魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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第11話

 この時ばかりはあの二人を恨まずにはいられない。

 改めて見つめ直した手鏡には、透き通るような銀の長髪に、雪のような白い肌、そして血を象徴する真紅の瞳を煌めかせている絶世の美女……あ、いや自分で美女っていうのはおかしいか。

 とにかく自分でも見とれてしまいそうな程たおやかな女の子に仕立て上げられてしまったのだ。

おまけに『可愛い!!』と頬ずりされ、挙句のスリーショット(撮影者:ムッツリーニ)

 

 「––––って訳なんだけどさ……幾ら何でも酷いと思わない、雄二」

 「そ、そうだな……っ」

 

 お願いだから顔を紅くしながら話さないでほしい。

男にそんな反応見せられても嬉しくない。そして霧島さん、何故貴女は僕を抱きしめて頬を突ついてるのかな?

 

 「………可愛いから」

 

ごめんそれ全く理由になってないから。

 

 「今更だけどよ。お前の地毛って茶色だったろ?それが今は銀髪。ここ数年の間にどうやったらそこまで色素が抜け落ちるんだ…」

 

 何気無い雄二の呟きにギクリと肩を震わせる。

 色素の脱色については投影の酷使による副作用によるものだけど、今それを悟られる訳にはいかないんだ。何せこれはアルトや青子にも黙っている事だから。

 この事を知った二人の悲しむ顔なんて見たくないし、この事を知った二人に殺されたくない(ここ大事)。

 

 「ま、それはそれでアルビノみたいで似合ってるけどな」

 「………うん。アルビノは病状だけど女の子には憧れてる人もいるから」

 

 良かった。

 理由については言及されなかった。……でもアルビノ、ね。

 ちょっとだけ似てるかもしれない。でも僕としてはどちらかと言うとホムンクルスの方だと思う。

 

 「それはそうと翔子」

 「………何?」

 「……彼方此方で絶望してる女子達を慰めて来い」

 「……………う、うん」

 

 雄二が指差した先には、僕を見ながら床に手をついて号泣してる優子さん達女子一同。

 いや、だからやめて。

 それされると僕も居た堪れない気持ちで傷付くからさ……。

 

 心の中でさめざめと泣きながら未だにFクラスの悪評を喚き散らしている常夏の所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 「お客様、周りにご迷惑ですので静かにお願いします」

 「あ"ぁ?–––って、へえ」

 「こんな綺麗な女もいたのかよ」

 

 振り向きざまに僕の全身をイヤらしい目で舐めるように見つめてくる常夏。

 背筋にゾゾゾっといった悪寒が駆け巡り思わず両腕で身体を抱いてしまう。その仕草が二人を興奮させてしまったのか、常夏の口元は一段と吊り上っていた。

 ……いけない。

 この手の事は初めてなので、平常心を保てなかったみたいだ。

 

I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)——)

 

 瞳を瞑り、慣れ親しんだ自己暗示にも近い呪文を心の中で呟く。

 うん。大分落ち着いてきた。

 一言目で分かったけど、ただ単に丁寧にお願いするだけでは相手に嘗められる事が分かった。

接し方を変えなくては。

 

 「その飾りの耳では聴こえないですか。周りにご迷惑ですので口を慎めと言っているんです」

 優しく接しても相手をつけあがらせるだけ。ならば毒を以って話さなければ。

 

 「……ッ!」

 「テ、テメェ……!」

 

 あの外道シスターの毒舌には片鱗すらも届いていなかったので、どうなるかと思ったけど案の定キレてくれた。それだけでなく凄い短気らしいのか僕に掴みかかって来た。

 

 「……女の子に掴みかかるなんて最低ですね。これはそれ相応の罰を受けて貰わねば」

 

 そう言うとスカートのポケットに手を入れ、

 

「……捕らえよ、天の鎖(エンキドゥ)

 

 周りに聴こえないように真名を開放し、ポケットから引き抜くような感じで投影した鎖を解き放ち二人を縛り上げた。

 

 「な、何しやがるんだ!?」

 

 鎖から抜け出そうと必死にもがく二人。けどそれは悪手だ。

天の鎖(エンキドゥ)は特性上、神性の高いものにその効果を発揮するが、それは人間であっても少なからず効果的だ。

 ましてやこの二人は魔術も知らない一般人。

天の鎖は二人が暴れれば暴れる程強く縛り上げていく。

 

