図書室の天使さん   作:史上最強のラーメン

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やっぱサンシャインの一年生は最高だぜ。


内浦の夏!それは至高!

 

「あっ、髪整えてるからちょっと待って、善子ちゃん!」

 

「ヨハネ!早くしなさい、ルビィ!」

 

「善子ちゃん、あんまり急かしちゃダメだよ」

 

「ヨハネ!」

 

 

 

 

「ズラ丸、ルビィ、いっくわよー!」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

「はぁ...はぁ...」

 

朦朧とした意識で机に突っ伏す。

 

「もう!無理〜!!」

 

 側に置いてあったエナドリを勢いよくあおり、空になった缶をゴミ箱に勢いよく投げ捨てる。

 これで今日2本目。これ以上は致死量だろうがヨォ...

 

「飲まなきゃやってらんないのよ」

 

 サマーバケイション到来。セミのうるせー鳴き声。リア充共が一線を超える季節。夏休みとは地獄である。クソ暑いし、花丸達も練習ばっかでなんの予定も無く暇だし、補習地獄だし、課題地獄だし、鬼上司(桜内先輩)からの催促あるし。

 

『進捗はどうかしら?』

『すいません、ちょっと行き詰まっていて...』

 

『作業は順調?』

『さーせん、筆止まってるっす』

 

『今どんな感じ?』

『すいません寝てました』

 

『もうすぐできそう?』

『ごめんなさい』

 

 LINEのトーク履歴を遡って見返す。マジあの人ヤバいだろ。次から次へとかなまり同人誌の続きを催促してくるからな。睡眠も削って続き執筆してるわ。昨日も8時間しか寝てねぇ。普通に寝とるや内科医!

 それにしても、あの凄まじくツラの良い先輩め。あんな美人な先輩に、『天城君次もよろしくお願いね♡』『続きはまだかしら?大変だと思うけど頑張ってね♡』なんて言われたら直ぐに取り掛かる一択しかないだろうが!...ん?これって扱いやすい俺が愚かなだけなんじゃ...

 

「ん?なんだ?」

 

 そんな嫌な考えが脳裏をよりぎりかけたその瞬間、携帯の通知が鳴り意識は逸らされる。確認すると、LINEの1年生グループに新たなメッセージと1枚の写真が投稿されていた。

 今日からAqoursは合宿を行なっていると聞いている。午前は自治会からの要請で海の家の手伝いをし、その後午後からそのまま砂浜で練習。夜は高海先輩のご実家が経営する旅館に泊まるそうだ。

 なんの連絡だろう?そう考えながら、携帯のロックを解除しLINEを開く。そして、目の前の画像を認識した瞬間、雷に打たれた様な衝撃が走った。

 

『1人寂しい夏を過ごす未来にヨハネからプレゼントよ!』

 

 そこには、可愛らしいパジャマに身を包んだ美少女3人の自撮り写真が載っていたのだった。善子は携帯を持ちながら、どうだ!みんなでお泊まり羨ましいだろ!と言わんばかりに強気な笑みを浮かべている。対してルビィちゃんと花丸は控えめに、善子の後ろでニコリと可憐に微笑んでカメラを見つめていた。それに3人ともパジャマというリラックスした格好をしているせいか、普段よく見る制服姿と違い、少し無防備な感じがして胸が高鳴ってしまう。

 携帯を持つ手が震える。

 

「ゔぉぉぉ!!!ゔぉぉぉ!!!ゔぉぉぉ!!!」

 

【快報】語彙力崩壊のお知らせ。

 

 画面に映る写真に、俺の脳内は興奮を抑えることが出来なかった。ありがとございます!ありがとうございます!善子様!ヨハネ様!もうリトルデーモンになります!一生着いていきます!

