光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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昨日投稿したかったけど、携帯自体のアップデートしてなくて無理だった…充電の減りが異常な程に早く、落ちて、一日中携帯いじれなかった…
そんなドスランポスです。

それはそうと皆さん知ってますか?
僕のヒーローアカデミアの最新作ゲームが、SwitchとPS4にて発売決定となりました〜!(チキチキ〜ぱふぱふ〜!!)
3DSとは違い、バトル爽快アクションにステージごと敵を破壊できるシステム!
とうとうヒロアカもカグラと同じ機種として仲間入り…か!
マジでヒロアカとカグラのコラボゲームとか想像しちゃうわ。
例えるなら、ソードアートオンラインvsアクセル・ワールドのゲームみたいなもん。

では、どうぞ!!




111話「絶対正義は勝つ」

 

「ここが発信機の示す場所ですわ」

 

 ヒーロー達が動くその数分前、救出メンバーの八人は、発信機を辿りアジトにやって来た。

 幸い人は誰一人もおらず、物静かな空間がひんやりと肌に染みる。まだ夏場なのにこのシンとした静まりようは、少しだけホラー感を引き出している。

 アジトと呼ばれる建物はとてもボロついた廃屋で、工場のようだった。

 窓から見て灯りは見えず、人が居る気配も感じない。

 だが、発信機は確かに此処で間違いはない。

 

「如何にも悪が巣喰いそうな場所ですね……こんな場所に、雲雀さんや爆豪さんがいるかと思うと、虫酸が走ります…」

 

 元々雪泉は知っての通り、悪という存在を嫌悪している。

 今は、復讐心及び憎悪が拭い消えたとは言え、悪を赦した訳ではなく、ましてや連合の事は前々から気に入らなかった。

 平気で人の全てを奪い、見下し、壊し、殺す。善忍も悪忍も生き方に違いは無いものの、敵となると話は別だ。

 

「俺もだ…今頃雲雀が泣いてると思うと…建物ごと壊したくなってきた…」

 

 …柳生もまた、色んな意味で連合が気に入らないのであった。

 しかし、仲間の安否が不安なのも解るし、連合の好き勝手にやられてると考えると赦せないのは同意だ。

 

「ですが、先ほどからおかしな事に…昨日からずっと動きが見当たらないんですわ…止まったまま何も動じずに…

 

 機械の故障はあり得ませんが、何が起きるか解りません…ここは細心の注意を払って動くのが得策でしょう」

 

 見た限り、使われてないボロ倉庫からは特に何も人気は感じないし、忍からの視点では気配すらも感じない。

 本当に爆豪と雲雀が、または連合がいるかどうかすらも怪しい。

 

「けど、ここは一通りもあるし少なからず人も通る…怪しい動きを取ればより目立つ…隠密行動にはならねえ…

 

 取り敢えず、だ。

 一旦ここから離れて違うルートで回って中の様子を見るのはどうだ?正面から突入なんてプロヒーローくらいだろうし」

 

 自分たちは個性を使わずに生徒を救出する前提で此処へやって来てる。

 轟の氷や炎があれば、一見最強に見えるが、それをああも簡単に看破する人間が向こうにはいる。

 どの道、正面から入り込むのは無謀にして危険のリスクが高すぎる。

 ここは轟の言うべき通り、静かに遠回りするのが妥当だろう。

 

「よく見ると正面の入り口には小石や草もあるし…微かな音でも勘付かれそうだ…

 遠回りするって言ったって…どうするの?」

 

「建物の細い隙間の道を通ろう…

 俺らが安全に行動できるのはそれしかねえだろ?」

 

 言われてみれば、他に回って見たとしても一通りがあって人の視線を浴びて注目の的となってしまうし、ここは窮屈かもしれないが狭い細道を通るのが賢明な判断だろう。

 善は急げだ、一秒でも早く中の様子を見る衝動を押さえ込みながら、少年少女は駆け走る。

 

 

 

 

