光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ここで新章になります。


USJ襲撃編
10話「宣戦布告、そして飯田くん頑張れ!」


朝 大型自動車が次々と道路を走っていき、目的地に着いたようだ。そう、そこはあのヒーロー学校、雄英高校だ。

 

「カメラ回すぞ」

 

「早く!行くぞ!」

 

そういったかけ声が交じり合い、雄英の生徒一人一人に声をかける。

 

 

 

「オールマイトの授業はどんな感じです!?」

 

マイクを向けた先は、ボサボサとした緑色の髪の緑色出久だった。

緑谷はビクッと体を固めた。なにを言えばいいのか分からない様子で

 

「え?!あっ、いやスミマセン…僕、保健室に行かなきゃいけなくて…あの…本当にすみません!では!」

 

 

「平和の象徴の授業はどんな感じでしょうか?!」

 

次にマイクを向けたのは、天真爛漫で元気いっぱい、スタイル抜群で誰もが見たら一目惚れするだろう美女、飛鳥。

 

「ふえっ!? あっ、わ、私急いでるので〜!それじゃあ!」

 

逃げるように走って行った。そりゃ当然だ…

 

 

 

「平和の象徴が教壇に立つのはどんな感じですか?!」

 

マイクを向けたのは茶髪で頬は赤らむ麗らかな女の子、麗日お茶子。 お茶子は考えながら

 

「えーっと…筋骨隆々?って感じです!ムキムキマッチョで、アメリカンで〜…なんか、面白いです!」

 

 

 

 

「教師オールマイトについてどう思ってますか?」

 

マイクを向けたのはメガネをかけた大真面目な飯田天哉。

 

「最高峰の教育機関に自分は在籍していると事実をことさら意識させられますね。風格はともかくユーモラスな部分など様々なものを感じますね。トップヒーローとは常にトップヒーローであり、トップヒーローとは、何がヒーローであるかを意識させ、ヒーローなるもの…」

 

長々と話し出す飯田、マスコミは話し相手を選ぶ相手を間違えたという表情でため息をつく。

 

 

「オールマイ…あれ!?君確かヘドロのときの…」

 

「やめろ!」

 

マイクを向けようとした先は、グギギと歯ぎしりする爆豪勝己。黒歴史を掘り起こされては当然の反応だ。無理もない…

ある意味ニュースにされ、騒ぎを起こした彼は有名人といっても間違いではない。

 

 

 

「オール…小汚!なんなんですかあなた!?関係者ですか!?」

 

マイクを向けた先は1ーAの担任、相澤消太だ。

相澤はマスコミに手をしっしと払いのける感じに

 

「彼は今日非番です、授業の妨げになるので帰って下さい」

 

早口で、でもってやる気も何も感じられない声でそう言うと、校門をくぐりマスコミから去っていく。

 

「あっ!ちょっ、待ってくださいよ!貴方雄英の関係者か何かでしょ!?オールマイトについて一言だけでいいですので聞かせて下さい!」

 

「あなた小汚すぎませんか!?」

 

「どっかで見たことあるよな」

 

「なんだっけ?忘れた」

 

「思い出せそうで思い出せないこの曖昧とした感覚……誰だったかな〜…?」

 

マスコミはぞろぞろと聞いてくるが相澤は相手にしてない、相澤の性格からはそんな感じだろう。

 

(めんどくさいな…あの人は、よくこの中でヒーローなんざやれたな…平和の象徴と呼ばれるだけのことはあるけど…こりゃあ生活に支障が出そうだぞ……)

 

オールマイトが雄英の教師に就任したというニュースは、全国を驚かせ連日マスコミが波のように押し寄せる騒ぎになっている。

 

「ちょっとでもいいので話くらい聞かせて──」

 

 

瞬間

 

 

ピーー!!

 

ガガガガガガガガガ!!!

 

 

「うわぁぁ!何!?」

 

マイクを持って校門をくぐろうとするマスコミは、校門のセンサーに触れてセキュリティが動いたのだ。

そのため門は完璧に閉まっている。

 

「雄英バリアーだよ、俺らはそう呼んでいる」

 

「ネーミングセンスダサくない!?」

 

雄英バリアーとは、学校のものでない限り入ることは出来ないのだ、またセキュリティは門だけでなく所々に設置してある。

マスコミは満足してないのか、欲求不満がいつしか怒りの声を上げた。

 

「何よそれ!一言くらいいただければいいのに!!」

 

「そうだよ本当にもー!一言さえくれりゃあ問題解決なのによー!」

 

「問題を増やしてどーすんだよ本当にさ〜!何で取材させてくれねーんだか…」

 

