光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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僕のヒーローアカデミアの新作にはオリジナルキャラは…いないかもな。けど緑谷編と死柄木編のストーリー分けて欲しいなぁ、PVで別れてたし…

あと閃乱カグラのリメイク版、雪泉だけじゃなくて月閃女学館のメンバーや新・秘立蛇女子学園のメンバー全員参戦とかマジかよ!!てっ言っても、期間内な無料配信ってだけで、期限が過ぎたら有料になるし、雅緋と雪泉は確か有料だったっけ…。

今年はかなり熱くなって来てたなぁ…よし、頑張ろう!!(モンハンワールドの壁もあるわ




116話「負けないんだよ」

 

 

「雪泉、そっちの状況はどうだ?」

 

『はい、何とか無事に爆豪さんと雲雀さんの救出は成功しました…此方は問題ありません。轟さんの方は?』

 

「俺と八百万も特に問題無いし、奴らに見つかられず無事に何とか逃げ切れた。

 となると、作戦は上手く行ったみたいだな」

 

 爆豪と雲雀の奪還に成功して数分が経過。緑谷達は無事に怪我を負うことや人目の注目を浴びることなく自然と街の人混みに紛れ込み、オールマイト達との戦闘場からなるべく遠ざかるようにと足を運んでいた。

 対する轟焦凍と八百万百も連合の目を浴びることなく、逃げおおせる事に成功。

 二人とも反対の方面に向かっているので、どう言った状況下に陥ってるか不明だし

 、お互い状況確認するのが普通だろう。

 

「ところで雪泉…」

 

『…?何でしょうか――『だぁかぁらぁ!!テメェらの力借りなくたって普通に余裕で着地出来たわボケぇ!』『でも爆豪くん切島くんと手を繋いだ時嬉しいそうな顔してたよね』『テメェも黙れやデカ乳女ぁ!!』『公共の場ではしたない暴言を使うのはやめよう爆豪くん!』『言わせてんのテメェらだろモブ供が!てか俺は救けられてねえし一番良い脱出経路がテメェらだっただけだわ!!』『ナイス判断だったぜ爆豪!』――』

 

「お前ん所、今何が起きてんだ?」

 

 通話越しから聞こえる喧騒。

 とてもではないが、物騒なように聞こえて愉快そうな会話。

 その場にいない轟が聞けばそれはそれは、とてもカオスな内容だ。

 元から爆豪の性格から考えて荒々しいのは想像付くが、通話越しだと何処かと不安を隠せない。

 

『いえ…特には何も……?爆豪さんの事でしょうか?』

 

『あ!?俺がどうしたッつーんだ雪女!!』

 

『ゆ、雪女!?雪泉とお呼びください!今轟さんと電話して――『あんな舐めプなんざ知った事か!!』――『な、舐めプ??』

 

 

 ――爆豪のヤツ、面倒臭いな。

 

 

 ピッ――

 心の中でボソッと呟いた轟は、ソッと相手に悟られぬよう通話を終了する。

 

「彼方の方は何と?」

 

「いや、特に何も問題ねえとさ。

 俺たちもずっとここにいるのは危険だし、何が起こるか分からねえ…」

 

 プロヒーロー達が避難誘導をし、次から次へと波のような人混みの中、轟は冷静に事を考え、伝えるべきことは伝える。

 

「あいつらも無事だし、一先ず駅に戻ろう。人混みと爆豪が煩くてろくに連絡できる状況じゃねえ」

 

「はぁ…爆豪さんが煩いと?想像は出来ますが、そんなに煩かったのですか?」

 

「まあな、けど安全だってのが知れただけ充分だ」

 

 自分達に出来る事はもうそれしかない。

 出来るだけの事はやり遂げた今、無駄に首を突っ込むのは流石に危険だろう。

 何よりも身近でアレほど危険を身に染めた事は早々無い。

 自分達のやるべき事はやれた。

 後は、オールマイトに任せれば良い――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ!轟さんとの通話がいつの間にか……!」

 

「轟くんから切るなんて珍しい事でもあるんだね…」

 

 同時刻、気付いたらいつの間にか通話が終了してた事に気付いた雪泉は、驚きと残念そうな声を孕ませ大声で叫ぶ。

 轟から電話を切るなんて事は滅多に無いし、あるとすれば父親への電話を拒否する位だろう。

 

「ああ、私もしかしたら轟さんに嫌われたのでしょうか…?い、いえ…そんな筈は……」

 

 ご安心を。轟くんは轟くんなりの気遣いで通話を終了したまでで、決して呆れたからでも嫌いになったわけでもない。

 因みにこれに気付くまで爆豪と言い争いが終わった頃に気が付いた。

 

「轟くん、なんだって?」

 

「え?あ、ああ…はい。

 此方は無事かどうかの安全確認による連絡でした。向こうも無事だそうです」

 

「良かった…それじゃあ今度こそ完璧に作戦は成功したんだ!!」

 

 一度は自分達の出る立場じゃなかったと痛感した。だが、二度めは、今度こそ確実に救出奪還は成功した。

 今になって、オール・フォー・ワンは自分達の存在に気付いてたのかどうかは、定かじゃ無い。

 多分、気付いてないと思う。

 そうあって欲しいし、仮に気付いてたとしたら確実に仕留めていたはずだ。

 

「そう言えば…半蔵さんもあの場にいるんだよね…」

 

「じっちゃん……」

 

 緑谷の言葉に反応した飛鳥は、表情を曇らせる。

 半蔵はかつて五、六年前に引退したと話は聞いている。

 USJでの動きはとても衰えてるようには見えなかったが、あの化け物相手にどう立ち向かうのだろうか?

 しかも年齢的に考えても何が起きるか解ったものじゃない。そう考えると、不安がより心に募り集まる。まるで小さな埃が積もるように。

 

「そう言えばオールマイトも……」

 

 活動時間。

 グラントリノや半蔵がいるし、向こうも弱まってると話は聞いたし大丈夫だとは思うが…

 不安が拭い去る事は決して無かった。

 

 ――大丈夫なんですよね?オールマイト

 ――大丈夫だよね?じっちゃん…

 

 少年少女の心は双方、無事である事を祈る。

 どうか、無事でありますように…と。

 

 

 報道のヘリが、現場の方へと駆け向う。

 あの騒ぎが起きてから既に数十分は過ぎてるので、当然といえば当然なのだろうが、どうにも胸騒ぎがする……

 一体、何が起きるのだろう?

 何が、起きようとしてるのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどの数分前までは、緑谷達が、敵連合が、爆豪と雲雀の二人の人質がその場にいた。

 しかし、今となってはオールマイトとオール・フォー・ワンだけが取り残されていた。

 他といえばグラントリノや半蔵の二人、しかし二人の象徴の戦いでは到底手も足も出ない。

 

 現在。オール・フォー・ワンの口から二人の女性の名前が溢れた瞬間だった。

 オールマイトの額に青筋が浮かび、ギリギリと歯軋りを立てる。

 

 

「貴様のような外道が!穢れた口で!お師匠と陽花君の名前を呼ぶんじゃない!!!