 狭い細道は、男でさえも窮屈と感じてしまう程に狭く、少し息苦しい感覚だ。

 まるで壁と壁にプレスされたサンドイッチにされたようなこの感覚はあまり宜しくない。

 

「んんっ…やはり狭いですわね……つっかえそうですわ……」

 

「んん〜ッ!はぁ…はぁ…本当だよ……胸が大きいのが裏目に出たなぁ……

 だから胸が大きくなるのは嫌なんだよぉ〜…」

 

「くッ…狭い…俺のぽっちゃりお腹ではなく、胸が原因か……それはそれで嫌だなこの状況…」

 

「二人を救けるべく、如何なる困難を目の前にして屈さぬと決意したのに……

 まさか我々がここで手間取る羽目になるとは……連合の用意周到な計画はやはり伊達ではないのですね……雪泉、一生の不覚…」

 

 ……色んな意味で。

 お前らただ単に胸がデカくて苦しいだけだろ。と突っ込む衝動と少女たちの豊満で動く度に揺れる胸に視線がいかないようにと、気まずきながらも注意する。

 胸をジッと見てたら変態と扱われてしまう。それこそ、峰田と変わらない人種となってしまう事だけはなりたくない。

 

「少しでも怪しい動きをしたと向こうに知られたら終わりだし…人気がなくても何かあるか解らないから、注意を払う事に越したことはないけど…でも問題は中の様子をどう確認したら良いんだろう……これじゃあ救けるどころか、何も出来ないままなんて…どうすれば……」

 

「おい、上。窓から中の様子見れるんじゃないか?」

 

 轟の視線の先を見てみれば、窓があることに一同は気付く。

 確かに、ここからなら誰にも気付かれることなく、中の様子を調べることが出来そうだ。

 発信機の元もここの近くだし、一目で解るだろう。

 

「これなら中の様子調べれそうだね、でも誰が中の様子を見るの?」

 

「あまり人が多いのもな…いや、見るのは誰でも良いんだが…」

 

「ならオレに任せてくれ、雲雀の安否がどうしても気になる」

 

「しかし柳生さん。中に二人がいるとは限らないのですよ?」

 

「だが中に二人がいないことも限らないだろ八百万。それに轟も言ってた通り、中の様子を観るのは誰でも良いなら、オレにさせてくれ」

 

「一歩も譲らない姿勢を見ると…何を言っても無駄ですかね…解りました…

 では、あと二人くらいでしょうか…誰が……

 ああそれとその前に柳生さんには後で暗視鏡を」

 

「それならオレに任せてくれよ、こんな事もあろうかとアマ◯ンで買ってきたんだ」

 

「切島さん!?」

 

 狭い路地の中、切島は待ってましたと言わんばかりにジャージのポケットからカメラを取り出す。

 確かこれは…一個で五万もすると言う高額な値段を張る代物だ。

 八百万がもし付いてこなかった場合に備えて、買って持って来たんだろう。

 

「いやさ、八百万でも作れるかもしれねえけど、何でも人に物創ること頼らせるのは良くねえし、いなかった場合に備えて買っておいたんだ…」

 

「でも良いの?相当高いよね!?」

 

「だからだよ、てか値段は聞くなよ…

 友達救えるなら、金なんていらねえし…これで少しでもアイツら救えるなら、どうも思わねえよ」

 

 最後らへんは少し声が低くてあまり聞こえなかったが、取り敢えず三人で上手くカメラを使って中の様子を調べることにした。

 結局見ることになったのは柳生、切島、飛鳥という形になり、切島を担ぐのが緑谷、柳生は八百万、飛鳥は雪泉となり、三人が中の様子を調べることとなった。

 

 

「中の様子は……見た感じ暗いな…散らかってるし、人気もない」

 

「切島くん、他には何が見えるの…?」

 

「他は〜……

 

 

 ――なッ!?!」

 

