龍と夜叉   作:雪音

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勝手な想像ですが、個人的に銀時・剣心・山崎・神楽は滅茶苦茶視力がいいという設定です(笑)4人とも2.0ぐらいの設定で!!(どんだけww)

あと、今回の話で鬼兵隊が登場しますが…幹部達は登場しません!!高杉のおつかいで鬼兵隊から離れているという事にします!!じゃないと、紅桜の話と繋がらなくなる…(苦笑)


【第四幕】行動開始

「ん……?」

 

神楽が目を覚ますと、そこは見知らぬ薄暗い場所だった。

 

「ここ…どこアルか?」

 

辺りを見回すが見覚えは無い。当然ながら万事屋ではないし、スナック・お登勢でもない。もちろん、新八の実家でもない。

 

と、そこまで考え…ふとあることを思い出す。

 

「あっ…思い出したアル!!突然変な奴に襲われたネ!!」

 

それは、少し前まで遡る…。

 

 

 

剣心と分かれた後、神楽は真っ直ぐ万事屋へと向かって歩いていた。すると突然背後から声を掛けられたのだ。

 

「お譲ちゃん、この辺りに詳しいかい?」

 

声を掛けてきたのは見知らぬ男。どうやら、このかぶき町で道に迷ってしまったらしい。そんな男の言葉に、神楽はフフンと得意げに答えた。

 

「かぶき町のことに関しては私に何でも聞くヨロシ!!かぶき町の女王とは私のことネ!!」

「ハハッ、そりゃまた心強い!!」

「それで、オジサンどこに行きたいアルか?」

「実はここなんだけどね…」

 

そう言って、男は地図を差し出してきた。丸印が付いている場所はかぶき町のはずれ…あまり治安のよくない場所。銀時からは不用意に近づくなと言われている場所だった。

 

「オジサン、こんな所に何しに行くアルか?ここは危ないからあまり近づいたらいけないって言われたヨ…」

「おや、そうなのかい?おじさん、最近かぶき町に来たばかりでねぇ…あまり詳しく無いんだ」

 

ハハッと少し困ったように笑っている男に、神楽はどうしたものかと考え込む。

 

(うーん、一度万事屋に連れて行って銀ちゃん達に相談した方がいいかも知れないネ。じゃないと、勝手にここに行ったら怒られるヨ。それに…)

 

神楽は天人。しかも、戦闘種族の夜兎だ。その力を欲している輩は大勢居る。特に治安の悪い場所であれば、攘夷志士や不逞浪士などがウヨウヨ居るだろう。あまり、神楽の行くべき場所ではない。

 

いや、本来であれば子供なんかが行くべき場所ではないし、そもそも一般人が自ら近づきたがる場所でもないのだ。

 

「……オジサン、攘夷志士アルか?」

 

突然神楽にそう聞かれ、驚いたように目を丸くするがやがてハハッと笑いながらポンポンと神楽の頭を撫でた。

 

「おじさんがそんなに悪い人に見えるかい?」

「ううん、見えないヨ。けど、ここに行きたがる人は大体そういう人が多いネ」

 

少し…神楽の瞳に警戒の色が見え隠れし始めた。それを悟った男は「参ったなぁ」と苦笑しながらゴソゴソと懐を漁りだす。

 

あのお方(・・・・)からは無傷で連れて来いと言われたんだが…そこまで言われてしまっては仕方が無い。まぁ、夜兎の回復力は早いと聞く。問題はないだろう…」

 

ニコニコと笑っていた男の表情が、突然変わった。 “人のいい笑顔”から“何かを企む笑み”になったのだ。すぐに危険を察知した神楽はバッと男から離れる。

 

だが…

 

「無駄だよ、お譲ちゃん…」

 

 

――パンッ!!

 

 

乾いた音が響くと同時に、神楽の足元に激痛が走った。

 

「ッア……!!」

 

あまりの痛みに耐えられず、その場にドサリと倒れこむ神楽。そこに男は銃を構えたままゆっくりと近づいた。

 

「やれやれ、手間を掛けさせおって。おっと、夜兎は番傘を武器に戦うんだったな。じゃあこれは預からせてもらおうか…」

「か、返すネ!!」

「だーめ。まぁ、どの道…動く事は出来んよ」

 

こんな怪我など大したことは無い、と…神楽は立ち上がろうとした。だがその瞬間、グラリと世界が歪んだのだ。

 

(な…に、これ…?)

 

グラグラと回る世界。次第に遠くなる意識。目を開けていたいはずなのに、意志とは反して次第に重くなる(まぶた)。完全に意識が落ちる間際に聞こえてきたのは…

 

「無事にターゲットを捕まえました。すぐにアジトへ戻ります」

 

男が誰かに連絡を入れている声だった。

 

そこで神楽は初めて気付く。

 

あぁ、自分は始めからこの男に“夜兎”とばれていたのだと。そして、それを知った上で声を掛け、自分を攫おうとしていたのだと。

 

薄れゆく意識の中、脳裏を過ぎったのは…

 

(銀ちゃん……、新八ィ……)

 

大切な家族の顔だった。

 

 

 

そして気付いた時には、この薄暗い部屋に閉じ込められていたというわけだ。普通の牢屋ではなく、鉄の箱のような部屋。恐らくは神楽が夜兎である事を考え、簡単には逃げ出せないような重装備の部屋に閉じ込められたのだろう。しかもご丁寧に、手足には枷まで付けられている。その枷も普通の枷ではない。分厚い鉄で出来た枷だ。試しに神楽が力いっぱい引っ張ってみたがびくともしなかった。

 

「完全に閉じ込められたアル…」

 

幸いな事に、撃たれた足の怪我は既に塞がっていた。しかし、怪我が塞がっても逃げ出せないのであれば、状況は何も変わらない。

 

「私、どれくらい寝てたネ…?」

 

部屋にある唯一の窓から外を見ると、自分が剣心と分かれたときには赤かった空は既に暗くなっており、星が輝いていた。つまり、結構時間は経った事になる。

 

「…あまり帰りが遅くなると、銀ちゃんに怒られるヨ…」

 

シュンと項垂れ、部屋の片隅で小さくうずくまる。

 

今頃、銀時達は心配しているだろうか?

