ホウエン地方で始まる日常   作:kazusaichinomiya

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第二話 ダイゴとタツキ

「で、どういうことだか説明してくれるかい?」

と面と向かって話すことになってしまったタツキは、まだ状況が完全に理解した訳ではないが、ボスゴドラに抱っこされながら、平常心を取り戻しつつ話し始めた。

 

森での生活、突然の別れ、そして孤児院での生活…

長かった7年間のことを話し続けた。時折、後ろのボスゴドラのすすり泣く声が聞こえたが、タツキ自身はもらい泣きをこらえながら、90分以上にわたって話した。

話し終えると、ボスゴドラから更に強く抱きとめられ、またタツキも強く抱き締め返した。

「なるほど、だいたいはわかったよ、でもこれからどうするつもりかい?」

「どうする、って?」

「キミが決めなくてはいけないんだ。いっしょに暮らすか、永遠の別れを告げるか」

「いっしょに暮らしたい!!……だけど」

そう、これからのことをタツキ自身は何も考えていなかった。実際まだ孤児院にいる身ではあるから、孤児院ではポケモンとは暮らせない。全くバカげた話だけど。

「なら、トレーナーにならないか?、タツキ君はそのボスゴドラのことが大切なんだろう?大好きだろう?」

タツキにとっては嬉しい話だった。が、

「オレはトレーナーにはなりたい。けど、トレーナーとポケモンの関係での"大好き"とは違うんだ」

一瞬、空気が凍りついた。

「タツキ君、それって…」

「トレーナーとポケモンの関係じゃダメなんだ。オレはコイツに命令したくない。コイツとオレは対等な関係でいたい、オレはコイツが本当に大好きなんだ」

なんだよ、この空気、オレなんかマズイこと言ったかなぁ?とボスゴドラの顔を見ると、ボスゴドラは顔を赤らめて下を向いている。ひょっとして誤解するようなこと言っちゃった?

「それはつまり…そうゆう関係になr」

「ちちちちち、違うよ!オレは対等になりたいだけだし」

他意があった訳ではないし、実際の正直な気持ちだ。誤解されかねない発言ってほどでもないし。でも、ちょっとだけ胸に引っかかるものがあった。

それでも、ダイゴには伝わった様で、少し考えるような顔を見せながらこう言った。

「タツキ君、わかった、君にならこのボスゴドラを任せられそうだよ。それに、君に素質を感じるんだ。」

そういうと、ダイゴは自分のモンスターボールを投げた。

「メターーーー!!」

真ん中がDNAの塩基のように螺旋状になっている石が確認できた。

「あ、それって」

そういうなりポケットから一つに石を取り出す。螺旋構造になった石は色が違う以外はそっくりだ。

「ちょっと見てもいいかな?」

ダイゴは石を丁寧に調べ始めた。そして深く頷きながらこう言った。

「君達は本当に面白いね。こうなるのが当然だったかのようだよ。運命なの…かな?それは間違いなくボスゴドラナイトだよ」

「どう使うんだよ?」

「今このタイミングでは教えないよ、でもこれは渡しておこう」

「はぁ」

そういって渡されたのは腕輪のような何かだった。

「さて本題に入ろう、ここで僕のメタグロスと勝負して欲しい、君のカノウセイを示してほしい!」

 

 

 

ヒガナはダイゴの後を追ってきていた。木の枝に座る。

「ごにょにょ〜」

「シガナー、静かにみていようね〜」

そういうと、真剣な顔で様子を眺め始めた。

 

 

 

「ボスゴドラ…またそばにいてくれるんだよね、すごいうれしい」

「ガゥウーー」

そばにいるだけでタツキはドキドキが抑えられなくなっていたので、抱き締めてボスゴドラの体を感じていた。

「始めようか、メタグロス、パレットパンチ!」

パレットパンチの威力はそこまで大きくはないが、確実に先制攻撃できるワザ。すばやさが低く圧倒的に不利なボスゴドラだが、てっぺきで防御体制を強化したようだ。パレットパンチが当たったが、ポスッ、と軽い音がなってダメージを受け流す。

