光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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投稿遅れてすいません!
えェ〜、色々事情があって投稿できなかったのですが……
抑えられなかった…閃乱カグラの性欲が抑えられなかった…
あのね…閃乱カグラ・シノビマスター アプリ配信おめでとうございます!!(チキ〜パフパフ〜)

といっても一昨日リリースされたばかりでして、予想以上に人気が高く、サーバー落ちして昨日は一日中メンテでやれませんでしたけどね…(苦笑
けどまあ、それ程閃乱カグラに興味を示してくれてと、個人的にはプラス思考で考えております。じゃなきゃ暗くなる一方だよ…

それとガチャの引き直しとか、神ってますねぇ…
ワイはSSRの焔ちゃんが出ました!

やったぁ!好きな推しキャラが出てくれるのは嬉しいです!
素直に紅忍法発動待ったなし。

皆さんもカグラ、やりましょうよ!




110話「突入!!」

 

 

 現在、校長・根津を初めとした教師、相澤とブラドの三名が敵連合による襲撃、学生拉致、警備による怠り、ソレら雄英高校最大の失態による謝罪会見が行われてる中。

 離れた場所ではとある善忍東京本部の高層ビルにて、半蔵学院忍学科の担任、霧夜は会議室で何十人の上層部達の視線を浴びせられていた。

 物静かな空間は、これまでになく空気が重く、この場にいることさえ耐えられない状況の中、霧夜はただ一人、佇んでいた。

 上層部達の顔ぶれは、いつになくいつもとメンバーと変わらないが、一つ違うと指摘するならば、彼らがこれまでになく不安と怒りで感情が最骨頂に達しているのが非常になんとも言えない様子であった。

 

「霧夜よ…お主の腕を見込んで半蔵学院忍学科の担任として任命したわけなのだが…

 

 この結果はなんじゃ?何故、忍学生の一人が全国指名手配犯と危険視されてる敵連合に拉致られてるのだ?」

 

「今回の騒動に於いて、お前にも責任があるぞ?例え半蔵学院に身を委ね、任せたとは言え幾ら何でもこればかりはどうにも…のぅ?」

 

 老人たりの気迫迫る批判の殺到に、霧夜はただただ心を苦しめることしか出来なかった。

 雲雀が敵連合に拉致られた事実を知った時は己を呪った。

 どうして、「あの時自分があの場所にいなかったのか」「自分が飛鳥達と一緒にいれば」「また、凛の時みたく同じ過ちを繰り返すのか」自分を責める言葉が雨のように降り注ぎ、自虐する。

 

「今年に入って半蔵学院による敵連合への接触は合計6回だ、この事実をお前はどう受け止めるんだ?」

 

 半蔵学院のセキュリティの甘さ、管理体制の脆さ、敵にマークされる始末、ここまで来ると何か意図的にこの事実を作り上げてるとしか考えにくい。

 その点に関しては、霧夜も同様に勘付いていた。

 

「私、半蔵学院の忍学科でありながら、教育者として深く反省し、管理体制及び生徒の身を守れず、お詫び申し上げます」

 

 霧夜はこの場で頭を深く下げ、謝罪する。

 自分だって本当はこの場で反論したい、何も憤慨に満ちてるのは上層部の人間だけではない、自分だって同じく怒りのコスモを燃やしてるのだ。

 だが、私欲で上層部に大層な口は叩けない。

 だからこそ、今は耐えなければならない。

 

「霧夜よ…貴様の忍学生が敵連合を討つ事が可能であるのなら話は別だ。

 実際に黒佐波を捕まえることだって出来たのだからな」

 

 姿を眩ませていた全国指名手配犯の抜忍は、現在も忍達に拷問をされており、連合の情報について吐かせようとしているらしい。

 本人は死んでも吐かないと言ってるので、期待は出来ないのだが、少しでも情報収集になるのであればと今でも生かしてるらしい。

 

「命曇様…」

 

「忘れてる訳ではあるまいな?