 二度と、彼女の本名を口に出すな!!!」

 

 憤る感情が昂る中、二人の人物が頭を過る。

 記憶が、鮮明に蘇るように溢れかえる。

 

『いいか俊典、陽花!ヒーローと忍ってのはな、切っても切れない縁ってものが確かに存在するんだ!

 私たちも、陽花達だって、人の為に動いてる。理不尽と戦ってる。

 

 同じ似た者同士は惹かれあって存在して、手と手を取り合うんだ!だから、今も忍がいるんだ。俊典、もし忍がピンチだった時、お前はどう動く?定めなんて関係ない、お前の正義ってやつを貫き通せ!そして皆んなに見せてやれ、お前の目指す象徴ってやつをな!』

 

『お師匠は、凄いよね。人の理想と夢を叶えようと、その為に一緒になって戦ってくれる…

 私も、師匠みたいな強い忍になりたいなぁ……私ね、善忍も悪忍も関係ないと思うの。

 だって同じ忍を目指して、同じ夢に向かって、頑張ってるんだもの。

 

 争い啀み合う関係だけじゃない事を知ってほしい。そして、善と悪が手を差し伸べ合う関係になれたら、凄く素敵な事だと思うの』

 

 かつての記憶が、眩しい思い出が、オールマイトの心に火を灯す。

 師匠が、陽花がいたから、今の自分が存在する。

 それを、無邪気で理不尽な闇は、オールマイトの大切なものを奪い、志村を殺し、陽花の理想と夢を壊した。

 

「一人は他人の夢と理想を追い求める、ワン・フォー・オールの実力に伴わない女だった!

 もう一人は誰も傷つかず、手を取り合う世界に一縷の望みを賭け、正義などと下らない妄想を掲げてた馬鹿な女だった…!

 

 師が師なら弟子も弟子か…二人揃ってあそこ迄醜いと今でも笑いが込み上げて来るよ。

 知りたいだろ?天咲光芭の最後、彼女の死に様を。たった一人の少女が僕に殺されたエピソード、何処から語ろうかな?」

 

 それをさも当然のように、ニッコリとした笑顔でゆっくりと語りかけるオール・フォー・ワン。

 元々、性格の歪んでた彼からして二人の存在は邪魔以外何でも無かった。

 オールマイトを除いて、唯一自分を殺せる算段のある人物と言えば陽花くらいだ。

 だが、彼女もまた彼に敗れた。

 その結果、彼女が亡くなった現代社会は理想とシンボルを失い、忍達は生きる意味を失った。

 築き上げて来た彼女の努力は全て、オール・フォー・ワンに踏みにじられ、壊されたのだ。

 

「Enough――!!」

 

 黙れと言わんばかりの怒り昂る感情。

 ここまで冷静さを失ったオールマイトは、USJ以来、いや…それよりも酷く怒りに染まっていた。

 だが――

 

 ――ボッ!!!

 

 オールマイトの拳は届く事なく、重々しい衝撃が襲いかかる。

 烈風大車輪の秘伝忍法に、空気を押し出す個性に何重もの増強型の個性を足したその破壊力は、伊達ではない。

 あのオールマイトが上空に吹き飛び、報道ヘリと顔合わせする程に高く飛ばされた。

 中にいたマスコミは顔を真っ青にしながらオールマイトにカメラを向ける。

 顔の半分は全盛期、誰もが知るオールマイトが映し出されてたので良かったものの、もし反対側の枯れた顔を見せられてたら終わっていた。

 口から血反吐を吐き、ボロボロに打ちのめされる姿。

 それが、どれだけの意味を表すのか。

 

「俊典!!」

 

 いても経ってもいられず、グラントリノは個性を使って空高く飛びオールマイトを何とか救出する。

 あの高さで落下しても死にはしないが、少しでも素顔が見られてしまえば大混乱になる。

 何よりグラントリノも年齢的な意味もそうだが、体力に限界が近づいている。

 

「ゴホッ…邪魔を……するな」

 

 咳払いするオール・フォー・ワンは再び起き上がる。

 絶対正義が折れないように、絶対悪も折れない。根本的に相反する存在は、啀み合い傷付き合い、命の存亡を賭けた戦いにまで発展するのだ。

 人はまたソレを、戦争と呼ぶ。

 

「聞け俊典!これじゃあ六年前と同じだ!奴の挑発にまんまと乗り、アイツを取り損ねた!!そしてお前は腹に穴を開けられた!」

 

 着地した二人は、呼吸を整える。

 オールマイトが重傷なのに対してオール・フォー・ワンは見るからに傷らしいと言った傷はなく、どちらかと言えば無傷だ。

 目立つのは土埃で付いた服の汚れくらいだろう。

 

「お前の駄目な所だ!奴の言葉を聞く事自体が思惑通り…言葉を交わすな!!」

 

 オール・フォー・ワンは、言葉巧みで人の心理を操り掌握する。

 外堀から埋め自身の思惑へと誘導する。

 信じられないが、自身の望むべき物の為ならば汚い手だって容赦なく使う。

 陳腐だが、大切な物への冒涜でオールマイトの逆鱗に触れ、追い込ませる等と言った心理戦では彼がズバ抜けている。

 この世の誰でも、彼に敵うものはいないだろうに。

 

「前とは戦法も使う個性も違う!何よりアイツ、個性を混ざり合わせて他者の忍法まで使用出来る身体にしやがった…!!

 

 正面からじゃ有効打にならん!接近も難しい!なら虚を突いて倒すしかない!!

 

 踏ん張れ!お前は平和の象徴!!陽花の想いを引き継ぐんだろ!?菜奈の言葉を思い出せ!!!

 限界超えろオールマイト!!」

 

 グラントリノの激励に、少し頭を冷やすオールマイトは、荒ぐ呼吸を整えながら、敵意を孕ませた視線を放つ。

 今目の前には、師匠と陽花の仇がいる。

 

「――………はい!!!」

 

 せめて、気持ちだけでも勝たないと、到底オール・フォー・ワンに勝てやしない。

 全盛期の頃に比べても、やはりアイツは強敵だ。衰えた…と表現すれば良いのか解らない程に、とても強力だ。

 使う個性も戦法も違うからかもしれないが、秘伝忍法+個性使用はオールマイトにかなりの痛手を負わせていた。

 それと供に、奴の身体に負担も掛かると思っているが、見た感じ平静でいて、何ともない様子だ。

 だが奴も無敵ではない。

 

 そう思い込ませながら、心の中の理不尽に負けず、拳を強く握る。

 

 この勝負は、絶対に負けられないのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご覧下さい!悪夢のような光景!

 突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました!!

 現在オールマイト氏が元凶と思われる敵と交戦中です!』

 

 全国のテレビ画面に放映されてるニュースは、緊急速報という形でどのチャンネルに変えても、今神野区で起きてる激戦が映し出されている。

 

『しかも信じられません!!敵はたったの一人…そう、たった一人で街を壊し!あの平和の象徴と互角以上に渡り合っています!

