光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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11話「USJ」

翌日の朝。雄英の教師であり平和の象徴と謳われているオールマイトは、先ほど子供を人質に脅してたヴィランを通勤がてら難なく倒し、ひき逃げ犯を捕らえ、引きこもり事件を解決…今日で一気に三件もの事件を見事解決したオールマイトは、いつものように跳躍力で空を飛ぶ。そびえ立つビル、その窓ガラスが反射してオールマイトの姿を映し出す。太陽の光が眩しく思える位、清々しい空の下、オールマイトは不安と疑問を抱いていた。それは学校に遅れるという、子供が寝坊して学校へ行くような感覚ではなく、個性のワンフォーオールのことだった。

 

 

(…パワーやスピードが落ちてる…やはり、もう…)

 

 

ワンフォーオールは聖火の如く受け継がれてきたもの、緑谷に個性を渡したため、オールマイトは日に日に弱くなってきてるのだ。つまり、今のオールマイトに残ってるこのパワーは、ワンフォーオールの残り火…という訳だ。

 

(……まあ、それは想定内…だが、緑谷少年が、まさか爆豪くんにこの事を言ってしまうとはね……)

 

 

 

 

 

 

 

それは戦闘訓練が終わり、爆豪が帰るところを緑谷が呼び止めたあの日の事だった。

 

「なに?緑谷少年、ワンフォーオールのことを爆豪少年に話したのか!?絶対に秘密だと言っただろう!何故話してしまったんだ!?」

 

「ご、ゴメンなさいオールマイト!ぼ、僕は…ただ止めようとしたけど…そんなこと言うつもりは…それに、個性について、オールマイトからっていうことは一切言っていません!」

 

「うむむ…」

 

目をつむり、反省をしている緑谷をみやりオールマイトは考えるような仕草をし、難しい顔を立てる。

 

(…緑谷少年は、あえて人にものを言うような子ではないと思ってたんだが…どうやら緑谷少年の優しさが逆に…)

 

緑谷の優しさが、逆に爆豪に言ってしまったのだと見解するオールマイトは、「もし自分が早く爆豪少年の所へ駆けつけていたら…」と心の中で呟く。そうすればその秘密を言わせることなく守ることが出来たのかもしれない。

 

「緑谷少年、今回は特別に大目でみるぜ…爆豪少年もただの気のせいだと思ってるからね、けど…次はよしてくれよ…この力をもつには責任が必要なんだ…いいね?」

 

オールマイトはあえて怒りはしなかったが、厳しく注意した。それもそうだ、この話は全国には知られていない、この秘密を知ってるものは数少ないのだから。だからこの話をいつ誰が聞いててもおかしくはないし、そこから情報が漏れてしまうケースだってある。だからこそ、弟子である緑谷に対し、オールマイトは心を鬼にし注意した。

 

 

(私がいる範囲で、彼を育てなければな!)

 

 

しかし、気づかないであろう……そう思ってる間にも、見えない悪意が…着々とヒーローの卵達に危害を加えようとしていることを…少女達に待ち受ける悲惨な出来事も……

 

この時は、まだ誰も知らなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスコミ集団の件から一夜明け、破壊されてたセキュリティーバリアーはなんとか修復されていた。

その理由は生徒たちには『何かしらの故障』と言ってはいるが、現在、教師側は原因を探っているようだ。

 

「はいお前らおはようさん」

 

「おはようございます!」

 

教室に入ってくる相澤にみんなは挨拶をする。

 

「先生、あの後のセキュリティーバリアーとマスコミ集団はどうなったのでしょうか?」

 

心配の色に染める飛鳥は手を挙げ相澤に質問する。

 

「アレはなんらかの原因で故障…まあ今も教師側はそれを探って調査している、マスコミはあの後警察きたから退散したよ…別にお前が気にすることじゃない」

 

「だ、だと良いのですけど…」

 

相澤が説明すると、飛鳥は多少安心できないと言った、曖昧な表情を浮かばせた。

 

「やっぱり悪忍の仕業なのかな〜…?」

 

雲雀は、半蔵学院を襲ってきた蛇女と名乗る悪忍、その選抜メンバーの一人、春花のことを思い出しながら心配そうに呟くと、前の席の爆豪は舌打ちをする。

 

「チッ…ビビってんじゃねーよ、例え敵だろうと悪忍とやらが来ようと俺がフルボッコにするっつーの」

 

「び、ビビってないもん!雲雀、頑張るもん!」

 

「ああっ!?誰もテメェの意見なんざ聞いてねえ!少し黙ってろ!!」

 

「うわああーーーーーーーん!!」

 

爆豪のブチ切れ…いや、爆切れに雲雀はまたしても泣き出してしまう。流石に慣れすぎて皆の反応は薄い。ただそれはある人物を除いての話…

 

