魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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第3話

 

 

「一回戦の代表は前に出てきてください」

 

 まず始めにAクラスから出てきたのは優子さんだった。いきなりの重要戦力にこちらのペースが崩れそうになる。

 雄二はというと、あまり調子が乱れていないのか口元に笑みが浮かんでいた。

 

「よし、使い捨て装甲板作戦を実行する。須川逝ってこい!」

 

「断る!名前からして碌なことがない!」

 

うん、その辺りに関しては須川君に同情する。

それじゃあ彼に死んでこいと言ってるようなものだ。

しかもそれを平然と言ってのける所がまたなんとも……。

雄二はわざとらしくため息を吐くと、何やら諭すように須川君に語り始めた。

 

「はぁ……。いいか、須川。確かに名前の通り捨て身の作戦なのは間違いないだろう。だがな、よく考えてもみろ。自らを犠牲にしてでもクラスを勝利に導こうとする男、他の人からはどう見える」

 

「どうって……」

 

「憧れの対象、上手くいけば女子からの注目の的かもよ」

 

「行ってくるぜっ!!」

 

 

 

――Fクラス 須川亮 DEAD ――

 

 

 

「ま、捨て身でもそこそこ頑張ってくれなきゃモテるわけねぇけどな」

 

「君は悪魔だ」

 

 こいつ……後になってからいい笑顔でさっぱりと言い切りやがった。っていうか何でLOSEじゃなくてDEAD?

 

「次は明久だ、頼んだぞ」

 

「そうだね、僕的にもこのあたりがいいタイミングだと」

 

「じゃあ私がいくわね」

 

「――思うわけないよね。もう少し様子を見るよ」

「明久、お前の意見は無視する。さっさと行け」

 

「酷くないっ!?」

 

 本人なのに!

 ……行くの怖いな。だってアルトがすごい笑顔で僕を手招きしてるんだ。しかも目は笑ってない。

 

「教科は日本史でお願いします」

 

 まあ、今はとにかく勝って早いとこ逃げ出そう。幸い科目選択権はこちらにあるし、日本史だったら日本人では無いアルトには分が悪いはず。

 

 

 

Fクラス 吉井明久 (185点)

 

     VS

 

Aクラス アルトルージュ・ブリュンスタッド

        (375点)

 

 

 ………は?

え、え、ちょっと待って。

何、あの点数。

何で日本人でもないアルトがこんなに取れてるんだっ、てそうかっ!?

 

「私は日本人では無いけど、あなたよりは長く住んでるわよ」

 

 そうだったぁぁーーっ!!??

 よく考えればアルトって、僕の何十倍も生きてるんだった。そりゃ出来て当然か。だって、直接歴史を体験してきてるんだもの。

 

「積もる話がいっぱいあるから早く終わらしましょうか」

 

「それは遠慮するよ……フッ!!」

 

 そう言うと、アルトの召喚獣に向けて木刀を投擲する。

 

「っ……扱いずらいわね……!」

 

 アルトは強引に召喚獣の身体をのけ反らせ、何とか鋭い回転音を響かせながら直襲してくる木刀を避けた。木刀はアルトの召喚獣の真横を通りすぎ地面に突き刺さり

 

「「「!!??」」」

 

 その周囲のフィールドに大穴を空けた。

 あの木刀には鉄甲作用がかけてあって、ぶつかったものには相当なダメージを与える。

 舞い上がった土煙を掻い潜って、今度はアルトの召喚獣がこちらに向かって攻撃してきた。

 

「武器なんて捨てたからよっ!?」

 

後ろから美波の怒声。

うん、確かにそう思いたいのも分かる気がするよ。でもね、

 

「――投影(トレース)

 

 

 

開始(オン)――」

 

 

ギィィンッッッ―――!!!

 

 

 それを僕は手にした白と黒の双剣を交差させて、受け止める。……っぅ、何て重さなんだよ。

 

「「「「え?」」」」

 

ふと周りを見ると、皆が驚いていた。

 

「吉井君、それは?」

「はい、高橋先生。実は僕……魔法使いなんです」

「怒りますよ」

「すみません。多分、僕としての特質が召喚獣に影響したと考えてもらったらいいと思います」

 

 ……魔法使いっていうのも近からず遠からずなんだけどね。

 アルト達の元を離れ、しばらく旅を続けている間、僕は確実に強くなった。いい師匠達に恵まれ、いい仲間とも出会い、今の僕がいる。簡単にはやられないよ?アルト!

 

 

 それからしばらくの間、A・F関わらずそこにいた全員の生徒が、二人の戦いに魅入られていた。

 アルトルージュによる辛うじて目に追えるような強襲の嵐、それを明久は攻撃の方向を外に逃がすようにして、一撃一撃を確実に捌いている。

 しかしそれも段々と戦況に変化が現れ始めた。

 操作に慣れ始めたアルトは次第に明久を圧倒し始めたのだ。

 

「いつまでもこのペースじゃ、間違いなくこっちが負けるね。そろそろ決めなきゃ」

 

 僕は召喚獣に手にしていた『干将』をアルトの召喚獣に投擲させると、莫耶を構えそのまま突進する。アルトは干将を避け、莫耶をもって突っ込んできた僕を受け止める。

 だけどそこで終わりじゃあない。

 後方から僕に向けて戻ってくる干将がアルトの召喚獣に襲いかかり、とどめを!

 

 

 

 

 

――刺すことはできなかった。

アルトはギリギリの所でそれを回避し、干将は僕の召喚獣に深々と突き刺さったのだ。

 同時に僕の腹部に刃物で貫かれたような激痛がしたけど、それは一瞬で治まった。相変わらず吸血鬼の身体ってすごいな……。

 僕の召喚獣は光の粒子と化して、姿を消した。

 

F クラス吉井明久 (0点)

 

    VS

 

Aクラス アルトルージュ・ブリュンスタッド          (112点)

 

 

「勝者、Aクラス」

 

教室に高橋主任の声が響き、この試合はAクラスの勝利となった。

 

「お疲れさん」

「ありがと、それとごめん」

「いや、よくやってくれた。お前のお陰だけでも学力だけが全てではないって証明になったしな」

「そう、ならよかった。何だか疲れたから休んどくね」

 

 奥に進み壁にもたれ掛かるようにして胡座をかく。 そして、そのまま襲ってくる睡魔に素直に従うようにして、僕は眠りにおちいった。

 

 

 

 

 




明久がこんな能力を持ってるのには訳ありです。
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