魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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第4話

「……寝ちまったか」

 

 俺は壁に身を預けて、静かに寝息をたてはじめた明久を見てそう呟く。

 

「雄二よ、いいのかの?まだ試合は残っておるというのに……」

 

「いいんだ秀吉、少しは休ませてやれ」

 

 スースーと、規則正しい呼吸を繰り返している明久の寝顔――そこからは蓄積されたような疲労がありありと滲み出ていた。

 

「今までに何があったか知らないが苦労してたんだな」

 

「そうみたいね」

 

 俺の呟きに同意するようにして、隣にアルトルージュが現れる。彼女はそのまま明久の側まで寄り、そして壁にもたれ掛かってる明久の頭をそのまま自分の膝へと移動させた。これが所謂膝枕ってやつか。

 

「とても厳しい『世界』で生きてきたのね」

 

 アルトルージュは明久の寝顔を見て、確信したようにそう呟くと、頭を撫ではじめた。

 こうして見ると、二人が恋人なんだなって改めて実感できるな。って秀吉?何でそんなに羨ましそうな顔してるんだ?

 

 あとムッツリーニ――

 

「カメラをしまえ」

 

「………そ、そんな……っ!?」

 

 いや、気持ちは分かるがちゃんと本人に同意を得てから撮れ。確かにあの二人の組み合わせなら学園の奴(主に女子)に人気がありそうだけどな。

 

『会長、あの異端者をどういたしますか?』

 

『うむ殺せ』

 

『『『はっ!』』』

 

……やば。FFF団の存在すっかり忘れてた。

 

「……ムッツリーニ、やっぱ撮影許すからアイツら片付けるの手伝え」

 

「………御安い御用!」

 

 こうして俺とムッツリーニは明久を守るべくFFF団と乱闘を始めたのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ……。手間かけさせやがって」

 

「………一瞬で終わると思った。大きい誤算」

 

「お疲れなのじゃ」

 

 俺達の目の前には人の山。そして隣には息切れぎれのムッツリーニ。俺も殴っては投げての繰り返しで何だかんだ言ってちょっと疲れた。

 

「……それにしても姫路に島田は諦めが悪いのう」

 

 同感だ。今はアルトルージュが睨みを効かせてるから動きを見せないが、ちょっとでも目を離すとすぐさま襲いかかろうとするだろう。

 

「ムッツリーニ。行ってくれ」

 

「………分かった」

 

「じゃ、僕が行こうかな」

 

 向こうから出てきたのは、ショートヘアの緑髪の女子。……今までこんな女子はいなかったと思うが?

 

「1年の終わりに転入してきた工藤愛子だ よ。よろしくね」

 

「教科は何にしますか?」

 

「………保健体育」

 

「土屋君だっけ?随分と保健体育が得意みたいだね?」

 

工藤がムッリーニに話し掛ける。

 

「でも、僕だってかなり得意なんだよ?…… キミとは違って………実技で、ね♪」

 

「………じ、実技…(ブシャァァァ」

 

「「「「ムッツリーニィィィ!!??」」」」

 

 まだ十分もたってないのに復活するウチの男子。この生命力のせいで手こずったんだよな。

 

「大丈夫か?ムッツリーニ」

 

「………問題ない」

 

……それほどの出血量は大丈夫とは言わんぞ?

 

「そっちの、吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育でよかったら僕が教えてあげようかな? もちろん『実技』でね♪」

 

「アキには永遠にそんな機会来ないから保健体育の勉強も要らないわよ!」

 

「そうです!永遠に必要がありません!」

 

 こいつら、すごく失礼で酷いこと言うよな。須川あたりだと血涙流しながら自殺してるぞ……。

 ていうか二人は明久が好きなんだよな?これ聞いてる限り、すげぇ疑問に感じるんだが。

 

「………」

 

「ん、どうしたアルトルージュ?無言になったけど」

 

「ふふ、気にしなくていいのよ」

 

「……あん?」

 

 

 

 

 パスを繋ぐときにもうヤっちゃってる明久でした。

 

 

 

 ……ていうかアルトルージュって、すごい整った身体つきしてるな。

 待て待て翔子、俺に殺気を向けるな。ていうか何で俺の一人言にも等しい思考をキャッチ出来るんだお前は……。

 背筋に冷や汗が垂れるのを感じた。

 

「そろそろ召喚してください」

 

 高橋先生、冷静すぎるのもダメなんだが……。

「はーい。サモンっと」

 

「………サモン」

 

二人の召喚獣が姿を現す。 ムッツリーニの召喚獣は小太刀二振り。対して、工藤の召喚獣は…

 

「なっ、何だあの巨大な斧は!?」

 

見るからに破壊力抜群そうな大戦斧に加え、腕輪まで装備しているか。強そうだな。

 

「では第三試合、始めっ!」

 

「実践派と理論派、どっちが強いか見せて あげるよ」

 

 

 ………テストの点数や召喚獣の勝負に、実践派も理論派もないと思うのだが?

 

 

 

「……工藤愛子、お前では俺には勝てない」

 

「へぇ〜自信満々だね。けど――っ!」

 

工藤の召喚獣はムッツリーニの召喚獣に突っ込んで行った。

 

「それじゃあ、バイバイ。ムッツリーニ 君っ!」

 

「………加速」

 

「…え?」

 

「………加速、終了」

 

[保健体育]

 

Fクラス 土屋康太 572点

    VS

Aクラス 工藤愛子 423点

 

 

 さすがムッツリーニだ。 保健体育だけならこの先もコイツを超せる者はいないだろう。

 後は他の科目にも、その情熱を向けてくれれば願ったりかなったりなんだけどな。

 

「そんな……」

 

 余程保健体育に自信があったのか、膝をついて呆然とする工藤。ま、これが最後の勝負って訳じゃないから次頑張れ。

 

「………終わった」

 

「あぁ、さすがだ」

 

「……これでAクラスの2勝1敗ですね。次の方どうぞ」

 

「じゃあ姫路頼む」

 

「あ、は、はい」

 

さて、この勝負が一番の問題なのだが……

 

「それなら僕が相手をしよう」

 

 そろそろ次席が出てくるとは思った。久保は一年の頃から姫路の成績に執着したって噂があったからな。

 

「科目はどうしますか?」

 

「総合科目でお願いします」

 

「構いません」

 

 故に、あの二人には大それた点数差はないはずだ。恐らくこの試合、点数の高い方が勝利する。

これまでを見ているあたり、姫路の方が僅かに高かったとは思うのだが。

 

「それでは開始してください」

 

「「サモン!!」」

 

総合科目

 

Aクラス 久保利光 3998点

   VS

Fクラス 姫路瑞希 4403点

 

 

……これは予想の範囲外だ。

 

「マ、マジか!?」

 

「いつの間にこんな実力を!?」

 

「この点数、霧島翔子に匹敵する ぞ・・・!」

 

 姫路の方が上だとは思っていたが、これほどまでに上がっていたとは……。

 

「く……っ!姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ?」

 

「……私Fクラスの皆の事が好きです誰かの為に一生懸命になれる皆がいる、このクラスが」

「Fクラスが好き?」

 

「はい。だから、頑張れるんですっ!」

 

 ……言っている事には賛成しかねるが、 この勝負……姫路の勝ちだな。

 

 

 後は俺か……




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