 何事もなかった無言の空間が、切島の驚嘆たる叫び声に、皆の心は僅かに暗雲にかかる。

 心がざわめき、二人はどうした!?と聴き込むかのように切島の顔を覗き見る。

 見ると彼の表情はとても酷く取り乱しており、まるでこの世の物とは思えぬ光景を見てしまったと訴えてるかのような顔つきで、冷や汗がとても酷い。

 最初は連合の誰かに視線が合ったのかと思ったのだが、そうでも無いらしい。

 

「やべぇ…やべえってアレ!!んだよありゃ…人間かよ本当に……畜生!!」

 

「き、切島くんどうしたの!?」

 

「良いから見てみろって!飛鳥!コレ!」

 

 迫り来るような声に、心を不安の黒色に染めながらも、切島のカメラを借りて見てみる。

 視野は思ったよりも裸眼よりかは見やすく、暗闇の中で探すのには充分だった。

 だからなのか、散らかってる部屋の中で、とんでもないものが目に見えたのも頷ける。

 

「……うそ…でしょ………?」

 

「飛鳥さん…?一体何が……」

 

 肩車の形として背負ってるので、雪泉はただ聞くだけしか出来ず、飛鳥の声色に眉をひそめる。

 しかし、雪泉の言葉など飛鳥に響くはずがなく、彼女は何も答えない。

 まるで喉に何かが詰まったようなまどろっこしい感覚、見てるだけで吐き気がしそうな光景。

 それは――

 

 

「アレ全部…〝脳無〟?」

 

 

 倉庫の中には幾つもの培養カプセルの中に、人型の化け物が無数に存在していた。

 頭部の皮膚は綺麗さっぱり割れており、脳を曝け出しては異形で歪な体をしていた。

 無数に点滴が打たれ、チューブに繋がっており、目を瞑っている。

 中には様々な種類の脳無がそこに保管されていた。

 

 蛇の形をした脳無、蛇女を襲った赤脳無と緑脳無に似た脳無、USJを襲った脳無に似せた脳無、頭部が二つある脳無、骨のような脳無、そして培養液に浸かってない、林間合宿を襲った脳無。

 数々の脳無がその倉庫には存在していた。

 これぞ、脳無を収容する為にある廃工場、脳無格納庫と言うのが正しいだろう。

 

 だが、それだけならまだ良かったのだ。

 

 

「じゃあ、あの赤色の〝アレ〟は…何なの?」

 

 

 赤色の液体の中には、異形な姿をした化け物が、眠っている様子が見受けられる。

 黒色の肌に、外側の皮膚は棘のような骨格で覆われており、顔は骨のように見えた。

 しかし、この化け物は他の改人とは違い、脳が飛び出ていないのである。

 この化け物が何なのか、説明もしようもないが、一先ず此処には爆豪勝己と雲雀はいないのだろう。

 そう考えると、ここを離れるのが必然な行動なのかもしれない。

 外で何やら騒がしい様子が見受けられるが、三人は気にもしない。

 

 心に更なる暗雲を募らせながら、飛鳥はそっと降りることにした。

 この場を離れなければ…何が起きるか解ったものじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別の場所、敵連合のアジト・バーの様子は、より混沌たる雰囲気をその場の空気に曝け出していた。

 

「〝先生〟ェ…?テメェが連合のラスボスじゃねえのかよクソが!!まだ他にもいるってか!面倒臭えなオイ!」

 

 やや爆豪はキレ気味で口を開く。

 実際、心の中では少し取り乱していた。

 

 今まで連合のボスだと思い込んでいたその直後、先生と名乗る人物の言葉、そしてパソコン腰から聞こえた奇妙な大人の声。

 まだ何かあるのかと、警戒しながらもその心は安心を取り戻すことはなかった。

 

「黒霧、コンプレス、もう一度二人を眠らせてしまっとけ…

 闇、先生に頼んで余った部屋を借りさせるから呪術の準備しろ、問題ないかどうかは先生が確認するから…」

 

「はい、呪いの事なら私にお任せを…♪」

 