 オールマイトが重傷を負ってるのに対し、向こうは…なんと無傷!!これは一体…オールマイトが押されてるのでしょうか!?』

 

 日本、海外、貧民街に置かれてるボロいテレビから、ショッピングや電化製品のテレビまでもが、まるでハッキングされたかのように放映され、現にネット動画でもかなりの話題になっている。

 今こうして自宅で待機してる雄英生徒も、冷や汗を垂らしながら肝を冷やし観ている。

 人を脅かす圧倒的巨悪と、誰もが認めるNo.1ヒーローの激戦。

 それは、雄英生だけじゃなかった――

 

 

 

「ねえ焔!観てこれ!!今神野区で大変な事起きてるわよ!!」

 

 洞窟のアジトの中、パソコン画面に釘付けになってた未来は、皆んなを呼び集めパソコンに放映されてる動画を観やる。

 土煙が巻き起こる中、血反吐吐くオールマイトは血を拭いながら、悪の象徴に立ち向かう姿。

 オール・フォー・ワンは秘伝忍法と個性を組み合わせ駆使する。

 

「……なんだ…これは……」

 

 画面越しでも解る。

 この激戦が、ただの闘いではないと。

 今まで死の美を飾し、死と隣り合わせで闘った焔達だからこそ、この戦いがタダの闘いではないことを重々承知出来る。

 自分たちの次元を通り越すこの戦いを観てて、冷静でいられる訳がない。

 

「たった一人で街を壊して…オールマイトと渡り合ってるなんて……そんなの信じられないよ……」

 

 未来の弱々しい声に、一同は黙り込む。

 あの日影さえも反論出来ない惨状。

 伊佐奈の時のような圧倒的強さでもない、画面越しから伝わる男の気圧は、観てるものを恐怖と不安にさせる。

 

 焔紅蓮隊だけじゃない――

 月閃女学館でも、その話題に持ちきりだ。

 大きなテレビ画面に、くっきりと映し出されてる映像に、皆は釘付けだ。

 

「オールマイト……」

 

「何だ……あの、邪悪な男は……」

 

「ねえ、ちょっちこれヤバく…ない??」

 

「美野里たち……これから……どうなっちゃうの??」

 

 彼女たちの心に暗雲が積もる。

 学炎祭でオールマイトがヴィランの役を演じ交戦した彼女たちだからこそ解る。

 自分たちの本気を使ってでもビクともしなかったオールマイトが、押されてるのだ。

 戦闘した経験だからこそ伝わる。

 あの平和の象徴が、巨悪に手も足も出ず打ちのめされてる…それが、どんな意味を表すのかも。

 

「負けませんよね…?オールマイト……」

 

 遠く離れた場所。月の正義を貫く少女も、彼女たちと同じことを考えていた。

 かつて、悪を滅ぼす間違った正義の道を正してくれた彼に、死んで欲しくない。

 

 何故なら、正義とは悪に屈しないのだから。

 オールマイトは、忍にも憧れの懸念を抱かせてくれる、人々の心を明るく照らしてくれる、人々にとって、忍にとってのヒーローなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦闘が繰り広げられる交戦中、被害者が絶え間なく続出!プロヒーローや警察が追って駆けつけています!既に救出活動してるヒーローもいるものの追いつかず、街への被害はどんどん酷く悪化しています!!』

 

「あわわわ……た、大変だよ……」

 

 秘立蛇女子学園の広間では、テレビ画面に夢中になってる忍学生たち。

 選抜メンバーの紫、両備、両奈を始めとした下級生たちも息を呑みテレビ画面に目が集中している。

 紫は焦る気持ち、不安な気持ちを今抱きしめてるべべたんと供に押さえる。

 紫の焦り、それは爆轟と雲雀の救出へ赴いた雅緋と忌夢の二人が神野区へ駆けつけ、現状が悲惨な事を物語っている事だ。

 オールマイトの事も心配と言えば心配だが、何より一番なのがリーダーの雅緋に、大好きな姉の忌夢の安否が気になるところ。

 マスコミ達が映している光景が、夜空の上空から流しているので、ハッキリと上手くは見えないが、そこに雅緋と忌夢、そして先生の鈴音や学園長の隼総がいるのも事実。

 

「何が……どーなってんのよ……」

 

「両備ちゃん……」

 

 忍ですら成せれる事のない大規模な破壊。

 犠牲者の続出にオールマイトのピンチ、死を掻い潜って来た学生だからこそ解る。

 あの変態の両奈ですら戦意を喪失してしまう。

 

 

 半蔵学院の中は二人の先輩である葛城や斑鳩も、そのニュースを観ていた。

 目の当たりにする絶望の光景、巨悪が嘲り嗤い、少しずつ、少しずつ平和の象徴が折れ朽ちて行く痛々しい姿に心を痛めながら

 

「あんなの……バケモンじゃねえか……」

 

「…………」

 

 声を振り絞ることさえやっとだった。

 何をどうすれば、あの化け物に勝つ事が出来るのか、そんな勝機も予想さえも塗りつぶされる。

 

 

 

 

 一方で、学生達とは無縁な一般市民の反応では、ネットページや掲示板でのコメント欄もバカにならない程に伸びていた。

 

『なにこれヤッバwwww』

 

『オールマイトボコられ過ぎててクッソワロた、敵強スギて草』

 

『神野区って確かウチの親父の出勤先なんだが……』

 

『街崩壊とか草原不可避』

 

『てか最近ヒーローやられ過ぎじゃね?仕事しろよks』

 

『それな、今ヒーロー達何やってんだよ、使えなさ過ぎィ!!』

 

『これ勝てんの?』

 

『いや、敵が暴れすぎてる気がするし、ヒーローは何も悪くないでしょ』

 

『大丈夫wwどーせいつもオールマイトが勝つんだから最後は余裕だろ(笑)』

 

 数々のコメントは他人事のように言いたい放題。

 忍サイトも当然荒れており、市民はまたオールマイトが勝てると信頼しきっている。

 

 また市民の声も

「ヒーローたるんどる!なんつって!」「おー、熱いなこれ、がんば〜」「てかさっき吹っ飛ばされてなかった?」「久し振りの大物ヴィラン登場!」「ねーねー、ママ〜、ウチ観たい番組あんだけど〜」「明日仕事大丈夫かな…」「まあどうせオールマイトがなんとかしてくれるっしょ!!」

 まるでさも当然のように。完璧であることが普通であるように、弱い市民は強き者に頼りすがり、談笑する。

 今この状況が、この戦いが善と悪の頂上決戦であることなどいざ知らず。

 ヒーローが、その内ヒーローが。

 ヒーローという憧れにして尊敬すべき存在は、いつしか市民にとって当たり前の存在に成り果て、いつしか人々は危機という概念を忘却していく。

 

 

「せっせと弔が崩してきた社会への信頼関係を――この僕が決定打を打ってしまって良いものか……」

 

 

 心底呆れるオール・フォー・ワンは両手を広げてやれやれと溜息を吐く。

 片手に持ってた赤黒い炎の剣は消え、戦闘を繰り広げてたオールマイト、グラントリノ、半蔵は既に満身創痍と言った形で体力に限界を迎えていた。

 因みに黒炎の剣は雅緋の秘伝忍法〝悦ばしきinferno〟に個性〝剣技〟で半蔵と互角以上に渡り合っていた。

 

「けどなオールマイト、君が僕を憎くて赦せないように、僕も君の事が憎くて赦せないんだぜ??」

 

 二人は対峙する。

 今この大地に佇むのはオールマイト(平和の象徴)オール・フォー・ワン(悪の象徴)のみ。

 グラントリノと半蔵は周囲の衝撃に近づくと事も許されず、立っていられるのがやっとだった。

 

「確かに僕は君と陽花の師である菜奈を殺した。それに憤りを覚えた彼女が僕に楯突き、僕は彼女の大切なものを全て奪い去った訳だが…

 君は僕を殺めた上に大切なものも、仲間も、築き上げて来たものも、全てその拳で奪って来たじゃないか?