 貴様らの学校は雄英高校とは違う……ヒーロー志望の学生が拉致されマスコミが事件を煽るようにしているのは、保護下にあたりながらも守れず敵連合を阻止出来なかったその管理体制に不安を持つからであり、忍は違う……貴様らの目的は何だ?言ってみろ?」

 

「……抜忍・漆月を処罰すること……そして、敵連合の捕縛…」

 

「そうだ。あの抜忍を殺し、連合を捕縛する事が、全国の忍に与えられた任務だ。

 無茶は百も承知だが、忍学生もまた同等。

 

 我々が問いたいのは、だ。

 何故ゆえに半蔵学院はそこまでして弱いのだ?あろうことか忍学生をも拉致られる弱さ、逃げられる後始末…

 敵連合への接触も多かろうに、忍学科の担任として何も思わないのかね?」

 

 一つ一つの言葉に、思わず怒りがこみ上げてくる。

 確かに、半蔵学院が雄英と協力して転入したのは、事のきっかけは漆月を処罰する事であって、連合を捕まえれなかった失態もまた咎められる形となるのはやむを得ない。

 学生拉致を責められるのは致し方ないとはいえ、連合を捕まえられなかった事を咎められるのは、正直痛い。

 

「……忍学生への教育、及び指導が不適切であり、充分に鍛えられなかった事に関してはお詫び申し上げます……

 

 しかし、勘違いをされては困ります…」

 

「勘違いだと?貴様、忍学生を拉致られ、あろうことか敵連合を仕留められなかった学生どもに、何が誤算があるというのだ?

 

 そもそも、忍学生は元よりヒーロー学生とは教育と立場も違う。

 連合を捕まえる事が全忍の任務であり、学生だろうと任務を遂行できず失敗を重ねるようならば、忍にはなれんと言ってるのだ」

 

 国立半蔵学院や死塾月閃女学館、蛇女子学園が連合への接触及び、戦闘可能となってる理由は、上層部が任務として許可を出されてるからであり、それ以外での戦闘はご法度となっている。

 雄英は世間の目もあり、連合への接触は極力避けてるわけだが、忍学生は最初っから任務として送られてるので、違いは確かに存在するだろう。

 だから、今回の林間合宿の事件は流石の上層部も目を瞑ってはいられない。下手すれば忍の存在が世間に悟られる危険性は充分に高いのだから。

 あろうことか、下手すれば忍の存在が知らされ、そのイメージや印象はかなり悪影響を与える事になるだろう。

 社会の闇の中で、影で仕事を全うする存在が、世間に知らされる事だけは、あってはならないのである。

 

「確かに、彼女らは幾多も失敗しています…

 それどころか連合は以前と比べ物にならない程に、強く成長しています…この事実は到底赦されるべきことではないのは、私も把握しています…

 

 ただ、光と影は表裏一体…

 連合が成長しているのなら、少なからず彼女達も強くなっている…つまり、失敗を重ねるにつれて、彼女たちも自ずと成長をしている…私はそう解釈しています」

 

「…?意味が分からんのだが?

 それに、忍学生の拉致…下手すれば忍学生が連合の下に就くことも十分にありえる。

 その場合、貴様は切腹だけでは済まされんぞ?」

 

「私が言ってるのは…もし連合が忍学生を拉致し、傘下に就くようにと想定しこの流れを作り出したと例えるのならば…

 今回、連合が起こした騒動は、全て浅はかであり愚策と言ってるのです…

 

 少なくとも…連合の下へ就くような教育指導はしておらず。また悪に抗い、対抗する術は彼女たちにあると、私は生徒の教育者として推定しております…」

 

「つまりだ霧夜よ…忍学生は連合の思惑通りにはさせない…

 忍学生は絶対に連合に屈さぬと言うのか?その根拠が貴様にあると?

 

 何とも見苦しい戯言を…連合は愚か…漆月すら捕まえる事すら出来ないと言うのにか?」

 

「ええ、今は弱くとも…彼女たちは忍学生とはいえ襲撃を受けながら今も生きている。

 

 ましてや、上層部を殺害し、上忍を葬ってきた抜忍を仕留めた彼女たちが、上忍ですら成し遂げなかった事を、遂行した…

 

 何も策がない訳ではありません…

 現在ヒーローも上忍も、そして警察も、連合のありかを探っています…

 

 絶対に、我が校の生徒を取り戻してみせます」

 

 霧夜にとってのプライドとは、生徒の為のものであり、自分が育ててきた忍が強く立派に成長する事が、霧夜にとっての本望だ。

 だからこそ…

 

 