「フッ、流石ははがねタイプだ、猛烈に硬いね」

「ボスゴドラ、頑張って!」

「グルォオオオオオ!!!」

すると地面がユサユサと揺れ始めた。猛烈に変化した揺れはメタグロスを襲い、苦しむ声を上げる。

「メターーーーーー!!」

その後、ボスゴドラはスパートをかける。アイアンヘッドで木に向かって弾き飛ばした。

「まさかこれほどとはね。正直驚きだよ」

「ガウゥ〜」

ボスゴドラはゆっくりとこっちにやってきた。

「じゃあ冒険できる準備をしようか。お小遣いはあるかい?」

「あるけど。でも一つ訊いてもいいか?」

「なんだい?」

ダイゴが返してから数秒黙り、やがて口を開く。

「一体あなたは誰なの?どうしてオレのことを見てくれるんだ?」

ダイゴはうつむき、静かに口を開いた。

「昔のボクを見ている気分でね。ボクは元ホウエンリーグのチャンピオンでね。昔は自信満々で誰にも頼ろうとしなかったんだ。でもね、今のチャンピオンに負けて以来、ボクの周りには色々な人がいるんだって気付いたんだ。色々な人が支えてきてくれたから、ここまでやってこれたんだと。一番近い存在はポケモンなんだよ。だから、君にはもっと早く気づいて欲しい。君にもこの世界のあらゆる世界を見て欲しいからね。って、答えになっていないかな?」

「いや、もう分かった」

そういうと、タツキは通帳を開いた。

「入園してから一回も使わなくてよかった」

ニヤリと笑うタツキが片手に構えた通帳には21万円と表示されていた。

 

 

 

色々と買い物を続け、手元に残ったのは1万円となった。

旅するのに使うリュックサックだったり、服のセットだったり、その他もろもろ。なかには俗に言う”ポケナビ”という連絡ツールまで。幅広く購入した。自転車も購入しようかと思ったけどやっぱりやめた。

「よし、じゃあ、ボスゴドラをモンスターボールに入れれば完璧だね」

「嫌だけど?」

 

一瞬ダイゴが止まったぞ?

「!?」

「だって流石にボスゴドラを閉じ込める気にはならないよ。第一、7年間お互いにずっと一人だった訳だし、一緒に歩いていても問題はないしね」

問題自体はないのかもしれないが、10人に訊いたら十中八九おかしいレベルだ。しかもボスゴドラはイチャイチャしかねないし。

「それに、何のために自転車買わなかったかわからないじゃん」

 

 

 

こうして準備は終わり、いよいよ明日ヒマワキシティを出るという最後の夜。オレは孤児院には何も言わないと心に誓った。ボスゴドラとふたりっきりの生活にまた戻れるのだと思うと、胸が熱くなってきた。布団の中で、横になっていると、ボスゴドラがぎゅっと抱き締めてきた。振り返るとボスゴドラの大きな顔が目の前にあった。凹んだ頭の角はきっともう戻らないだろう。と考えていると、ボスゴドラの大きな顔が近づいてきた。そして、人生で初めてキスされたんだ。孤児院にいたときからずっと恋愛とかキョーミないとおもってきたオレにとって、初めてのキスはボスゴドラがしてくれた。今のオレはすごく嬉しく感じた。とはいってもこれ以上の関係にはならないけどね。

「おやすみ、ボスゴドラ」

そういって、オレは目を閉じたが、またもう一回開いてボスゴドラにキスを返し、そっと目を閉じた。その後ボスゴドラにもう一回キスされたのは言うまでもない。

 

この時点ではまだボスゴドラはオスだと知っていたけど、それでもオレにとって大切なヤツだと思っている。好き、という気持ちは嘘ではないから。




ボスゴドラに対するタツキの"好き"は恋愛感情ではなかった。
そのためかキスもスキンシップ程度にしか思ってない。
一方のボスゴドラ氏は本当に心の底から好きなんだろうね。
好きという気持ちに嘘がなければいいんだよ!
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