また迷惑を掛けてしまった。

 

そんな事を考えていたとき…ふと、ある人物の顔が浮かんだ。それは、捕まる直前まで一緒に居た、出会って間もない侍の顔。

 

「…まさか、巻き込まれてないヨね…?」

 

自分がどうなろうとも、それは自分の力で何とかすればいいから構わない。

 

しかし銀時や、ましてや出会って間もない人までは巻き込みたくないと…神楽はグッと拳に力を入れる。

 

「駄目アル…、こんなところでのんびりしてる場合じゃないネ…!!」

 

スゥーと息を吸い込み、そして先程とは比べ物にならないほどの力を両手に込めた。もちろん、手枷を壊す為だ。

 

「フンギギギギギギッ………!!!!!」

 

とても女の子がするような顔ではないが、この際そんな事を言っている場合ではない。とにかく、手足を自由に動かせる状態にする必要があるのだ。

 

「ホワチャァァァァァァァァ!!!!!!」

 

そして…

 

 

――ピシッ…

 

 

僅かに、手枷にヒビが入る。そうなると後は壊れるのも時間の問題で…

 

 

――バキンッ!!

 

 

神楽の両手を封じていた手枷は、ただの鉄片と化した。

 

「どんだけ強力ネ?腕が千切れるかと思ったアル…」

 

アイタタと手首を摩りながら、壁に手を付き起用に立ち上がる。例え足枷があっても、手さえ自由になれば立ち上がることは可能だ。そして…

 

「ヨイショ…!!」

 

両足で立ち上がり、膝を曲げて勢いを付けると神楽の身体は軽々と宙を舞った。自由になった手で、窓の柵を掴みぶら下がる。流石に窓は小さかった為、そこからの脱出は不可能だという事は神楽にも理解できた。もっとも、柵は簡単に壊せそうなほどの強度だったため、もう少し窓が大きければと内心悪態を吐く神楽である。

 

「ココはどこネ…?」

 

普通に考えれば、自分を攫った男が行こうとしていたかぶき町のはずれ…治安の悪い一角だろう。そう思っていた。

 

だが、神楽の目に飛び込んできた光景は…

 

「……マジでか…!?」

 

かぶき町とは程遠い、見た事もない港だった。

 

「こ、ここどこアルか!?何でかぶき町じゃないネ!?」

 

予想が外れた事に流石の神楽も血の気が引いた。かぶき町であれば、何とか脱出できるかもしれないと思ったがそれが見知らぬ場所となれば話は別。しかも港に居るという事は即ち、今自分の居る場所は……

 

「船…アルか…」

 

直結して、船の中に捕らわれているということだ。もし船が出港してしまえば二度とかぶき町には…万事屋には戻れない。それを理解した瞬間、神楽の青い瞳からはポタポタと涙が零れ落ちていた。

 

「ヤーヨッ…!!まだ銀ちゃん達と一緒に居たいヨ…!!銀ちゃん…新八ィッ…!!」

 

急に襲ってくる不安。もうこのまま、2人に会えないのではないかという恐怖。かぶき町ではない場所に1人きりの状態は、神楽の不安をただ大きくするだけだった。

 

そんな時…神楽の視界に、あるものが映る。それは、赤い光だ。

 

「……あれは、真選組のパトカー…?」

 

それは、神楽が良く知る真選組のパトカーのパトライトの色だった。もしかしたら、万事屋に戻らない自分を心配して銀時達が動いてくれたのかもしれない。

 

そんな事が脳裏を過ぎったが…

 

「私を助けに来たわけじゃないアルか…」

 

パトカーは港に着くか(いな)かの場所で止まり、暫く経つとUターンして戻っていった。その時、パトカーから誰かが降りたような様子だったが…残念ながらそれが誰なのかまでは、流石の神楽にも分からなかった。ただ、人と思われる小さな点は…真っ直ぐと港に向かって走ってくる。

 

(誰だろう?銀ちゃん達アルか?けど…だったらなんで真選組は帰ったネ…?あの税金ドロボーどもがァァァァ!!!!)

 

こんな時こそ武装警察の出番だろうが!!と、柵を握っていた手に力が篭る。ピシッと柵にヒビが入った事に…神楽は気付いていない。

 

「ともあれ、誰かが助けに来てくれたことは確かネ!!そうアル!!弱気になったら駄目ネ!!」

 

タンッと床に着地し、涙で濡れた頬をチャイナ服の袖で拭う。そして…

 

「ホワチャァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

また、女の子とは思えない絶叫と表情で…今度は足枷の破壊に取り掛かるのであった。

 

 

 

「それで、ちゃんと頼まれたもんは捕まえて来たんだろうなァ?」

 

神楽が捕らわれている同じ船にある、別の部屋。そこに…女物の着物に袖を通し、煙管(キセル)を吹かせながら部下に問う男の姿があった。紫がかった髪に、左目には包帯と…独特の特徴を持った男。超過激派攘夷志士で鬼兵隊の(かしら)である高杉 晋助は、部下の男を鋭い瞳で一瞥していた。問われた男は恐縮しながらサッと頭を下げると報告をする。

 

「晋助様の命令通り、夜兎族の娘を捕らえてきました。現在は両手足に特別製の枷を付け、“鉄の箱”に閉じ込めております」

「ククッ、よくやった。まぁ、あの“夜兎”を捕まえたんだ。それぐらいしねぇと、簡単に逃げられちまうだろうよ…」

 

ただ…と、少しバツが悪そうに男は続ける。

 

「夜兎を捕まえる際、抵抗した為…やむなく麻酔剤入りの銃を使用しまして…」

「傷を負わせたってかァ?」

「は、はいっ!!申し訳ございません!!」

 

命令は“無傷で捕らえよ”とのことだった。男は更に頭を深く下げるが、高杉は特に気にした様子も無く小さく笑う。

 

「まぁ、それもしょうがあるめぇよ。何せ相手はあの夜兎だ。真っ向から挑んで捕まえる方が無理ってなもんだァ…」

「しかし、傷が付いてしまえば取引の際に値段が落ちてしまいます…。先方は、あくまで“無傷で捕らえよ”と言っていました故…」

「なぁに、構やしねェ。夜兎の回復力はすげぇと聞く。取引の頃には塞がってるだろうさ。それに……」

 

クツリと高杉が喉を鳴らして笑う。何事だろうかと、男は顔を上げて高杉の表情を伺ったが…その表情は妙に楽しそうだった。

 

