「んじゃ明久、Aクラスに交渉しに行くから着いてきてくれ」
「了解……って、何故に僕だけ?」
二人だけで交渉に行くのって大丈夫?
「本当は秀吉とムッツリーニにも来てもらいたかったんだが……そうなると余計なのも着いて来るからな。あまり場を混乱させたくない」
後ろの姫路さんや美波を見ながら、雄二はため息混じりにそう呟いた。
確かに、先ほどの件を考えるとその考えは妥当だと思う。
「失礼するぞ」
「あらあなたは……代表の旦那さん?」
「誰が旦那だっ!?」
Aクラスに入るなり、いきなりの漫才に思わずずっこけそうになるのを何とか踏みとどまった。
「まあいい。翔子はいるか?」
「代表?ちょっと待っててね」
そう言うと優子さんはパタパタと教室の奥の方へ駆けていき、しばらくして黒い長髪の女性を連れて戻ってきた。
「………呼んだ、雄二?」
雄二の元へ駆けつけたときに気づいたのか、彼女の視線が僕の方へと移った。
それに気づき、僕は彼女に片手を挙げると彼女もコクりと頷いてくれた。
「霧島さんおはよう」
「うん、おはよう明久」
霧島さんが雄二以外の男子の僕に心を開いてくれるようになったのって、確か中学の『ミシッ』時だったな……って、何か腕が痛いんですけど!?何で美波と姫路さんがここにいるの!そして何で僕に間接技極めてるの!?
「どういうことアキ。何で名前呼びにされてるのかしら!?」
「そうですよ。どういう事ですか、吉井君?」
何でそれだけでこんな事態になってるのかは分からないんだけど、とりあえずは
「二人とも、場を混乱させたくないからひとまず離して」
「な、何で痛がってないのよ!?」
間接を極めてるのに、顔色一つ変えない僕に驚愕する美波。だのに離そうとしない辺りの執着は関心ものだ。
「二人とも、話が進まないから明久君の腕を離しなさい」
「木下は黙ってて!」
「そうです!黙ってて下さい!」
「いいから離しなさい!!!」
「「っ!!?」」
彼女の剣幕に怯み、束縛が緩んだ隙を見計らってするりと抜け出した。
「おい、姫路に島田。お前らは教室に戻ってろ」
「嫌よ、アキにオシオキしなければいけないんだから」
「ええ、オシオキが終わってません」
あ、雄二のこめかみに青筋が一本増えた。
「おい、二人とも……」
「しつこいわね、嫌と言ったら嫌――」
「俺に二度も言わせるなよ?」
「「ヒッ!?」」
一文字一文字に含まれた殺気に二人は思わず悲鳴を上げた。
「鉄人、この二人を連れ戻してくれ」
「西村と呼べと言ってるだろうが。まあいい、ほら、戻るぞ」
何処からともなく現れた西村先生は、ため息をついて姫路さん達をFクラスの方へと引きずっていった。
「……明久、大丈夫?」
「大丈夫、僕が頑丈なのは霧島さんが良く知ってるじゃない。でも心配してくれてありがとうね」
「……いい。明久にはお世話になってるから」
「うちの者がすまなかったな、翔子。 ここには試召戦争として Aクラス代表に一騎討ちを申し込む布告をしにきたんだ」
「……そろそろだろうとは思ってた」
流石にDクラス、Bクラスに勝利したとなるとそれくらいは気づくか。 霧島さんは後ろを振り返ると、優子さんに助言を求めるも
「……どうする?」
「そうね……受けてもいいんだけど」
そこで木下さんは雄二を見て、難しい表情をした。
「坂本君が何の勝算も無しに、こんな提案してくるとは思えないのよね」
ギクリと震える雄二の肩。
優子さん……君はすごく恐ろしいよ。
「なら各クラスからの五人勝負で試合したらどう?」
その声を聞いたとき、僕は懐かしさで心が温まるのと同時に、背筋に悪寒が走るのを感じた。
どうして……どうして
「アルトがここにいるのさっ!?」
「あら、折角の再会だと言うのに随分ね」
此方に歩いてくる少女。 周囲の光を吸収し、艶めいているような漆黒の髪、透き通るような純白の雪のような肌。そして赤よりも濃い血のようなルビーのような瞳。
「それはいいかもしれないわね」
優子さんはアルトの提案に深く頷く。
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ああ、これが明久の言ってた
「ちょっとあんた誰よ!」
って島田!!お前どうやって戻ってきたんだ!?
鬼のような表情をしながら、島田はアルトルージュと呼ばれた少女に向かって詰め寄る。
しかし、その前に明久が立ち塞がった。
「ごめん美波、姫に近づかないでもらえる?」
「どいてアキ、ウチは後ろのヤツに話があるのよっ!」
「いい加減にしないと、そろそろキレるよ…」
その一言で島田は凍りついたように動かなくなった。いや、理由は明久の瞳か。
今のアイツの目は何時ものような穏やかな感じではない。
見るもの全てを標的に捉えるような、鷹の様に鋭い眼光を放っている。
「あぁー、すまん。話進めていいか?その…」
「アルトルージュ・ブリュンスタッド。アルトルージュで良いわよ」
「アルトルージュが言ったのでいいか?」
「……うん、条件は負けた方がなんでも言うことを一つ聞く、で」
まあ、こちらの要求ばかりだからそれくらいは仕方ないか。て、おいムッツリーニ。何カメラの手入れを始めている。そして男子共もなに白板なんか用意してるんだ。お前ら何か重大な勘違いしてるぞ……。
「分かった、それでいこう。じゃあそろそろ戻る事にする。またな、翔子」
「じゃあね、霧島さん、アルトも」
「……うん」
「さ、いこう雄二」
「…お前なんでそんなに焦ってるんだ?」
その原因はすぐに分かった。
ふと、後ろを見るとアルトルージュは微笑みながら明久の後ろを見つめていた。
ただ、その笑みは何だか………この世の物とは思えないほどに、怖かった。
……彼女に何をした、明久。
こうして明久に急かすように背中を押されながら、俺達はFクラスへと戻った。
「アキ!!さっきの人とはどういう関係よ!!」
教室に戻るなり、また小うるさいのが明久に詰め寄っていた。
「どういう関係なんだ、明久」
その点は俺も気になっていたので明久に聞いてみる。当の明久はどう答えたらいいのか難しいのか、しばらく考え込んでいた。
「そうだね。簡単に言えば護衛の騎士、かな?」
「「「「「騎士?」」」」」
「うん、それと恋人」
「「「「「恋人っ!?」」」」」
騎士といった言葉には、今一ピンと来なかったのに、恋人という単語には急に殺気立つFFF団と女子二人。
だが、明久の鷹の目により行動を牽制され動けずにいた。
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