 可愛すぎる。もうホント可愛すぎる。しかもこの子達、昼間は水着を着て海にいるんだろ?最高じゃねーか。マジ人類の宝。国宝。世界遺産。

 携帯を勉強机の上に立てて置く。

 

「ははぁ〜」

 

 俺は善子、花丸、ルビィの3人をこの世に産み落とし育んだ森羅万象全ての存在への感謝の念を込めて五体投地を行った。

 

『ありがとうございますヨハネ様!明日は絶対にお金落としにいきます!!』

『やったぁ!明日は来れるんだね!』

『良い心がけだわリトルデーモン。絶対来なさいよ!』

『それいいずら〜』

『マルたちの売上のために沢山貢ぐずらよ』

『任せろ花丸』

『ア◯ム行ってくる』

『それはダメだよ未来君!』

『草』

『そんなとこ行かなくても闇金黒澤組が貸してくれるわよ笑』

『闇金黒澤...ルビィの実家はヤ◯ザだった?』

『内浦の首領(ドン)

『内浦を裏から支配する者』

『ルビィさん弄ってごめんなさい』

『ルビィさん殺さないで』

『ルビィのお家はヤ◯ザじゃないよ!』

『その弄りはグレーゾーン通り越してダークずらね』

『闇金だけに』

『ワロタ』

『追撃してて草』

『笑えないよ!』

『確かに家の車は黒塗りのそれっぽい車だけどさ!』

『ルビィのツッコミキレッキレだな』

『才能あるわよアンタ!』

『マルは感動したずら。ルビィちゃん成長したね...』

『う〜ん、こんな才能嬉しくないなぁ』

 

 

 そんな風に、暫くLINE上でやり取りを行った。まだまだ話し足りないが、就寝時間が迫っているとの事でキリのいい所で会話は終了した。

 明日には会えると思いながらも、寂しさから携帯をベットに放り、寝転ぶ。

 

「あー、もう寝よ!締切なんてどうでもいい!明日に備えて寝よ!」

 

 明日は丸一日完全フリー。俺は全てのカルマから解放された男。呪力ゼロ、拳のみ、勝者あり。今日は学校で進◯模試があったから行けなかったからな。やっぱ自称進はクソ!!!

 明日こそは花丸達の水着姿を拝みに行くぞー!

 

 期待に胸を膨らませながら、俺は床につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 夏の日差しが降り注ぐこの頃。全学生待望のサマーバケイション到来!その過ごし方は十人十色。全国の学生はそれぞれ自由な夏を謳歌することが出来る最高の時間だ。与えられた時間を活用して勉学に励むもよし!部活に励むもよし!恋愛に励むもよし!家に引き篭もるもよし!毎日エグいポルノ見てオ◯るのジョージするもよし!

 

「あっ、天城君だ!来てくれたんだね!」

 

「あら天城君。善子ちゃん達から話には聞いていたけれど、本当に来てくれたのね」

 

「チャス!お疲れ様です!高海先輩!桜内先輩!!」

 

「チャッス!」

 

 海水浴場付近の道で客引きをしていた高海先輩と桜内先輩。声を掛けて貰ったため、元気よく挨拶すると、高海先輩も同じ様に元気よく返してくれた。う〜ん、やっぱこの天真爛漫さ、いいですなぁ。

 そう感心していると、桜内先輩が俺の側に寄って、小さな声で耳打ちをして来た。

 ふむ、桜内先輩よ。お主そのピンク色の水着よく似合っておるな。嘗てこの目に焼き付けた桜内ピンクを思い出させるエロスと清楚さが混在した素晴らしき姿だ。故にそんなに近づかないでくれ、さもなくば獣になってしまう。

 

「その後進捗はどう?」

 

「...」

 

「天城君?」

 

「バッチグーです!」

 

「それは良かったわ!流石ね!!」

 

 うっそー。昨日はあれから善子達とLINEしてたから何にも進んでません。

 

「なんのお話してるの?」

 

「な、なんでもないわよ千歌ちゃん!」

 

 百合同人の進捗の話してたんだが、必死に誤魔化してて草。俺はこの美人な先輩の秘密を唯一握る男!ウェヘヘへ...その秘密を盾に俺の百八煩悩を...とはならんのよなぁ。桜内先輩も俺の秘密を握っているし、もし俺がチクったら俺の秘密もルビィちゃん達にチクられるから。

 

「え〜なんか怪しいなぁ。まぁいっか。花丸ちゃん達は海の家にいるからね!」

 

 先輩方はまだ客引きを続けるとの事だったので、お2人方とは別れて俺は1人でビーチに降り立つ。

 

「おぉ...!」

 

 目の前に広がる美しい海。そして水着を纏ったAqoursの皆さん!キモがられる恐れがあるため、あまりジロジロ見る事は憚られるが、これは見ずにはいられない。

 うーむ、これは気を抜くと直ぐにマイサンがウェイクアップチャレンジャーしてしまうな。海開きからあまり日が経ってないのもあって他にも水着のお姉さんが沢山いるし、公然猥褻罪で牢獄にブチ込まれる可能性も0から1へ、否、0から100位には上がっているだろう。あれ?それって確実に捕まって獄中で点呼!されちゃうってことだし、大人しく家に篭ってジョージしてた方がいいんじゃ...

