開しているのを捕捉している。危険な夜間発艦を強行しこちらが防空体制を取る直前を叩こうとする
「天城、出撃致します!」
「出撃するわっ! …って絶対見ないでよね!」
二人同時に緑色の振袖を脱ぎ捨てる天城と葛城だが、対照的な行動を見せる。静かに、それでいて自信ありげに胸を張り艦載機の発艦を続ける天城に対し、両腕で胸を隠すようにしてジト目で周囲の空母娘を睨む葛城。すぐに諦めたようにこちらも艦載機を発艦させる。雲龍型は改飛龍型、天城と葛城はその雲龍の戦時量産型ともいえる系譜で、この四名は飛龍を姉とする姉妹の様なものである。が、葛城だけは陽炎型駆逐艦の機関を搭載している関係上、なぜか身体の一部のボリュームが薄く、露出の激しい雲龍型の衣装を着るとその差がさらに強調される。
「海と空…ようやく私も戦エルノネ…私は、最後ノ…一航戦ダカラ」
「本当の力、見セテアゲル!! 胸ナンテ…飾リナンダカラッ!!」
そんな妹達を眺めていた雲龍は、ゆっくりと空を見上げながら、小さく呟く。
「輸送任務デハナイワ、制空戦ヨ。腕ガ鳴ナルワネ…」
ヨークタウンを道連れにしたものの戦争の転換点となる敗北を喫しミッドウェー沖に沈んだ飛龍、終戦間際で機動部隊として活動できず終わりを迎えた雲龍姉妹-葛城の
四名は一斉に砲撃を始め、対空砲火が空一面に黒煙の花を作り上げる。その狙いは上空に展開中の三五機の部隊、筑摩が発艦させた一四機の瑞雲、そして翔鶴が発艦させた二一機の熟練した零戦六二型にある。南洲隊の先陣を切るこの部隊は、いまだ防御陣形への移行を完全には終えていない四人を目がけ急降下爆撃を加えようと次々と降下を開始した。南洲の言う『最初の五分』の役割を担うのが、まさにこの部隊である。
「逃ガサナイワ。直掩隊、突撃シマス」
「サア、始メ…マス」
「全高射砲、一機モ逃サナイデッ」
投弾体勢に入った以上急な進路の変更はできず、急上昇で迫る大量の
『技本機動部隊、全員
間髪入れずに鹿島から龍驤へと指示が飛ぶ。筑摩と翔鶴の航空隊による奇襲で始まった開幕五分は過ぎ去り、入れ替わるように真打が登場する。この鍵を握っているのが龍驤の攻撃隊である。戦闘海域近辺で筑摩と翔鶴が発艦させた攻撃隊による急降下爆撃を意識させ、その間に電探を避けるため海面スレスレをゆく龍驤の攻撃隊が攻撃位置に着くのを鹿島が巧みにナビゲートする―――。
「よっしゃぁーっ! 艦載機のみんな、お仕事お仕事っ。さすがにもう見つかっとるやろ、最大速力で突入や!!」
発動機が唸りを上げ爆装で重量過多の機体をそれでも増速させる。龍驤の指示に従い高度を微調整し、技本機動部隊目がけ突入を図る二八機の彗星。爆弾倉扉が胴体内側に畳み込まれると、二五〇kg爆弾が投下され、
「どやあっ、
「アラート! 龍驤さん、防空棲姫と援護の編隊がっ! 五人目…指揮艦の護衛、大鳳さんですね。でも間に合わないです、私達の勝ちですっ!!」
龍驤が
ミッドウェー作戦の真逆をいく、上空からの急降下爆撃に注意を引き付け、低空で突入する彗星による
-龍驤、緒戦で機動部隊を出来るだけ無力化することと、拿捕できる状況を作ることを両立したい。そのためにはお前とお前の航空隊の技量が必要だ。あと
同じく出撃前、南洲は龍驤が緒戦のカギを握る存在として詳細に打ち合わせを行い、その腕前に全幅の信頼を置いていた。
「隊長はん、どやっ! まあ、隊長さんにあないに頼まれたら、ウチとしてもしゃーないからなあ。そやけどこの貸し、高くつくで、イヒヒヒ」
反跳攻撃に加えたもう一つの策、それは南洲が明石に突貫工事で二五〇kg爆弾を改造させた
「ビスマルク、羽黒、筑摩、