 

 ――だから君には可能な限り、醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!!天咲光芭よりも、残酷にね」

 

 巨悪は嘲笑する。

 ご丁寧な手仕草に、奇妙な残酷の笑みを絶えない彼は、瞬時に腕をデカくする。

 これは先ほどの…個性合体秘伝忍法が来る…!だが、種さえ解れば関係ない。避けて反撃を行えば何ら問題も無いし無駄に体力を使わなくても済む。

 

「オールマイト!!避けろ!!!」

 

 グラントリノの叫びにコクリと頷くオールマイト。

 あの巨腕を見た限り、かなり強めに強化されている。黒い焦げのような匂い、蒼い炎と黒い炎、風、鎌鼬、そして増強系。

 これを食らえば流石のオールマイトもタダでは済まない。

 元からかなり強めの衝撃波に手こずっていたが、下手すれば死ぬ確率が高いこの合体秘伝忍法の空気砲は先ほどまでとはレベルが違う。

 

 オールマイトが避けようとした刹那

 

 

 

「――〝()()()()()()()()〟?」

 

 

 

 悪魔の囁きが、耳打つように鮮明に聞こえた。

 背筋が凍りつくと供に――

 

 

 ガラッ――

 

 瓦礫が崩れる音が聞こえた。

 後ろにはただただ崩壊したビルが無残に倒れているだけ。

 だが、その中に確かにいた――

 

 逃げ切れなかった一般市民が、瓦礫の下敷きに埋もれ、涙を流していた。

 

 

 オールマイトは、その人の存在を知ってしまった。

 避けてしまえば、ここで引いてしまえば

 

 死――

 

 

「おい!!!!」

 

「辞めるんじゃ!!オールマイト!!!」

 

 

 グラントリノと半蔵は歯を食いばりながらも、声を絞らせ叫ぶも、オールマイトは動かない。

 半蔵とグラントリノはもう既に動けないのだから――救けたくとも、救けれない。

 

「先ず、君が守って来た物を全て奪う。一つ残らず、全て」

 

 努力も

 思い出も

 命も

 

「君が怪我を通して守り続けて来た矜持」

 

 オールマイトが命懸けで守り抜いてきたものを、理不尽に奪う。

 巨大な空気砲、雅緋、蒼志、凛、鎌倉の秘伝忍法を上乗せし、破壊的な衝撃波を放つ。

 

 

 土煙が巻き起こる中、人影が映し出され――

 

 

「惨めな姿を世間に晒せ――オールマイト(平和の象徴)

 

 

 煙が晴れると供に姿を表したのは、トゥルーフォーム。

 八木俊典としての、衰えた本当の姿。

 頬はこけ、皮と骨だけのような痩せ細った病人のような体。

 突き出して受け止めた拳の皮膚は全てめくれ、火傷を覆い、身体中に斬り刻まれた傷跡は、見た人の心を痛めつける。

 

 その姿は、全国に放映されていた――

 

 

 

 

 

 

「え?あの人……誰?」

「なんだ…あの骸骨?」

「オール……マイトは……?」

「嘘…でしょ?」

 

 市民の人々は、不安の声を孕ませる。

 先ほどまで巨悪と対峙してたオールマイトの姿は何処にもない。

 今、オールマイトとしてその場にいる人物は、本当の素性を明かされたオールマイトは、八木俊典として姿を現していた。

 

「…は?」

 

 爆豪勝己は、面食らった顔で硬直し

 

「アレは……オールマイト…なのですか?」

 

 雪泉は驚嘆で震えた声を隠せず、自然と目に涙が溜まる。

 

『…え?え〜っ…と……は?え?み、皆さん…見えてます……でしょうか?

 オールマイトが、まるで別人のように…しぼんでます……』

 

 これは世間に公表されていない。

 オールマイトが公表しないで欲しいと、上層部や一部の人間に頼んだ。

 世間に素性を曝け出してしまえば、悪の栄える社会に塗りつぶされてしまう。

 その為に、怪我を通してまで守り続けて来た。

 そのために、後継者が必要だった。

 

 自分を引き継げてくれるヒーローを――

 

 

「緑谷…く――」

 

 オールマイトの真実を知ってる人間は極僅か…関係者と、飛鳥に緑谷出久。

 飛鳥は恐るおそると声をかけてみるも、緑谷出久の表情は不安と焦燥、絶望に歪ませていた。

 今まで、ずっとずっと秘密にして来た真実が、今、世間に明かされてしまったのだ。

 

「オール……マイト!!!」

 

 知られてはいけない真実は、理不尽な巨悪に暴かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頬はこけ!目は窪み!誰もが見るからに思えてしまう…世界一最弱なトップヒーローとなってしまった!!

 恥じるなよ?恥ずかしくないよな!?だってそれが、他でもない…君の本当の姿なんだろう!?」

 

 絶対悪は、巨悪は、悪のシンボルは嗤い飛ばす。

 

「君が前々から世間に公表さえしていれば、多くの市民は絶望しずに済んだものを

 君はそれをしなかった。己の自己正義で多くの人々の心が傷付いた!!

 

 君は平和の象徴なんかじゃない、穢れた醜い最弱ヒーローさ!」

 

 罵り、邪悪な笑みを浮かべる。

 今まで秘密にしてた素性を明かす事で、身体と供にオールマイトの精神を傷付けて行く。

 ここまで人を見下す人間は、外道は、彼しか居ないだろう。

 

「オール…マイト……!」

 

 元よりこうなる帰結は免れる訳も無く、彼自身も薄々と解っていた。

 緑谷出久と出会ったあの日から、覚悟はしていた。

 緑谷出久に個性を渡してから、長くとも短い月日が経った。

 

 通勤がてらに起こる事件、敵連合襲撃事件、学炎祭での死塾月閃女学館の雪泉達と戦い、期末試験で緑谷出久と爆豪勝己の二人ペアとの戦い、数々の無理を通した結果。

 使えば使う度に消えるその力には、オールマイトの命よりも先に限界に達していた。

 

 

「もういいや、これで。

 君の素性が明かされたまま、君が死ぬ瞬間を皆んなに見せて貰えば良いさ――」

 

 手順を終えたオール・フォー・ワンは、指を漆黒の色に染める。

 研ぎ澄まされた鋭利な爪が、オールマイトを襲う。

 衰弱したオールマイトは、睨みながらも拳を動かすことが出来ない。

 それ程までの重傷を浴びた彼が動くはずがなく

 

 ドシュッ――!!