 

 

マスコミ怒り狂う嵐のブーイングの中、

ザッザッと足音を立てる人影が…どっからどう見てもマスコミではない者が後ろから歩み寄り。

そして、誰もが聞こえない声でこう言った。

 

「…オールマイト、オールマイトって…そんなにあのゴミが凄いか…?雄英高校…気に入らないな、だったら」

 

するとその男は再び歩き出し、マスコミの波に紛れて…

 

「壊してやるよ」

 

 

そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室

 

「なるほど…半蔵の言ってることはわかったよ」

 

半蔵は昨日起きたことを校長に話した。半蔵は霧夜から昨日の襲撃事件のことを聞き、秘伝忍法が通用しなかったことを知らされた。それどころか悪忍の方がよほど強いと思い知らされたのである。

 

「うむ…悪忍が攻めてきた、これがどういう意味か、校長もお分かりであろう……」

 

半蔵は、いつものエロスな半蔵ではなく、真剣な顔で話している。

 

「あれはあくまで()()()()。ここからはわかるさ…君ら代々伝わる超秘伝忍法書だろ?それが今回のカギとなる…って」

 

「うむ、そろそろ超秘伝忍法書の後継者を見つけ出さねばな…」

 

そう言うが、校長はそれを制するかのように手を挙げる。

 

「いや、暫くはこのままで良い。確かにこれは充分緊急事態だけど、無理に焦っても仕方がない、むしろ向こうの思うツボだ。それに超秘伝忍法書は、『人を選ぶ』んだろ?」

 

校長は忍びについてはよく知っている。何しろ忍びの世界の上層部と同じくらい偉い人なのだから。

 

「問題はそこじゃ、もし悪忍に超秘伝忍法書を取られるようなことでもあれば…事態は悪化する」

 

半蔵はそう言う。すると二人の話を聞いていたオールマイト(トゥルーフォーム)はため息をつく。

 

「全く…己が情けない…!!悪忍が雄英の生徒たちに手を出し……そんななか私は全く知らなかった……!今すぐ蛇女っていう悪忍養成学校に殴り込みに行きたいくらいのね…!!」

 

オールマイトは怒りを込み上げる。すると校長はオールマイトを落ち着かせる。

 

「よしなよ、ヒーローは忍びの存在を知らない者だっているんだ…それをやったら下手すれば全面戦争になり兼ねないよ、それはいくら平和の象徴とも謳われるオールマイトでもそれはやっちゃあいけないよ」

 

「はい……そんなことは分かっています…」

 

オールマイトは悔しかったのだろう…悪忍が緑谷や轟に接触し、殺そうとしたことを。いや、そもそももしオールマイトが殴り込みに行ったら、逆に死人が出そうだ。

 

「まあ暫くは様子を見よう!半蔵、君はもしまた何かあったら連絡を」

 

「うむ!それにしても…まさかこんなことが起きるとはのう…」

 

「うん…超秘伝忍法書の誰かが引き継ぐのは、いつかそうなると分かってはいたが、まさか悪忍が此処までやるとはね、気をつけていこう。この事件を解決しないと、いつか雄英やヒーロー…何より社会全体に影響が出るよ」

 

校長はそう言うのであった。

 

場所は変わり、1ーAの教室

教室の中では相澤先生が書類を手にもっている

 

「言いたいことは山ほどあるが…まずは、お前ら昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績を見させてもらったぞ、んで爆豪」

 

「?」

 

相澤はため息をして

 

「お前もうガキみたいなマネするな、能力あんだから…勿体ねえ」

 

爆豪はどこかふてくされた顔で、渋々と

「わかってる…」とだけ言った。

すると今度は緑谷を睨み

 

「んで緑谷は腕壊してまた一件落着ってか?個性の調整、個性使用後の怪我、いつまでも出来ないなんてのは通じねーぞ?この先どんどん訓練が厳しくなってくんだから…」

 

緑谷は恐縮する。だが相澤の声は見込みゼロと判断した声ではなく、むしろ可能性を信じて、先を見込んでのことだった。

 

「俺は同じことをいうのは嫌いだが、逆にお前が問題をクリアさえすればやれること、可能性は多い…焦れよ緑谷」

 

「…はいっ!」

 

そう言うと緑谷は光を篭った目を開き、大きな声で返事をした。

 

「まあいい、そこで本題だ…昨日、『半蔵学院』の忍学生の先生から連絡があった」

 

「え!?」

 

「っ…!」

 

「……」

 

緑谷、轟、飛鳥、雲雀以外の皆んなは驚く様子でいる。

 

