それはある夜の事ほんの一時のお話

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その満月の側面は

この世の物は見方によってはさまざまな顔をみせる、その代表とも言えるのが月だ。

 

月というのは非常に色々な姿を見せる。

人によれば兎、蟹、女の横顔、その他にも愛を告げる言葉の揶揄にも使われたり希望や絶望、実に様々な姿を私に見せてくれる。

しかしこれは月に限った話ではない。人も実に様々な側面を見せるものだ人類という大きな区切りで見ると言うに及ばず同じ人種であっても地域が違えば話をするのも苦労する場合があるだろう。

同じ地域の場合も実に様々な要因で変わるだろう。

同じ人でも対応する人や過ごした年数で色々変わるだろう。

 

 

そうなれば、≪変わるのは艦娘とて同じだろう?≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今夜は快晴、世は事も無し昔は攻めてきていた深海の勢力もここ何年かはそんなこともなく、大規模侵略もなくなり、起こるものと言えば各地で本当に小さい小競り合い程度のしかなかった。

今日も平和だ───。

 

「平和だとしてもそれは海の話です、現状机の上(ここ)は地獄というも生ぬるい泥沼の戦争(書類仕事)が待ってます司令官、現実の直視を」

 

窓に向けていた視線を戻すと対面する白い悪魔たち。

それらの勢力は我らの領地を全て白く染めんというように凄まじい制圧力を誇っている。

こちらにも勇敢な戦士たちがいたが戦死してしまった。今は白い布に包まれ異なる世界に旅たっている、私ももう寝たい。

 

正直凄く羨ましいが私には使命がある。負けられん。

 

 

「と言うことでタイム」

 

「認められません、タイムは既に尽きました」

 

取りつく島もない位に切り捨てられてしまった。

 

「しかしもうこんな時間だ」

 

部屋に備え付けている時計を見ると1200を少し過ぎたくらいだ、つまりもう深夜なのだ。

 

「しかし、……分かりました。ですが最後にこの書類をお願いします」

 

私の懇願する表情を見ると、諦めたようにため息を吐いて妥協案を出してくる。これ以上の譲歩はないと見た私もそれに異を唱えることなく黙々と作業を進めていく。

 

 

コチコチ、コチコチと時計の秒針の音が聞こえるなか作業を続け、漸く。

 

「終わった、のか?」

 

「ええ、やっとです」

 

長い、長い終わりを告げる言葉が告げられた。

 

「お疲れ様です」

 

「そちらこそありがとう、にしても流石にイベント事が重なると辛いな」

 

「それは司令官が私たちに自由にやらせ過ぎです、秋刀魚漁に秋祭の屋台基地一部の一般解放、及び模擬演習と他基地の艦娘を招きいれるのは厳しい物があります。

それをこの書類の束で許可が貰えるのですから。色々手回しをしたのでしょうけどやりすぎです、倒れますよ?」

 

確かに色々頭を下げたり手回しもした、だけども。

確かにこの数年間大規模侵略は無くなって小競り合いだけになった、しかしまだ平和ではないのだ。やはり人々の顔には拭いきれない不安と恐怖がまだしっかりとある。

 

「やはり一番大切なことは笑顔を忘れない事なんだ、どんなときでも。だからこれも必要なことだ、ただなんとなく、敵が居るから倒すのでは長く続かない、やっぱりなにかを守っている、すぐそばの笑顔を守りたい、それが守れる原動力になってくれるのではないかなと、私は思っている。

そして君たち艦娘の笑顔も守りたい、だから私は倒れんさ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

「これは一種の自己満足さ、礼など不要。

当日の笑顔がその料金、なんてな。

さて、本日の秘書艦の任を解く、駆逐艦睦月型11番艦望月」

 

そういうと、今まではどちらかと言うとしっかりしていた空気を出していた望月がヘニャ、っとなった。

 

「あ゛ーー。疲れたーー」

 

「ご苦労様、肩を揉もうか?」

 

「お、さんきゅー司令官。たのんでいぃ?」

 

「もちろん」

 

こんな遅い時間まで付き合ってもらった望月を労るように肩を揉んでいく、このように細い肩に人類の命運やらと言った重すぎる物を背負わせていると思うと自分たち大人の不甲斐なさが出てくるが望月に見られないようにその感情に蓋をする。

 

「お、いいじゃん、っんもっと上。……っそこそこ、いいねぇ司令官も大分上手くなってきたじゃん。

 

さて部屋に帰ろっか、司令官」

 

「そう、だな」

 

 

蓋をしきれなかったのかすこし言葉が詰まってしまった。

 

「どうした?司令官」

 

望月が少し心配そうに見つめてくる。あまりにもその真っ直ぐな眼差しに少し心の中を打ち明けてしまいそうになる。

 

「……私は、上手くやれているのだろうか?

本部には私よりも優秀な人材が一杯いる、それも山のようにだ、私は……邪魔じゃ無いのか」

 

いつも持っていた不安を打ち明けると、望月は真っ直ぐな眼差しを向けてくる、その真っ直ぐさに目を背けてしまいそうになる。がそれをさせまいと小さな手で私の顔を固定する。

 

 

「司令官、私は国を、無力な人を、無辜之民を守り、それらを倒し沈めるために造られた艦だ、例え菊紋が与えられなかった艦だとしても国のために戦う艦だ。

だから、司令官。私は今国のために戦えて凄く嬉しいんだ、……それに、さ。

司令官と過ごす日々はスッゴい楽しいんだ。だからさ、ありがとう司令官」

 

その言葉を言い終わると望月は顔を真っ赤にして駆けていった。

 

「心配、されたのかな?

ふぅ、なっさけねぇなぁ俺」

 

そう自嘲してみたもののどうしても頬が上がるのが押さえきれなかった。

 

「そっか、俺は間違えてなかったんだ」

 

まだ明日の仕事は残っているけどもなんだか気持ちが軽くなった。

 

「明日も頑張るか」

 

 

夜明けは遠くとも空に月は昇る、そして気まぐれに辺りを照らすのだろう。

 

 

 

 

 

 


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