 

「ふふっ、どうしたの〜?もしかして私達の水着姿に見惚れちゃったの〜?」

 

 ゔぉぉぉ!やはり俺の人生に引導を渡すのはAqours No. 1エッチィの小原先輩だったか!

 

「そ、そそそ、そんなことはないですよ!?」

 

「動揺しすぎよ〜?可愛いわね」

 

 小原先輩エッッッッッッッッッッッッッッド江戸(えど、旧字体:江戶) [1]は、現在の東京の前身・原型に当たる都市を指し、その旧称である。現在の東京都区部の中央部に位置した。平安時代後期に東京湾の日比谷入江に面する小地名として現れーーーーーーって長い長い長い長い!無駄な文字数稼ぎヤメロ!規約違反でBANされちゃうだろうが!それと急な賢者タイムもやめい。

 

「うそうそ、未来は花丸たち一筋だもんね」

 

「は、はて?なんのこと言ってるのやら」

 

「3人の水着姿を見に来たんでしょう?」

 

「その言い方はメチャクチャ語弊ありますね!僕はただ友達に会いに来ただけです!」

 

 実際その目的が90パーを占めているのは当たりだけどね!

 

「ノンノン、語弊じゃないはずよ。でも分かるわ、その気持ち。ルビィも花丸も善子も、3人の水着姿はほんっとうに超キュートでねぇ。まるで夏のビーチに舞い降りたエンジェルのようなの...!」

 

「マジすか...!」

 

 小原先輩の言葉に、想定していた以上の期待が膨らむ。まぁ分かってたよ。そりゃそうだ。3人とも天使の様に可愛いだなんて自明というか、1+1が2になるのと同じ様に当たり前のことなのだ。え?1+1は田んぼの田ですぅー!だって?黙れバカ。

 

「えぇえぇ!マジよ!あれはきっと意中の男の子を魅了したいと、一生懸命に選んだ水着じゃないかしら!健気ねぇ、可愛らしいわねぇ」

 

 意中の男の子...だと?そんな存在お父さん知らないぞ!そんな野郎がいるなら俺に少しくらい話してくれてもいいのに、友達なんだからさ。

 一生懸命選んだというその水着を纏った姿を見てみたいと思う反面、あの子達にその様なクソみたいな存在がいると考えるだけで複雑な気分になる。

 

「クゥ...あ、あの...その意中の男の子というのは一体?」

 

「教えて欲しい?」

 

「はい!教えてくださいお願いします!」

 

「えぇ〜、でもあの3人のプライバシーに関わる話だしな〜」

 

「なんでもします!だからお願いします先輩!!」

 

 確かにセンシティブな問題なため、聞き出すのは常識的に考えて良い行為ではないだろう。だがしかし、そんなモラルすらも置き去りにする程俺の好奇心は肥大化し、止められないんだ。笑っちゃうよね!たはー(メロンパン並感)

 知りたい。Siriたすぎる!けれどヘイSiri!してもSiri得ない。だから俺は全てを賭ける。体払い。俺の初めてを、Siriも賭けざるをえない(キモすぎ注意)。

 

「可愛い後輩にそこまで言われたら仕方ないわね。OK!分かったわ!!なんでもするという言葉に二言は無いわね?」

 

 俺の初めてがダメなら、後はもう花京院の魂位しか賭けるものがない。

 

「はい、ありません!」

 

「OK!じゃあ財布を出しなさい!そして店に行くわよ!オススメのメニューが沢山あるから紹介するわ!!沢山食べていってーーー」

 

「ていっ」

 

 小原先輩の後をついて行こうとすると、いつの間にか近くにいた松浦先輩が小原先輩の頭をチョップし制止した。

 

「アウチ!何するのよ果南!」

 

「こらこら、後輩君にタカらないの」

 

 はっ!正気になって考えてみれば、今俺は破産の危機を迎えてたのかもしれない。松浦先輩マジ感謝。

 あぶねー、やっぱこの先輩危険人物だわ。俺のこと掌でコロコロ転がしてくるもん。流石三年生。ボンキュッボン!エロい。最高。なんだろう...都合の良いようにコロコロされて快楽を覚えた自分に驚いたんだよね。

 それにしても、松浦先輩の水着姿凄まじいな。あまりの破壊力に理性のダムが決壊しそうだった。しかし、本命はここから。こんな所で終わる訳にはいかないのである。

 

 

 とはいえやっぱ、夏の海は最高だぜ!!!