 

 肉が突き刺される音が、心臓を突き刺すように嫌に響いた。

 血飛沫が飛び散り、鮮血は地面に滴り落ちる。

 漆黒の爪は、個性強制発動とは違う、攻撃用の個性を組み合わされていた。

 

「えっ?」

 

 但し――突き刺されたのはオールマイトでは無かった。

 

 

「ガッ…ふ――」

 

 それは、オールマイトと同じく身体が衰えながらも、仲間の為に影として最前線を走って来た――

 

 

 平和の象徴を庇う、半蔵が身体が突き刺されていた。

 

 

「僕の尤もやりたかった事、それは…

 忍の存在を世間に晒け出し暴くこと――哀れだなぁ…悲しいなぁ〟〝服部半蔵〟」

 

 言葉で煽り、誘惑させ、半蔵に庇うように動かすよう仕向けたオール・フォー・ワンは、予想通りといった口調で口角を吊り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『えっと…皆さん?見えますでしょうか??しぼんでるように見えるオールマイトの前に突如、老人が……これは一体…何なのでしょうか?何が…起きてるのでしょうか??

 

 そもそも、我々が今こうして目にしてる光景は、何なのでしょう……??』

 

 世間は更に混沌の渦巻きに流され、市民は焦りと不安に心を支配され、表情が歪んで行く。

 半蔵のような老人がヒーローとして活躍してる姿などほぼ皆無、況してや今の今までこの老人の姿など、知る訳が無いだろうに。

 

 

 伝説の忍が、世間に放映され、忍社会に大きなヒビを入れたのだ。

 

 

「じっちゃん!!!!」

 

 飛鳥の悲痛の叫びが虚しく夜空へ消えて行く。

 突然だ。

 尊敬してる忍が、血が繋がってる祖父が、こんな傷だらけの姿で世間に晒されて黙る孫など何処にいる?

 

「飛鳥……さん…」

 

「雪泉…ちゃん……じっちゃんが…じっちゃんが!!!」

 

 腹を突き刺され、今にでも血反吐を吐き、危機的な状態に陥ってる半蔵の姿を見るのは、心臓が裂けるほど辛い。

 雪泉は、そんな彼女をあやすように、肩を持つ。

 飛鳥の目は涙いっぱいになって溢れている。

 そんな飛鳥に、雪泉はなんて言葉をかけてあげれば良いのか、解らなかった。

 でも、実の孫でも無いのに…何故かと自然と、涙が頬に伝わった。

 

 何故なら半蔵は雪泉にとっても深い縁があり、王牌として担任教師を務め、雪泉たちをここまで強く育ててくれた。

 黒影の、友なのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイトに続き半蔵まで、揃いも揃って僕の目の前で腹に穴を開けてやがって!

 そうだったよな、お前の身体に付いた消えない古傷は、今まで沢山のものを、仲間を守り続けて来た勲章なんだよな?

 

 きっと、孫も涙を流してさぞ大喜びしてるだろうね。英雄を救った影として、歴史上に君の存在は語られ続けるだろう…良かったじゃいか、君の栄誉が世間に放映されてるんだぜ?素直に喜べよ」

 

 忍とは、決して世に語られてはならぬ存在。

 成果が、結果が良かろうと、栄誉を与えられようと、それが表に公表される事などある筈がなく、オール・フォー・ワンはしてはいけないことを、平然とやり遂げた。

 

「半蔵さん!!」

 

 オールマイトは力強く叫ぶ。

 腹部から血がボタボタと絶え間なく流れ続け、忍装束はドンドン真っ赤な鮮血に染まり続けて行く。

 忍装束はある程度のダメージを受けない限り、破れることはないものの、オール・フォー・ワンの放たれた爪は一瞬で忍装束を分解し、貫通したのだ。

 

「何故…なぜ私なんかを…!!」

 

「なんか……とは…ゴホッ!!言わないでくれ……お主もまた……儂の守るべき人間じゃ………ガハッ…!クッ……はぁ……はぁ………歳は、取りたくないものじゃな……全盛期なら……こんなことにはならんかったが………」

 

「ダメです喋っては!!」

 

「なに……こんな傷……あの子(陽花)に比べれば………やわいもんじゃ……儂は忍を………引退したとはいえ………手当すれば……大丈夫……

 

 それに、悔しかったんじゃよ………このまま動かず、ただ観ていては……お主を陽花と同じ悲惨な目に遭わせてしまう気がしてならなっかたんじゃ………」

 

 陽花が死んだ時、悲しんだのはオールマイトだけではない。

 半蔵も、黒影も、小百合も、相棒も、グラントリノも、皆んな、彼女の事を大事な思ってた皆んな、悲しんだ。

 

「それにな……考えるよりも……まず先に、体が動いてたんじゃ………だから、お主は何も悔やむことだってない……お主は、誰もが誇る平和の象徴なのだから………」

 

 平和の象徴の名は、決して一人で手に入れれる称号ではない。

 

 志村菜奈(師匠)がいたから

 陽花(最愛の友)がいたから

 グラントリノや半蔵、黒影がいたから

 サー・ナイトアイ(相棒)がいたから

 

 色んな絆が、色んな縁があるから、それを紡ぎ形にし、平和の象徴として生きる事が出来た。

 ヒーローとは常に二つの名を持っている。

 それはヒーローでない時と、ヒーローである時。

 

 オールマイトの平和の象徴の名は、皆んなの為にあるのだから。

 

 

 

 ギン…!とオールマイトはオール・フォー・ワンを噛み付くかのような目線で睨みつけ、気迫ある視線にオール・フォー・ワンは反応する。

 

「驚いた…そんなボロボロになって、半蔵が傷付けられながらも、まだ立ち上がるか、まだ僕に立ち向かうのか……」

 

 オールマイトは、マントを脱いで半蔵の傷口を布で止血する。

 半蔵はゆっくりと瞼を閉じる。

 呼吸こそはあるが、恐らく気絶したのだろうか、無理に体を動かし重傷を負ったせいで限界が迎えたのだ。

 なら、半蔵の分まで…自分が立たなきゃいけないだろう。

 

 

「そっか…そうだよな。

 どれだけ傷付き身体が衰えようとも、その醜い姿を世間に晒されようとも、まだ立ち上がる……」

 

 

 折れない。

 挫けない。

 負けない。

 

 だから鬱陶しい。

 どれだけ個性を掻き集めオールマイトを殺そうと、彼はその笑顔で拳を振るう。

 一見、周りから見れば偉大なヒーローだろう。

 だが、オール・フォー・ワンから見れば醜く烏滸がましい存在だ。

 自分の自由を奪い、築き上げて来た仲間を、計画を、全て奪い、無限と思えた命が有限にされたのだから。

 何よりも、笑顔が一番嫌いだ。

 

 どれだけ嫌がらせをしようと、どれだけ痛めつけようと、結局最後まで立ち上がり笑顔で立ち向かう。

 

 なぜ倒れない?