 頭を地面へとこすりつけることも、躊躇わない。俗に言う土下座だ。

 一同は驚嘆する。

 あの霧夜が、頭を地面に付けることなど、今までなかった。

 この容姿は、単にその場凌ぎの謝罪ではないと容易に感じ取れる。

 これが、霧夜にとってのプライドだ。

 捨てたのではない、彼女たちのためになるのなら、幾らでも頭を下げる事ができる。

 それは、生徒たちを信じてるからこそ成し遂げれるもの。

 

「……解った。だが、もし忍学生が連合の傘下となれば…解るな?」

 

「……はい」

 

 その言葉が、終点を打つかのように、室内は再び、静かに沈黙と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は!どいつもこいつも言ってくれるな!雄英も先生も!

 

 そう言うこったよ糞カス連合がぁ!!」

 

 現時点、拘束が解けた二人は軽い戦闘態勢に入る。獣のような雄叫びが、薄暗いバーに響き、より殺風景な雰囲気が漂う。

 雲雀も手に汗を握り締めながらも、拳を強く握る。

 

 今回、連合が拉致したのは爆豪と雲雀のこの二名だけ。

 Mr.コンプレスはアドリブで常闇と柳生を捕まえたはずだったのだが、雄英生と忍学生に妨害され、結果本命の二人しか拉致することは出来なかった。

 

「雲雀と俺を連合に入れたかったんだろうが…残念だったな?

 コイツもコイツでテメェらの傘下にはならねえとさ、勧誘する気があっても仲間にならねえザマぁ見ろゴミ共!」

 

 ギャハハハ!と煽るかのような甲高い笑い声が、薄暗いバーに静まり返る。

 一同はやれ呆れ、やれ困惑、やれ不機嫌にと様子を見せながらも動き出す。

 

「因みにな、俺と雲雀はまだ戦闘許可を解除されてねえ!つまり、暴れて良いって訳だよなぁ!?!」

 

 ――コイツ等は元々、俺と雲雀を連合の傘下に参入させるために招き、あんな馬鹿みてえな襲撃をブチかましたんだ。

 じゃなきゃ、こんな態々と改めて綺麗事言うような輩共じゃねえ…

 

 心の中では、自然と冷静でいた。

 観察力や、応用力、戦闘への技術は、容姿や性格とは似合わず頭がキレる。

 そう言う場面では、緑谷と似てる点がある。

 

 ――つまり、俺と雲雀はコイツ等にとっちゃあ〝利用価値のある存在〟。その視点がある限り、俺たちは少なからず殺られねえ…

 方針が変わっちまう前に…

 

「俺と雲雀だけで五、六人ぶっ殺したる!!!」

 

「うん!雲雀たちは絶対に負けな…ええ!?ダメだよ殺しちゃ!さっきまでのカッコいい爆豪くんはどこ行ったの!?」

 

「五月蝿え!つかカッコいいってなんだテメェの視点からは俺はどー言う風に見えんだクソボケぇ!!」

 

 …平常運転なのも変わらない。

 

 

 

「何よあの二人…自分たちの立場を解ってて…小賢しい子だわ!」

 

「あのような野蛮な輩…オイ死柄木、だから俺はこんなヤツを連合に入れるのは反対だったんだ…雲雀と言う忍はともかく…」

 

「へぇ〜…やるじゃん。んじゃ、バトルか?つーかさ、襲撃しかけたとはいえウチ等のお誘い断って…ただで済むなんて思ってんの?なんならウチ一人で完封してやるよ」

 

 マグネ、スピナー、龍姫の三人は呆れながらも武器を取り出す。

 マグネはマグネットアイテムを、スピナーは大剣を、龍姫は竜籠手を装着させる。

 

「でも龍姫ちゃんにスピナー、ここバーだよ室内だよ?騒いだら警察やヒーローも、忍だって来ちゃう…

 どうする?ねえどうすれば良い?