「え、待って下さい…柳生さんは!?」

 

お茶子が叫ぶと、相澤は

 

「柳生はもうじき来る…そろそろか?」

 

すると言ってるそばから、扉が開いた、そこには、顔にシップやバンソウコなどを貼ってる柳生の姿であった。

 

「…おはよう、遅れて申し訳ない」

 

「「「柳生ちゃん(さん、くん)!!!」」」

 

柳生がやって来たことで、皆んなはヤッターという顔をする。相澤はため息をついて、柳生に振り向く。

 

「おい柳生…遅れて申し訳ありませんだ。遅れてるのに偉そうに見えるぞ……いつからお前は偉くなった、言葉遣い気をつけろ」

 

「…はい」

 

柳生は少しふてくされたような表情で返事をし、席に着く。

 

「んでお前ら、さっきの話の続きだが、その半蔵学院に悪忍ってヤツらが攻め込んできたらしい」

 

「ええっ!?!」

 

「先生!悪忍も飛鳥たちと同じ巨乳なんですか!?」

 

「峰田、廊下に立たずぞ」

 

皆んなは驚く表情で、峰田は「ちぇ〜っ…」とした様子でいるがまだ早いと言わんばかりなのか、皆んなの様子を御構い無しに話を続ける。

 

「その悪忍と対峙したのは、当然その三人は当てはまる訳だが…緑谷、轟が半蔵学院に行き、悪忍と戦ったそうだ」

 

 

「!!!!????」

 

皆んなは一斉に振り向く、爆豪なんかは「クソデクがぁ〜…!」みたいな目つきで緑谷を思っきし睨みつける。

 

「あっ、だから柳生はケガしてんのか…!」

 

切島は納得したように、手の内をポンと叩く。

 

「お前たち二人とも、もしこれが運が悪ければ最悪死んでたわけだ…その場合、それだけじゃ済まねえぞ?何よりお前たちが事故で死んだ…なんて済まねえこともあり得る。忍びの存在は消せても、お前たちの存在は消せないからな」

 

「うっ…」

 

「ちょっと待って下さい!」

 

緑谷は絶句すると、飛鳥は席に立ち上がる。

 

「私は、もしこの二人が駆けつけに来てくれなければ死んでたんですよ!?だから…二人のことはどうか……」

 

飛鳥が反論すると、相澤は「落ち着け」と飛鳥を席に座らせる。

 

「だから処罰とかはしない…今回は事情が事情で仕方ないからな…俺たち表側の『ルール』に反していても、相手が忍びなら、告発したところで逆にお前たち忍びの存在を明かしてしまう事になるからな…だから、お前たちこれから気をつけろってことだ…以上。これから徹底的に悪忍には気をつけてほしい。」

 

 

(ちょっと待って!朝からこんな話されたら重い!!!)

 

皆んなはそう思うのであった。

 

これは皆んなはすごく分かりづらかったが、柳生だけは相澤の言ってることを解釈した。最初にわざわざ怒ったような言い方をしたのは、緑谷と轟に何かあったらいけないという心配からくるものと、最後は二人の命に別状がなかったことに安心したものだと…

 

「先生は大人だな…本当に」

 

柳生はポツリと呟くのであった。

 

 

 

かれこれ時間はSHRの時間だ、連絡事項や生徒の出席の確認…様々だ。

 

「さてホームルームの本題はここからだ、早速で悪いが君らにどうしてもやって貰わなければいけないことがある」

 

「うわ!もしかして抜きうちテストとか!?」

 

「うわー!マジ最悪!相澤先生の場合、赤点の人は除籍処分とかされそー!」

 

相澤は発狂する芦戸と上鳴に

 

「お前ら除籍処分にされたいか?」

 

「嫌っす聞きます」

 

怒れる相澤を前に2人は恐縮している。

 

「それで、本題とは?」

 

柳生がそう聞くと

 

「ん、お前ら…今から…」

 

みんなはゴクリと唾を飲み相澤は雰囲気をまとってこう言った。

 

 

 

「学級委員を決めてもらう」

 

「クソ学校ッぽいのキターーー!!」

 

ヒャッホーイと歓喜の声をあげるみんな、みんなが予想してたのとは違ったため良かったのであろう。

ホッと一息つくと同時に、異常気象で突然嵐が発生したかのように、一気にクラスの皆んなが大きく騒めき出す。

 

「皆んな手を挙げてるんだな」」

 

と呆れたように柳生は言う

 

「いや、オメーもな柳生」

 

と手を挙げてる柳生に瀬呂はツッコミを入れる

 

