魔術と死徒の姫と召喚獣《凍結中》   作:那由多20

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ちょっと短いです。


第8話

 清涼祭。

 それは文月学園における年に一度の行事で、それぞれのクラスが出し物をし、アピールをする重要な機会である。

 そのため、今日の文月学園は準備のため、いつもより忙しさで賑わっていた。

 

 

 ―――その頃、Fクラスはというと。

 

 

 

「さあこい須川。お前のボールなんか場外にしてやるっ!」

「抜かせ!一球たりとも掠らせなんかさせねぇぜ」

 

 

 ―――野球をしていた。

 

 

 それを2年のFクラスから見ていた、残りの真面目組――特に坂本雄二、吉井明久の二人は頭を抱えていた。

 それもそうであろう。

 世間から見て、文月学園のFクラスは劣悪な環境故にとてつもなく評価を悪く捉えられている。

 無論、これはこの学園には欠かせない階級制度なので仕方がないといえば仕方がないのであるが、それを取っても今年の2年Fクラスは異端審問会などという組織を立ち上げ、迷惑をかけてばかりで最悪なのだ。

 そんな悪評価を見直してもらえる絶好の機会だというのにこのやる気の無さ。

 何も感じない方がどうかしてる。

 

 ここで一つ。

 そんな者達のために、この学園には抑止力という存在がいる。

 ―――それは

 

「貴様らっ、何をやっとるか!」

「げぇ!? 鉄人!」

 

 この学園の補習担当教師、西村宗一――通称『鉄人』である。

 

「誰が鉄人か、馬鹿者が!須川、貴様が首謀者か」

「違います、吉井と坂本の立案です」

 

 さらりと無関係な者に罪をなすりつけるあたり、須川はある意味凄い人物なのかもしれない。

 

(アイツ……後でミンチな)

(泰山麻婆食わせてやる)

 

 ……後の悲劇を知ってさえいればだが。

 

「見え見えの嘘を吐くな!吉井と坂本は教室におるわ!」

「「「バカな――っ!!??」」」

「どうしてそんなに驚いた表情が出来るんだ!? いいから早く戻れっ! 未だに準備を始めてないクラスはお前らだけだぞ!」

 

 このすぐ後、逃げ回っていた男子は一人残らず掴まり、西村先生に担がれ教室に連れ戻されたという。

 ……西村先生、あなたは人間ですか?

 

 

 

 

「んじゃ、クラスの出し物を決めるぞ。書記は明久、頼めるか?」

「ん、了解」

 

 教室に生徒全員が揃ったことだし、雄二は壇に出て率先し、明久は書記のために隣に立つ。

 

「何か希望があるものは挙手しろ……ん、なんだ姫路」

「ウェディング喫茶なんて良いと思います。ウェイトレスがウェディングドレスを着るんです」

「……悪くはないと思うが、結構な額がかかるんじゃないか?まぁ一応書いておいてくれ。他、ムッツリーニ」

 

 えーと、ウェディング喫茶。コストが高い?

 

「………写真館」

「あー……どんな?」

「………秘密」

「却下だ」

 

 彼の言う写真館は色々と危険な香りがする。雄二の言う通り、この意見は書かないでおこう。

 

「他には……須川」

「俺は中華喫茶を希望する。簡単な飲茶を出したりするんだ」

「……今までで一番妥当な出し物だな。明久もそう思わないか?」

「うん、僕もこれで良いと思うよ。ただ…それに少し欧風も付け加えたいかな」

 

 

「(ガラッ)順調に進んでいるか?」

 

 と、そこで様子を見にきたのか西村先生が教室に入ってきた。

 

「今、二通りの案が出てきた所です」

 

 

 ――ウェディング喫茶(出費の難有り)――

 

 

 ――中欧喫茶――

 

 

「……中欧喫茶というのは何だ?」

 

 あ、やっぱり分かりづらいか。

 

「ただ単に中華だけだと味気が無いので、少しばかり欧米の物も取り入れたら――と思っての事です」

「成る程。良いかも知れんな。この調子でいくように」

 

 先生はふむ、と頷くと再び教室を後にする。

 わざわざ様子を見に来てくれたのか。

 周りの皆は自覚してないけど、普通これだけ面倒を見てくれる教師はそうそういない。

 これは感謝しておかなくてはいけない。

 

「ウェディング喫茶も悪くは無いが出費が高すぎる。だからここは須川と明久の意見を合わせた中欧喫茶で行くがそれでいいか?」

 

 全員の肯定を以てして、Fクラスの出し物は中欧喫茶に決定した。

 そしてこの時僕は気づいていなかった。

 この学園に、僕の日常を一層賑やかにさせる――新たな刺客がやって来ることを。

 

 

 

 

 

 

 

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