ホウエン地方で始まる日常 作:kazusaichinomiya
布団の中で抱き合うような形で寝ていたオレは目を覚ましたが、がっしりした体つきのボスゴドラからは離れられず、困り果てていた。やっとボスゴドラが起きた、と思っていたら、またキスされた。オレは受け入れてしまっているが、恋愛関係にある訳ではなく、ただのスキンシップだ(と思っている)。その状況にダイゴがやってきた。
「なかなか熱いね、入ってくるのはマズかったかな?」
「いや、問題ないさ。スキンシップだけだし」
それを聞いたボスゴドラは寂しそうな表情をするのだが、二人とも気づいていない。
「それよりどうする?やはり実践するのが一番いいと思うのだが。ジム戦とかどうだい?」
ジム戦とは…ポケットモンスターシリーズお馴染みの要素で、ジムリーダーという凄腕のトレーナーと勝負するのである。強いかどうかはまあ微妙なラインだが、ジムリーダー8人に勝利して、それぞれのジムバッジをもらうとポケモンリーグへの挑戦権が得られるのだ。チャンピオンとして君臨するのは各地方ごとに異なっていて(カントー・ジョウトは例外)、そのチャンピオンに勝利するのがトレーナーの夢なのである。
「この街のジムリーダーはナギと言ってね、現チャンピオン曰く変人おねいさんだそうだ」「変人おねいさんって…」
ジムリーダーというのだから強さは100%保証なんだろうけど、変人と聞いて不安になる。一体変人おねいさん実力はいかに。
と思うとダイゴがある建物の前で立ち止まった。
「ここがこの街のジム、ヒマワキジムだ。きっとナギはいると思うけど」
「ルッチャーー!」
威勢の良い声とともにポケモンが吹っ飛ばされたのが確認できた。
「ルカリオ、戦闘不能。ルチャブルの勝ち、よって勝者、ジムリーダーナギ!」
「さすがナギさん、私はまだまだね」
ふむ、勝ったのがジムリーダーと言っていたが、そんなに変なおねいさんではないぞ?
「元かくとうタイプジムリーダーのコルニにとって相性が悪いものね」
そういってこちらを向く。
「あら元チャンピオンがかわいらしいお子さんを連れてきてくれたわね」
前言撤回、こいつ悪だ。この正常なオレに対してかわいらしいなんて、変人以外の何でもない。悪じゃなけりゃなんなんだ。
「彼はタツキ君。新米トレーナーなんだけど、お願いできるかな?」
いよいよオレとボスゴドラの初めてのジム戦。どういう感じでやるのかまだ分からないけど、とりあえずオレはボスゴドラを信じることしかできないしな。
「いいわよ、ルチャブルのやる気はあるみたいだし」
「ルチャブル?そんなポケモン使っていたか?」
「細かいことは気にするな!」
「ルッチャーーーー!!」
ルチャブルと言われたポケモンはその場駆け足の状態でボスゴドラを待っている。
「ボスゴドラ、お願いね」
そういってボスゴドラを送り出す。
「これより、ジムリーダーナギ対チャレンジャータツキのバトルを始めます。使用ポケモンは3体、交換はチャレンジャーにのみ認められます。それでは、バトルスタート!」
やっべ、ボスゴドラしかいない。勝ち抜かなくちゃいけないのかよ。でもボスゴドラならいける。
「参ったな、アイツボスゴドラしかいないんだよな」
「ボスゴドラは硬いけどジムリーダーに効くのかな?」
ボスゴドラはてっぺきで更に防御体制を強化する。ただでさえ硬いボスゴドラのてっぺきで、動く要塞と化した。
「つるぎのまい」
ルチャブルはそのまま攻撃力を上げてくる。きっと火力を上げて応戦するのだろう。
「ルチャブル、とびひざげり」
そうすると、ルチャブルは空中にジャンプし、蹴りを入れようとボスゴドラめがけて落下してくる。
「アレ当たったらボスゴドラは終わる…!」
ダイゴがそう言った時、すばやさ最低クラスのポケモンとは思えない程の身のこなしを見せ受け流し、地面に叩きつけた。当然反動の大きいワザを使ったルチャブルは動けなくなった。
終始無言だったが、タツキとボスゴドラは互いに頷いた。
「ルチャブル、戦闘不能。ボスゴドラの勝利」
「まさかこんな形でやられるなんて。タツキ君にはもう少し本気でいくべきかしらね」