「ケッ…!テメーもやるんじゃねーかよクソが!」

 

仲が悪いのか、爆豪は柳生に舌打ちをする。

 

「いや、オメーもだろ爆豪!なんなんだよこの流れ!」

 

手を挙げてる爆豪に2連続でツッコミを入れる瀬呂

 

普通科なら雑務でそんなことはやらないが、ヒーロー科ではかなり重要な役割だ。なぜならヒーローは集団を導く立場、つまり学級委員はそんなヒーローたちを導く存在になるのだ。

だから皆は今、学級委員になり皆んなをまとめる人間になりたいと思っているのだ。

 

「君たち静粛にしたまえ!」

 

大声を出したのは飯田であった。皆んなは飯田の方を見やり

 

「多をけん引する重大な役割だ!『やりたい者』がやれるモノではないだろう!」

 

真面目な飯田なら言うことだ、彼の真面目さはもはや凄いというレベルを超えてるかのような。

 

「だからこそ、多数決の票で決めるべきではないか!?」

 

手を挙げて

 

「3連続!!お前らなんなんだ飯田!」

 

瀬呂はもう飽きたのかなんというか、全力でツッコむ

 

「日が浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

 

「んなもん皆んな自分に票を入れらあ!!」

 

「だからこそ複数の票に入ったものが、多数決で決めるというのはどうだろうか?それでこそ真の学級委員に相応しくないか!?というわけで先生!票で決めて宜しいでしょうか!?」

 

皆んなを説得する飯田は、先生の方向に振り向く。ここでキャンプでもするのかとツッコミを入れても良いのだろうか、相澤先生は寝袋に入っていた。それも睡魔に襲われてるのか、眠たそうな顔をして。

 

「うん、まあ制限時間内に決めりゃあなんでもいいよ」

 

やる気のない、ダルい声でボソリと呟くと、ゼリー状の栄養食品を飲みはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3分後

 

票が多かった数

緑谷出久 4票

八百万百 2票

その他1票、あるいは0票

 

「ぼ、ぼ、僕3票ーー!?」

 

その声の正体は、緑谷出久だ。

 

「雲雀!なんでお前は自分に票を入れなかった!」

 

柳生は前の席にいる雲雀に言うと、雲雀は満面な笑みで柳生にこう言った。

 

「えっ?私やるとは言ってないよ?柳生ちゃんはしっかりしてるから柳生ちゃんに入れちゃった。えへへ♪」

 

「なっ!」

 

雲雀の笑顔に気持ち、柳生は嬉しいという気持ちを通り越し、目をクラクラさせる。

 

「雲雀、お前はどこまで優しいんだ…」

 

「な、何でデクに…一体誰が…!」

 

ありえないと言う様子の爆豪

 

「まー、オメーに入れるよりかはマシかもな!」

 

「あぁ!?しょうゆ顔今なんつった…?」

 

「あ、いや…」

 

つい言ってしまったと後悔する瀬呂にキレる爆豪。

 

「……」

 

横目でなるべく爆豪を見ないようにしてるのはお茶子であった。

 

(爆豪くんにバレたら怒りそうで怖いな〜…)

 

心のなかでそっと言い聞かせるお茶子

 

「くっ…やはり誰も入れてくれなかった…!」

 

「他に入れたのね…」

 

と言う蛙吹に砂糖は

 

「飯田、お前やりたかったのに誰に入れたんだ?」

 

と聞く。

ちなみに飯田はこの通り、他の人に票を入れたため当然0票。

 

時間が来たため委員長決めは終わったことを確認し相澤は学級委員決めを締め切ることにした。

 

「学級委員は緑谷、副委員長は八百万だ、これで決まりだ」

 

相澤がそう言い終わると八百万は

 

「んー、なんかちょっと悔しいですわ……」

 

「ま、ままママママ、マジでか!!?」

 

横目で見やる八百万に緑谷は動揺を隠せない。

 

(ま、まさかぼ、ぼぼぼ僕が…!うおおぉぉー!)