「晋助様?」

「ククッ、あの夜兎の飼い主が…黙って引き下がるとは思ってねぇ。下手すりゃ、掻っ攫われる可能性もあらァ…」

「だからこそ、“鉄の箱”に入れているのですよ…。あの夜兎は大事な金ですからね…」

 

そう、それは高杉一派の下っ端に接触してきた幕府の人間からの情報だった。かぶき町に夜兎族の娘がいると。もしそれを捕まえたあかつきには、欲しいだけの金をくれてやると言ってきたのだ。ただしそれには条件があり、先程も話していた“無傷で捕まえる事”だった。何を考え幕府が夜兎を欲しているのかは知らなかったが、金が入るというのであればと高杉にそのことを説明し、現在に至るというわけだ。もっとも、最初は高杉自身…その取引に興味は無かった。幕府と取引など願い下げだと…そう思っていたのだ。しかし、捕まえて欲しいという夜兎が、自分の幼馴染でかつて攘夷戦争にて背中を預けあって戦った男の元に居候している夜兎だと知って、気が変わったと…その話を受けた。

 

そう…神楽だと分かったから、高杉は憎むべき幕府との取引に応じたのだ。幕府の為ではなく、己の成すべきことのために。

 

「オメェは下がれ。例え“鉄の箱”に閉じ込めたとは言っても、相手は夜兎だ。何が起きても不思議じゃねぇってこった。数人で部屋に張り付け。絶対に逃がすなァ?」

「はっ、了解です!!」

 

高杉の(めい)を受け、部下はすぐに部屋を後にする。1人残った高杉は、ククッと喉を鳴らして笑いながら煙管(キセル)を吹かす。

 

「さぁ、オメェがどう動くか…見物だな、銀時ィ……」

 

高杉の狙い、それは…

 

かつての仲間であった銀時が、神楽を助けるためにこの鬼兵隊本陣に乗り込んでくる事だった。

 

「今の鬼兵隊にとっちゃ、かつて“白夜叉”と呼ばれたオメェの力は喉から手が出るほど欲しい存在。それにまぁ、どこの犬とも知れねぇ輩よりも、かつての戦友の方が命も預けやすいってなもんだ。他の攘夷志士なんかの手に渡る前に…俺のものにしてやらァ、銀時ィ…」

 

そして、そのまま白夜叉(銀時)という力を手に入れるという野望。

 

機械(からくり)技師を利用して起こした大きな事件の時にも、銀時と高杉は接触した。その時の…銀時の変わりように、正直高杉は失望していた。

 

だが…僅かに、銀時の中に牙が見えたのだ。

 

それは、攘夷戦争で幾多の天人達を切り伏せた“白夜叉”の牙。

 

「大層な牙を持ってて、それを使わねぇたァ…勿体ねぇ話じゃねぇか。だから…」

 

俺が使ってやらァ、その牙を。

 

クツクツと笑いながら、高杉は窓の外に目をやる。真っ赤な三日月が怪しげに光っているさまを見て、高杉の口角はクッと釣りあがった。

 

「まるで、血濡れの月だな…。今夜にはまさにうってつけってわけだ。ククッ…」

 

至極楽しそうに笑いながら、猪口に注がれた酒をクイッと喉に流し込む。

 

「さぁ…あとはオメェ次第だ、銀時ィ。仲間の命も、オメェの命もなァ…」

 

恐らくは万事屋のもう1人のメンバーと共に来るであろう銀時のことを思いながら、手酌で酒を注ぎ再び口を付ける。

 

「まぁ、こっちに夜兎という人質が居る限り…オメェは手出し出来めぇよ…」

 

そこには絶対の確信があった。銀時はいつだって仲間を護ることに自分の命をかけている。それは、攘夷戦争の頃から何も変わらない。今でも全く同じだ。

 

だからこそ、こんな回りくどい手段を講じたのだ。

 

「まぁ、姑息な手段ではあるが…」

 

赤い月を眺めるその瞳は…

 

「これで白夜叉(銀時)という力と、大金が手に入るっていうなら、一石二鳥ってこったァ…」

 

これから先に起こるであろう一波乱が、楽しみだといわんばかりにギラギラと怪しく輝いていた。

 

 

 

高杉の部屋の上に、ひっそりと隠れている影があった。一連の高杉と部下のやり取り、そして高杉の言葉を全て漏らさず聞き耳を立てていた人物、それは…

 

(…やはり、高杉の真の目的は万事屋の旦那か…)

 

真選組が誇る、監察方の山崎だった。土方の(めい)を受け、鬼兵隊の本拠地である船に単身乗り込み、その動向を探っていたのだ。山崎の目的は2つ。1つは高杉の目的、そしてもう1つは“特上品”の正体だった。土方からの連絡で“特上品”は万事屋の従業員である神楽の可能性が高いと聞いていたが、その読みは正しかったらしい。

 

(嫌な読みはいつだって当たるもんだな…)

 

小さく嘆息しながら、部屋で1人晩酌をしている高杉に気付かれないようその場を後にする。出来る事なら、自分の手で神楽を助け出したいところだったが、生憎神楽が捕らわれている場所が分からない。それに鬼兵隊本拠地という事は、敵の数は相当数いるということだ。山崎1人で勝手に動いては事態を悪化させるだけに過ぎないだろう。それに、既にこの港には万事屋一行と何故か一緒に桂がいる。更には、土方達が剣心を連れてこの港に向かっている途中だ。

 

(俺はあくまで監察方。俺の仕事はここまでだ…)

 

せめて神楽が捕らわれている場所だけでも分かればと思ったが、高杉達はただ“鉄の箱”と言っただけで詳しい場所は言わなかった。恐らく、彼らにはその言葉だけで十分通じるのだろう。

 

(さて、ひとまず外にでるか。そして万事屋の旦那と新八君に連絡を入れて、副長にも報告しなくては…!!)