 「おーい明久」

 

 後ろから雄二がやって来たので振り返る。

 その時、開いた窓から突風が吹き込み僕のスカートを一気に持ち上げた。慌てて押さえ込むが時すでに遅し。

 

 「二人の処刑はもう済んだかって…………花柄の白?」

 

 その一言で僕の顔は真っ赤に染まってしまった。雄二の顔も紅く染まり出している事から聞き間違いではないのは間違いない。震える口から辛うじて言葉を紡ぎ出す。

 

 「き」

 「き?」

 「キャァァァ天の鎖よーーーっ!!!!」

 

 絶叫に近い悲鳴を上げ、真名を開放する。

 

 「ちょ、ちょっと待てギャァァァァ!!??」

 

 それも無意識に真に迫る程の骨子で投影していた為、これでもかという程雄二をキツく縛り上げていた。

 

 

 アルトに青子。

 せめて……せめて下着だけは本格的にしないで欲しかった。

 生まれて初めて女の子らしい悲鳴を上げてしまった事に、僕はこの先に一途の不安がよぎって仕方ありません。

 

 

 

 

「これより召喚大会第二回戦を始めます」

 

 時刻は昼、会場のフィールドには対戦相手である小山さん、根本君にペアである至る所傷だらけ(アルトと青子にやられた)な雄二が対峙している。

 

 「ははっ!問題児コンビが相手とは楽勝じゃないか!」

 

 僕達を見て小馬鹿にし出す根本君。対称的に小山さんは小首を傾げて

 

 「その……どうして坂本君はぼろぼろなのかしら」

 

 ある意味当然な質問をぶつけてきた。全てを話すとなると長くなりそうなので、簡潔に纏めて説明するとしよう。

 

 「その……初めてを見られて」

 「女の敵ね(キッパリ)」

 「おい待て明久!お前の簡略すぎる説明のせいで凄い誤解を招いてるじゃねぇか⁉」

 これだけで全てを察してくれた小山さん。やはり女の勘は恐ろしい。

 

 「吉井君、同情するわ。だから気を取り直して」

 

 それだけでなくこちらの心配までしてくれて思わず涙しそうになった。

 

 「始めてください」

 

 こんな状況下でも冷静な高橋先生の合図によって僕達は召喚獣を召喚する。

 僕の手には前回と同じく漆黒の弓に矢。二、三本程指につがえ引き絞ると、牽制の為に足下に連射する。

  相手(まと)を狙うわけではない。故に己の心を狙うなんてしなくていい––––最初から的から外れる感覚で放つだけの事なんだから。

 

 三本の矢は寸分違わず目標の地点に突き刺さり、疾走していた二人の召喚獣は足を止めた。

 

 「……もしかして吉井君って、弓道習ってた?」

 「あ、やっぱり分かる?」

 「じゃあ中学の県大会準優勝者の吉井って…」

  期待の眼差しを籠めてこちらを見つめる小山さんに、僕は頷いて肯定する。

 

 「きゃーやっぱり!私茶道やってるから日本の文化の弓道にも興味あったのよ!あの時は惜しかったわね。怪我さえしなければ全国制覇も夢じゃなかったのに…」

 「全国だなんて、そんな大げさな…」

 「ううん!そんな事ないわ!見てたけど百発百中だったじゃない」

 

 もはや二人だけのきゃっきゃウフフである。なぜこんな表現にしたのかと言うと、傍から見れば仲の良い女子の会話にしか見えないからである。

そんな彼女を見て

 

「友香、今は勝負に集中しろ!」

「棄権するわ」

「うぉぉい!!?」

 

注意を促すが、小山さん即拒否。

 

「だって射の名手よ。絶対勝てないわ」

「くっ!だったら俺だけでも『根本DEAD』うぉぉい!?」

 

何やらこちらに走ってきたので、急所である頭蓋を一撃ち。

それだけで彼の召喚獣は光の粒子となって姿を消した。

 

「……だから無理と言ったのよ」

 

Cクラス 小山友香 棄権

 

Bクラス 根本恭二 DEAD

 

「勝者Fクラス 坂本雄二&吉井明久ペア!」

 

こうして二回戦は意外な形で僕らの勝利で幕を閉じた。

ちなみにこの後小山さんと割りと仲良くなった。

 

 

 

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