今後の展開を考え直していたら変更せざるを得ない部分が出てきました。なのでタグも変更です。
まぁ間違いなくこっちの方が面白くなるでしょうし、コラテラルダメージってやつですのでおにいさんゆるして。
鏡は真実を映すという。ならば私の姿はその鏡には余程薄汚れて映る事だろう。
だって、私は薄汚れた
鏡は真実を映すという。ならば目の前に映っている僕の姿は、きっと真実なのだろう。
それは、醜くも美しい天女の如く。泡沫に溶けて逝く、慈愛の聖母の姿。
だから問う。目の前にいるのは誰だ?
私は━━━僕は、誰だ?
◆◇◆
「……イ、おい……カムイ……」
「……んぅ、ゼロさん、フェリシアさん……フローラさんにギュンターさんまで……ああ、起きてます。起きてますから……」
「嘘つけ、昨日も三十分増しで寝てただろ。今日は何十分寝る気だ?」
「……へ、あれ?」
朦朧とした意識からハッと覚醒する。目の前には私の顔色を覗き込むように見ている彼、イッセーさんが立っている。
「……あ、と。ごめんなさい。今何時でしょうか? 私まだ眠たくて……」
「そりゃこの部屋の惨状見たら解るって。また夜更かししてゲームやってただろ」
「……うぐ、面目ないです」
だ、だって仕方がないじゃないですか! えーあいを対象に一人でもできる戦略シミュレーションげえむっていうのは皆さんが寝静まってもできる画期的な物です! これがあれば私は向こうでももう少し苦戦せずに戦略を組む努力を出来たのかもしれないのに!
マークス兄さんは日々忙しそうだったし、カミラ姉さんはどうせ私を甘やかしてわざと負けてしまうだろうし、レオンさんは強すぎて逆に話にならなかったし、エリーゼさんは……どっちかっていうと私が甘やかしかねない。
側付きのジョーカーさん達にも戦って貰ってはいたけど、やってるうちに身内の癖を知り尽くしてしまった風になってしまって。結局途中からはあまり練習にならなかった。
なので、無数の行動パターンで常に最良を選ばんとしてくるえーあいという物はすごく、すごーく革新的に感じた。
そういうわけで私はイッセーさんの家にお世話になった初日に偶然げえむというものに触って……こう、夜が明ける事を毎日忘れてしまっている。流石にダメだよね、なんて思っていても身体がげえむを求めてしまうのです。あの特有の灯りと今いる世界とは異なる世界で繰り広げられる千変万化の物語に魅了されてしまったと言えばそこまでなんですけど。
「大丈夫なのか……? 今日からカムイも学校行くんだから夜更かしはするなって言ったはずなんだけど……」
ガッコー。この施設の名前を聞いた時に私はまさに雷に打たれたような衝撃を受けた事を思い出す。聞き覚えのない単語だったのでわからない事があればなんでも聞いてくれ、と言っていたイッセーさんに聞いたのだけど、なんとこのガッコーというものはどんな子供でも立場関係なく、義務として教育を受けられるという施設。
暗夜にも白夜にもそんな場所はなく、読み書きができるのは中流階級以上の家で、基本的に仕事はごく一部を除いて相続性だったのでこの世界の人達が自由なのだとも強く感じた事を覚えている。
ちなみに、文字はどういう事か、白夜とほとんど同じと言っても差し違えのない物だったこともあり、一時期白夜の文字の読み書きもしていたためすぐに覚えられた。一般教養もジョーカーさんやギュンターさんが教えてくれていたため、この世界で言う数学は特に問題なかったとも追記する。
……英語、というものはまったくわからなかったのだけれど。
「……あれ、イッセーさん、私のお着替えは」
「クローゼットの中。制服は昨日見たからわかるよな?」
「はい、なんとか」
慣れない手つきで布地にしては重いセイフクなるものを着る。先日試着してみたものの、柔軟性のある衣服が重たいという事実にはどうにも慣れない。いや、今思えば暗夜のきょうだいはみんな重たそうな服装をしていたのだけれど、私自身、重い衣服は鎧と、白夜で着た着物くらいだったろうか。
スカートも履いた事がないから全然わからない。エリーゼさんがぴょんぴょん跳ね回っていた頃から思っていたのだけれど、衣服の内側を隠す事が衣服の役割の一つだと言うのにそれをまっとうできていないスカートとは如何な物かとも思うわけで。
身の回りの事は基本的に何もかもジョーカーさんがやってくれていたせいでキチンと着れているのかわからない。まぁこれは後でイッセーさん達に聞けばいいか、という結論に至って階段を降りていく。
「おはようございます皆さん」
「あらおはよう
「うんうん、アーシアさん共々イッセーの近くに置いておくのが勿体無いくらいだ」
「お似合いですよカムイさん」
「ありがとうございます。こういう物を着るのは初めてなので不安だったんですけど……どこかおかしなところはありませんか?」
きっと馬子にも衣装という事なのだろう。おば様とおじ様のお言葉を素直に受け取って失礼します、と言って席に着く。
「今日の朝ご飯はなんでしょう? おば様の作るご飯はどれも美味しいので楽しみです」
「嬉しい事言ってくれるわ。今日は白ご飯に目玉焼き、それとジャガイモの味噌汁よ」