 

皆んなはどう反応するのか、飽きられたり、批判されたりしてしまわれるのか…そんなことを緑谷は考えていたが、それは大きく外れた。

 

「へー、けど緑谷いいんじゃね!なんだかんだ訓練の時熱かったし!」

 

「八百万は講評のとき凄かったからな!」

 

切島に続き、上鳴も納得したかのように声に出す。この二人は単細胞な為か、疑うことや否定論は全くない。寧ろ相手の良いところを見つけ褒める長所のある良い二人だ。

 

「…くっ!」

 

飯田は正直、少々心苦しいような、誰も選んでくれなかったような寂しさと悔しさの顔が浮かび上がる。

 

「チッ…クソナードが!!」

 

爆豪は緑谷が委員長になったことに悔しさ、怒り、ありとあらゆる感情が心の底から込み上げて来て、思わず掌から爆破を出すのを何とか我慢している。

 

 

 

 

 

 

昼食 食堂メシ処

 

 

「お米がうまい!」

 

ホクホクの白いご飯が盛られてるお茶わんを持って箸でお米を口に入れるお茶子。美味しそうに食べてるのが分かる。食堂では、緑谷、お茶子、飯田、飛鳥の四人が来ている。

ここはランチラッシュが安価で一流の料理をふるまってくれるので、食堂は快適だ。

だがその分雄英高校では人が多く、食堂は常に混雑しているのだ。

 

「それにしても…学級委員だなんて僕が務まるのかな〜…」

 

心配する緑谷に

 

「ツトマル!」

 

とカタコトでいうお茶子に飯田は

 

「うん、緑谷くんなら出来るさ!とっさな判断力と胆力があるから僕は君に票を入れたのさ!」

 

(あの1票僕に入れたのか!)

 

ついとっさに答えた飯田に緑谷はえー!っというような顔をする…当然本人にそんなことは言えない。

 

「あっ、そうだったの!私も緑谷くんに入れたんだ!」

 

(ふぁーーー!!??)

 

まさか飛鳥までも緑谷に票を入れたのは驚きだった。ふぁーーー!!

 

「けど飯田くんなら迷わず自分に票を入れるかと思った!だってメガネだもん!」

 

(理由そこ!?ていうか相変わらずざっくりくるよな麗日さん…裏表ない証拠なのかな?)

 

メガネだからと言うお茶子は自分の口元についてるお米をとって。

 

飯田は少々目をつむり、考えるように

 

「ぼ、僕はぼくの正しいことをやったまでで…」

 

ん?

ぼく?

僕??

 

「…」

 

「ん?どうしたんだい三人とも固まって?」

 

二人は意外みたいな顔をしているに対し飯田は不思議そうな顔をする。

そんな飯田にお茶子は

 

「飯田くん…前々から気になってたんだけど…もしかして、坊っちゃん!?」

 

「坊!!」

 

吹き出しそうになる飯田はなんとか堪え、首を横に振り否定する。坊ちゃん、言われてみればそんな気もしない。

 

「そ、そう言われるのが嫌だから一人称を変えてたんだ!つい癖で言ってしまった…ああもう!恥ずかしい…!」

 

「けど飯田くんオレンジジュースもいっつも飲むしね!」

 

飛鳥が笑顔でそう言う…するとそこは違うのか飯田は反論する。

 

「いや、これは違うんだ…俺の個性はエンジンで、オレンジジュースはエンジンのガソリンとなるんだ!」

 

「へぇ!なるほど…!あとでメモしておこっかな…」

 

ボソリとつぶやく緑谷。

まさかオレンジジュースが飯田のエンジンのガソリンになるとは知らなかった。飯田は観念したかのような顔でこういう

 

「実は俺の家は代々ヒーローの一家なんだが、俺はその次男だ」

 

「ええーーーー!!」

 

緑谷とお茶子、飛鳥は驚きのあまり大声をあげてしまう。

 

「し、知らなかった…!ちなみにどんなヒーローの!?」

 

興奮して飯田に食いついてくる緑谷。

 

「…ターボヒーロー、インゲニウムは知ってるかい?」

 

「知ってるよ!たしか事務所で65人もののサイドキックを雇ってる大物プロヒーローだよね!飯田くん、まさか…!」

 

緑谷はもしやと飯田家のことを予想した。

 

「ああ、それが俺の兄さ!」

 

「あからさま凄いや!」

 

飯田は自慢気にいうと緑谷はなお一層目をキラキラさせている。

だが飯田は

 

「俺の兄は人々を導く存在だ、だから俺はそんな兄に憧れた…だけど俺にはまだ人を導く立場は早すぎるんだと思う」

 

「飯田…くん」

 

(僕のヒーロー像がオールマイト…だけど飯田くんの場合はインゲニウム、飯田くんのお兄さんなんだ)

 

緑谷は、飯田の気持ちがよく分かった。

幼いころ緑谷はオールマイトにずっと憧れてた、何度も何度もネットの動画でオールマイトの活躍を観るくらいに。けど

 

(飯田くんは真面目だし…それに人の立場や状況を分かってる…飯田くん考えすぎなのかな、飯田くんは十分に人を導ける立場なのに……勿体無いな…)

