最近ムショーにFEに嵌まりまして。勢いそのままに書き上げました。
なお、この作品は暗夜ルートに進んだカムイが家族を殺した後悔がある事と泡沫の記憶編で語られた幾つものifの一つであることを前提としています。
なのでカムイの性格が原作と違う、原作とは矛盾があるという点があるかもしれませんが、その二つを理解した上で読んでくださると助かります。
少女は、死んだ。
少女は所謂、救国の英雄であった。
だが少女は決して、英雄などではなかった。
少女は国に、家族に愛され、感謝されたが、少女は己にその資格がない事を知っている。
故に少女は己を咎めようとしない家族達の優しさに苦しみ、罪悪感を増幅させて、やがて少女にとって思い出の地に良く似た湖の中心で自害した。
少女は人知れず、湖に沈んだ。それはまるで、泡沫の中に消え逝く人魚姫のように。
◆◇◆
……刀が喚んでいる。馬鹿な、貴方はまだ私に戦えというのか。
……もう、疲れた。放っておいて欲しい。嫌なら私の行いに報いを与えて欲しい。
だって意味がなかった。殺して、殺して殺して。その先に掴んだ平穏は私に安寧をくれただろうか?
くれなかったんだ。眠る度に肉親をこの手で貫いた悪夢が過る。仕方がなかっただって? 仕方がない状況を作り出してしまっただけだ。異なる運命を選べばこんな事にはならなかった。
少しでも、いい運命を選択できたはずなのに。なのに私はそれをしなかった。
それでも過去を変える事はできない。だから私にもう一度殺せというのなら……殺した分の報いと、救った分の断罪を欲する。
だから誰か……私を
◆◇◆
浮力を感じながら落ちていった感覚から一転、身体が一気に重力を纏って落ちる感覚に変わっていった。
「━━━え?」
驚いて、また驚いた。最初は冷たい水の感触から身体を裂くかのような冷たい風の感覚に変わった事に。そして次には
「や、
この数秒間でどれだけ驚いたか。私自身もよくわからない。私は死んだはず、もう理性が戻る事はないはず、何故、何故?
「……竜石。砕けてない……!?」
一体私は何度驚けばいいのだろうか。この命に関しては失う直前に何かの力が働いたと考えればまだしも、完全に破壊されたはずの竜石が破壊される前の姿そのままに甦っている。
ついた傷痕や手入れ跡から本当に自分の物がそのまま完璧に修復されている事がわかる。混乱に混乱が重なってもう訳がわからない。
「……、いや。そんな事を気にしている暇はありませんね……!」
自分の置かれた状況を思い出す。そう、理由はともあれ私は今、落下している。生きている理由やここは何処なのかは現状を打破してからでも遅くはない。
「竜穿!」
叫ぶ必要は特にないが願掛けついでにその名を呼ぶ。背中に意識を回せ。己から溢れる力の奔流の一部を、その背だけに━━━
瞬間、私の背から白い竜翼が生える。顔も兜のような物が覆い尽くすが、それで視界が阻害される事はない。
翼をはためかせ、背を地面から空に預ける。そして私はまた別の驚きに包まれた。
「な……え……? ほ、本当に……何処、ここは?」
生まれた国とも育った国とも誓う。ではその二つ以外かと思ったが、それも違う。
空は夜そのものだというのに地上はまるで昼のような明るさがあって、至るところに明暗する灯りがあって……国にあった書物は全て読破したというのにピンとも来ないこの景色はまさに、幻想的だとしか言い様がない。
「やはりこれは……異界、と考えた方が自然なんでしょうね」
暫く見覚えのない景色を見て思考を落ち着けてからポツリ、と呟く。いつか、従者を従えて見覚えのない異界に来た事を思い出す。でもそれとも合致しないのならば、ここはあの世界でもないという事だ。
やはり何処かに降りて情報収集が一番か━━━と思った時、何処かで轟音の鳴る音が聞こえた。
「この音、戦闘音! 鉄がぶつかり合う音!」
それを理解したとなれば一先ずそこに行く事に決めた。音の発生源はあの十字架のついた屋根がある建物、文献で見た覚えはある。確か名は、教会。
「神聖な場で荒事とは、穏やかじゃありませんね……!」
そうと決まれば目的地に向けて一直線に迫りガラスを割る瞬間、翼を消失させ力を両腕に集め、変化していない身体を守るように突撃する。
「お取り込み中、失礼します!!」
ガラスを割って教会の中へと入る。四肢で地面を踏み締め、身体が止まった事を確認してから竜穿を解除する。
「な、なんだぁ!?」
「またまた新顔ですかぁ!? 流石に俺もピンチじゃねーんすかねぇ!」
人数確認、神父服の上にコートを纏った銀髪の男性が一人、対面しているのは茶髪と金髪の男性が一人ずつに銀髪の少女。私を見た時の神父の反応からしてこの三人と一人が対立しているのは想像に難くない。
「刃を収めてください! 私は双方と敵対する意思はありません、聞きたい事があって此処に降り立った次第で━━━」
「俺の邪魔してる時点で死亡確定なんすけどねぇ!」
「━━━! 竜穿!」
言葉は途中で神父によって遮られた。光を纏った刀身、いやあれは光そのものが刀身になっているという事か!?