 

敵に気付かれないよう慎重に進みつつ、無事に船の外に出る。コンテナなどでごたごたしている港の一角に身を潜め、一連の事を持っていた紙に書いて記す。

 

「あとはこれを旦那に手渡すだけだ…」

 

サッと動きコンテナの上に乗ると、沢山のコンテナが無造作に積み重なっている港が一望できた。今宵は三日月。満月ではない為、さほど月明かりは気にしなくてもいい。それに、山崎が身に纏っているのは本来の隊服ではなく、忍が着るような黒の忍装束だ。上手く闇に溶け込む事ができるため、それほど敵の目を気にする事はない。とはいっても、周りに十分警戒しつつ…山崎は目的の人物を探す。

 

「旦那は…どこだ…?」

 

タンッとコンテナからコンテナに飛び移り、更に辺りを探ると…一瞬、キラリと月明かりに反射する何かが見えた。

 

「あれは…」

 

その反射した何かに向かって山崎は素早く移動する。山崎の考えが正しければ、恐らく月明かりに反射したそれは…

 

「やっぱり、旦那だったんですね」

「あれ、ジミー君?」

「山崎さん!!」

 

銀時の髪の毛だった。その場に居た桂が僅かに息を呑む。勿論、山崎は気配で気付いていたが土方の命令通りそこは気付かないフリである。僅かに銀時が手を動かし何か桂に合図をしていた。恐らくは、奥に引っ込めとでも言っているのだろう。それにも気付かないフリをして、山崎は2枚の紙を銀時に渡す。

 

「副長からの命令で鬼兵隊に探りを入れていました。これがその報告です」

「おいおい、俺ら一般人に情報開示しちゃっていいわけぇ?」

「それも副長の命令ですよ。神楽ちゃんが捕まって一番心配しているのは旦那だろうから、真っ先に伝えてやれって」

「なんだか、土方さんが鬼の副長と恐れられてるなんて…嘘みたいですね」

 

思わず新八が零した言葉に、山崎も苦笑する。確かに厳しい人ではあるが、情に脆いところもある。そして何より、己の士道(ルール)をしっかりと見据えている人物なのだ。それ故、よく銀時と土方は似ているといわれる。本人同士は思いっきり否定しているが。

 

「ま、何にしても助かったわ。トシに礼を言っといてくれや…」

「分かりました。ただ…高杉の野郎、相当ヤバイ感じです。狙いは…」

「俺、だろ?」

「…というより、“白夜叉”…ですね…」

「やっぱそうか…」

 

小さく溜息を吐きながらガシガシと頭を掻く。桂は小さく舌打ちをしている。「銀さん…」と心配そうに新八が名前を呼ぶが、心配するなというようにポンポンとその頭を撫でた。

 

「まぁ、それも想定の範囲内だ。とにかく、俺達は一足先に本陣に乗り込むぜ?構わねぇよな?」

「はい、副長からは特に何も言われていませんので」

「よっしゃ、そんじゃ気張って行くぜぇ、ぱっつぁん」

「はい!!山崎さん、情報有難うございました!!」

「どういたしまして。新八君も十分気をつけてね?」

「もちろんです!!」

 

用件を伝えると、山崎は闇へと消えていく。残された銀時達は暫く気配を探り…完全に山崎が居なくなったことを確認してから桂を呼ぶ。やれやれと嘆息しながら桂が出てくると、銀時がいきなりグーで顔面に拳を入れた。

 

「ぶべらっ!!」

 

見事にクリーンヒットした右ストレートに桂は撃沈する。その様子を、新八も止めることなくただ見ているだけだった。

 

「ちょっ!!いきなり何をするのかなーっ、銀時君!?」

「てんめぇ、分かってんのか!?アイツはなぁ、真選組の優秀な監察方だぜ!?お前、完全に気配殺したつもりだろうが、何舌打ちとかしちゃってんの!?バレたらどーすんのっ!?」

「なんだ銀時、俺の事を心配してくれるのか?ふっ、お前という奴は本当にツンデレだな…」

「ねぇ、新八。高杉と戦う前に、コイツ()っちゃっていいかな?むしろいいよね?」

「まぁ、全面的に賛成なんですけど…今は戦力が必要ですし、後々面倒なので今回はやめて下さい」

「ちょっとォォォォ!?何で新八君まで俺を蔑ろにするのォォォォォ!!??」

「黙れ電波!!声がデケェ!!テメェ、ここが敵陣だってこと忘れんな!!」

「…電波ではない、桂だ」

「マジムカつく、何コイツ!?あーもう、マジでムカつく…!!この件終わったら、真選組にでも何にでも捕まっちまえ!!マジ頼むわ、300円あげるからァァァァァッ!!!!!」

「300円程度で動く俺だと思うなよ、銀時!!んまい棒1年分くらい用意してもらわねばな!!」

 

フハハとどこか得意げに笑う桂に、ギリギリと拳を握り上げる銀時である。何とか宥めようとする新八であったが…

 

「それで、あの地味な監察方がお前に手渡した紙切れには何が書かれてある?」

 

急に真剣モードの桂に切り替わった為、思いっきりズッコケた。

 

「まぁ、気持ちは分かるよ新八君…」

「分かってもらえて何よりです。さすが銀さん、もう慣れてるんですね…」

「コイツ、昔からこうだから…」

「あぁ、なるほど」

「おい、銀時。時間が惜しいのだろう?何が書かれてある?」

「あー、はいはい…」

 

とりあえず山崎から手渡された紙に目を通すと、そこには幕府が夜兎を欲していたため攘夷志士を利用して夜兎を手に入れようとしているという事、その取引には莫大な金が動くという事、更に“特上品”はやはり神楽で間違い無いという事、鬼兵隊本陣の“鉄の箱”と呼ばれているところに監禁されている事、そして神楽は奴らによって怪我を負わされている事などが事細かに書かれていた。

 

「…さすがはザキだな。この短時間でこんなに調べるとは…やるねぇ…」

「しかし…まさか、高杉がここまで落ちていたとはッ…!!攘夷志士達の間でも、高杉一派は何かと悪い噂ばかりが飛び交っていたが……俺はどこかで、それが偽りであって欲しいと願っていた…」

 

桂はきつく拳を握り、忌々しげに報告書を睨み付ける。過去の…攘夷戦争に出ていた頃の高杉は、仲間を大切にする優しい人間だった。厳しく、そして不器用ではあったが、共に笑い合い、共に苦しみ、共に背中を預け合った…そんな心強い戦友(とも)だった。

 

だが、それが今ではどうだ?

何故、こんな事に?