 あっ!ボクの鎌で息の根刈り取れば良いのかな?!」

 

「取り敢えず刺しましょう!私雲雀ちゃんの血を飲みたいです!」

 

 鎌倉とトガヒミコは頭が逝かれてるあまり、常人な考えは出来ず、ついドス黒い方向へと思考が働いてしまう。

 恋する乙女達は、時にイカれ狂い、ヤンデレと成り果てる。

 トガはヤンデレだが、鎌倉の場合はサイコパスと言った方が宜しいのだろうか。

 

「いや、馬鹿だろ」

 

「可笑しな事ですね…こんな状況の中で諦めても誰も文句は言いませんよ。

 それに、爆豪勝己。貴方は頭が良いのでこの状況を上手く飲み込み参入してくれると想定してましたが…

 

 思った以上に、とんで火にいる夏の虫……脳まで筋肉と化した馬鹿でしたか」

 

「嫌でも大人しく懐柔されてるフリをすりゃあ良いものを…

 やっちまったなコイツ等…

 

 

 死柄木どーするよ?だから俺言ったんだよ?〝闇ちゃんの呪術なら二人を丸めて仲間になれる〟って」

 

 荼毘、蒼志、コンプレスはため息を吐き、呆れた様子で渋々と動き出す。

 コンプレスの言葉に若干、違和感を感じ取った二人だが、そんな事など気にせず前方から視認出来る敵に屈せず、佇む。

 

「悪いな、俺ァ嫌でもテメェらの言う通りにだけはしたくねえんだよ。

 だから、傘下になるなんて馬鹿げた妄想はまず有り得ねえ。雲雀だってそうだ、テメェらがそんな事も安易に想像できてねえ時点で馬鹿丸出しなんだよ社会のゴミ供がぁ!」

 

 掌から爆破を出す。

 威嚇とは言え、近づけば殺すというアピールは充分に出来たのだろうか、中々に近づこうとしない。

 しない…のだが。

 

「もう良いです…私とコンプレスでやります。私の蒼炎を放ったら…解りますね?」

 

「火事になったら終わりだからねぇ…けど二人とも死ぬぜ?」

 

「元より交渉決裂した時点でたかが知れてます…

 

 何よりも自分が偉いと思い込んでるあの上から目線が、一番気に入らない…

 あの()()()を思い出してならないんですよ…」

 

「あーあ、お前ら覚悟しといた方が良いぜ?蒼志ちゃん、滅多に怒らねえけど…お前らが琴線触れちまったせいで…こりゃあの世行き確定かな」

 

 蒼志とコンプレスは静かに動き出す。

 動き慣れたその動作は、自然と足音を立てず、水の流れに沿うように近づいて来る。

 

(チッ…!よりによって厄介な野郎が来やがった…あの蒼女はさておき…クソ仮面が邪魔でならねえ…!!

 俺的に一番厄介なのは…あのクソ仮面と靄モブと、あのメガネ女には注意だな……)

 

 爆豪は思わず舌打ちをしてしまう。

 手に汗を握りながら、その強く握った拳だけは、緩ませなかった。

 不敵な笑みを崩す事なく「かかって来やがれよチビ蒼女に仮面野郎!返討ちしてやんよ!」と声を荒げる。

 

「ひ、雲雀も絶対負けないもん!なんならここの部屋ごと壊してやるもんね!!」

 

 雲雀は頬を膨らませ、威嚇する。

 雲雀の忍法は華眼にして、様々な特殊効果が備わってるため、一筋縄ではいかないのは確かだ。それに、雲雀は上手くいけばMtレディのように姿を大きくする事も可能なのだ。

 しかし部屋を壊すにしろ、近くに一般人がいるとも考えると、巻き添えを食らってしまう危険性があるため、軽々しく壊せとは言えない。

 

 

「……」

 

 そんな中、黒霧は何も言葉を発さずに死柄木を見つめていた。

 ただ、呆然と…彼が見据えてるその先の視線、彼が大事にしてた手のマスクを

 

「!!」

 

 いけない…死柄木弔の〝手〟が…!

 下手すればこの場の全員が、彼に殺される!!

 

「いけません死柄木弔!ここは抑えて…」

 

「黒霧…」

 

 ゾッ!!

