魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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これは酷い文…


第10話

 

 「……営業妨害、ねぇ」

 

 一回戦を終え教室に帰ってくると、何やら騒がしかったので、扉の前にいた秀吉に事情を聞いてみたところ、どうやら三年生の二人が大声でFクラスの悪口を言っているらしかった。

 

 「…受験で忙しい先輩様がご苦労なこった。こりゃ何か裏があるな」

 

 雄二がため息を吐きながら、教室の奥にいる坊主とモヒカンの上級生を見やる。

 

 「ま、どちらにせよ締め出すとするか。アイツらも殺気だってるようだし」

 

 見れば周りで働いているFクラス男子達から、尋常ではない殺気が放たれ始めている。

 中にはフードを被り鈍器や刃物を手にしている者が見え始めているため、そろそろ場を納めた方が良いだろう。

 ネクタイを緩めはじめた雄二を明久は手で制した。

 

 「だめだよ。暴力じゃ事態を悪化させるだけ。穏便にいかないと」

 「その後の対策も考えてはあるんだがな…。まあお前に任せるとするか」

 

 どちらにせよ真っ当な対策じゃないと思う。

 そう思いながら明久は教室の奥へと足を進めた。

 

 「お客様」

 「「あぁ?」」

 「他のお客様の御迷惑になっています故、どうかもう少しお静かにお願いします」

 「はあ?本当の事を言って何が悪いんだよ」

 「その『他のお客様』の為を思ってこうしてやってるんだぜ。有り難く思え」

 

 

 ペコリとお辞儀し、懇切丁寧な明久のお願いを常夏は一蹴。

 明久の額から青筋が一筋裂ける音がした。

 

 「―――お客様」

 「しっつこいぞ!不味いもんは」

 「――お休みなさい。そして逝ってらっしゃいませ」

 

 我慢限界。

 流れるような手つきで二人の首筋に手を添え、軽い魔術をかけ失神させると教室の窓を全開し

 

 

 ―――ブォン

 

 

 三階に向かってぶん投げた。

 

 「……あれの何処が穏便だ?」

 

 雄二の呆れにも似た呟きを代弁するかのように、二人は風を切るような音を唸らせながら、吸い込まれるように三年生Aクラスの窓に入っていき

 

 

 

 ――バキバキバキバキッッッ!ドグシャッ!!

 

 

 

 

 (ん?なんか嫌な音が聞こえてきたような…)

 

 ――ような、ではない。

 明らかに聞こえていたのだ。

 机を次々と薙ぎ倒し、壁に激突するような音が。

 それを明久は『ま、大丈夫じゃない?悪運強そうだし』の一言で万事解決。

 ……意外と黒い。

 

 「しっかし、あれほど不真面目な奴らも困り者だよなぁ」

 「だよな。こんなにも真面目者の俺達を見習えってんだ」

 

 まるで他人事のように先ほどの先輩達を非難する――須川と武藤。

 と、そこで彼らの肩をつついたものがいたので振り返ると

 

 「ん、どうしたんだ吉井? 変な格好して。毒ガス現場にでも向かうつもりか?」

 「ていうか何だそりゃ。麻婆か?」

 

 そこには、ゴーグルとマスクをガッチリと装着し、ゴム手袋を着用した完全防備を施した明久が、赤く煮えたぎった麻婆を手に立っていた。

 

 「うん。僕の得意料理を作ってみたんだけど、ちょっと二人に味見してもらおうと思って」

 「俺達に?それは嬉しいが……その、な」

 「何かグロテスクな赤色してるんだが…」

 

 その表現は正しいと思う。

 唐辛子とラー油のみで煮込んだルーに豆腐を投入しただけのシンプルな麻婆。

 だが……真っ赤な液体の中で浮き彫り見える白い豆腐は、その…血の海地獄に浮いている人骨を連想させた。

 その名も外道マーボー。

 

 「大丈夫だって。知り合い(外道神父)も美味しいって次々と頬張ってたからさ」

 「そうだな。じゃあ一口だけでも(パクっ)」

 「ああ(パクっ)」

 

 

 「「…………(ゴシャ!!)」」

 

 その一口が命取り。

 瞬間、二人の身体を激辛という名の電撃が迸り、一瞬の内に意識を刈り取られてしまった。

 

 「僕に罪を擦り付けようとしたこと……まさか忘れたわけじゃないよね?」

 

 マーボーに顔を突っ伏したまま動かない二人を濁った泥のような瞳で見下ろす明久。

 悪事は必ず己に帰ってくるというのは本当のようだ。 

 実を言うと、この日の為にとあれから明久は唐辛子とラー油を何日もかけてじっくりと煮込んでいたのだ。

 優しそうな外見だけに囚われていると痛い目を見る事を忘れてはならない。

 

 「そ、それって……泰山麻婆?」

 

 後ろから恐怖に震えたような声が聞こえてきたので振り返ると、小学生くらいの女の子を連れた青子が顔を真っ青にしてこちらを見ていた。

 アルトに会いに行ってくるって言ってAクラスに行ってたんだけど帰ってきたようだ。

 