 

「…師と慕ってた松陽先生を天人に連れ去られて、その後先生の首が晒されて、攘夷戦争ではその仇の天人に左目斬られて、更に幕府には裏切られて、そしてその幕府のトップに…先生を殺した仇がいる…。高杉が壊れちまうには十分すぎる理由だろ…」

 

何せ、それはもうアイツは…先生を慕っていたからなァ…

 

鬼兵隊本陣の船を見つめながらポツリと、銀時は漏らす。だが、桂は内心複雑な思いでいた。

 

(何を言うか、銀時。俺達3人の中で一番辛いのはお前だろうて。何せ…)

 

 

『銀時、しっかりしろ!!大丈夫か!?お前、ヒデェ怪我じゃねぇか!!すぐに医者に見せねぇと!!』

『とりあえず止血だけでも…!!……待て、銀時…。先生は…松陽先生はどこにおられるのだ!?一緒じゃなかったのか!?』

『…いなお…』

『いないって……どういう、こと…だ…!?』

『……連れて、行かれた……』

『冗談じゃねぇ!!先生ッ!!松陽先生ッ!!』

『晋助、無茶だ!!今更追いつけるはずもないだろう!?』

『……、……かった…』

『…銀時?』

 

 

(あの時、先生を救えなかったと一番悲しみ悔いていたのは…)

 

 

『先生…斬られた…。俺を、護って…。俺、先生を…護れなかった…。“大切な人を護るために剣を振るいなさい”って、先生…教えてくれたのに…。大切な先生を……護れなかった……。先生、微笑(わら)いながら、『後のことは任せましたよ』っ…て……!!連れて、行かれて…ッ!!』

『銀時、もういい…もういいんだ、銀時…!!』

『お前が悪いわけじゃねぇ…!!』

『ご、めんなさい…ごめんなさいっ……、松陽先生…ッ…』

 

 

(銀時なのだから…)

 

今でも鮮明に思い出す、自分達が絶対の師と慕った吉田 松陽(よしだ しょうよう)の運命。轟々と燃える私塾を見つめ、感情を映さない紅い瞳からボロボロと涙を零す銀時の姿。何度も何度も、松陽に謝るその姿が……まるで昨日の事のように鮮明に思い出される。

 

(その銀時が耐えているというのに、高杉…お前は何をやっている…ッ…!!)

 

桂の表情が変わった事に気付いた銀時は、小さく嘆息しながらペシンと桂の頭を叩く。するとすぐに、何事だと抗議の眼差しで銀時を睨んできた。

 

「お前が何考えてるか、大体の予想はつくけど…今は、アレ(・・)に集中しようや…」

「……あぁ、そうだな…」

 

クイッと銀時に顎で指された船に視線を向け、その最もな意見にコクリと頷く。一方、そんな桂と銀時の話しに何となく…口が挟めず、ただ見ていただけの新八だったが内心は複雑だった。

 

(銀さんと桂さん、それから…高杉という人…。この3人は…幼馴染で、慕っていた先生が居て、その人が天人に殺されて……。それで…幕府を…この世界を恨んで…)

 

銀時は自分の過去についてはあまり話したがらない。だがそれは遠回しに、「聞かないでくれ」と言われているみたいで…新八自身、興味本位で聞くことが出来ずにいた。それが今日、僅かなことではあったが…“恩師の死”という悲しい過去を知ってしまった。

 

(これは…僕が知ってもいい事だったのかな…?)

 

銀時が必要以上に過去を話したがらないのには、何か理由があるからだと思っていた。その理由が、こんなにも悲しい過去だったとは思いもしなかった。

 

「おいおい、お前までそんな辛気臭ぇ顔すんなよ!!テンションガタ落ちだろうが!!敵陣に乗り込む前に士気が下がってどーすんの!?」

「えぇっ!?あっ、す、すみません!!その…」

 

突然銀時から声を掛けられ声が裏返ってしまった。新八の表情や、この態度から大体の予想がついた銀時はいつものようにヘラッと笑いながら新八の頭をガシガシと撫で回す。

 

「ちょっと、銀さん!?何するんですか!!」

「新八、何もお前まで俺の過去を背負うこたぁねぇよ。それに…知っちまったからって悔やむ必要もねぇ。いずれは話すつもりでいたしな…」

「銀さん…」

「それを、この電波ヅラは…」

「電波でもヅラでもない、桂だ!!む、俺が何か余計な事を言ったか?むしろ喋ったのはお前自身だろ?責任転嫁は良くないぞ、銀時君?」

「いや、確かに喋ったのは俺だけどさッ!!あー、何だろこのドヤ顔マジでイラッとするわ!!…コイツ、コンクリ詰めにして海に沈めていいかなーっ!?テトラポットにしていいかなーっ!?そしてai●oに上ってもらえ、そして歌ってもらえコノヤローッ!!マジムカつくんですけどーッ!!」

 

辛い過去のはずなのに。それでも銀時は、きちんと自分達に話してくれるつもりでいたのだと思うと…少しだけ、新八は嬉しいと思った。

 

何だかんだいっても、銀時は新八と神楽を本当の家族のように大事にしている。

 

いつだったか、神楽が「血は繋がってなくても家族にはなれるアル!!」と笑いながら言っていた。

 

(こんなマダオが家族なんて、幸先不安だけど…)

 

けれど、この男はいざという時に…その逞しい背中で自分達を護ってくれる。

 

「さてと、そんじゃまぁ…さっさと神楽を迎えに行きますか…!!」

 

ほら、今でも銀さんの優先事項は高杉という人ではなく神楽ちゃんだ。

 

そんな些細な事が、新八にとっては嬉しいのだ。

 

「…しかし…」

 

さて、乗り込もう、おーっ!!と銀時&新八の意気込みに水を注すように桂が重々しく口を開いた為、今度は2人揃ってズッコケた。

 

「何だ、お前達?ズッコケるのが、ナウなヤングの流行なのか?」

「…いや、流行ってねぇよ。てか、その“ナウなヤング”って言葉も、もうとっくに死語ですから!!この小説読んでくれてる若い子は分からないかもしれませんからッ!!」

「ふん、分からぬのであれば……ググれカスッ!!」

「天誅ゥゥゥゥゥッッ!!!」

「ブフォァァァッッ!!??」

「何でそういうこと言うかなーっ!?何で、こんな駄文を読んで下さってるありがたい神様を敵に回すような事を言うかなーっ、この電波は!!しかも何でその言葉だけ最先端いってんだよ!!テメェの脳内辞書どうなってんの!?ねぇ、どうなってんのォォォォ!!??一度リセットしてやろうか、コノヤロォォォォォ!!!!」