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「あっ、未来君。いらっしゃいずらー」

 

 海の家に入ると、花丸が出迎えてくれた。水着のまま接客してるのか。最高じゃないか。いや、例え水着じゃなかったとしても最高だ。花丸が出迎えてくれる、それだけでこの世の全てに勝る幸せを享受できる。ここは天国か?

 

「お疲れ花丸。約束通りコレ、落としに来たぜ」

 

 そう言って俺は悪い笑みを浮かべながら手でお金のマークを作る。マニーですの!守銭奴系スクールアイドル。語尾がですの系スクールアイドル。アリだと思いますの!

 

「あはは、沢山頼んでくれるのはありがたいけど、あんまり無理はしないでね」

 

「俺の財布の心配をしてくれるのか花丸。クゥ...花丸、一生俺の財布を握ってください!」

 

「1名様入りましたずらー」

 

 完全にシカトされてしまった。だがしかし、そんな所もまたイイ!本当に花丸、愛いやつ。

 花丸は片手で空いたお盆を胸に抱えながら、知り合い特典か、1番奥の良い席に案内してくれた。お盆になりたい。

 それにしても花丸の水着。肌の露出はそこまでだがムチムチしてて絶景だな。これは100万ドル通り越して100無量大数ドル位の価値があるぞ。

 

「注文が決まったら呼んでね」

 

「キミを注文したいんだが、そんなメニューはあるかな?」

 

「お客様お帰りでーす!ありがとうございましたずらー」

 

「待て待て、帰らん帰らん」

 

 辛辣な対応。ぴえん。

 

 店内にはまだ数人のお客さんがおり、そそくさと花丸は別のお客さんの方へ行ってしまった。花丸が頑張って働いている姿を眺めた後、卓上に置いてあるメニューを手に取る。  

 メニューと睨めっこしていると、天使が舞い降りた。

 

「未来君!来てくれたんだね!」

 

 あぁぁぁ〜可愛い〜。癒される〜。次から次へと幸せが押し寄せてくる。正のスパイラルだ。

 

「勿論!約束したからね!」

 

「嬉しいなぁ。ありがとう!」

 

 ルビィちゃんとの約束を破るとか、そんな世界終末時計を一周させるよりも大罪な事するわけねぇべ!!

 

「ねね、ルビィ今から休憩なんだけど、ここで一緒にお昼にしてもいいかな?」

 

「良いに決まってるじゃん!ほらほら、疲れてるでしょ?座って座って」

 

「うん!」

 

 ルビィちゃんは嬉しそうにしながらそう口にして、俺の横に腰をかけた。んん?

 

「えと...なんで隣?」

 

 4人掛けの席なのに何故向かい側じゃなくて隣に座るんだろう。

 

「この方が一緒にメニューも見れて良いかなって思って。ごめんね、迷惑だったかな?」

 

「め、迷惑だなんてそんな!そうだね!こっちの方が良いに決まってる。俺は何を馬鹿なこと言ってるんだ!」

 

 疑問は残ったままだが、ルビィちゃんが言うことなんだから正しいに決まってる。ルビィちゃんの言うことが真理でありルールであり法となるのだ。ルビィちゃんの行動に疑問を持つとはなんと烏滸がましいやつ、俺。

 考えを改めた俺は、ルビィちゃんとメニューをシェアして一緒に眺める。

 隣り合って一緒にメニューを見ていると、結構な頻度でルビィちゃんの肩が当たってドキッとしてしまう。

 それにしてもルビィちゃん、意外と肌の露出の多い水着を着ているな。気を抜くと直ぐに視線がその白く綺麗な肌に向かってしまいそうだ。

 

「うーん、メニューが沢山あって悩むね。何かオススメとかあったりする?」

 