 

声に出して言いたかったが、出すことが出来ずつい心のなかでそう呟いた。

 

「なんか飯田くんって凄いこと考えるんだね!凄いやすごいや!」

 

「す、凄いこと?ぼ…俺は兄と俺のことを言ったまでで別にそんな」

 

苦笑する飯田にお茶子はまた

 

「あー!飯田くん笑うところ初めて見た!」

 

「お、俺だって笑うときはあるぞ!」

 

お茶子と飯田はそんなやりとりをしているのに対し緑谷は安心、暖かい目で二人のやりとりを見守る。

 

「飯田くん…その気持ちは分かるなあ…」

 

飛鳥がそう言うと、飯田は首を傾げて飛鳥に質問する。

 

「ん?君も俺と同じなのかい?」

 

「うん…まあなんというか、此処だけの話なんだけど、皆んなに言わないでね?」

 

コクコクと三人は頷き、飛鳥に真剣な眼差しで聞く。

 

「私の家は代々忍びの家系なんだけど…祖父…じっちゃんはね、伝説の忍びの、半蔵なんだ」

 

「「「ぶっ!!!!」」」

 

瞬間、三人は衝撃の事実を知った顔になり、思わず吹き出しそうになる。

 

「は、半蔵って、飛鳥くん……あの?」

 

「うん!」

 

「ま、ま、マジで…まじでか!!!」

 

飯田と緑谷はガクガクと震えてる。お茶子は

 

「となると…半蔵学院…半蔵……あっ!もしかして、あの学校て伝説の忍の半蔵って人の由来で?」

 

「うん!」

 

「ええええーーーーーーーー」

 

二人は唖然としているのか、口を開いてる様子だった。

 

「えへへ…♪なんかこういう話するの、久しぶりだな…」

 

飛鳥は照れてるのか、手を頭の後ろに置いている。

 

「で、でもヤバ…すご!!」

 

緑谷はガクガクと汗を滝のように流しながら呟いている。飯田は驚いていたが、それも納得とした顔で、飛鳥に頷き話し出す。

 

「なるほど…だから君はそんなに強いのか!納得した!」

 

そう言うが、飛鳥はどこかショボンとして寂しいような顔に変わる。

 

「ううん…私なんか全然! それに悪忍の焔ちゃんに『弱い』って言われてるし、全く歯が立たなかったし……あと、じっちゃんの名に恥をかかせてるって、つい思っちゃうんだ…」

 

飛鳥は真剣な顔で、申し訳ないように呟く。

 

「飛鳥さん…」

 

緑谷は飛鳥の気持ちもなんとなく分かった。そりゃ自分だってそうだ、オールマイトからこの個性を貰い、オールマイトに託されたのだ。自分も早くオールマイトみたいにならなきゃって何度思ったことか…すると飯田は飛鳥の肩にポンと手を置いた。

 

「いいや、そんなことはないぞ飛鳥くん」

 

「えっ?」

 

飛鳥は飯田に振り向く。

 

「実力がどうとかそんなの関係ないさ!まあ、実力も大事だが…誰かに弱いと言われたり、バカにされても自分は堂々と胸を張ればいいんだ!俺の言える立場じゃないけど、でも…俺は飛鳥くんは素晴らしい忍びだと思う。もっと自分に自信を持てば良いと思うぞ」

 

飯田の正論に、飛鳥は元気を取り戻したのか…「ありがとう飯田くん!」と答える。

 

「飯田くん男前〜!」

 

「麗日くん、俺はそんなに言われるほどではないぞ?ただ、俺は自分の意見を主張したまでで…それに俺は男だ!第一緑谷くんも凄いと思うぞ?昨日、悪忍と交戦したんだろ?もし君が無理をしてでも駆けつけなければ飛鳥くんはどうなってたことか…!」

 

「も、もう!その話はいいよ〜…!それに話すり替えたよね!?」

 

「す、すり替えてないぞ飛鳥くん!俺はただ、それほど緑谷くんが学級委員長として務まると言ってるだけで…」

 

照れてる飛鳥に、飯田は指で鼻をすすりながら話している。

 

(飯田くん…)

 

飯田のリーダーらしい風格に、緑谷は少し憧れに似た目線を向けるのであった。

 

 

 

その瞬間。

 

 

ヴヴヴヴヴヴーーーー!!!