 

港の一画で、銀時の小さなシャウトがひっそりと木霊した。

 

「で…話は戻すが…」

「はぁ、何ですか電波さん?」

「電波じゃない、ヅラだ!!あ、間違えた…桂だ!!ふむ、あの地味な監察方が持ってきてくれたこの報告書についてだ…」

「おいおい、いつまでも地味な地味なって言ってやるなよ。ジミー君も気にしてんだから…」

「そういうアンタも普通に名前で呼んでやれよ…」

 

ゴホン、と桂が咳払いをして…その表情は再び真剣なものとなる。

 

「その監察方も直接口で言っていたが…やはり、高杉の真の目的は…」

「白夜叉…つまり、銀さんってことですよね…?」

 

桂は報告書に目を通しながら複雑な表情をしている。新八はどこか不安げだ。一度、新八は神楽と共に…理性の飛んだ銀時の姿を目の当たりにしている。そう、白夜叉と恐れられた銀時の姿を。いつも一緒にいる家族も同然だと思っている銀時を、初めて“怖い”と思った瞬間でもあった。そんな恐ろしい…“白夜叉”の力を得て、高杉は一体何をしようとしているのだろうか?

 

「まぁ、ここにも書かれてるが、やはり俺達の睨んだ通り…」

「知らねぇ攘夷志士より、知った戦友(とも)ってか?マジでありがた迷惑だわ…」

 

ハァァァァ…とそれはもう、幸せが半年分ぐらい逃げて行ったのではないかとさえ思える深い溜息を吐きながら、心底めんどくさそうに鬼兵隊の船を見つめる銀時。だが態度とは裏腹に…その目はとても真剣だ。

 

「新八、ヅラ。もし、高杉が接触してきたら…新八の家で言った通りお前らは…」

「銀さんは高杉って人の方に集中してください。僕が神楽ちゃんを探し出して、絶対に助けますから!!」

「おー、言うねぇ…ぱっつぁんも立派に男の子だねぇ。頼んだぜ?」

「待て、銀時!!俺は…!!」

「ヅラ、今回ばかりはワリィけど…俺は高杉とサシで話がしてぇ。源外のじーさんを巻き込んだ機械(からくり)騒動の時は…まともに話せなかったんだわ。俺は、アイツの本心が知りてぇ。アイツが俺を指名してるってんなら…俺は1人で行く」

「銀時…」

 

納得がいかない、という表情で見つめてくる桂に苦笑しながら、ポンと新八の肩に手を置く。

 

「だからよ、ヅラは新八と一緒に神楽を探してくれや…。流石に新八1人で、あの広い船を探し回るのは大変だろうからなぁ…」

「………仕方が無い。お前は一度言い出したら聞かんからな…。分かった、俺は新八君と共にリーダーを探す事に専念しよう」

 

だが、と桂はビシッと指をさしながら銀時に言う。

 

「間違っても高杉の口車に乗せられて高杉一派に…鬼兵隊に寝返るような事だけはするなよ!!」

「んなことするか。言ってんだろ、今更国をどうこうしようなんざ考えちゃいねぇって…。攘夷だ何だってそんな面倒な事に首を突っ込むかよ」

「いいか、銀時?お前は俺と共に攘夷志士として活動すると、もう既に決まっているのだからな!!俺の方が先約だ!!フハハハハハッ、残念だったな高杉……!!ブベラァァァァァァッッ!!??」

「俺はいつ、その誘いにOKしたァァァ!?つい数行前に俺、言ったよね!?攘夷云々に“興味ないね…”って、F●7のクラ●ドみたいにカッコよく言ったよね!?」

「いや、そんなカッコよくは言ってませんよ、銀さん…。そんな嘘吐くと、スク●ア・エニッ●ス本社とク●ウドさんのファンからクレームが来ますからやめて下さいね。てか…桂さんも何回殴られたり蹴られたりしたら気が済むんですか…。この話だけでアンタ、何回奇声発してんだよ…」

 

真剣な話と電波な話に温度差がありすぎる。もう疲れたと…新八(ツッコミ)は項垂れるのであった。

 

「コラァァァァッッッ!!!新八と書いてツッコミというルビを打つな、作者ァァァァ!!!」

 

 

 

コンテナの陰で3人が色々と温度差のある会話をしている頃、山崎は3人とは離れた場所に身を隠し、携帯から土方に連絡を入れていた。

 

「以上が報告になります。万事屋の旦那の方にも報告済みです」

『あぁ、ご苦労だったな。しっかしまぁ…聞いた限りじゃ、ホント…ロクでもねぇ内容だな…』

「えぇ、神楽ちゃんのことも勿論ですが、万事屋の旦那のことも気がかりですね…」

 

あの高杉一派を相手にするということで、もちろん山崎もある程度の覚悟はしていたが、高杉の思惑は予想以上に執念深そうだという事が見ているだけで分かった。あのニヒルな笑みは…まるで狙った獲物を丸呑みにしようとしている蛇のようにすら思えたのだ。

 

『まぁ、高杉の事は銀時…ッ、万事屋に任せても大丈夫だろう』

「副長、別に普通に名前呼びでも構いませんよ?」

『うるせぇ、俺ァな、プライベートと仕事ではしっかりと切り替えるようにしてんだよ!!』

 

切り替えきれてないじゃないか、という山崎のツッコミは言葉になることなく脳内で消えていく。(もちろん、後が怖いからである。)

 

「それで…この後、俺はどうしたらいいでしょうか?このまま屯所に帰還ですか?それとも沖田隊長と合流して桂捕縛作戦に加勢ですか?…もしくは、もう少し探りを入れますか?」

『いや…万事屋に渡した報告書と同じものを、緋村の旦那達にも渡してやってくれ。もう既に港に向かってるからな』

「了解です、って……え?旦那()?緋村の旦那以外に、誰か一緒に居るんですか?」

 

山崎の最もな質問に、深々と溜息を吐きながら土方が答える。

 

『斬左だ…。野郎、結局ついて来やがったんだよ…』

「なるほど…。本当にお2人は仲がいいんですね」

『まぁ、喧嘩屋から足を洗わせたのは緋村の旦那だからな…。斬左が慕うのも無理はねぇだろ。最も、野郎はただ喧嘩がしたいだけらしいが…』

「あぁ、彼らしいですねぇ…」

『バカヤロウ、納得すんなっ!!』

「ヒッ、すんませんっ!!」

 