 なぜ折れない?

 なぜ負けない?

 

 何度もそう思って来た。

 その強さの秘訣があの二人にある事は知っている。知っているからこそ、醜く烏滸がましい。

 

 

 

「私の心は依然!平和の象徴!!一欠片とて奪えるものじゃない!!!」

 

 

 

 熱き闘志が、平和を願う心が、弱気を救ける正義が、彼をより強くする。

 文字通り、平和の象徴。

 ヒーローの鑑だ。

 

「素晴らしい!!おっといかん参った…君が強情で聞かん坊な頑固者だったのをすっかり忘れてた!」

 

 ハハハと軽く嗤いながら

 

「あっ、じゃあ()()も君の心に支障はないかな…あのね――」

 

 人差し指を立てて、ニヤリと笑顔を引きつけてこう言った――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漆月は陽花の妹だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はっ?」

 

 世界が一変した。

 頭の中が突如、真っ白の色へと変えられた。

 色のない、何もない虚無の世界に塗り潰されたような、脳の思考が一瞬完全停止する。

 

 熱き闘志が、平和を願う心が、弱気を救ける正義が、全て消えるように。

 強張ってた筋肉は解け、思考が追いつかなくなる。

 

 

 いま、コイツ

 

 

 

 何て言った?

 

 

 

「君の嫌がる事、ずぅっと考えてた」

 

 満面なその微笑みは、正しく魔王の嘲笑を表にしていた。

 いや、魔王なんてそんな生易しいものじゃない。

 

「考えなかったかい?なぜ、敵連合に忍を介入させたのか。

 幾多もの忍を葬り去って来たこの僕が、なぜ敵連合に漆月を仲間に引き入れたのか」

 

 時折、不満に思うことがあった。

 人の理を超えた邪悪な男が、忍を嫌悪してた男が、忍を超越したあの化け物が、何故今になって忍の力を必要とし始めたのか。

 当初は、死柄木弔の有力たる人材の為かと思った。

 だが、死柄木弔がもしオール・フォー・ワンの意思を引き継ぐ、後継者と想定すれば可笑しな点もある。

 忍を殲滅する人間が、忍を仲間に引き入れたいなんて選択肢は無いと思った。

 

 だが、今になってようやく解った気がした。

 

「漆月には、頼りになる悪の人材が必要だった。

 また、弔にも悪の司令塔の影が必要だった…だからこそ、漆月に彼を遭わせたのさ――

 

 

 ――志村天孤にね」

 

「……志村……天孤…くん?」

 

 

「ああそうさ、死柄木弔の本名は志村天孤。志村菜奈の孫だよ」

 

 

 

 まるで時を止められたかのような、異常に静けさが増す空間の中、オールマイトはただただ呆然と立ち尽くしていた。

 頭の整理が追いつかず、混乱している状態で、そんなことを言われても…

 

 お師匠の孫が死柄木弔だったなんて、信じられない。

 

「最初に君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね。何も知らないその穢れた笑顔で、勝ち誇った醜い笑顔で、菜奈の孫を傷つけたね。

 

 それだけならまだしも、君は彼女までも傷つけ、救おうともしなかった。

 漆月と君を会わせた時は、賭けだった。

 

 もしかしたら気付かれる可能性もあった…けどそんな君は彼女の心すらも気付かず、罵り傷つけたね」

 

 一つ一つの嫌味が、心の奥底に突き刺さる。飛び散ったガラスの破片が心臓に突き刺すように、痛い。

 

「何を……言っている……何の…嘘を??あの子は…漆月が陽花くんの妹……?天孤くんが…死柄木弔……?

 

 全くの嘘だ…だって…何より…陽花くんの妹は……死んだハズだ………私はあの子を……」

 

「事実さ!君よりも先に僕が拾ったんだ!!一人で貧民街に彷徨ってた所をね。かなりの重傷で今の君よりも酷かったよ…危うく本当に死ぬ所を、僕が救っただけさ…

 そして、

 尤も忍に憧れてた彼女の思想とは真逆の教育を施した。

 

 何よりもホラ、僕のやりそうな事だろ??」

 

 新たな真実が、今を否定する。

 頭の中が、ズキズキと痛む。

 

「〝天咲(あまざき)魅影(みかげ)〟――それが漆月の本名だ。

 それに何度も言わせるなよ…僕は陽花の、天咲光芭の大切なものを全て奪ったと言ったろ?いい加減現実を受け入れろよ」

 

 天咲魅影。

 かつて、まだ陽花が生きてた頃。一回だけ見たことがある。

 まだ産まれたばかりの、赤ん坊な彼女はとても可愛らしく、陽花も妹が出来た事を嬉しく思い、幸せな笑顔は今でも良い思い出だ。

 歳の差は開いていたし、会ったのは一回だけだが、偶に陽花がアルバムを作って妹の成長を見せてくれた事があった。

 

 どれもこれも、温もりのある暖かいものだった。そんなオールマイトにとって、それは正しく宝物のようだった。

 アルバムを持ってくれた時の彼女はとても嬉しそうにしてたし、時々妹の話も聞いていた。

 

 初めてハイハイし始めた日の事。

 初めて〝お姉ちゃん!〟と呼んでくれた事。

 初めて姉の似顔絵を描いて、プレゼントしてくれた日の事。

 

 話す時の彼女の笑顔はいつになくとても輝いていた。

 それに釣られて、自分も笑顔にさせられた。

 自分が象徴となる事で、市民の人々の心に光を灯す事で、安心して笑顔を送れることを信じ突き走って来た。

 それなのに、こんな幼い子が自分を笑顔にしてくれるに不思議な快感を覚えながらも、彼女の妹の思い出話は、とても幸せなひと時だった。

 

 

 だったんだ――

 

 

「あれ?おかしいなオールマイト。いつも自信満々に掲げてる笑顔はどうした?」

 

 クイッと親指で頬を押し上げる仕草は、見覚えがある。

 それは間違いなく、志村菜奈がいつも自分と彼女に見せてくれた、笑顔のポーズだ。

 

 こんな忌々しい人間が、お師匠の真似をしている。

 こんな憎くくて憎きれない人間が、陽花くんを殺した。

 

「どんなに辛い時、不安な時こそ笑顔で笑っちまって臨むんだろ?

 

 ホラ!――笑えよオールマイト」

 

 これまでにない残酷で無慈悲な笑顔は見たことが無い。

 

 笑え?

 志村菜奈の孫を傷つけたことを?

 陽花くんの思い出を奪われた悲劇を?

 魅影さんを救えれなかったことを?

 

 

『ねぇ、オールマイト…お願い……もし、貴方の時間をくれる…なら……

 もし、貴方が私の想いを引き継いでくれるなら………約束して…?