 「うん。完璧に再現できてるでしょ? 英雄王(金ピカ)さんもこれのお陰で盟友(エンキドゥ)に会えたって泣いてたよ♪」

 「英霊にダメージ与えるなんてもう宝具の域ね……」

 

 それは大変だ。

 無いとは思うけど、万が一僕が英霊になった時の宝具にこれが登録されることのないように、須川君辺りにでもレシピを押し付けて記憶を消去しておこう。

 

 「所でその娘は?」

 「うん、それなんだけどね。何か姉を探してるみたいだったから一緒に探してあげてたのよ」

 「そう。君、お名前は?」

 「ハイです。葉月と言うです!」

 

 女の子は頭の茶髪のツインテールをぴょこぴょこと揺らし、元気に挨拶した。

 

 「そっか。よろしくね、葉月ちゃん。葉月ちゃんはお姉ちゃんを探してるようだけど、名前は何て言うのかな」

 「ミナミお姉ちゃんです」

 「あれ?どうしてここにいるの葉月?」

 

 その声を聞いたとたん、思わず顔をひきつらせてしまった。

 葉月ちゃんの言うミナミとは美波の事を言っているのだろう。

 よくよく見れば、素直そうな顔に見える活気そうな瞳や茶髪は美波とそっくりではないか。

 

 「……性格は全く似てないわね」

 「…何か言った?」

 「何にも」

 

 何だろう。

 青子と美波の仲がとてつもなく悪い気がする。 

 

 「それより明久はAクラスに行ってあげなよ。アルトが待っているわよ」

 「アキ……?」

 

 どうして恋人に会いに行くだけでここまでも睨まれなければならないのだろうか?

 いや、ここにも恋人はいるんだけども。

 まあ青子がいる限り美波も手が出せないだろうし行くか。

 Aクラスだから当然霧島さんもいるだろうし、僕は嫌がっている雄二を引き摺りながらFクラスを後にした。

 そして当然のように美波と姫路さんを気絶させた青子も後から着いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ムッツリーニ。何してんの?」

 「……偵察」

 「いや、清涼祭に偵察も何もないよね」

 

 Aクラスに着いたとき、扉前で身を屈めてシャッターをきっているムッツリーニを見かけた。

 仮に偵察だとしてもあんなローアングルからは撮らないだろう。

 

 「……アルトルージュの膝写真、一枚500円」

 「そうだね。全部没収するから」

 「……そ、そんな!」

 

 てか人の恋人の写真を売らないで。

 

 押収した写真をポケットに押し込みながら、Aクラスに入っていった。

 

 

 

 「いらっしゃいませ、ご主人様」

 

 中に入ると、メイド服を着た優子さんと霧島さんが出迎えてくれた。

 こうして見てみると優子さんには優子さんなりの魅力があるから、秀吉とはもう間違えないや。

 

 そんな事を考えていると、彼女の後ろから霧島さんがひょこっと現れて

 

 「………いらっしゃいませ。今夜は帰らせません、ダーリン♪」

 「今帰ってもいいか……」

 

 「お姉さん。夜も帰らないのですか?」

 「葉月ちゃんはまだ知らなくていいからね」

 

 無意識にこんな発言するから霧島にも困った所がある。

 何やら騒々しくなっているので奥を見ると、アルトが周りに集まっているであろうお客をかき分けて此方に向かってくるのが見えた。

 

 「来てくれたのね、明久」

 「当たり前でしょ。淑女をエスコートするのは殿方の役目って言ったのはアルトなんだから」

 「それもそうね。ふふ」

 

 ……何だろう。

 すっごく周りから僕を射殺すような視線を感じる。

 

 『このクラスは良いよなぁ!』

 『ほんと。Fクラスの不味い出し物とは大違いだぜ!』

 

 

 ……ええと。

 何て言えばいいのやら。

 兎に角、諦めの悪さだけはよく分かった。

 あそこまでやられたのに今こうしていることが、それをよく表している。

 

 「さて、どうしたものか」

 「そうだな。今ここでアイツらを締めても、俺達Fクラスの評判が悪くなる一方だ」

 

 あの二人の記憶を全面的に消しておけば問題は無いのだけど、何時何処で魔術協会が見てるか分からないからそれは出来ない。

 雄二は雄二で頭を巡らせて考えてくれてはいるのだけど、こればかりはどうやら思い浮かばないらしい。

 二人並んで唸る僕ら。

 そんな僕の肩をつつくものがいたので振り返ると

 

 「「………(ニコッ)」」

 

 何故か二人仲良くメイド服を手にして僕を見つめるアルトと青子。

 

 ……つまりそれを僕に着ろと?

 

 そんな気持ちを読んだかのように頷く二人。

 

 ほうほう成る程。

 つまり誰かが女装して気づかれないように常夏どもの評判を地に叩き落としてこいとな?

 うん。

 確かにそれならFクラスだとは分からないし、良いアイデアかもしれない。

 というわけで、クレーマー撃退女装作戦が実行されることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで二人とも」

 「「どうしたの?」」

 「あれを着るのって……」

 「「明久」」

 「いやぁあああああ!!??」

 

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