BLEACH Blade crest   作:井上木下三上

1 / 7
BLEACH the Berry

 

 

 

 

「――さぁ、戦おうか一護」

 

 

 

「黒崎くん」

 玉座から立ち上がったユーハバッハの声を聞きながら、柱に叩き付けられた一護の許へ駆け寄ろうとした織姫を粉塵の中から姿を現した橙髪の死神が手で制する

「大丈夫だ井上」

 眼前の敵から目を離すことなく、織姫を安心させるように声をかけた一護は、眼のような文様が浮かぶ黒い力を全身に纏ったユーハバッハに対峙する

「見せてみろ、お前の身に宿った力の全てを! 奇跡の全てを」

 口端を吊り上げ、不敵に笑うユーハバッハが見るのは、死神、虚、滅却師そのすべてを一身に宿した奇跡の児だった

 余裕さえ感じられるユーハバッハの嘲笑とも挑発とも取れる言葉を受け止めた一護は、織姫を庇うように前へと歩み出し、左手に持っていた斬月を天高く放り投げる

「望むところだ」

 刀身の短い斬月が回転しながら天井へと向かっていく中、一護は左手を頭の上にかざしてそのまま一気に引き下ろす

 瞬間、一護の顔には骸骨を思わせる白面が纏われていた

 

 

(ホロウ)化か!」

 

 

 二本の角を完全(ホロウ)と化した面を纏った一護を見たユーハバッハは、その身体に纏った黒を無数の槍のようにして解き放つ

 縦横無尽に奔った黒槍の一陣が今まさに一護の身体を貫こうとした瞬間、その姿が瞬時に掻き消える

「ぬっ!?」

 それを見たユーハバッハが視線を向けた先には、両手に斬月を携えた一護が肉薄していた

「月牙――」

 斬月の切っ先に霊圧を纏わせ、それを解き放とうとする一護をさらに軌道を変えた黒い槍が真下から刺し貫く

 だが、それは残像。一護の身体を貫いた黒槍は空を切り、それに意識を奪われていたユーハバッハの背後にその姿が現れる

 

「――天衝!!」

 

 同時に、刀身に溜めていた渾身の霊圧を叩き付けるが、それは初撃のそれと同じくユーハバッハの纏う黒い力によって完全に阻まれてしまう

「その動き……〝飛廉脚〟だな」

 虚化しての月牙天衝をも受け止められた一護がわずかに顔を歪めるのを愉快そうに見ながら、ユーハバッハは嬉々とした様子で言う

「死神の力に、(ホロウ)の力。そして滅却師(クインシー)の力――まさに、お前の、黒崎一護の力だ」

「!」

 指示した指に光が集い、巨大な弓を構築するのを見た一護が移動すると同時、先程まで身体があったその空間を滅却師(クインシー)の代名詞ともいえる矢が通り抜ける

「嬉しいぞ一護」

 その言葉に同期するように、ユーハバッハの上空に巨大な光弓が顕現し、そこに無数の矢が番えられる

 引き絞られた光の弦が弾け、無数の矢を雨のように一護へと注ぎながらユーハバッハは喜色に彩られた声で言う

「千年前、私の父が見た(・・・・・・)私の世界が実現し、最初にお前という我が子が立ちはだかる――これを運命と呼ばずに何と言おうか!?」

 果てなく天から注ぐ光矢とその身体に纏う黒から生み出無数の鞭槍が迫れば、回避と防御が間に合うはずもない

 俊足を捕らえ、二刀の防御をかいくぐって一護の身体を捕らえた白と黒の奔流が炸裂し、天を穿つ破壊の波動を巻き起こす

「……ッ」

 その暴虐の嵐に身を晒す織姫は、拒絶の盾で身を守りながら声を発することもできない圧に耐える

 滅却師(クインシー)の頂点に立ち、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の皇帝が放つ攻撃。霊王を取り込んだ今のユーハバッハが放つその威力は、一撃一撃がまさに必殺の殺傷力を持っていると言えた

 

 

(……無傷だと!?)