 と、黒く禍々しい殺気が放たれ、一同は静まり返る。

 あの爆豪でさえも真顔に変えるほど、その殺気は歪で、純粋な瞳をギラつくように輝かせ、殺意の牙を向ける。

 黒霧は立ち止まり、靄を引っ込める。

 近くにいた漆月でさえも、少しだけ体を震わせていた。

 

 

 

「お前ら、手を出すな……

 

 コイツ等二人は…俺の大切な駒だぞ…」

 

 

 

 その言葉に黒霧は目を丸くする。

 あの幼稚な子供のように癇癪を引き起こし、気に入らないものを単に壊して来た彼が、初めて…〝我慢〟を覚えた。

 それは、着々と彼自身が成長してる証。

 死柄木は落ちた手のマスクを拾い顔に付けると、蒼志に振り向く。

 

「蒼志、勝手にコイツら殺そうとするな。それとも、昔の事でも思い出したのか?なら、ソレはアイツ等にぶつければ良いだけだろ……お前は少し熱を冷ませ。

 

 お前が連合に就いた理由は、俺たちが知ってるんだから」

 

「……ッ」

 

 そして初めて、自分の駒として見てきた仲間に、フォローするよう優しく語り告げる。

 蒼志は俯きながら「すいません…」と軽く一言残して一歩下がる。

 コンプレスも同じく一歩下がるものの、彼女を慰めようと肩に手を置く。

 

「……コンプレス、お前の言う通り…確かに闇の呪術ならコイツらを丸めて傘下に入れることは容易い…」

 

「でしたら弔様、私が力添えを…」

 

「――ただ…俺が闇のチカラを借りなかったのは……お前たち二人なら解ってくれるかと思ったからだ…

 

 俺の話を聞いてくれれば、二人は俺の仲間になってくれるかと思ったから…だから、俺は俺自身で腹割って話し合おうとしたし、拘束も外させた……

 けど、お前らがそのつもりなら… 話は別かな…」

 

 物悲しげに語り告げる死柄木は、軽く手でマスクの誇りを払いながら、ギラついた視線でパソコン画面に目を移す。

 

「………テレビでも放送してたように、ヒーローも警察も、忍だって俺たちを捜索している………タイムリミットは二、三日か。

 下手すれば俺たち全員逮捕なんて胸糞悪いバッドエンドになるのは嫌だなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 んじゃあ()()、力を貸してくれ」

 

 

 悪は動き、自ずと成長していく。

 死柄木弔は、考えれば考える程に成長を促し、絶望や憎悪を糧として成長する。

 

 

『良い、判断だよ…死柄木弔』

 

 

 そして、パソコン画面からは嫌に奇妙な声が静かに、虫が這いずるように耳に伝わる。運命の歯車は少しずつ回り始め、動き出す。

 善と悪、光と影、陽と陰…相反し対立するその存在、それぞれは戦うべく戦争の準備を進めている。

 悪の親玉にして、オールマイトのコンビであり親愛を共に過ごしたカグラを超えし忍、〝陽花〟を殺めた弔の師匠が、動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程まで、世界の指に五本入る実力者ヒーローと忍が集ってから数十分後、今はどうだろうか?この光景を見て、敵連合への恐怖はあるだろうか?

 いや、本当に恐ろしいのは敵連合ではない…

 敵連合が触れてしまった、ヒーローの逆鱗、忍のプライド。

 今回の事件はこれまでとは比にならないほどに深刻であり、爆豪と雲雀の拉致。

 そして連合に数人の抜忍が在籍していること。学校襲撃はもちろん第一位として危険視されてるが、その後に起き発覚したこの事件は、幾ら上層部達の力でも隠しきれない。

 

「凄い面子が揃ったな…だが、これなら行けるぞ!!」

 

 それぞれの集団が二手に分かれる。

 一つは敵連合のアジト、もう一つは八百万の発信機による別倉庫。

 爆豪と雲雀がいるのは恐らくアジトの確率が高い。倉庫には特に誰も目に触れておらず、恐らくは脳無格納庫で間違いはない。

 

「待たせたな俊の…オールマイト、こんな大事な案件だってのに遅れてすまねぇ、このご老人を許してくれ」

 

「何を今更!私は恨んでおりませんし怒ってるわけでもありません!それに、突入時間には全然間に合ってますよ!」

 

「それでも十分前くらいには着いてないとダメだろうが!」

 

「仲が良いのだな二人とも…我も昔はこうやって凛さんとじゃれ合ってたものだ…」

 

「ほぉ、忍学生…しかも伝説の留学生か……半蔵からは忍学生を送ることは出来るのだな?」

 

 現在のメンバーは…

 オールマイト、エンデヴァー、半蔵、小百合、巫神楽三姉妹、エッジショット、大道寺、グラントリノ、そして若手実力者、シンリンカムイ。

 その他のプロヒーローと上忍達。

 