「参ったなぁ…ここまで人の話を聞かねえとなると、逆に感心しちまうぜ」

 

 闇は頬をピンク色に染め、コンプレスは心底呆れた様子でやれやれとした素振りを見せる。

 人間、ここまで来ると精神がおかしくなるのか、こんな状況を平然としてるのは余りにも異常である。

 イかれた人間が集団として溜め込んでる集まり場、敵連合のアジトにして実力者はかなりいる。威勢だけのいいチンピラや下忍と言った輩はこの場に一人も存在しない。

 

「聞いて欲しけりゃ土下座して死ねや!つっても絶対に無理だけどなギャハハはは!!!」

 

 自嘲の笑みを浮かばせながら、ジリジリと後ろへと下がっていく。

 気付かれないようにソッと、足音を立てず、自然と後ろへと流れるかのように、下がっていく。

 一見、余裕そうに煽ってるように見えるが、実際はかなりヤバイ。

 見たところ数は十人そこらか、尤も爆豪と雲雀がこの中で一番厄介な個性を持ってると判断してるのが、バーカウンターで静かに佇む黒霧だ。

 ワープゲートの持ち主、最大火力の爆破や雲雀の戦闘技術を持っても、この男が個性を発現しただけで容易く葬りることは、想像がつくだろう。

 

(――特に要注意なのがあの靄モブのワープゲートと、クソ仮面の圧縮系個性、そしてメガネ女の呪いとかって言う分かんねえものだ……どうする?

 後ろの扉を開いてもあの靄モブがいる限り簡単に脱出なんて出来ねえのは解る…

 

 じゃなきゃ、死柄木が俺と雲雀の拘束を外すなんて真似はしねえ……)

 

 余裕。

 拘束を外しても問題ないからこそ、二人をあえて解放した。

 それはつまり、此方は戦力があるから何の害もないと示してる余裕の一面に過ぎなかった。

 よく見れば、他の連合メンバーも然程緊張はしていない。

 完全に舐められている。

 当然、そんな現場に身を置かれてる爆豪の堪忍袋が、タダで済む筈がない。

「テメェら爆殺してやんよ!!」といいかけたその途端。

 

 

 

 

「すいませーーん!ピザーラ神野店でぇーす!」

 

 

 

 

 は?

 と、漠然とした顔立ちで、爆豪が背を向けてるその扉から、アルバイトの学生みたいな声が室内に響き渡った。

 爆豪と雲雀だけでなく、死柄木と漆月も、連合のメンバー達も呆然と佇んでいる。

 思考を働かせる前に

 

 

「――SMASH!!!」

 

 

 巨大爆発に似せた衝撃の音が、全員の耳を貫く。ボガアアァァン!という轟音は、衝撃とともに現れ、壁にもたれかかってた龍姫とスピナーは体勢を崩して倒れこむ。

 思わず吹き飛ばされてしまいそうな勢いに対応する事すら叶わず、二人は地面に着く。

 そして、颯爽と現れたのは〟皆んな誰もが知ってるNo.1ヒーローの姿。

 

 

「――ッ! 黒霧ゲート!!」

 

 

 死柄木の迅速な対応に、黒霧は靄を膨らませワープゲートを作り出す。

 黒霧も対応が早い。しかし、この速度には対応出来なかった――

 

「先制必縛――〝ウルシ鎖牢〟!!」

 

 連合メンバーの敵のみが、シンリンカムイの個性により完封。

 反撃するチャンスすら与える事なく、拘束し身動を封じる。捕縛系では新入りとしてかなり優秀な面持ちだ。

 

「なっ!?!」

 

「ちょっ、何これぇ!?」

 

 俄然とした現場。漆月と龍姫の動揺する声に、鎌倉は颯爽と背中の鎌を抜きシンリンカムイの幹を斬ろうとするも

 

「無駄じゃよお主ら」

 

