魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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第5話

 

「……んっ」

 

 結構寝たような気がする。……っていうか寝る前と今とで何かが違う。

 まず何で視界が横向けになっているのだろうか?そしてこの温かいクッションみたいな感じがするのは何なんだろう。

 

 徐々に頭が回転していき、状況が段々と分かってきた。

 

「……アルト、何やってんの?」

 

「膝枕よ」

 

 成る程、膝枕か。

それならこの柔らかい感触も頷ける。

うんうん。

 

……いやおかしいでしょ。

 

「まあいいや。それより……っと、いたいた。雄二」

 

「何だ明久?」

 

「今どれくらいまで進んだ?」

 

「次が俺ってとこまでだな」

 

 もう最後じゃないかっ!?

 

「……ゴメンナサイ~ダイブネテマシタ~」

 

「分かった。分かったから土下座して片言で謝るな…」

 

良かった。

どうやら気にしていなかったようだ。

 それなら再びアルトの膝に顔を埋めて眠りにつくと――

 

「寝るなよ?それを見てると流石の俺も殺意沸くからな」

 

しようという贅沢な考えはどうやら許してもらえそうにないらしい。

 

 

――――

 

 

「最後の方は前に出てきてください」

 

「……はい」

 

 高橋先生の指示に前に出てきたのは霧島さん。

 そしてこちらからは雄二が出る事になる。

 そういえば

 

「ねえ、アルトがここに来たってことはもしかして……」

 

「ええ。彼女もいずれここに来ると思うわ」

 

あ、やっぱりですか……。

 ま、アルトの表情を見る限り上手くやっていってるみたいだ。

 脳裏に輝くような長い黒髪を翻し、不機嫌そうな表情をした彼女を思い浮かべると思わず笑ってしまった。

 

「教科はどうしますか?」

 

「日本史、内容は小学生レベルで百点満点の上限ありで頼む」

 

 予想していたことではあったけど、やはり雄二の宣言にAクラスからざわめきが起こった。   ま、それが普通の反応ではあるんだけど。

 

「上限ありで小学生レベルだって?」

 

「そんなの満点確実だろ」

 

「わかりました。しかし問題を用意しなくてはいけませんので、しばらくの間待機していてください」

 

そう言って高橋先生は教室を出て行く。

 

「アルト」

 

「どうしたの?」

 

「……彼女、怒ってた?」

 

「『明久はどこいったのよぉぉ!!?』って絶叫してたわよ」

 

「うわ……怒ってるねすごく」

 

四年前に知り合って仲良くなってから

長い間姿を眩ましてたからなぁ。

 

 

「では準備が出来ましたので移動しましょ う」

 

高橋先生が戻ってきたので雄二と霧島さんは教室を出て行った。 少ししてプラズマディスプレイに二人の姿が映る。

 

「では教科は日本史、内容は小学生レベル で方式は百点満点の上限ありです。 カンニング等の行為は失格となります」

 

「……はい」

 

「ああ」

 

「では始めてください」

 

 誰もが固唾を飲んで見守る中、ディスプレイに一問ずつ問題が表示される。うわ…簡単すぎる。  さすが小学生の問題だ……。

 僕としては、こういった勝ち方はあまり好ましくないんだけど……出てるかな?

 

――( )年大化の改新――

 

あ、出てる。

 

「これで、ウチ達も」

 

「ああ。これで俺たちの卓袱台が」

 

「「「システムデスクに!」」」

 

 要の問題が出て歓喜に騒ぎ始めるFクラス。それを僕は複雑に、その事を知らないAクラスは不思議そうに見ていた。

 

「終了です。筆記用具を置いてください」

 

 終了の合図をし、高橋先生は二人のテスト用紙を回収し採点する。

 しばらくして雄二と霧島さんが戻ってきた。  そして高橋先生の採点も終え、2人の結果が表示された。

 

【日本史勝負 100点満点】

 

Aクラス 霧島翔子 97点

 

VS

 

Fクラス 坂本雄二

 

 

 

 

 

97点

 

 

 

 

 

「ははは!間違えちまったっ☆」

 

「「「坂本ぉぉおおお!!!!!!!」」」

 

 良い笑顔で頭をかく雄二に怒り狂ったFクラス男子勢を抑えながら、僕はその後に複雑な表情をしている雄二に近づく。

 

「……さっきの、わざと間違えたんでしょ?」

 

「ああ、こんな勝ち方……今思えば全然俺の望んでいたものじゃないからな。その、すまん……」

 

「ううん、安心したよ。僕としてもこの結果で良かったと思う」

 

「……ありがとな」

 

「この後どうするのか、双方の代表者で話 し合い、決めてください」

 

これ以上やっても負けるか相討ちか?