とりあえず、港に向かっているであろう剣心達と合流し、銀時達に手渡した報告書と同じものを渡した後は、沖田達と合流するのではなく、更に鬼兵隊の本部に潜り込んで調べるように(めい)を受けた。了解した後、すぐに山崎は剣心達を探す為に港のコンテナに登る。タンタンとコンテナを飛び移りながらキョロキョロと辺りを見渡していると、すぐに目当ての人物を見つける事が出来た。

 

(あぁ、この闇夜じゃ左之さんの白い服はやっぱり目立つなぁ)

 

思わず苦笑を零してしまうが、今回ばかりは助かったとすぐに2人の元へと駆け寄る。

 

「緋村の旦那!!左之さん!!」

「山崎殿?」

「おう、ザキじゃねぇか!!どうでぇ、何か情報掴めたか?」

 

左之助に問われ、コクリと頷き2枚の紙を差し出す。

 

「これが、現時点で分かっていることの全てです。既に同じ内容のものを万事屋の旦那達にも渡してあります」

「しかし良いのでござるか?このような機密情報を、拙者達に見せて…?」

「副長からの許可が下りているので問題ありませんよ」

「何が鬼の副長だよ。結局ただのニコチンマヨラー野郎じゃねぇか」

「あはは、それは否定できませんね…」

 

左之助の言葉に引き攣った笑みを見せながらも、報告書に書かれている内容でも最も大事な部分を要約して説明した。すると、さっきまでケラケラと笑っていた左之助から笑顔が消え、そして剣心もまた真剣な表情になる。

 

「それでは、やはり“特上品”は神楽殿で間違いないと…」

「そんでもって、あの銀髪の言ってた通り…高杉って野郎の目的は…」

「はい、万事屋の旦那…というよりも“白夜叉”としての力を求めている、といった感じでしたね」

 

それぞれが難しそうな表情で腕を組む。暫くシンとした空気が続いたが、その静寂を破ったのは左之助だった。

 

「まさかあの銀髪、高杉って野郎の手下に寝返ったりはしねぇだろうな?」

 

それを言われてしまうと、流石の山崎も自信を持って(いな)とは言えない。何せ、桂・高杉・そして銀時は攘夷戦争で共に戦った戦友なのだ。銀時に限ってそんな事はありえないと山崎は信じているが…その答えは、銀時にしか分からないのも事実。

 

しかし…

 

「いや、あの者は…万事屋殿は決して攘夷志士などにはならんでござるよ…」

 

剣心はきっぱりと、そう言い切ったのだ。

 

剣心の発言に、流石の2人も驚きを隠せず剣心を凝視する。そんな2人に苦笑しながら、剣心は言った。

 

「言ったでござろう?拙者と万事屋殿はどこか考え方が似ていると。拙者はもう、この国をどうこうしようという考えは持ち合わせておらんでござるよ。今更、攘夷志士になるつもりもござらんし、人斬りに戻るつもりも当然ござらん。山崎殿であれば……万事屋殿が何を思い、その腰に木刀を下げているのか分かるのではござらんか?」

 

剣心に言われ、山崎は硬い表情からフワリと笑顔を零す。

 

「そうですね、万事屋の旦那は…この国をひっくり返すことよりも…」

 

万事屋という自分の居場所を…

 

「パチンコで儲ける事や、糖分の事、それにジャンプの続きの事しか頭に無い人でしてね」

 

その万事屋で共に過ごす家族同然の子供達を…

 

「そして…かぶき町という、万事屋の旦那が大切に思っている場所を護ることだけを考えている、真っ直ぐな人ですから…」

 

家族同然の子供達やスナックに住まうお登勢やキャサリン、その他大切な者達が住まうかぶき町を…

 

己の木刀(けん)で護ると、必ず護り抜くと断言した男だ。

 

「万事屋の旦那に限って、今更攘夷とか…そんな難しい事を考えたりはしないでしょう。まぁ、これは…俺の願望でもあるんですけどね!!いや、真選組全員の願望ですかね…?」

 

山崎の言葉に、これは面白いと左之助は笑う。聞いてる限りでは、真面目なのかチャランポランなのか良く分からない、本当に掴み所の無い男だ。妙が“マダオ”と言いきったぐらいだから、あまりまともな生活をしていない事は確かだろうが。

 

だが、それでも…こうしてその強さを分かっている者達は沢山居る。そんな彼を慕っている者達が居る。

 

「まさか、それを緋村の旦那が分かっちまうとは思いもしませんでしたが…」

「拙者も確信があって言ってるわけではござらんよ。まだちゃんと、会って話したわけではござらんからな。それに…仲間としては心強いが、敵に回すと厄介そうでござる…。できれば剣を交える事だけは遠慮願いたい…」

「剣心、実はそっちが本音だろ?」

「おろ、何のことでござろう?」

「ったく、すっとぼけやがって…」

 

剣心の言葉に、左之助と山崎は笑う。そして山崎も同じだと…剣心達に言った。

 

「俺達も万事屋の旦那だけは敵に回したくありませんからね。副長でさえ勝てなかった相手に、俺達がいくら束になっても敵うわけがないですよ。何せ、伝説の“白夜叉”。だから俺達も、あの人を敵に回すと厄介だから、そうなって欲しくないってのが本音です」

「おいおい、土方を負かしたのかよ…あの銀髪!?」

「えぇ、まぁ…副長は今でも断固として認めていませんけどね。けど、なんやかんやで俺達真選組は、万事屋の旦那に沢山の借りがあります。そして、その強さに惚れ込んでいる隊士達もいます。だから、どうあっても万事屋の旦那には“ただの一般人”であってもらわなきゃ困るんですよ!!」

 

あの人をしょっ引くのは随分と骨が折れそうですからね。それに、隊士達の命がいくつあっても足りませんよ。

 

山崎の素直な思い。それは、真選組全員を代表しているかのような言葉でもあった。

 

「尚更興味が湧いてきたわ、その銀髪によォ…!!」

 

武装警察・真選組と恐れられる彼らが、そこまで1人の男を慕う理由は何なのか。そして、その内に秘めたる強い想いとは何なのか。

 

