魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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第1話

 

 それは本当に綺麗な満月の夜だった。

僕が倒れふしている地面からは紅い血だまり。そしてその匂いを嗅ぎ付けた飢えた狼達が回りに集ってる。

 

「珍しい……ここは決して人間が寄り付かない森なのだけど」

 

薄れゆく意識のなか、声がした方向へ視線を向けると少女がいた。

少女が狼達を一睨みしただけで、狼は怯えたように逃げていった。

 

「……まあ分かってるとは思うけど、そんなに出血してたら死ぬわよ、あなた」

 

出血……ああ、この紅い池って僕の血だったんだ。

そっか、血がいっぱい抜けていく時って寒くなるんだね。死ぬ時って、こんな感じで……いいのかな?

 

「死ぬって聞いても驚かないのね……、ここまで死に疎い人間なんて初めて見るわ」

 

だって、実感湧かないし。

それに、この血が抜けていく感じ……嫌いじゃないもん。

でも、死にたくはないな。

 

「面白い人ね。選択肢をあげるわ。このまま死ぬのも良し、だけどもし生きたいと言うのだったら私が助けてあげる。……どうする?」

 

そんなの、決まってる!

僕はまだ死ねない、死ねないんだ!

 

「……助けて」

「生きる……と、受け取って良いのかしら?」

 

その確認に少年――明久は頷く。

 

「分かったわ。今から契約をする、これからあなたは吸血鬼として私と行動を共にする事になる。良いわね?」

 

 突然きりだされた内容にもかかわらず、明久は再度頷く。少女――アルトルージュはそれを見ると、明久の元に屈み、そして首元に軽く甘噛みするように噛みついた。

 

「これにて契約は完了した。強く生きなさい、君」

 

 

 

 

 

 

 

「……夢、みたいだね」

 

懐かしい夢を見たな。

思えばあれから五年経ったのか。

 

「今日ってAクラスとの試合があったんだったね 」

 

雄二は、しっかりと対策を練ってきたのだろうか?

心配するだけ無駄だね、彼はこの時のために試召戦争を起こしたのだから。

着替えながらそんな事を考えていると、ふと首筋の小さな傷に目が移る。

 

「だいぶ……留守にしちゃってるけど、怒ってないよね?」

 

夢の中の少女。

助けられて以来、僕は彼女と一緒に暮らしてきた。

 

「怒ってると思うが…」

「あ、おはようリィゾ」

「おはよう明久、朝食の用意は済ませてある」

「ありがと。それとやっぱり怒ってる?」

「絶対、幾らなんでも四年も姿を見せなかったら当然であろう」

 

うぐ……確かに。

流石にそろそろ会いにいかないと後が怖いだろうなぁ……。

 

 

『姫』って見かけによらず、結構寂しがり屋だしね。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 燦々と綺麗に反射する道路が目を細め、肌に降り注ぐ春風がとても心地よい。

――なんて普通の人ならそう言うのだろうけど……私にはちょっと辛いものがある。

 

……日光、しんどい。

 

「っと。見かけない顔だが……ああ、転校生だな」

 

 ダルい頭を持ち上げ、見上げると、そこには体つきのがっしりとした教師が腕を組んで立っていた。

 

「ああ、すみません。ここはスポーツジムでしたか。てっきり学校かと」

「ちょっと待て!?ここは学校で合ってるぞ!」

 

……嘘ぉ。

 

「それはそうとほら、振り分け試験の結果だ」

 

 同じ反応をした人が前にもいたのか、教師は遠い目をしながら私に結果の封筒を手渡した。

封の端を捲っていきながら、あることを尋ねる。

 

「ここに明久って人はいますか?」

「何だ、明久の知り合いか。ああ、規律上クラスまでは公表出来んが、あいつなら確かにここにいるぞ」

「そうですか、ありがとうございます」

 

校内まで歩きながら、開いた封筒から抜いた用紙を確認する。

 

アルトルージュ・ブリュンスタッド Aクラス

 

「やっと会えるわ、明久」

 

それを封筒に納めなおした彼女は、早足で指定されたクラスへと向かっていった。

 

 

―――――――

 

「まずは皆に礼を言いたい。俺らには無理だと言われていたにもかかわらず、ここまで来れたのには感謝している」

 

壇上にたった雄二は、教室の皆を見回してそう切り出した。

 

「意外だね、雄二がそんなこと言うなんて」

 