「うん、あるよ!えっとね、1番人気のこのヨキソバっていうメニューだよ」

 

 そう言ってルビィちゃんは、メニューを指差しながら顔を上げてこちらを向く。視線が交差する。近い近い近い。この距離感だとかなりルビィちゃんの顔が近くに来てしまう。後もう少し近づけたら大変な事になってしまいそうだ。

 心臓の鼓動が激しく高鳴っているのを感じる。俺は、事故が起こってはいけまいと自然な感じに再びメニューに目を戻し、ほんの少しだけ距離を取る。

 

「へ、へぇ。ヨキソバね...ヨキソバって何?焼きそばみたいな名前してるけど」

 

「うん。見た目は普通の焼きそばだよ。曜ちゃんが作ってるから、ヨキソバって名前なんだって」

 

「成程。じゃあそれを1つと...シャイ煮と堕天使の涙?何これ」

 

 メニュー表の下の方に記載されていた謎の料理。名前を口にしてみたものの、この2つは絶対人気ない。これは確信だ。

 特にシャイ煮に関しては一杯10万円...が訂正されて500円となっている事から地雷臭がヤバい。何だよ10万って。売れるわけないだろ。例のインバウン丼もビックリの価格だわ。

 

「あはは...これはねーーー」

 

 苦笑いしながらルビィちゃんが料理の詳細を語ろうとすると、パタパタとこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 

「来たわね未来!」

 

「おー、善子。お疲れ様」

 

 足音の正体は善子だった。善子が小走りして俺とルビィちゃんのいる席までやって来た。

 

「ヨハネ!まだ注文してないわよね?」

 

「あぁ、してないな」

 

 相変わらずの反応速度だ。流石善子のお家芸。

 

「なら、このヨハネの力作である堕天使の涙を注文しなさい!」

 

 色物トップ2の一角を担う料理はやはり善子のspécialitéだったか。

 

「おうおう、こっちはお客様だぞ?お客様に注文を強制してくるとか、この店は一体どんな教育してるんだ?はぁ〜、キレたわ。店長呼んでこい」

 

「カスハラで訴えるわよ?あと店長はダイヤだけど、本当に呼んできた方がいい?」

 

「すいません、大人しく頼みますんでやめて下さい」

 

 将来の義姉であり、内浦の首領(ドン)である黒澤家の長女であるダイヤさんが店主の店で粗相をするとか万死に値する行為なんやで。もしも、『うちのルビィには2度と近づかないでくださいまし』とか言われたら、雄大な駿河湾に生息する海洋生物のためのプランクトンとなる事を迷わず選択するくらいには人生オワオワリなんやで。

 

「堕天使一丁入りましたー!」

 

 そう言いながら、善子は厨房へと戻っていった。

 なんやねんその掛け声。ツッコミ待ちか?とはいえイイネ、その元気に溢れた声。こんな可愛い子がいる店とか破産してでも通うわ。

 

「あー、未来君。無理だけはしないでね?」

 

 想像はしていたが、今のルビィちゃんの言葉で全てを察してしまった。

 そして数分後、善子は料理の乗ったお皿を手に持って戻ってきた。

 

「召し上がりなさい、堕天使の涙!」

 

 黒色の球体が目の前に置かれる。その球体はマヨネーズや鰹節が上に掛けられており、色違いのタコ焼きの様な見た目をしていた。これがspécialitéは料理人への冒涜で草。

 

「お前これお客さんに出してんの?闇物質じゃん」

 

「ダークマターいうな!」

 

 恐る恐る、付属の爪楊枝でダークマターを突き刺す。すると、中から謎の赤い液体が溢れ出した。いや怖。食べたくねー。でも善子から向けられる期待の眼差し。裏切る訳にはいかん。

 

「いただきます」

 

 なんだこれ!?辛すぎんだろ!辛味以外何も感じないぞ!!

 でも辛いのに旨くない!遠月学園第8席の久我先輩の四川麻婆みたいに辛いけど食べる手が止まらないことはない!正直無理!