 

 未来ある忍達を……あの子を……救けて………』

 

 

 陽花が死に際に残した最後の言葉が、ハッキリと鮮明に、記憶の中に映し出される。

 あの子と誓った約束は、未来ある忍達を守り、救けること。

 もう一つは…陽花の妹である天咲魅影を救うこと。

 

 そう、彼女と約束したのに…私は彼女を傷付けてしまった。

 

 それどころか、私と陽花くんをここまで育ててくれたお師匠のご家族にまで手を出してしまった――

 

 

「ああ、悲しんでるんだなオールマイト、今の現状に打ちのめされてるんだなオールマイト??

 なに!心配することはないさ!

 

 ――忍の定めは死の定め!死ぬことが当然なら、天咲魅影(漆月)が死ぬことだって何も可笑しくない!

 

 忍は与えられた任務を遂行するんだろ?忍ってのは無慈悲でいけないなぁ、けど任務だから仕方ないかぁ…

 

 だから君は安心して、陽花の大切な妹を思う存分に痛め付けると良い!!

 無論、漆月だってそう簡単に殺られるタマじゃないけどね」

 

 真実を知った時点でもう遅い。

 漆月は、全忍からの処罰対象とされている。真実を知った彼がどう出張しようと、上層部が耳を貸してくれる訳もなく、彼女はもう後戻り出来ないのだ。

 

 

 

 

 悲しい現実の中、遠い記憶が蘇る。

 

『魅影がね、忍になりたいって言い始めたの…あの子はいつも私の背中を見て走ってきて、まるで仔犬みたいに可愛いの』

 

 夕焼けが沈む頃、帰り道の中彼女が語りかけて来た。

 妹はとても健気で、今とは想像出来ないほど変わっていたし、今が水色の髪に対して写真で見た時は黒色だった。

 

『その時にね、あの子…忍になったら友達が欲しいって言ってたの。

 私、とても嬉しかった…この子なら、私以上に皆んなの幸せを守ってくれるんじゃないかって』

 

『だからね、会わせて上げたいんだ!半蔵さんのお孫さんと、黒影さんのお孫さん…あの子達に。

 ほら、私の忍家系って善忍だし、あの二人には世話になってるし、とても仲良くなれると思うの!!

 楽しみだなぁ……ふふふ♪』

 

 

 

 

「き……さ…ま……!!!!」

 

 

 彼女の笑顔が、忘れられない一つ一つの思い出が、血の塊の泥のように穢れていく。

 悔しい、悔しい、悔しい。

 こんな穢れた、人間と呼ぶことすら烏滸がましい外道に、全部掌の上で転がされ、奪われてはいけないものを奪われて。

 悔しくて言葉が出ない。

 

 

「やはり…楽しいな!

 今頃、陽花はさぞ未練がましくあの世で泣いてるだろう。悲惨な現状に嘆き、自分を責め入れてるだろう。想像しただけで笑いが止まらないなぁ……

 

 果たして僕は、彼女に嫌がらせをする事が出来ただろうか?

 僕は君の心の、ほんの一欠片でも奪えただろうか?」

 

 神威は笑う。

 絶望は微笑う。

 巨悪は嗤う。

 

 悪は善の目の前で笑い、善は悪の目の前で膝を折る。

 ズキン、ズキンと胸が痛み、心の柱が折れていく。

 少しずつ、着実に、弱い音を立てながら折れていく。

 

 ――私は……彼女と約束した。

 魅影さんを救い、守ると誓った!!

 

 親のいない姉妹に、姉が殺されれば次は彼女が狙われる。

 だからこそ、私が引き取り守り抜けなければならなかったのに…

 

 私はあの子を救うどころか、あの子を絶望のどん底へと突き落としてしまった。

 私はあの子を守るどころか、あの子を傷付け、取り返しのつかない事態へと陥れた。

 

 天狐くんは、魅影さんは、傷付けてはならない、大切な人なんだ。

 

 それを――私は――

 

 

「〜〜〜ぉぉおおぉぉおおお───!!!」

 

 お師匠のご家族に、陽花くんの妹さんに…何ということを――!!!

 

 

 もう手遅れだ。

 何もかも遅い。

 何が平和の象徴。

 

 私は陽花くんの約束を破り、己の自己満足たる正義で二人を傷付けてしまった。

 

 自分を呪う。

 自分を責める。

 自分を恨む。

 

 数々の自虐が、平和の象徴と謳われる信念の柱をへし折っていく。

 

 

 私のせいだ、私の所為で…全てが狂わされた。何をどうすればいい?

 もう、このまま死ねばいいのかも知れない。

 それが、どれだけ楽なのだろう…でも、死んでも私は陽花くんには、会えないだろう。

 私は、あの人に会う資格も無いのだから――彼女だって私に会いたくないだろう…

 

 もうこのまま――

 

 

「――負けないで!!!」

 

 

 絶望に心の奥底にある柱が折れそうになる瞬間。

 涙で顔がクシャクシャになってる女性が言葉を投げかけた。

 

「お願いオールマイト……救けて――!!」

 

 それは被害で逃げ遅れた市民。オールマイトが全力で庇い、守り通した人間。

 その言葉で、オールマイトの叫びは止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この現状は放映されている。

 オールマイトとオール・フォー・ワンの会話はマスコミに届かず聞こえないが、オールマイトの悲痛な叫び声だけは確かに聞こえた。

 そんな中、市民の顔色は先ほどとは打って変わって青ざめる。

 

「嘘、オールマイト!!」

「あれ、ヤバくない!?」

「やば……マジでどーなっちゃうのコレ?」

 

「なぁ…もしさ…オールマイトが殺さらたら……俺たちどーなっちゃうんだ…?」

 

 夜の繁華街で、たった一人の言葉に段々と青ざめ、不安を煽られる市民。

 

「ここにいる私たち、殺されちゃうの…?」

「嘘だろ?嫌だよオールマイト…なぁ!オールマイト!!」

「負けないでオールマイト!お願い!勝って!」

「あんな化け物…どうすりゃあ良いってんだよ!!」

 

 プロヒーローも、忍も、半蔵も、何もかも敗れ、世間に多くの真実が明かされた中、人々は混沌の渦に飲み込まれていた。

 

「姿が変わってもオールマイトはオールマイトでしょ!?」

「アンタが勝てなきゃ、あんなの誰にも勝てっこねえよ!!」

「さっきの老人のこと含めて解らない事だらけだけどさぁ!けどそんなのどうでも良いよ!今は、あんただけが頼りなんだよ!!」

 

 死に近づくオールマイトに不安を煽られた市民は、糸が切れたかのように叫び出す。

 応援の声が、次々と絶え間なく上がっていく。

 

 

「負けるなオールマイトぉぉ!!勝て!!頑張れえぇ!!!」

 

 

 いつしか市民の声は大きくなり、世界中の多くの人々が声を荒げる。

 勝ってほしい。

 負けないで。

 頑張れ。

 どれも同じ似たような台詞でも、一人一人は確かにオールマイトの勝利を望んでいる。

 

 

 それは忍も同じこと。

 

 

 

「オールマイト!!お願いです…勝ってください!!」

「半蔵の分まで勝てええぇぇぇ!!!」

 

 半蔵学園の忍生徒。

 クラス委員の斑鳩。

 姉御肌の葛城。

 あの二人でさえ、今も震えている。

 

 

 

 

 

「ええい!面が邪魔だぁ!!