 老人の声が耳に届いたその瞬間、気付けば抜忍達は金属製のワイヤーで縛られ体を拘束されていた。

 何が起きたか、

 何が何だか解らずと頭の中で混乱しながらも、状況は進展、加速し連合は身動き一つ見せることも、出すことすらも叶わず圧倒された。

 

「ちょぉ…苦し……胸が…食い込む……!」

 

「うわぁ!縛られたよどうしよう!鎌抜けないよ…!」

 

「な、何事ですの?!」

 

 龍姫、鎌倉、闇の三人の困惑色の顔立ちに、答えるものは誰もいない。

 そしてこの目にも止まらぬ速度でワイヤーを巻かれた…これを知ってるのは、死柄木弔と黒霧しかいない。

 

「……!テメェ…糞ジジイがぁ!!!」

 

「まさか…この手練れた術は…〝半蔵〟か!!」

 

「ご名答、流石は今まで姿を眩ませた連合じゃな」

 

 先程まで、そこに誰もいなかった筈なのに…瞬きしたその瞬間に、老人は立っていた。

 古い顔立ちに歴戦を潜り抜けて来たその表情は、一目見て間違いなく、伝説の忍〝半蔵〟と見なして間違いは無いだろう。

 以前、USJから退散しようとした死柄木もコレにやられた。

 だからこそ、よく知っている。

 

「因みに、お主ら大人しくしといた方が身のためじゃぞ?動けば動くほどにワイヤーは食い込み、よりキツく窮屈に縛るような仕組みにしておるからのう」

 

 ある意味拷問器具として役立つこのワイヤー、本音を言えば女の忍が淫らな容姿を見るためにと改品したものだ。

 半蔵の煩悩たる思考はさておき、効果は本当に抜群で、敵が誰であろうとこの術はよく効くし、本心がなくとも戦場でかなり役立つ。

 

「ハッ、けど木なら俺の個性で燃えるよな?」

 

 荼毘は憎悪を募らせた目で、縛られてる木に火を付けようと、皮膚から炎が微かに揺らぐ。

 のだが――

 

 

 ピシュン!

 

 

「つッ…?!」

 

 弾けた水の音が響く。

 まるで銃弾でも撃たれたかのような、それにやや劣る衝撃が、皮膚に響き、痛感を覚える。

 皮膚が濡れて、炎が消えてしまい、焦げ臭い匂いがこの部屋に漂う。

 

「あ?んだコレ…水?液体か?」

 

「あのねぇ、アンタ等バカなの?

 連合の位置情報も個性も忍術だってある程度知ってるのに、ウチらが対策しないわけないでしょ?

 

 はい論破」

 

 子供らしい声に、荼毘は思わず眉間にしわを寄せ、相手を睨み付けるも

 

「早んなよ――」

 

 ゴッ――!!

 

 と鈍い音と共に、荼毘の後頭部を何者かが蹴る。老人の声が聞こえたと思えば、荼毘は後頭部の痛みに、苦しむ様子もなく気絶する。

 まるで後頭部を鈍器で殴られたかのような鈍く痛い衝撃、首の骨が折れたかのような錯覚に囚われながらも、荼毘の意識は遠のき声を上げることも、抵抗する術もなく目を閉じた。

 

「荼毘!」

 

「半蔵の言った通り、大人しくしとくのが身のためだ…反撃する隙すら俺たちが与えると思ったか?浅はかだよ兄ちゃん…」

 

 蒼志の声も虚無と化するように、虚しく消える。老人の声は半蔵ではなく、目にも止まらぬ速度で蹂躙する古豪・グラントリノ。

 衰えながらも、老人と成り果てながらも、現役とは負けず劣らずと成果を発揮する。

 

 

「どっか〜〜ん!!!」

 

 

 能天気な声と共に、またしても爆発音が鳴り響く。壁が崩壊し、火花散るその光景は、花火でも打ち上げられたかのような光景。

 しかし火傷する心配はなく、瓦礫のような壁は音を立てながら崩壊し、外の景色が一望のように丸わかりに見えた。

 だからこそ、相手が何者なのか…何が来たのか何が起きたのか、ようやく今になって理解できる。

 

 

「若手実力者、シンリンカムイ!古豪グラントリノ!!伝説の忍、半蔵!上忍に引けを取らず世界各地を駆け巡る護神の民、巫神楽三姉妹!