間一髪、右手を剣状に変化させてそれを受け止めたが、神父の攻撃が予想外に素早かった事と不意討ちである事が相まって対応が遅れて若干押され気味だ。
「わーお、腕が武器になるとは、珍しい
「神器……!? 聞き覚えのない言葉ですね……」
「んー? 光にも対して弱そうな反応も見せねぇ……ひょっとしてアンタ、悪魔じゃなくて偶然神器宿してるだけの人間か? ま、どっちにしろ殺りゃ関係ねーっしょ!」
「悪魔……また、聞いたことのない単語を……っ!」
左手を
「射出!」
そして顎を開き、そこから水の弾丸を放つ。けど。
「飛び道具ならこっちもあるんだなぁ! 残念無念!」
左手に持った小さな筒の口が光ったと思ったら、弾丸が掻き消えた。まさか、飛び道具!? あんな片手に収まる小さな武装が!?
未知の武器に若干躊躇いはしたが、迷わず突っ込む。殺さないように威力を加減していたとはいえ、アレと相殺する武装なのだから気を抜く事は一層出来なくなったという事か。
ふと、視線を三人に移す。彼らは既に何処かに行っていた。彼らから情報を得られなくなったとなったという事だ。なら一層、この神父を殺してはいけない理由が増えた。
だが、相手は私を殺す気だ。加えて今の私には夜刀神がない。ここに来る前に竜石が砕けた事を考えると竜穿に頼るのは危険、できて腕と背中の変化が限度としておこう。しかも部位と関係なく竜穿を使った時点で頭部は変化するのだから、腕と背中を同時に変化させる事はしたくない。
「……中々の修羅場ですね」
一人ごちる。だが選んでしまった以上は仕方がない。彼を捉え、現状を把握。これが最低限で可能であれば彼を味方に引き入れる。
頭の整理を終えると私は神父に向けて駆け出した。彼は嘲るように筒を幾度か光らせる。厄介で速い。でも!
「伸びろ! 竜穿!!」
右手を引き、左手で身を守って、身体のバネを使って一気に右腕を突き出す! 瞬間、右腕は更なる変化を起こし、剣と言うよりはそれはまさしく━━━
「んなっ、槍だ、ぁ!?」
一気に上昇したリーチで筒の穴に腕を突き刺す。神父がそれを手放したのを確認して私も腕を元に戻す。すると筒は爆発を起こして呆気なく砕け散った。
「やっ、べぇ」
神父が苦笑いを浮かべながら身を引く。でも遅い。
次いで左腕も元に戻してから今度は背中を変化させる。そのまま超低空飛行に移行して、神父が走るより速い速度に到達すると竜穿を解除。速度を走って維持した上でまた右腕を槍に変えて神父の頬を掠めるカタチで壁に突き刺す。
「っ、ちぃ」
「不自然な動きは止めてください。次は当てます……これは、脅しではありませんよ」
左手を振りかぶって嘘ではない事を強調させる。神父は観念したようで両手を即頭部に上げる。
「……そうですか。では━━━」
「なぁんてなぁ! 詰めが甘いっすねぇ甘々お嬢さん!」
そう言うと神父はおもむろに履き物を蹴り飛ばして来た。思わず左手でそれを突き刺すと、そこからあり得ない量の光が迸った。
「なっ、閃光弾━━━!?」
「いざって時のためのスタングレネード搭載ブーツってなぁ! ひっじょ~に癪なんだけど、俺ちゃんこの場は撤退させてもらうぜ!」
「ま、待って!」
「待てって言われて待つ阿呆がいるかよバーカ! んじゃあばよとっつぁ~ん!」
彼がそう言うとやがて足音が遠ざかって行った。逃げられた!