味噌汁。白夜にいた頃も朝に戴いていたのを思い出す。スープに似たような物で、なんだかあったかい味だった覚えがある。実は暗夜に帰ってからも時々ジョーカーさん達の目を盗んでは作っていたくらいには好物になってしまった逸品だ。
……ここだけの話、味見をしてくれていた人は皆一様に「鋼の味」と形容していたのだけれど。まったく失礼です。私は普通に作っていたのに。
私が席に着くとすぐにおば様がご飯を置いてくれた。おば様の言う通りのメニューが来た。
「いただきます」
暗夜育ち故、慣れない手つきで箸を動かしながら食事を進める。
そういえば、リアスさんに言われた事だが私は外国からのキコクシジョ、という扱いらしい。ドイツ? だったか、確かその辺りのはず。名前もそれっぽく
ご飯をなんとか口に運んで食べる。美味しい。食べ物はこういう有機的な味がする事が常なはずなのに鋼の味とは、いったいどんな味だったんだろうと気になり出してくる。
「……イッセーさん、アーシアさん」
「ん? どうした?」
「どうかしましたか?」
「……いえ、あまり大事な事ではないのですが。……鋼の味って、どんな味なんでしょうか」
ピタリ、という擬音が果てしなく似合う程綺麗に、四人は固まってしまった。イッセーさんとアーシアさんは意味がわからないという風に、おじ様は情報誌越しになにやら凄いものを見るように。おば様は思わず片手に持ったお皿を絨毯に落としてしまったようだ。
「……か、神李ちゃん。私の料理、ホントは不味かったのかしら……!?」
「え!? あ、いえそんな! むしろ美味しいです! あの、今のはあまりの美味しさについ昔知り合いの言っていた言葉が気になってですね!?」
おば様をなんとか宥めながらもつい、私は思ってしまう。こんなに楽しい食事が出来るこの世界は平和なんだと。感傷に浸るわけではないけど、戦争が終わった向こうの世界はどれだけ平和な世界になれたのだろうかと思いながら、そんな朝が過ぎ去っていった。
◆◇◆
ここは何処だろう。上下と左右がぐちゃぐちゃだ。そんな世界の前後上下左右、あらゆる場所から僕に狂気の視線を向けてくる目があるのを感じる。
身体が粉々になった老人が曰く、貴方のせいだ。
全身が炎に包まれた少女が曰く、貴方のせいです。
小さな竜の姿をした少女が曰く、死なずに済んだのに。
肩から腰にかけて巨大な切り傷を負った妹が曰く、嘘つき、きょうだいみんなで暮らそうって言ったのに。……頷いてくれたのに。
血塗れの姿で僕の手を握り締める兄が曰く、何故わたし達を選んでくれなかったのだ。お前が姉と、弟と、妹と、父上と、私と過ごした時はお前にとってなんだったのだ。
僕が選んだ道のりで救えなかった多くの人々が僕を責め立てる。お前がそれを選んだばかりにお前が育った国でなく、生まれた国を選んでしまった選んでしまったばかりに、我らは死んだのだと。
違う……違う、違う! この道を選んでしまったから彼らを救えなかったんじゃない! この道を選んだからこそ救えた人がいたんだ! 悪逆非道の父をこの手で伐った!
戦争に正義がないだなんて嘘なんだ。落ち着いて見渡せば何が悪で、何が正義なのか見えてくる。そうだ、僕は正しい道を選んだんだ。兄さんに学んだ
だから僕の選んだ道は決して間違いなんかじゃない。僕は選んだんだから。
……人の原型を失った父が曰く、それでこそワシの息子だ、と。
怨み辛みをぶつけてくる彼らよりもずっと、僕の心を削る言葉を言いながら。それまで一度だってしてくれなかったのに、父は僕の肩に優しく手を置いた。
◆◇◆
「━━━ッ!!」
飛び起きる目を覚ます。最悪の目覚めだった。
起きてすぐに身体に迸る寒気を感じた僕はギュウ、と膝ごと抱えるように両手を背中に回した。
━━━またあの夢だ。僕の目の前で死んでしまった人や僕が殺してしまった人達が皆一様に捲し立てながら僕を責め立てて、最後に何故か父上だけが僕に優しくしてくれる夢。
戦争が終わった日からずっと聞く幾多の怨嗟の聲。皆そんな事を言うはずはないとわかっているのに心のどこかから響き渡っている。
「……くそ、くそくそくそ」
布団の皺を寄せて額に当てる。心の奥の更に奥に沁みた彼女の言葉を思い出して平静を取り戻す。
「……はっ、はぁっ……くそ、ぼ、僕は……僕は、彼女の分まで……彼女のために……笑顔で、幸せで……はぁ、ふっ、ぅ……だい、じょうぶ。大丈夫だ……」
端から見ると洗脳か自己暗示のようにも見える、と評されたその言葉を反復する。洗脳なんかじゃない、彼女が僕に最後に遺してくれた生きる意味だ。呪いなんかじゃない、絶対に違う。
━━━そういえばこっちに来てから一度だけ違う夢を見たことがあった。そう、一度だけ。
目の前に僕がいた夢だ。その僕は僕が殺した兄さん達と手を取り合いながら、僕を羨むように見てくる。
バカを言わないでくれ。僕が失ったモノを掴んだ僕に、僕を羨む資格なんてあるわけがないだろうに。
そう呟きながら僕はベッドから降りた。きっとその目は、刺々しい毒気に包まれていただろう。
えっと、こちらの男カムイも前提条件に女カムイとは逆のルートを通って、こっちも選択したことに後悔があります。
いずれ二人のカムイは重なりあう予定です。この時が個人的な見所さんかなーっと思うので、そのときまでお待ちしていただけると嬉しいです。