 

 

 もう大丈夫だ少年少女よ、我々が来た!!!」

 

 

 オールマイトにグラントリノ、シンリンカムイに巫神楽三姉妹の蓮華、華毘、華風流、そして半蔵。

 壁を崩壊し中の様子を丸わかりにしたのは華毘。巨大な金槌を軽々しく背負い、大工のような姿はどう見ても花火職人にしか見えない。蓮華は「暴れたい奴いるか?いるならウチが喧嘩の相手してやんよ!」と目を輝かせ、少しでも怪しい動きをしたと判断すればその太鼓を叩く桴で殴り込むような意気込みでいる。

 

 後ろからゾロゾロと警察官や上忍、プロヒーロー達が姿を現す。

 目の前の光景は夜景など見えない、ヒーロー達の姿に視界は埋め尽くされていた。

 爆豪や雲雀からすれば、救けに来たという希望と安心感に安堵するが、この場にいる連合にとっては恐怖と絶望でしかない。

 

「嘘だろ!?忍に警察…オールマイトもかよ!あの謝罪会見は…タイミングを示し合わせたのか!俺たちまんまと嵌められてたのかよ畜生が!!」

 

「しかも…巫神楽三姉妹……?

 世界各地で駆け巡るあの三姉妹もまた、今回の件に嗅ぎ付けたのですか?

 

 そんな……!彼女たちまで来るなんて…!」

 

「木の人引っ張んなってばよ!推しやがれ!」

 

「い〜〜や〜〜!!」

 

 コンプレスの苛立ち混じった声色、蒼志の悔やむ声、トゥワイスとトガの苦しむ声が、混沌と成り果てるように喧騒に満ち溢れる。

 シンリンカムイの個性、半蔵の拘束術、この二つの捕縛術には成す術はない。

 

 打開策はない

 仲間は全員行動不能

 一人は気絶して戦力外

 

 端から見れば、数の暴力。

 死柄木で言う〝詰み〟だ。

 

 

「攻勢時ほど、守りが疎かになるものだ……

 

 ピザーラ神野店は、俺たちだけじゃない。それに、忍との結束を固めてるのがお前達だけだと思うな」

 

 扉越しから、ドロン!と現れたのはエッジショット。

 忍者のコスチュームに身を包まれてるその姿は、どうからどう見ても上忍の風格を漂わせていた。

 ガチャガチャと、扉の鍵を外し、中からは老婆の姿をした小百合と、数名の上忍たち。

 やれ狐のお面やひょっとこ面、狼をモチーフにしたような忍、熊のような容姿をした図体デカイ忍、鴉の見た目をした忍、様々な上忍達が、連合を包囲するように取り囲む。

 

「やれやれ、バカ餓鬼供や。

 やんちゃをするのもこれで終いじゃ、敵は特殊拘束場へ、抜忍達は地獄拷問場へ案内してやろうかね」

 

 小百合はハァ…とため息を吐きながらも、主犯格である死柄木弔と漆月を睨む。

 当然、この方が一体誰なのか…()()()は誰も知らない。

 小百合が、元カグラにして半蔵をも超える最強の忍であることを。

 

「特に漆月、お前はもう牢獄どころか処刑確定じゃ。

 この場では殺らんが……連合の同志達に何か伝えてやる事はないかい?」

 

「………ッ」

 

 小百合の言葉に漆月は絶句する。

 忍の一人や二人ならば、この絶体絶命とした空気を覆すことが出来るかもしれんが、生憎数が悪ければ仲間もいる。

 とでも不便ゆえに今回は彼女もお手上げという形らしい。

 

(……にしても、コヤツ何処かで見たことがあるのう…初めてじゃない気がするのは気のせいか?)