「いや、これは紛れもない俺の気持ちだ。 ここまで来た以上、絶対にAクラスに勝ち たい。世の中勉強さえ出来れば良いってものじゃねぇっていう事を……成績だけが全てじゃねぇって事を教師共に突き付けてやるんだ!」

「「「「そうだ、そうだ!!」」」」

「いや、雄二はともかく、君達は全く役に立ってなかったよね」

「「「…………」」」

 

あ、いっけない。折角の士気が……。

雄二も黙っていてくれ、と必死な表情で僕に懇願してるし。

 

「こ、こほん。皆、ありがとう。そして残るAクラス戦 だが、これは一騎討ちで決着を着けたいと考えている」

「……は?」

「誰と誰が?」

「一騎討ちするんだ?」

 

雄二の言葉に、教室中がざわめき出す。ま、普通に考えれば学年主席に一対一で挑むなんて自殺行為だしね。

 

「まぁ聞け。やるのは俺と翔子だ」

 

ざわめきが一段と大きくなる。当然だ、霧島さんの実力はクラス問わずに学年に知れ渡ってるんだから。

 

「坂本、何か策があるの?」

「一騎討ちのフィールドを限定するつもり だ」

「フィールド?何の教科でやるつもり じゃ?」

「日本史だ。ただし内容を限定する。レベルは小学生程度、方式は100点満点の上限有り。ま、召喚獣勝負じゃなく点数勝負だな」

 

美波の質問に雄二は答え、秀吉はその理由 を問う。 なんでそんな形式にするのかは分かるけど……ちょっと罪悪感沸くよね。

 

「俺がこのやり方を採った理由は一つ。そ れは、ある問題が出ればアイツは確実に間違えると知っているからだ」

「ある問題?」

「ああ。その問題とは………『大化の改 新』」

「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろ、とか?小学生レベルでそんな問題が出 てくるのかしら?」

「いや、そんなに掘り下げた問題じゃな い。もっと単純な問いだ」

「それは年号かの?」

「お、よくわかったな秀吉。そうだ、お前の言う通り、その年号を問う問題が出たら俺達の勝ちだ」

 

いや、確かにそれだったら霧島さんにも勝てるかもしれないけどさ。何故なら……ああ、もういいや。うん、それでいこう。

 

「あの……」

「なんだ?姫路」

「坂本君って、霧島さんと知り合いなんで すか?」

「ああ。アイツとは幼馴染だ」

 

そう、大事な幼馴染が教えてくれたこと だ。忘れるはずがないって!?

 

「総員狙えぇぇぇぇーーーっ!!!」

「なっ!?何故須川の号令で皆一斉に武器を構える!?」

「黙れ男の敵!Aクラスの前にキサマを殺 すッ!」

「俺が何をした!?」

「男とはッ!『愛』を捨て『哀』に生きる 者成りッ!それをキサマは汚らわしき欲望 を以て気高き才色兼備の霧島翔子を唆し、 我等の鉄の掟を踏みにじったのだッ!」

 

 

うん、こんなバカやらなけりゃ彼らにも春が来るかもしれないんだけど。そうなるのは何時になるのやら……。

 

「あの、吉井君」

「ん?何かな、姫路さん」

「吉井君は、霧島さんみたいな娘が好みな んですか?」

「うーん……」

 

腕組みをして暫し考える。

 

「確かに霧島さんは美人だけど…好きではないかな」

「……」

「けど好みかと言われたら、って……わーお、何で姫路さんが僕に対して攻撃態勢取ってるの!?そして美波、君は何故教卓なんて物騒な物を僕に投げつけようとしてるのかな!?」

「吉井君にはお仕置きが必要な様ですね」

「覚悟しなさいアキ。その性根を叩き直し てあげるわ!」

 

……おかしい。

僕と二人の会話が成り立ってないような気がする。

 

「だぁぁぁ!!とりあえず黙ってろ!!姫路に島田もだ!! 俺は小さい頃にアイツに間違った年号を教えていたんだ」

「貴様ッ!!まだ幼くて何も知らない純粋な霧島さんに嘘の情報を施していやがったのかッ!!」

「何て外道な奴なんだ!!」

「………許されざる行為…」

「えーい!黙れ黙れぇぇぇ!!!」

 

あのー、姫路さんに島田さん?

どうしてまだ攻撃態勢を解いていないのかな?

あはは、お空が綺麗だな。

なんてことを考えながら僕は現実逃避してた。

 

 

 




アルトルージュのしゃべり方を高校生風に変えました。いいですよね?正確な情報はのってないのですし!
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