「半蔵学院は忍学生の存在を知らせていないし、雄英は悪いけど今立て込んでて教師がマスコミやメディアと相手している!今は送れないのは察してくれ」

 

 塚内の言葉に、エンデヴァーは軽く鼻息を荒くしフン…とそっぽを向く。

 よっぽど、オールマイトと組むのが気に入らなかったらしい。

 

「それに、他の増援も凄いよ…」

 

 

 

 今回は、ヒーロー・忍飽和社会が崩壊しかねない大事件。

 総力を持ってして解決せねばならない。

 

 

 

 

 

 また一方では…

 

「忍とヒーローが手を組むのは、近年目立たなかったたからね…嬉しいよ。

 再び忍と手を組めるなんて、何年以来だ?かれこれ7、8年くらいじゃないか?」

 

 ベストジーニストが先頭として始め、他の忍やヒーローも数多く現場にいる。

 それに勿論警察もだ。

 

「我が同志であるラグドールが行方不明となった我自身、看過出来ぬ!

 必ず救い出す…!」

 

 そして今回は林間合宿で教官としての役割を担ってたワイルド・プッシーキャッツの一人、虎も駆けつけてくれた。

 もう二人のマンダレイとピクシーボブは不在だ。なんでも、ピクシーボブは頭に鈍器による重傷を負い、マンダレイが看病してるとか。

 

「それにしてもジーニストさんでも変えられなかった人いたんですね…何者なんですかその生徒?ウチ体育祭全然観てないんですよパトロールが忙しくて…」

 

「毛根までギチギチプライドが硬かったよ…職場体験で矯正したハズなんだがな…」

 

 シンリンカムイと同じく、新入りヒーローのMtレディも参入し、大分様になってきた様子だ。

 

「良いか雅緋、忌夢、お前達は忍学生にしてもう既に上忍の立場と変わらない忍だ。

 必ず連合の退路を断ち、終わらせるぞ」

 

 蛇女の教師、鈴音の掛け声に二人は静かに頷く。飛鳥の見舞いに二人がいなかったのはこの為であって、蛇女の皆んなは雅緋と忌夢が超重要任務を受けているのは知っている。

 両備や両奈、紫が行く気がなかったのは、ある意味二人が関係してるからだろう。

 

「我々蛇女を私欲私怨で、利用価値として踏み台にし、悪の誇りを地に堕とした奴等に、ケリをつけてやろう……

 

 それに、これ以上野放しにするのは危険すぎる………忌夢、やれるか?」

 

「大丈夫だよ雅緋、僕はもう何も見失わない……今の僕ならやれる。

 あの時から僕等は強くなったんだから…だから、これが終わったら、アイツらに胸を張って『ただいま』って言ってやろう。

 僕等は誇り高き蛇女の生徒なんだから」

 

 何も怖くない、不安もない。

 伊佐奈の事件から、二人は見違える程に逞しく、強く成長した。

 それは、鈴音にとっても喜ばしいことであり、教育者としてこれを微笑まずにはいられない。

 

 

「貴様が、蛇女の選抜メンバー筆頭か…」

 

 

 ズン…と、大きな影が覆い被さる。

 ふと声の主に振り向く雅緋は、少し目を疑う。

 忌夢は雅緋との空間を邪魔されて忌々しいのか、噛み付くかのよう視線を相手に浴びせる。

 

「ああ…そうだが…お前は?」

 

「フッ、申し遅れた。

 俺はギャングオルカだ……俺はお前にでら会いたかったのさ」

 

 ……でら?

 独特な口調に首を傾げそうになるも、それよりも見た目のインパクトに少し強い印象を受けた。

 黒い肌をしたシャチの顔、白いタクシーどのような服は見るからに上品で、雅緋に負けず劣らずとクールだ。

 因みに腰掛けポーチに天然ミネラルウォーターがあるのをお忘れ無きこと。

 

 簡潔に言うならシャチ人間といった方が良いのだろうか、見た目の凶暴さと怖さから見て、敵っぽいヒーローランキングでは3位の番付だ。

 現在No.11ヒーローの実力を持つ彼は持ってこいの話だろう。

 

「キュレーター……伊佐奈の件で少し話をしたくてな。お前たちに御礼を言いたかったのさ」

 

「御礼?」

 