 だが男なら耐えろ。耐えなければならない。せっかく女子が、それも善子が作ってくれたものを吐き出すべからずだ。

 

「...オイシイ」

 

「ふっふーん。でしょー?この堕天使ヨハネに掛かれば料理の一つや二つ。ほら、遠慮せずにもっと食べなさい!」

 

 アカン、手が震えている。食べるのを体が拒否してるんだ。大丈夫大丈夫。俺は今カプサイシンにより大量の汗をかいてテストステロンを多量分泌している。そう、善子の激辛料理を食べる事で俺はより良い男に変貌していっているのだ。流石善子、善いこと考える。

 それより、自慢げに胸を張る善子可愛くね?あぁマジ可愛い。何が堕天使だよ、ただの天使じゃねぇか。てか俺、もう善子にベタ惚れしてんじゃん。いつからこうなった?最初はこんな風じゃなかったのに。いやいいんだ。善子頑張ってるしな。ほんと偉いなー。凄いよなー。あーもう、本当善い子!!

 

 そんな事を考えつつも、目の前には未だ山積みになった堕天使の涙が残っている。これを華奢なルビィちゃんに食べさせる訳にもいかないし、俺が全て平らげるしかない。心を無にして残りを食べ進める。そして遂にラスト1個まで到達する。俺は手を振るわせながら最後の1個を口の中に放り込んだ。

 

「ゴチソウサマデス」

 

 さっきから発する言葉の全てがカタコトになっとる。ミゲルかよ。

 

「ふふふっ、じゃあ私は仕事に戻るから。ゆっくりしていきなさいねー」

 

 俺が完食したのを見守った後、善子はヒラヒラと手を振って厨房へ戻っていった。

 それを確認し終えたのと同時に額から大量の汗が溢れ出す。

 

「み、未来君大丈夫?汗凄いよ?」

 

「アイムファイン」

 

 全然ファインじゃないです。水を飲んでも辛さが全然和らがないし。

 こんな時は何か楽しい事を考えろ。辛味は痛覚を刺激する。故に痛覚を遮断するくらいに何か良い事を。久しくやってなかったが、一丁かましますかね!

 「ただいまー」疲労困憊の体を無理やり動かしながら、なんとか帰宅した俺は玄関の戸を開けてそう告げる。すると、パタパタという足音と共に前方の扉が開き、善子がこちらに駆け寄って来た。「お帰りなさい、あなた!」元気一杯に発せられたその言葉に俺の頬は限界まで緩んでしまう。そう、俺と善子は結婚し生活を共にしていた。しかもまだ数ヶ月前に式を挙げたばかりの新婚ホヤホヤであり、毎日甘々で熱々の生活を送っていたのだった。「ご飯にする?お風呂にする?それとも...」恥ずかしそうに頬を紅潮させながら善子はそう口にする。その魅力的な言葉に、俺はゴクリと喉を鳴らし今直ぐにでも善子をこちらへ抱き寄せたい衝動に駆られるが、ここは我慢すべき時である。「じゃあご飯にしようかな」「...はぁい」残念そうに呟き、料理の支度をするために居間に戻っていく善子の後ろ姿を見つめながら、俺はニヤリと口元を緩める。いくら結婚したとはいえ、駆け引きは大事だ。やり過ぎは厳禁だが、こうやって焦らす事によっていつまでも求められる男でいられるのだ。それから、自室にて着替えを終えた俺は善子と夕食を摂る。善子、料理上手くなったなぁ。そんな事をしみじみと思いながら箸を進める。その後、飯と風呂を終えた俺と善子は2人、寝室のベッドの上に座る。もう我慢出来ぬ。善子もソワソワしてるし、時は来たれり。「ふ〜じこちゃぁ〜ん!!!」「ふんっ!」「へぶっ!?」お楽しみはこれからだぜ!と言わんばかりに意気揚々と善子に向かってダイブした俺だったが、顔面を引っ叩かれ、地面に叩き落とされる。ハエ叩きに仕留められたハエか俺は。唖然とした表情を浮かべる俺を善子は冷たい目で見下ろす。「自分が主導権を握っていると、その気になっていたアンタの姿はお笑いだったわ。もっと稼いでから出直してこい!」「ご、ごめんなしゃい...」善子はそう言い残し、部屋から出ていってしまった。それから暫く、俺は情けなくへたり込みながら、善子が勢いよく閉めていった扉の先を見つめる事しか出来ずにいたのだった。