 

 

 ――お願いですオールマイト!こんな薄汚れた我が言うのも烏滸がましいですが……が、頑張って!!」

「オールマイトは…間違った儂等を正すために、矯正しようと胸を張ってくれた!それなのにこんな所で死ぬなんて…嫌じゃあ!絶対に嫌じゃ!!」

「ウチさ………もう涙で声が出ないし……オールマイトも泣いてて………何が何だか解らなくて……でもさ……もう大切なものを二度と失いたく無いんだよ………黒影様みたいに…死んで欲しくないんだよ!!!」

「オールマイトぉぉ!!絶対に勝ってよ!美野里、幾らでも甘いもの作ってあげるから!だから、負けないでよ!いなくならないで!死んじゃ嫌だよ!!」

 

 死塾月閃女学館の中も、喧騒と涙の声で混じりあっていた。

 面の脱着で性格が変わる叢も、面を外し羞恥心を感じることなく声援を送り、夜桜や四季、美野里はかつて大好きだった黒影の死の面影がオールマイトに重なり涙声で声援を送る。

 

 もう彼女たちにとってオールマイトとは、半蔵に負けず劣らず、感謝し切れない大切な人なのだから。

 

 

 

 

 

「オールマイト……!ダメ!負けちゃダメ!!」

「何なのよコレ…本当に……何で…畜生!涙が止まんないのよ!!

 何で…両備は……こんなに胸が苦しくなるの!」

「勝って!!両奈ちゃん絶対に応援するから!何でもしますから!頑張れええぇぇぇ!!!」

 

 秘立蛇女子学園は月閃女学館に負けず劣らず、涙と喧騒で包まれていた。

 数多くのある部屋からは、下級生の涙声と応援の声が絶え間なく聞こえ、それが選抜メンバーの部屋まで聞こえる。

 

 紫は映画やゲームでは泣いたことがないので、涙もろくはないのだが、今回は本気で涙目で潤っており、両備と両奈は姉のことを思い浮かんだのか、悪忍の立場でありながらも平和を願う心と共に声援を飛ばす。

 

 

 

 

「オールマイト…何やってんだよ!!立て!お前ならそんなヤツに屈しない男だろ!?お前は今まで立ち上がって来たじゃないか!」

「こんなのが暴れたら……私たちですら……」

「なんやこれ、わし感情無いのに、目から汗が出て来たわ…」

「汗じゃ……ないよ日影ぇ………涙って言うんだよ……うっ……くっ……ひっく……うわああぁぁぁん!!」

「未来なんか……号泣してるじゃない……」

 

 洞窟内でもまた同じく、焔紅蓮隊は未来を中心に応援の声を上げている。

 焔以外は涙を出し、焔自身も本当は内心かなり焦っている。

 こんな化け物など、命が幾らあっても足りないし、ヒーローなんて正義に擦りつくタチじゃないが…今回は別だ。

 

 

 

 

 

 

あらゆるネットサイトから忍サイトの至る掲示板も、今までとは比にならない程に書き込まれていた。

 

『オールマイト!!勝て!!』

『クッソ泣いたわ、こんなの見せられたら応援するしかねえよ…』

『こんな化け物が勝っちゃったらこの世の終わりだよ……』

『負けるな!!頑張れ!!』

『オールマイトなら絶対に勝てる!だから負けないでくれ!!』

『やばい、涙が止まらないんだが……』

『こんな敵にヒーローがやられたって思うとスゲェ心が痛い』

 

 先ほどとは違い、皆オールマイトに勝ってほしいと願い、色んな意味で炎上している。

 

 

 

 

 

「オールマイト!!」

 

 夜の街は、数分前まではシンと物静かにしてたものの、今では全く違う。

 そんな中、雪泉は涙を流し叫び出す。

 

「貴方は私たちを救ってくれた!

 間違った正義を、貴方は懸命になって信念の道を歩むように紡いでくれた!!

 

 私たち忍にとっても……貴方は最高のヒーローなんです!!絶対正義の象徴なのだから…!

 だから…お願い……〝死なないで〟!!」

 

 涙がポロポロと、溢れ落ちていく。

 こんなにも泣いたのは、黒影が死んだ以来だ。これ以上涙を流さないと誓ったものの、これには勝てない。

 

「じっちゃんや皆んなの為にも頑張れええぇぇぇ!!!オールマイトぉぉ!!」

 

 飛鳥の叫びは、雪泉に負けず劣らず声を張り上げ

 

 

「「勝てや!!負けないでよ!!――

 

 

 ――オールマイト!!!」」

 

 爆豪勝己と緑谷出久の声が重なる。

 かつては隣同士だった幼馴染は、時を経て距離が空き、離れ、そして今、再び隣り合わせで、同じ憧れのオールマイトに大きな声援を飛ばす。

 

 

 市民の声が、忍の声が、雄英生の声が、たった一人の後継者の声が、オールマイトの居る場所まで響き渡る。

 

 

 

 ――ドクン!!

 

「――ッ!」

 

 オールマイトの腕に筋肉が浮かび上がる。

 衰え弱り切ったボロボロの体は、今もなお膨れ上がる。

 オール・フォー・ワンは反応する。

 

「ああ…そうだった……忘れてたよ笑顔を……そうだ、私は約束したさ……陽花くんと!

 未来ある忍達の子を救けて欲しいと!そして守って欲しいと!!」

 

 ならば守ろう。

 ヒーローや市民だけでなく、忍の命をも救い出す。

 

 忍の命は儚い。

 だからこそ、そんな命を守る人材が必要だ。

 オールマイトは、そんな人間になりたいと、心の底から願った。

 

「多いんだよ忍やヒーローは、守るものがいっぱいあるんだ……

 

 

 ――だから、負けないんだよ」

 

 止まらない涙を流しながら、彼は笑って見せた。

 どんなに辛い時、苦しい時でも、笑顔で笑って臨むんだ――

 

 何度でも立ち上がろう。

 この名前を呼んでくれる――皆んなの為に。

 

 

 

 




今回かなり長くなったと思いますが、一話だけでも書きたいことが多過ぎたので、許してください…
さて、漆月は陽花の妹であり、本名も明かされましたね!勿論死柄木弔も同じだと思いますけど。
漆月が陽花の妹だという伏線は少し張ってたんですよね。気付いてた方はいると思いますけど…

先ず、オール・フォー・ワンが最初っから漆月のことを知ってた件は、蛇女編の最後でも明かされましたよね。ストーリー的で言えば丁度体育祭編が始まった頃ですかね?本名も何もかも知っていた、と。
次に名前。
姉が陽花に対して妹が漆月、太陽と月の対立を表しています。

気付きにくいと言われてもそれには理由が…だって気づかれて欲しくないですから(苦笑
しかし、その分死柄木と漆月の絡みもありましたし、オールマイトや半蔵とは全く会ってない様子。
まだ不明な点は幾つか存在すると思いますが、それも話の展開が進めば明らかになりますので、お楽しみに。


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