あまりの光量に暫く視界が遮られていたが、それも一分もしないうちに戻ってきた。
振り出しか、と歯噛みをしようとした時、またもや事態が一変した。
何処かから先程の茶髪の男性が戻ってきたのだ。話を聞いたもらおうと近寄ろうとしたが、ついその手に抱えているモノに目がついた。
少女だ。金髪のシスター服を纏った血塗れの少女が彼の腕に抱かれていた。
「アーシア、起きろアーシア! 頼む起きてくれ!」
見ただけでわかってしまった。あの子は、死んでしまう。理由はわからないけれど、彼が死にかけたあの子を助けようとしている事はわかった。私も人としての道徳が救いたいと叫んでいる。
……だけれど、私はどうする事も出来なかった。治癒魔法を使える妹なら救えるかもしれないが、残念ながら私はそういった魔法の才能はなかった。あったのは、傷付ける黒魔法への才能。
どうする事も出来ず、私の事が視界に入っていないのであろう彼を見つめる事しかできない。
「俺が悪魔になったからダメなんすか!? この子の友達が悪魔だからダメなんすか!? 友達が欲しかっただけの優しいシスターなのに、なんで死なないといけないんすか!? なぁ頼むよ神様! この子を助けてやってくれよ!!」
自分を悪魔と称する彼は痛ましいまでの悲鳴を挙げながら神様に乞う。思わず私が目を逸らしかけた時、また別の声が聞こえてきた。
「あら、こんな所で悪魔が懺悔? それとも、お願いでもしていたのかしら?」
男性が振り替える。そこにいたのは黒い翼を生やした女性。右腕が傷ついている。
「見てご覧なさい。ここに来る途中、『騎士』の子にやられてしまった傷」
彼女がそこに手を添えると傷がなくなった。
「見て、素敵でしょう? どんなに傷付いてもこの子神器が治してくれる。神の加護を失った私達堕天使にら素晴らしい
━━━アレだ。彼女が少女を救うつもりがない事は一目瞭然だ。
なら私はどうする? 簡単だ。奪え。侵略しろ。略奪するのだ。
身体の奥底から迸るその感覚に身を任せて、ニヤリと嗤う。きっと今の私は野獣のように獰猛な顔をしているに違いない。
『王子を殺せ。反乱の芽は今の内に潰さねばならぬ……他の者の手を借りる事は赦さぬ。お前が、殺すのだ』
嗚呼、お父様……どうやら私もまた、貴方の子だったようです。
男性が激情のままに拳を振るう、その直前に━━━
「そこの殿方! 拳を収め、半歩後ろに下がってください!」
「えっ━━━」
槍化した腕で二人の間を遮った。
「……誰かしら、貴女は」
「……だいたいの話は理解しました。その上で、本来私は貴女のような下賤な輩に名乗りを挙げる事の赦される者ではない事も理解しています」
竜穿を解く。包帯のような物で巻かれていた腕が元の長さに戻るにつれて、巻き物も剥がれて行く。頭部も本来の物に戻る。
「ですが私は今、貴女からその力をどうしようもなく略奪したい気分です。なので……せめてもの手向けとして、名乗りましょう」
道中に落ちていた神父の光の剣を拾う。夜刀神より重いが、それ以前に使っていた剣よりは断然軽い。
二人の間に立つ。背中からは警戒心を解かない彼の殺気を感じ、正面からは困惑しつつも無条件に他人を嘲る彼女の目が突き刺さる。
だけど、その程度じゃ私の心が変わる事は、残念ながらなかった。
「私は暗夜王国第二王女、カムイ! 堕天使とやら、貴女の生涯に引導を渡す者の名を刻むがいい!」
運命の分岐点とはもしかしたら、幾つもあるのかもしれないと感じながら。私は光の剣を堕天使とやらの前に突き出して宣告をするのだった。
女カムイを主人公にしつつスマブラも原作も男カムイなんです、作者です。回す方のノッブのイケボは捨てがたいからね仕方ないね。
口調と容姿はデフォルトを尊重していますが、時折そこからずれると思いますので、その時は生暖かく見守ってくれると幸いです。