 

警報がなった。

 

「な、なんだ!?」

 

突然の出来事に驚く飯田にお茶子は驚きのあまり飲んでた味噌汁を吹き出してしまう。

緑谷なんかは食べてたカツ丼を途中で喉に詰まったために、水を飲んで腹を手で叩いている。

 

「これは警報…?けど一体何で」

 

首をかしげる飯田

 

『セキュリティ3が突破されました』

 

どうやらアナウンスがそういうと食堂にいたみんなは慌てて一斉に逃げるようにする

 

「セキュリティ3?何ですかソレは!?」

 

「学校の中のセキュリティだよ!誰かが潜入したんだ、今まで3年間そんなことなかったのに!君たちも早く逃げるんだ!」

 

3年生の先輩が逃げるようにそういった。

侵入者?一体誰が??

 

「また悪忍…とかじゃないよね?」

 

飛鳥はそうでないことを祈っている。自分が雄英と繋がってると蛇女は知ってるなら、またの襲撃もあり得る。

数分すら経たないうちにあっという間にギュウギュウ状態。逆に逃げる人が波打つように押してくるため今はまさに苦しい状態だ。

 

「飯田くん!」

 

「麗日くんに緑谷くん!飛鳥くん!」

 

どうやらこの荒れ狂う行列の波で離ればなれになったらしい、それでもなんとか見えるくらいだ。

 

「みなさん落ち着いて対処してください!」

 

そこは大きな声で叫ぶ八百万だった。かけ離れたところで叫んではいるが皆は止まらない。

 

「雲雀〜!おいお前そこどけ!」

 

「柳生ちゃん!落ち着いて、柳生ちゃんが落ち着いて!!雲雀大丈夫だから!」

 

柳生は、人混みの中で人を押し退けるが、雲雀は逆にそれが危険だと制止する。まあそりやあそうだ。

おかし、押さないかけない喋らないだから…

 

「み、みんな落ち着いて!」

 

「んだよコレ…」

 

切島に上鳴も叫んでいる。

飯田は窓ガラスのところに近づくと外で何が起きてるか確認する。

 

「なっ…!これは…」

 

飯田が目にしたのは、学校内に押し寄せてくるテレビ局…マスコミ集団だった。

マスコミ集団を対処してるのはプレゼント・マイクに相澤先生だ。

 

「マスコミ…?何でそんな…けどこれを早くみんなに知らせて落ち着かせないと…!」

 

いくら非常事態とはいえ、あまりにも押し寄せる波の行列。押して人が転んで踏まれたりしたらひとたまりもない、この状況こそもピンチなのだ。

 

 

 

 

外では

 

 

「オールマイト居るんでしょう!?出してくださいよ一言いただけたら帰りますから!」

 

「だから非番だっつーの!」

 

しつこいマスコミに舌打ちするプレゼント・マイク。

 

「だから一言いただけたらもう帰りますから!」

 

「一言とって二言欲しがるのがあんたらマスコミだ」

 

両手でなんとか落ち着かせるようにする相澤先生。

だが一向におさまらないマスコミ、流石に限度が過ぎてるので、プレゼント・マイクは相澤に舌打ちする。

 

「なあ、もうこれ不法侵入だ…ヴィランだぜこれ?ぶっ飛ばしてもいいかな…?」

 

「やめろマイク…あることないこと書かれるぞ、取り敢えず警察を待とう……連絡しておいた」

 

キレるマイクを止める相澤、相澤がとても大変そうだ。

 

 

 

学校内では

 

(先生方がマスコミを止めている…となるとみんなはこのことに気付いてない…そうだ!)

 

飯田はふと閃いた。自分が今取るべき行動を、自分が何をすべきか、どうすれば皆んなをまとめれるのか。

 

「麗日くん!俺を浮かしてくれ!」

 

「え?う、うん…分かった!」

 

するとなんとか、お茶子の手がギリギリ飯田の手に触れることが出来た。

 

(飯田くん…何をする気なの!?)

 

飛鳥は内心そう思うのであった。

するとお茶子の個性で飯田を浮かして、なんとかこの波の行列から抜けることが出来た。

 

(目立つ場所で)

 

足のエンジンを使って

 

ドロロローーーン!!

 

エンジンの音が皆の頭上で響く。

すると回転するように扉の上の壁になんとかくっつき。

 

(短く!正確に!大声で!大胆に!)