 

 小百合の心は、どこか疑問と不審な気持ちで仕方がなかった。

 漆月に関しては微かならが数少ない資料写真で見た事はある。

 しかし、そう言う問題ではなく…どこか懐かしいような気がしてならないのだ。

 単なる気のせいだと願いたいのだが…

 

 因みに、大道寺先輩はもしも万が一の時に備えてエンデヴァーと一緒に建物を包囲し街中の安全を守るべく佇んでいる。

 

 

 オールマイトは、爆豪と涙でくしゃくしゃになってる雲雀に振り向き、笑顔を見せる。

 いつも見てる筈のその絶えない笑顔は、二人にとっては何故だか特別な、違う笑顔に見えた。

 それは状況が状況だからか、またはオールマイトの安堵の息による安心感から来るものなのか、詳細は解らずとも良かったと二人の肩に手を置く。

 

「ごめんな二人とも!辛かったろうに、苦しかったろうに!!けど、もう大丈夫だからな!」

 

 強く、優しく、暖かく、温もりを感じるその声は、緊張し強張ってた二人の心を解きほぐすには充分だった。

 雲雀は「オールマイトぉぉ!!」と涙と鼻水で顔面をくしゃくしゃにしながら抱きつき、爆豪はどこか浮かない顔か「び、ビビってねえはクソが!!」と強がる。

 己の弱さを隠すためか、照れ臭いからか、他にも理由があるのだろうか、この際はどうでも良い。

 

「おいおい…せっかく計画を練ってこねくり回してたのに…

 何そっちから汚い面下げて来てくれてんだよラスボスが……」

 

 気力のない目はギラつき、痩せ細ってる体は微かに震え、動きは封じ込められている。

 外見は何ともない、子どもに似つかないような様子が見受けられるが、実際中身は必死にこの最悪な状況を打破する計画を考えていた。

 

(全員抑えられた…漆月も鎌倉も、蒼志だって動けない…荼毘は気絶、簡単には逃げられないか……)

 

「んじゃ仕方ない……

 使いたくなかったんだけど、状況が状況だ…こんな予想外なハプニングは仕方ねえよなぁ?漆月」

 

「死柄木……?

 

 ――!まさか…!」

 

 

 無理ゲーだと言わんばかりのこの状況を切り抜ける打開策は、まだ連合にはある。

 一瞬何を言ってるのか理解出来なかった漆月は、絶望の色から希望の光へと塗られるように明るくなる。

 

 ――そうだ、ウチらにはまだ秘密兵器が残ってる。アイツらだって、きっと戦力として役に立つだろう。

 

 

「やりたきゃやってやるよ。ヒーローだの忍だの警察だのと、全面戦争したけりゃ上等だ…気に入らないものはぶっ壊す!!

 

 ――黒霧ィ!〝全部〟持って来い!!」

 

 

 死柄木の言葉の意味を理解した黒霧は、対象位置へとワープゲートを繋げる。

 これで、後は「殺せ」の命令だけ出せば、必ず向こうの陣形の何処かが綻びる。

 

 

 

 しかし、何も起こらず辺りが静まり返るだけだった。

 何秒時間が経っても、時計の秒針が進む音しか聞こえず、他は特にこれといった動きもない。

 漆月は冷や汗を垂らしながら「黒霧…?」と、首を傾げ視線を送る。見てみると、黒霧の表情は険しくもあり震えており、目を細めていた。

 

「そ、それがその……申し訳ありません死柄木弔…

 保管してある筈の脳無、倉庫にワープゲートを出しているのですが…

 

 ――〝一体もいない〟!」

 

「!?」

 

 ボロ臭い廃工場には確かに、脳無を補充していた。こうなることがあっても不思議ではないように、先生が予め用意していた改人・脳無が一匹たりともいない。

 それがどんな意味を表すのか、弔達には理解出来なかった。

 

「やはりまだまだ青二才だな死柄木弔」

 