 うーん、我ながら凄まじく気色の悪い。それにしても、ついに善子が妄想デビューを果たしてしまった。仕方ない仕方ない。善子の水着姿、めっちゃエッジなんだもん。特にSiri。花丸と同じく肌の露出控えめだが、その黒い水着と他人よりも一層白い肌が見事なコントラストを作り出している。よく似合ってるなー。けど、花丸と善子よりもルビィちゃんの方が大胆な水着を着てるっていうのが意外だな。

 

 それから暫く、ルビィちゃんと談笑しながら残りの昼食を食べ進める。お腹を満たした俺とルビィちゃんは、海の家を後にした。

 

「ねぇ未来くん、もし時間があったら今から一緒にお散歩したいな」

 

「うん、暇だよ。行こっか」

 

 ルビィの提案を受け入れ、歩き出そうとすると、俺の手が小さく柔らかい何かに包まれた。

 

「ちょ、ちょぉ!?ルビィ!?」

 

「ご、ごめんね。その...人が多いから迷子にならないようにって思ったんだけど、嫌...だったよね...」

 

 悲しそうに俯くルビィちゃんを見て、俺は罪悪感に苛まれる。俺が下らない動揺をしてしまったせいでルビィちゃんを悲しませてしまった。

 

「!?嫌じゃない、全然嫌じゃないよ!あー...ほら!手繋ごう!はぐれちゃダメだしね!うん!!」

 

 急いでフォローして、今度は俺の方からルビィの手を握りにいく。

 その行動に、先程の悲しそうな表情から一転し、ルビィはとても嬉しそうな表情を浮かべ、華の咲いたような笑顔を見せるのだった。

 

 はぁ〜、マジでビビったべさ〜。これ、側から見たらただのラブコメのワンシーンだし。海に遊びに来たカップルじゃんこれ。普段こんな幸せそうな奴らを目撃したら藁人形に五寸釘打ちつけて呪ってやるレベルだわ。

 

「未来くんの手、ゴツゴツしてて大きいんだね...凄い...」

 

「ご、ごめん、俺手汗多い方だから。気持ち悪くなったら気にせずいつでも離してくれ」

 

 ルビィちゃんの言葉にドギマギしながら、俺はそう告げる。

 

「ううん。全然気持ち悪く無いよ。寧ろ...こうしてると凄く心がポカポカして、気持ち良いな」

 

「...そっか」

 

 なんか最近のルビィちゃん変だ。明らかに以前までと比較して距離感近くなったし、ボディタッチ増えたし、めっちゃドキドキする。まるでこんなの、俺のことが好きみたいじゃないか。ヒャァッホー!!!遂に俺に春が!初彼女!しかもこんな美少女!これは歌わずにはいられない!この思いを!!初彼女が出来た記念にお祝いソング作りまーす!俺の歌を聞け!いくよ!テオ君頑張れ!テオ君頑張れ!不快ピースyeah!!......などと、勘違いする哀れなDTがここにいましたとさ。あのさぁ、ルビィちゃんと付き合うだなんて、そんな宝くじに当たるよりも価値のあることが現実に起こるわけがないだろ?変な勘違いせずにシ○ッて寝てろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

「ダ、ダイヤさん!一体ルビィちゃんどうしちゃったんですか!?」

 

 仲睦まじく手を繋ぎながら歩くルビィと天城さん達の姿を見た梨子さんが驚愕の声を挙げた。同じくその光景を目にしていた千歌さんや果南さん達も驚きに目を丸くしている。

 

「うふふ、まさか私もルビィがここまで積極的になるとは思いもしていませんでしたわ」

 

 先日、ルビィの帰りが少し遅かった日のこと。あの日のルビィは何か悟った様な表情で、とても幸せそうな雰囲気を醸し出していた。今までに見たことがないくらい妖艶で、大人っぽくて、女性の魅力に溢れた表情で...

 その姿を見て私は直ぐに理解した。ルビィは自身の気持ちを自覚し、天城さんに恋をしてしまったのだと。

 先の光景を見て私の考えは確信に変わるのだった。

 

「で、どうなのダイヤ?」

 

 海の家のチラシを片手に持ちながら、果南さんがそう尋ねてきた。

 

「どうなの...とはどういう意味でしょうか?」

 

「ルビィちゃんの姉として、もし天城くんと付き合う事になったら寂しくなったりしない?」

 

「そうですわね、確かに寂しくなると思いますが、ルビィが幸せならそれでいいですわ」

 

「そっか。ダイヤは良いお姉ちゃんだねぇ」

 