まずは一勝、危ういけどなんとか勝った。
「次はこのk…」
「コルニー!遅れちゃってごめーん!」
そういってやってきたのはドラ○エの主人公風の冒険着を見にまとう少年だった。
「おそいぞラケル、お前の応援があれば勝てたかもしれないのに」
「すみませn」
「ラケル?ラケルと言ったか?」
おいおい、ダイゴ、連れてくるだけ連れてきたのはいいが、バトルに集中しろよ、まったく。
「ファイアロー、出番よ!」
続いてナギが繰り出してきたのはひこうタイプでもすばやさがトップクラスのポケモン、ファイアロー。しかしただでさえ速いのにやっかいなのg…
「ブレイブバード」
出てきてすぐにナギの命令通りひこうタイプのなかでも上級クラスのぶつりワザを放ってきた。ぶつりワザへの耐久力は半端ないので当たっても痛くないのだが。ボスゴドラが一発目を避けて反撃する間もなく、二発目がくる。これがファイアローのかくれとくせい『はやてのつばさ』である。ひこうタイプのワザを繰り出したときは必ず先制攻撃ができるため、ただでさえすばやさ最低クラスのボスゴドラには余裕がなく避けるか受け流すかで精一杯なのである。てか、新米にかくれとくせいぶつけるとかガチかよ。
ここで、急に変化が起きた。さっきまで避けていたボスゴドラに向かってこなくなったのだ。避け続けるあまり、地面から砂埃があがり、このままブレイブバードだけで狙うのは不可能と考えたのだろう。態勢を整えようとしていた所に、すかさずアイアンヘッドが入る。避け続けたのが幸いしたな。急な全力攻撃に耐久しきれず、ファイアローは地面に落ちる。
「ファイアロー、戦闘不能。ボスゴドラの勝利」
早くも相手の残りポケモンは一体となった。ボスゴドラはまだまだ余裕だし、とくしゅワザで弱点を突かれない限りはいける。
「あのトレーナーはすごいですね、一切ポケモンに命令していません。それでも命令される時以上に強力なワザを放っている。お強いのですか?」
「完全なまでに新人だ。だがここまでやるとは予想外だ」
タツキはだんだんゾクゾクしてきた。これがポケモンバトルなのだ。聞いたことはあっても、まさか自分自身が挑戦するなんて。それも最愛のボスゴドラと一緒に。相手がどんな行動をとるのか全く読めない。オレは最後までコイツに想いを託す…!
(ドクン)
お互いの鼓動が聞こえた、いや共鳴した気がした。オレが無言で思考をめぐらしていたのに、ボスゴドラは全部汲み取ったかのように大きく頷いた。
「…素晴らしいわね、その絆。でも、ジムリーダーは遥か上を行くことを、身をもって思い知らせてあげるわ!」
そういって繰り出した最後のポケモン、リザードン。しかし首には…。
「あれどっかで見たことある気がするな」
「おいナギ、いくらなんでもそれは反則だろ!」
「そう?これにも対応できなければポケモントレーナーになれないわよ」
そういうと光るネックレスと共に光り出す。
「進化を超えよ、メガシンカ!」
なにあれ、どーゆーこと?、と困惑しているタツキをよそに、リザードンは光の中で姿を変えていく。頭の角が三本になり、翼の形状が大きく変わる。
「……メガリザードン…Y…ですか」
さらに日差しも強くなる。室内…だよな、一応。
「リザードン、一気に畳み掛けるわよ、きあいだま!」
きあいだまは命中率こそ低いが威力だけでいったらインファイトに匹敵するレベルのとくしゅワザである。つまりこれが当たったらほぼ確実に死んでしまう。しかしきあいだまは一直線にボスゴドラを狙ってやってくる
「!!」
いや、まだだ、まだだ、まだだ…!
「まだ、終わるわけにはいかねェんだよ!」
直感的に吠えた。どうなるわけでもないのに。しかしボスゴドラも同時に。次の瞬間、ボスゴドラの周囲を煌々とまばゆい光が包んだ。光はきあいだまを吸収して、やがてその光は消えた。光の一部はタツキの腕からだった。その中にいたはずのボスゴドラの姿を見て、タツキ以外の全員が硬直した。
ナギさんは変人おねいさんだけどやる時はやるよ
ポケモンの構成は原作とは異なりますので予めご理解ください