 

そして大きな声で

 

「皆さん!大丈ーー夫!!」

 

するとようやく飯田に注目した。

今の飯田はまさに非常口の看板だ。

 

「皆さん落ち着いて下さい!ただマスコミが校内に入っただけです!」

 

そうすると

 

「なんだよ…」

 

「ビックリした〜」

 

「驚いたぜ」

 

「押して悪かったな」

 

皆んながそう声を交わっている。

 

 

「まあ、それにしても飯田スゲェな!なんだそれ、非常口の看板じゃんか!」

 

感心する切島は飯田に指をさしてものを言う。

 

上鳴は飛鳥に

 

「なあ、飛鳥ちゃん食堂で何食ってたん?今度飯食いに行かね?」

 

「え?え〜っと私は〜…あははっ……」

 

飛鳥は上鳴の誘いに気不味そうに返事をする。

 

その時だった。

 

「ん?あれは…?」

 

飛鳥は窓ガラスの方に目をやる、そこにはマスコミが退散している様子

どうやら警察が来て、相澤が警察を呼んだそうだ。

窓ガラスの方を見てる飛鳥に上鳴は

 

「ん?どうかした?あっ、警察来てマスコミ退散してんだなー」

 

上鳴は納得したように頷く。

が、飛鳥が見てるのはそこじゃなかった。

 

「あの人…マスコミの人……じゃないよね…?」

 

飛鳥が見たのは警察がマスコミを対処してる反対に、一人の男が、マスコミ集団の反対に歩んでいき帰ってるように見える。

その男はどっからどう見てもマスコミではないようだ。

 

(…なんだろ?…この胸騒ぎは……)

 

飛鳥は少しながらも不安になった。

 

「どうしたんだ?飛鳥、早く教室戻ろうぜ?時間だし」

 

上鳴がそういうと、ようやく我に帰ったのか。

 

「う、うん…」

 

飛鳥はそう呟いて教室に戻ることにした。

 

 

「…」

 

外ではマスコミが騒ぎを起こした為に、校舎は警察とマスコミで荒れている。

そんな反対方向にむかって歩いている、一人の不気味な男はこう言った。

 

「待ってろよヒーロー…社会のゴミが…」

 

そういうとその男の前に黒い霧の空間が現れて、そのなかに入るように闇のなかに消えていった。

 

 

「クラス委員長、早く初めて」

 

教室内では、今度は委員決めを行うそうだ。カチコチしてる緑谷に八百万がそういうと

 

「で、では他の委員決めを行おうと思います…が、その前に…」

 

すると緊迫してた緑谷は、すぐに緊張を解きほぐし飯田をみる

 

「クラスの委員長は、飯田くんがやるべきだと思います」

 

「!」

 

緑谷の発言に飯田はおどろき固まってしまう。

緑谷は話を続けて

 

「だって…飯田くんは皆んなをまとめれることが出来たんだもん…僕は飯田くんがやるべきだと思います!」

 

「緑谷くん…」

 

緑谷に続き

 

「あっ、確かにそれいいな!緑谷もいいけど食堂のときの飯田カッコよかったしな!」

 

「非常口みたいだったしな」

 

納得する切島と上鳴に続きほかの皆んなも

 

「おー!確かにその方がいいよな!」

 

「非常口飯田頑張れよ〜!」

 

砂糖に瀬呂

そして飯田の後ろのお茶子は

 

「良かったね、飯田くん!」

 

「私も賛成で〜す!」

 

ニカッと天真爛漫な微笑みを浮かべるお茶子と飛鳥に、飯田はクスッと微笑んだ。

 

「クラスの委員長である緑谷くんが言うなら仕方ないな!では俺がクラスの委員長になろう!」

 

飯田はみんなにそういうと

 

「おう!頑張れよ非常口飯田!」

 

「非常口〜!」

 

飯田の名前はいつしか非常口などと名付けられたが飯田自身は嫌がってない様子だ。

 

「オイ…何でもいいが早くしろ…時間ないんだから」

 

ギロッとみんなを睨む相澤にみんなは静まり返る。

 

「では、まずほかの委員決めだが…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校門では

 

「……ねえ、普通に考えてさ…ただのマスコミに…こんなこと出来るかい?」

 

静かな声だが、そこには裏付け…まるでその原因を探るような、怒りを隠す声がそう響く。

身長は低く、白いネズミみたいな人が、そう、校長であった。

その他の雄英教師や半蔵が校門を見つめている。半蔵が言うには、これは忍…悪忍の仕業ではないと言う。

 

「そそのかした者がいるね…」

 

他の教師たちも『ソレ』を見てうなずくと

 

「邪(よこしま)な者が入り込んだか…あるいは…」

 

『ソレ』は今、目の前の校門の現状…校長先生はこう言った。

 

「宣戦布告の腹づもりか」

 

校門のセキュリティバリアーが崩壊されていた。まるで枯れ葉を粉々にしたようなそのバリアーに、殺意と悪意が込められていた。




ようやくここまで来ましたww

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