「それ程でも...ありますわね!」

 

「ダイヤ...」

 

「ごほんっ、冗談ですわ。まぁ、ルビィはまだまだ幼い部分が残っていますから、しっかり者の天城さんとなら良きパートナーになっていけるのではないでしょうか」

 

 私にとってルビィは、守るべき幼く可愛い妹、という存在だった。しかしながら、最近のルビィの成長は目まぐるしく、どんどん立派に成長していっている。故に、少しずつ大人になっていくルビィに一抹の寂しさを覚えつつも、その認識は改めなければならないと思い始めている。

 とはいえ、やはり心配な箇所がない訳ではないため、ルビィのことを支えてくれる存在は未だ必要であり、天城さんは打って付けだと考えている。

 聞くに天城さんは学業で優秀な成績を収めているらしく、将来は良い大学に入って安定した職に就ける可能性が高い。上背もあり、運動部に入っている訳でもないのに体格も中々にガッチリしている。所謂優良物件というものではないだろうか。そんな表面的な箇所以外にも、普段ルビィを見つめるあの優しげな表情。ルビィの事をとても大切に思ってくれているのだろう。その他にもルビィの男性恐怖症や人見知りを改善させたりと天城さんの影響は計り知れず、大事な妹のことを任せるに足りる方といえる。

 

「つまり、ダイヤはルビィちゃんが天城くんと付き合うのは全然問題なしってことなんだね。てっきり、『ウチの可愛いルビィは渡しませんわ!』とかなんとか言うかと思ったよ」

 

 まぁ、自分自身でもシスコンの自覚はあるため突っ込みはしませんが、果南さんの中では私がその様なことを口にする人間だと思われているのですね。

 

「良いわねぇ。青春してるわねぇ」

 

「ねー!天城君と1年生の子達が一緒にいるとこ見てるとドキドキしてくるよね!」

 

「そうね。でも、花丸ちゃんは分からないけれど、善子ちゃんは確実にそうだし...一体どうなっちゃうのかしら?」

 

「なんかドロドロしそうな雰囲気になってきたわね!!」

 

「鞠莉さん、あまり不吉な事を言わないで貰えます?」

 

 

 もしそんな事態に発展してしまえば胃が痛い所の騒ぎでは無くなってしまいますわ...

 

 そんな風に考えつつ、ルビィの想いが成就する事を願って、私は2人の歩いていった先を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

やったね公認だよ!

 

 なんか急に不思議な電波を受信したから言ってみたけど、何の公認だよ。てかさぁ、最近の俺、公認って言葉あんま信用してないんだよね。トゥイッターでも公認マーク安売りされてて、そのせいでインプレゾンビ大量発生してるし。更に言えば、何ちゃら法人が主催したり公認してる資格とか国公認のキャリア◯ンサルタントの資格とかも割とそういう既得権益絡みの奴ばっかだから!!...あんまこういう事言ってるとダークサイドに消されそうだからここまでにしときます。

 そんな事より、今凄いハッピーハッピーハッピー(某ミーム並感)なんだよ。ようつべで猫ミームのshort見てるとき、ワロエナイレベルのエグい話とかクズエピソード出てくんのやめろ。それ可愛い猫達でも中和出来てねーから。

 

「どうしたのルビィ?」

 

 並んで歩くこの時間が愛おしい。少し前にもこんな風に互いの手を触れ合ったが、飽きることはない。お互いの手の感触が、体温が、緊張がダイレクトに伝わってくる。

 

「う、ううん!なんでもないよ!」

 

 先程から視線を感じることが多い。多分だが、その視線の正体はルビィちゃんだろう。こちらの方を頻繁にチラチラと見ている気がする。ルビィちゃんの方を向くと必ず一瞬目が合うためほぼ確定だ。しかし、目を合わせた途端、直ぐに逸らされてしまうため若干凹んでいる。一方で、2人きりで手を繋なぎながら海辺を散歩するという素晴らしすぎるシチュでもあるので今俺は、上げて落とされている!?やはりルビィちゃんは小悪魔。鞭で叩かれたい。いや、ヒール履いた状態で脛とかお腹とか顔を蹴られたい。いや、顔は踏んで欲しい、思いっきり。

 

 

 

 ふぅ...やっぱりルビィちゃんは最高だぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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