 

 だが、爆塵が晴れた中から現れた一護の姿を見たユーハバッハは、その姿を見て剣呑に目を細める

 自身の攻撃を受けて無傷でいられるはずがない。傲りとは無縁の自信と確信を持つユーハバッハは、即座にその理由を理解する

「あれは……」

 先の怒涛の攻撃を凌いだ一護の身体には、無数の霊子のラインが奔っていた

静血装(プルート・ヴェーネ)――いや、それだけではない)

 自分達が持つ防御の要――それと同じものを捕らえながら、同時にユーハバッハは、一護の顔についている骸骨の面を見て、確信する

鋼皮(イエロ)か!」

 破面(アランカル)達が使っていた鋼の防御。さらにそこに滅却師(クインシー)の防御の神髄たる静血装(プルート・ヴェーネ)を重ねることで、桁外れの防御力を実現する

 まさに、一護だからこそ可能なその防御を見たユーハバッハの目の前で、先の攻撃を凌いだ二本の斬月から極大の霊圧が迸る

 斬月から吹き上がる霊圧は、まるで三日月を思わせる形を顕現し、さらにそこに二本の角から伸びる力が収束されていく

「月牙天衝に虚閃(セロ)を合わせているのか!」

 それを見てその力を看破したかのように声を上げるユーハバッハだが、収束される霊圧の規模を見て、即座に己の間違いを悟る

(――いや、違う)

 二本の斬月を構え、三日月を思わせる形状に極大の霊圧を収束する一護が注ぐ力を見てユーハバッハは沈黙の中でその威を感じ取る

(あれは、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)! ――そして……)

「オオオオオオッ!」

 咆哮と共に振り抜かれた二本の斬月が霊圧で形作られた三日月を引き、収束されていたその力を放出する

 

神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)!)

 

 一護の斬閃に合わせて解き放たれたその力は、閃光の斬矢となって迸りその場に佇んでいたユーハバッハを呑み込んで炸裂する

「凄い……これが、今の黒崎くんの力」

 死神として真の力を手にし、虚としての力、更に滅却師(クインシー)としてまでの力を備えた一撃が生み出す力は苛烈の一言

 真世界城(ヴァールヴェルト)の一角を吹き飛ばし、天に浮かぶこの場所を揺るがさんばかりの力の圧に長い髪をなびかせながら織姫は息を呑む

 

「クク、ハハハハハハハッ」

 

 瞬間、一護の力によって生じていた爆塵が吹き飛ばされ、その中から漆黒の力を纏ったユーハバッハが姿を見せる

 その身体には、先の一撃による傷が確かについているが、ユーハバッハの身体にまとわりつく黒い力が溶け込み、ゆっくりと傷を癒していた

「傷が……」

「くそ……ッ、仕留めきれなかったか」

 斬月を構え、仮面の下の黒い目に焦燥を宿す一護にユーハバッハは、確信を得た言葉を向ける

「我が全知全能(オールマイティ)の力を以ってしても、見えぬ未来と力。これは、〝聖文字(シュリフト)〟だな?」

 力の九年を終え、完全に覚醒したユーハバッハの能力は未来を見通し、その力を無効化することができる

「最初、私が未来を見ることを知っていることを告げて、我が目を逸らすとは……随分と(さか)しい戦術を取るものだ」

 だが、この戦いが始まってから、ユーハバッハの眼は一護の未来を正しく見通してはくれなかった

 

「――あぁ」

 

 その理由を正しく理解したユーハバッハが口端を吊り上げて嬉々とした声で言うと、もはや隠す意味はないと悟ったのか一護は沈黙を破って口を開く

 

「俺の聖文字(シュリフト)は〝B〟」

 

 

 ユーハバッハを見据え、(ホロウ)の仮面をつけた死神の少年は、自身の身に宿った滅却師(クインシー)の力を告げる

 

 

 

「『黒染漂白(ザ・ブリーチ)』。俺と、俺が攻撃する相手の能力を無効化する力だ」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。