 

「なら条件付きで終戦でいいかしら?」

 

 しばらく顎に手を添えて考え込んでいた優子さんがそう言うと

 

「なっ、優子!?」

 

「このままいけば勝てるのに……」

 

「……優子の言ってることは正しい。Fクラスに追い込まれたのも 事実だし、それに――」

 

霧島さんはAクラスの生徒達をゆっくりと見渡し、

 

「……それにこのまましても勝てるなんて保証はどこにもない」

 

「え?」

 

「……今出た私達Aクラス主力の点数はさっきのテストで殆んど無くなったに等しい」

 

 なるほど、此処で雄二が姫路さんかムッツ リーニのどちらかを一対一に持ち込ませれば……

 

「それでいいのか?」

 

「……うん」

 

「じゃあ此方は3ヶ月試験戦争を行わないってことでいい?代表」

 

「……うん」

 

「分かった。此方は和平としてそれを受け入れる」

 

教室があれ以上劣化しないなら3ヶ月の試験戦争禁止は軽いか。

 

「……それとすまんな翔子。俺はあの時の事をダシにお前に勝とうなんて考えちまってた。この勝負、俺の負けだ」

 

「……なら命令権は私」

 

「そうだな」

 

 

おーいムッツリーニ。何故にカメラ取り出してるの?

 

「手伝うぜ、ムッツリーニ!」

 

「千載一遇の百合光景を見逃す俺ではない!」

 

「おい、誰かレフ板持ってこい!」

 

 やっぱり……とんでもない勘違いしてるね君達は。霧島さんは同性愛者なんかじゃ無いってのに。

 

「……それじゃあ、今度映画一緒に映画行く」

 

「わかったよ……」

 

「「「は?」」」

 

FクラスだけでなくAクラスの人達も呆けた声を上げた。

 

「あの、代表?」

 

「……なに?」

 

工藤さんが皆の代表として声をかける。

 

「えっと、Fクラス代表との関係って……」

 

「……私の伴侶(ポッ)」

 

「いいや、幼なじみだ。今のところはな」

 

 今のところ……ね。こっちとしては二人が付き合うのを楽しみにしてるんだけど、もうあれから四年目だよ?早くしてほしいんだけど……。

 

「まぁ、そう言うことで頼むわ」

 

「……わかった」

 

 ま、幸せそうだから良いんだけど。

 

「…さて、お遊びの時間は終わりだ。Fクラ スの諸君」

 

「西村先生?どうしたんですか、こんな時間に?」

 

「おめでとうFクラスの諸君 。本日付をもってF クラスの担任は俺が受け持つことになった。これから死に物狂いで勉強が出来るぞ」

 

「「「何ぃぃぃいいい!!!!???」」」

 

「いいか。確かにお前達はよくやった。学年の底辺であるお前らがここまでや るとは正直夢にも思わなかったぞ。だがな、 いくら学力が全てでは無いとは言って も、人生では必要になるときが必ずやって来る。それが現実であり、蔑ろにして良い物でもない。というわけで明日から授業とは別に補習の時間を二時間設けてやろう」

 

「「「おのれ鉄人っ、月のない夜道には気を付けやがれ!!」」」

 

「……そうだ。只でさえ試召戦争で本来受けるべき授業が大量に潰れてるんだから休日まで補習漬けにしてやるのもいいかもな」

 

「「「うぎぃぃ!!??」」」

 

 ま、さすがの西村先生もそこまではしないと思うけどね。今のは彼らに効果的な話術だと思ったのだろう。

 

「さ~て、アキ……」

 

「ねえ明久」

 

 えーと……美波がなんか寄ってきてるけど、この場合はアルトを優先するのが普通だよね?

 

「どうかした、アルト?」

 

「久しぶりに私の所で暮らさない?」

 

あ……ああ。

 それも良いかもしれない。

 なんか千年城も懐かしくなってきたし。

 

「そうだね、いいよ。久しぶりにアルトに料理作ってあげたいから買い物着いてきてくれない」

 

「それはいいわね。分かったわ」

 

「じゃ、行こっか」

 

「あ、ちょっと待ちなさ――」

 

 ごめん美波。

 悪気は無いんだ。

……多分。

 

______________

 

 

「ねえ、フィナなんだけど……その」

 

「どうしたの?」

 

「ホモぐせ……少しはマシになったの?」

 

「……それが全然よ」

 

 買い物を終え、ふと気になったことを尋ね返ってきた言葉に思わず回れ右をして逃げようとしたところを、がっしりと掴まれてしまった。

 

「ごめんアルト。僕はとてもそこに行けそうにない」

 

「気持ちは分かるから落ち着きなさい。万が一の事が起こったら私が助けてあげるから」

 

 それを聞いてしぶしぶと諦める僕。

 フィナっていうのはリィゾと同じでアルトの護衛の騎士なんだけど……その、とにかく僕はフィナが苦手だ。千年城で暮らしていたときに、同性なのに僕の着替えをハァハァ言いながらガン見してたり、お風呂に入ってるといきなり入ってきて襲われそうになったり……その他色々あるけど思い出したくない。

 その度にアルトやリィゾに僕は救われていた。

 

「それより明久。お姫様をエスコートする時にすることは何かしら?」

 

 良い笑顔でこちらを振り返るアルトに、僕はため息を一つつくと、

 

「了解です。しっかりとつかまっていてくださいね、姫」

 

 そのまま彼女を抱き上げ、両脚に強化魔術をかけ千年城に向かって屋根の上を駆け上げた。

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