「奇遇でござるな、左之。拙者も同じ事を考えていたでござるよ」

 

坂田 銀時という1人の男が、これほどまでに慕われる理由は一体何なのか。

 

侍は刀同士をぶつけ合う事で語り合うことが出来るというが…

 

この男とならば、腹を割って話せるような気がする。

 

そんな事を思いながら、剣心は鬼兵隊のアジトである船を見つめた。

 

「では…情報も得た事だし、左之…」

「おう!!じゃあな、ザキ!!俺達は行くぜ!!」

「お気を付けて。俺ももう少し鬼兵隊に探りを入れます。情報は分かり次第お伝えしますので」

「山崎殿も気を付けて…」

「ありがとうございます、ではっ!!」

 

バッとコンテナの上に素早く飛び乗り、ヒョイヒョイとコンテナを伝って鬼兵隊の船へと向かっていく山崎の背中を暫く見送った後、剣心と左之助は互いに視線を交わし頷き合う。

 

「では、拙者達も…」

「そろそろ行くとしますかねぇ!!」

 

ニッと左之が笑い、それにつられるように剣心も笑う。そして次の瞬間には、ダッと2人は地面を蹴っていた。

 

目指す場所はただひとつ。

 

 

「待ってろよ、神楽ァ!!」

「絶対に僕達が助けるから…!!」

「リーダーを解放して、リーダーにそのまま鬼兵隊を潰してもらうぞ!!」

「「目的、そうじゃねぇだろうが、この電波ァァァァ!!!」」

 

 

「で、どうするよ?どっから入りゃいいんだ?」

「お主ならどうするでござるか、左之?」

「決まってんだろ、正面突破!!こいつが一番シンプルでいい!!」

「お主ならそう言うと思っていたでござるよ」

 

 

「やったネ、足枷も外れたヨ!!後はこの扉だけアル!!開けろや、ゴルァァァァァァァ!!!!!」

「お、おい…さっきからよ…なんか中からスゲェ音とスゲェ声が聞こえるんだけど…?」

「ま、まさかあの夜兎…枷を千切ったって事はねぇよな?」

「馬鹿、ありゃ特注の枷だぜ?いくら夜兎でも……」

「ホワチャァァァァァ!!!!開けろつってんだろォォォォォォ!!!!!」

「………イヤイヤイヤ、ナイナイナイ………」

「じゃあお前、ここ開けて確認してみろよ…」

「…そ、その必要も無いんじゃないのか?大丈夫だって!!」

「…そう、だよな…。てか…そう、願いたいよな……」

「そうだな…」

「あーけーろォォォォォォォ!!!!!」

「「頼むから幻聴だと誰か言ってくれェェェェェ!!!!!」」

 

 

それぞれが、それぞれの目的のために…動き出す。

 

 

一方…

 

「よし、万事屋の方にも緋村の旦那の方にも連絡は行ったようだな」

「後は、アイツら次第、か…」

 

少し離れたところでパトカーを止めて、一通り山崎からの報告を受ける。その情報をまとめつつ、本当に厄介な事になったと土方は嘆息していた。

 

「まぁ、万事屋と旦那が居るんだ。心配はいらんだろうさ」

「…確かに下っ端相手なら、アイツらの敵じゃねぇだろうよ。だがな、近藤さん…」

「高杉 晋助か…?」

「あぁ…」

 

銀時自身の予想と、山崎からの報告。それは(たが)うことなく一致してしまった。高杉が求める、白夜叉(銀時)の力。となれば、志村家で銀時が言っていた通り…2人はサシで対決する事となるのだろう。

 

「勿論、万事屋が負けるとは思っちゃいねぇ。だが、相手はあの超過激派のテロリストだ。何を仕出かすか…」

「それに、ザキの報告によると幹部達は高杉の(めい)で現在は鬼兵隊に居ないらしい。何かよからぬことを企んでいなければいいが…」

 

不安がないといえば嘘になる。だが、その不安の中に“銀時が高杉一派に寝返る”という不安は一切無かった。

 

「まぁ、野郎のこった。何とかするだろ…」

「だな」

 

それどころか、この危機的状況もあるいは銀時ならば切り抜けられると…そう信じている。

 

何故ならば…

 

「考えてもみろ、近藤さん…。今、あの場所に攘夷戦争の時の英雄が2人、それに桂も居るんだぜ?」

「ハハッ、それもそうだ!!」

 

そこには銀時だけではなく…

 

「それに、うちの優秀な監察方も…だろ、トシ?」

「それは褒めすぎだな…」

 

同じ目的の元に集まった者達がそこに居る。

 

 

だから…

 

 

「さて、近藤さん…俺達はどうする?」

「総悟の方の応援に行くぞ。いや、待てよ?今、斬左が居ないということは、お妙さんは1人!!俺が護ってやらんとッ!!」

「いーや、その必要はねぇな。むしろ、アンタから姐さんを護ってやんなきゃならねぇな、こりゃ。おーし、不本意だが総悟の応援にいくぞー、近藤さん」

「トシィィィ!?ちょ、俺はお妙さんのところにィィィ!!」

「ったく…おい、総悟!!聞こえるか!!今から俺達もそっちに行く!!」

『近藤さんだけで十分でさァ。だからお前は帰れや、土方コンチクショー』

「総悟ォォォォォッッ!!!!!!」

 

 

安心して、その場を任せられるのだ。

 




なんだ、このシリアスなのかギャグなのか良く分からないカオスな小説は(笑)てか、ヅラの扱いが酷すぎる件について^^;ファンの皆様、ホントすみません(苦笑)ヅラが嫌いなわけじゃないんですよ!?単に…弄りやすいキャラなんです!!(なお悪いわ!!)

ちなみに、文中に出てきた死語“ナウなヤング”とは“今風の若い子”という意味です(笑)もちろん、現代では死語扱いなので…間違っても使っちゃ駄目ですよ~!!(笑)「え、何この子?」って白い目で見られますからね~!!(笑)私は小説で時々、このネタを入れるつもりですけどね!!(主にヅラに言わせますb←)

ちなみに、ヅラに言わせたい死語は色々あるんですが、チョベリバ・チョベリグとか、だっちゅーのとか…(笑)うわぁぁぁぁ、死語すぐる…www

(にじファン初掲載 2011年7月10日)
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