「ああ゛ぁ?」

 

 オールマイトはポンと二人の肩に手を置き、死柄木弔を睨みつける。

 それに続いて漆月に視線を移し

 

「そして漆月、私はね…非常に怒っている。

 貴様の行いが、どれだけ忍に恥をかかせ、泥を塗って来たか」

 

 蛇女子学園の時にようやく、姿を現した。

 敵と手を組み攻めて来たあの事件を、オールマイトは忘れるわけがない。

 大切な愛弟子や、半蔵の孫を殺そうしたその罪は、死柄木と同等だ。

 そして、この場にいる連中も同じこと。

 

「私は…怒ってるぞ漆月!!

 たった一人の身勝手な行動で、社会そのものを不安と恐怖に貶めると想像しただけで、腹ただしい!!」

 

 もし、漆月の影響で忍の存在を世間に知れ渡ってしまうと考えると、何とも歯痒い気持ちか…思わずブン殴りたくなってしまう。

 彼女は何も答えないまま、平和の象徴と言う恐怖に慄き、絶望の顔を映し出していた。

 

 

「貴様らは解っていなかった…

 ヒーローと忍の、強く硬く結ばれた…絆を!!

 

 

 警察のたゆまぬ捜査を――

 

 

 ――そして、少年少女達の魂を――舐めすぎた!!!」

 

 遠い方角から巨大な爆発音が鳴り響く。

 建物が破壊されたような破壊音、崩壊する音、遠くても、遠距離からでも聞こえる個性を持ってなくても聞こえるこの衝撃…まさか!と、死柄木は頭の中で想像つく。

 

 

「我々の怒りを!!!!」

 

 

 それは、誰も使われていない廃工場。

 Mtレディは足で故障して使われてないトラックを掴み、それをオモチャのように、砂で作った構造を破壊するかのように、壊す。

 そして次々と精鋭部隊が中に突撃し、脳無を拘束。

 薄暗い廃工場の中でも、月の光で見えるだろう。Mtレディは巨大な体のまま、林間合宿に襲撃をかました脳無を鷲掴みにする。

 虎は、裸体となって虚の目を開けているラグドールを姫さま抱っこのように抱きしめ、辺りを見渡す。

 雅緋と忌夢、ギャングオルカ、凛、上忍にして蛇女子学園の学園長、隼総。

 そして、脳無を制圧する精鋭部隊の筆頭、ベストジーニスト。

 これらの全てが全力を尽くして脳無を制圧、及び確保。

 

「うえぇぇ〜、マジでキモい〜!何っすかコレ!」

 

「悪の誇りを取り戻す。

 それが少しでも可能なら、私はこの命を死に変えてでも貫き通す!」

 

「全員ご苦労、脳無格納庫。制圧!」

 

 ベストジーニストの服の繊維がみるみると脳無の体に巻きつき、捕縛していく。

 シンリンカムイより秀でてるその才能は、流石はNo.4の肩書きを背負うだけの実力はある。

 

 そして、飛鳥達はそれを…その光景を全員で眺めていた。

 建物が半壊となった今なら、よく見える。

 何にせよ、高まってた不安が一気に消え去った。

 そう、近くでプロヒーローと忍の、本当の実力と怒りをその身で、肌で感じながら実感した。

 

 

 これが忍なのだと。

 

 

 これがヒーローなのだと。

 

 

 

 

「おいたが過ぎたな!!漆月!死柄木弔!敵連合!!」

 

 

 絶対的圧倒的最強正義。

 平和の象徴は、悪の前で微笑む。

 敵連合の敗北が、ここで――

 

 

 




敵連合、ヒーローと忍を前にして敗北!(警察もいるよ!)
けどこんな上忍達集まれば流石の弔達も…ねえ?
次回は、弔達は警察に引き渡され、逮捕された報告が世界中に響くのかな?
何にせよ、良かったですね!悪者は捕まったよ!これにて一安心だ!
悪者嫌いは喜べ!!


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