 伊佐奈と言えば、ワイルドヴィランズのリーダーであり、蛇女子学園を利用してた道元並みの非道の男だ。

 己の欲望のためなら他者の命さえも躊躇わず生贄にしてしまう正真正銘、惨殺者だ。

 

「俺は長年、ワイルドヴィランズのボス、キュレーターの行方を追っててな…手がかり掴めず、結局事件は鵜呑みに流されたんだが……

 

 蛇女にいるとは思わなんでな……ソレを、お前達が倒してくれたと聞いた時はでら嬉しかったぜ。

 宿願がようやく叶った…だから、こうして御礼を兼ねてご挨拶しに来たのさ…

 

 有難うな」

 

「……いや、何。我々は利用されてただけ、私は何もしてない…

 

 礼を言うのなら、焔紅蓮隊のと名乗るアイツらに直接、言ってくれ」

 

「紅蓮隊……フム、リーダーである雅緋が言うのなら、承知した…」

 

 まさか、キュレーターを追ってるヒーローがいるとは少し驚いた。

 だが、よくよく考えると全国指名手配犯のリストにも乗り兼ねない重罪犯なのだし、当然か…と思う説も。

 最初はオールマイトが倒したと聞いたのだが、捕縛中に運悪く逃げられ、他の仲間も数名逃走したとか……

 何がともあれ、蛇女の暗雲が晴れた事は、全部焔のお陰なのだ。

 もし、焔がいてくれなければ…何も変わらず、いずれ自分たちは人形のまま延々と利用されてただけだろうに。

 

 ギャングオルカは軽く微笑むと、腰掛けポーチに入れてあった天然ミネラルウォーターを自分の顔面に思っきしぶっかける。

 

「ヒーローと警察のみならず、善忍と悪忍の共闘………鬼が出るか蛇が出るか…か」

 

 警察もスタンバイし、プロヒーローも、上忍も充分ここにいるし、戦闘としても何ら問題ない、文句なしの陣形だ。

 

『今回!二つの居場所を一気に制圧する!敵に少しでも攻撃する隙を与えさせるな!

 先に優先するのは、拉致された人質を救出優先!人命救助!

 

 そして尤も注意すべき人物は、敵連合を裏で操りながらも滅多に姿を現さないクレバーな敵、忍の天敵、〝オール・フォー・ワン〟!奴がいる限り被害は延々と増え続ける!今回のメインは敵連合の捕縛!被害者救出!

 

 

 全員、幸運を祈る!!』

 

 塚内の無線が、全員の耳に行き渡る。

 今回限りで、敵連合も終わりだ。忍とヒーロー達で連合を捕まえ、脳無格納庫を制圧し、被害者を無事救出させ、オール・フォー・ワンを討つ。

 悪の象徴と呼ばれる男が、一体どのような人物なのか、容姿も解らなければリストにも載ってない、裏社会の王。

 

 

 ――この日で、全てが決まる。

 

 

 

 それぞれの二手の陣形は、所定位置に着く。

 

 準備は万端。

 抜かりはない。

 自信もある。

 

 

「先ほどの会見、連合を欺くよう校長にのみ協力要請をしておいた!!さも難航中かのように装ってもらってる!

 

 あの発言を受け――その日のウチに突入されるとは思うまい!!」

 

 謝罪会見に関しての、校長のさも不安のような広告は全て嘘。

 少しの間だけ、荒れてしまう…だが、社会の不安を取り除く為ならば、嫌な嘘でも突き通すしかない。

 

「意趣返ししてやれ!さァ反撃の時間だ!!

 

 流れを覆せ!!

 

 ――忍とヒーロー!!!」

 

 

 冷や汗が頬に流れ落ちる。

 拳に汗水握りしめ、強く、要塞すらも吹き飛ばす拳を握りしめる。

 強く、曲がらぬ信念をその心に宿し、先祖代々から伝わる、二刀を握りしめる。

 

 

 そして、時は来た――

 

 

 





クライマックス突入!

ようやくここまで来れましたわ…一年少し時が経って、ようやくこの回までに到達しました…
最近本当に忙しいのと、個人的な理由で投稿がマジ遅れちまった…
けどまあジャ◯プみたく一週間投稿になると思いますので、待ってて下さないな(それか二週間投稿になるかも…)

それはそうと、命曇の声っワンピのトラファルガー・ローですよね。
そうですよね…?間違いないはず…


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