「おい貴様…死ぬ前に何か言い残すことはあるか?」

 

「ハアッ!?テメェも何なんだ!!殺すぞ!」

 

「よし、殺るか…」

 

それは、雲雀大好き100%の柳生であった。もし雲雀かイカ、どちらが好きかと聞かれたら迷わず雲雀を選ぶであろう…それ位柳生は雲雀のことが好きであり、百合の世界に行ってるのではないかと思わせてしまうほどに柳生は雲雀への愛が強いのだ。

そんな雲雀を傷つけられて柳生が黙っているわけがなく、彼女は番傘から刀を取り出し、爆豪は掌を爆破させる…と相澤は目を赤くして、爆豪と柳生を睨む。

 

「オイお前ら…そろそろ良いか?」

 

「………」

 

相澤の威嚇に、先ほどまで戦争でも起きてしまうのではないか?という緊迫した空間から、一気に静寂な空気に一変し、柳生と爆豪はその場で黙り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は戻り、相澤はみんなに午後の授業、ヒーロー基礎学について連絡をする。

 

「よしお前ら、今日の午後のヒーロー基礎学は…災害救助なんでもござれ…人命救助(レスキュー)訓練だ」

 

寝袋のポケットのなかから『RESCUE』という文字が書かれてるプラスチックカードを取り出した。

教室内がザワザワと騒ぎ出す。

 

「うわ〜…レスキュー訓練か…嫌だな」

 

「バッカお前、こういうのこそヒーローの本格的なヤツだぜ!」

 

多少嫌がる上鳴に切島は男魂、ヒーロー魂が燃えている。どっちなんだよ、と言ったら両方だぜ!と、答えてしまいそうだ。

 

「レスキュー訓練…そんなのやったことないなぁ〜…一体どんなことするんだろう?」

 

「水難なら私の独壇場…ケロケロ」

 

飛鳥は苦笑しながらも、レスキュー訓練について考え込む。そう、忍の訓練では対人戦闘、精神修行、傀儡戦闘、etc……しかし災害救助はやった事がないためか、一体どんな訓練をすれば良いのかなど、彼女だけではなく、三人とも分かる訳がない。ここぞと言わんばかりに静かに燃える蛙吹は、ケロケロと声を出す。

蛙吹はみたまんま蛙だ、だから水中に関しては得意とするのだろう。

 

「なんでも良いが、午後から始めるんだからな?」

 

相澤も静かに燃える…色んな意味で。

その気圧にはたまた皆は黙り込む。

皆んなは静寂な空気と共に、燃えるものが消えて塵と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝11時25分

今日のニュースは一気に3つの事件が放送された。

 

1つ、連続殺人強盗犯の僧坊ヘッドギア逮捕

2つ、ひき逃げ事件解決

3つ、立てこもり事件解決

 

テレビでも放送され、街でもその情報が流れて市民はその噂話しをしていた。

 

「いや〜今回もオールマイト凄かったよな!俺身近で見てたけど」

 

「スピード解決だね、今日で一気に3件も事件解決してんだもん」

 

そんな噂話の声が、街では騒がしく響きわたっていた。

 

「……」

 

一人の女性は、そんな街中を不機嫌そうに歩いている…まるで呆れてるような表情だ。その女子は見るからに学校の制服らしき服を着ている。ただ一人、人目につかない建物の路地裏に行きため息をつく。

 

「あーあ…もっと刺激が欲しいなぁ……あんなつまらないニュースとかじゃなくて、例えばテロリスト集団みたいなのとか…」

 

と言いながら途方もなく消えていく…

女性は見るからに水色の長髪であり、蛇女子学園を見つめていた者でもある。

しかしその女性の思ってることが、まさか本当になるとはまだ誰も知らなかった、この社会そのものも。

 

「あっ、そうだ!アイツ、上手くやってるかな?暇つぶしに様子を見に行こっと…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 0時20分

 

「よし、お前ら集まったな」

 

時間内に全員教室に着席していると相澤は時間通りに動き始めた。

 

「お前ら朝でも報告したと思うが、災害救助訓練をやってもらう…そのためにまず」

 

相澤は寝袋のポケットからリモコンを取り出しポチッとボタンを押す。

すると左側の壁から番号が書かれてるバリアフリーみたいなのが出てきた。これはコスチュームである。

 

「訓練用の施設に向かうからお前らコスチューム持ってくるかは個人の自由だ」

 

そういうと皆んなはそれぞれのコスチュームを取り出す。

 

 

グラウンドに出るとそこにバスが待っている、どうや移動用のバスだそうだ。

雄英はグラウンドだけでなく、他にも様々な施設やグラウンドがあるため、移動はバスで行うそうだ。

皆んなそれぞれコスチュームを着用し集合している。

 

「あれ?デクくんコスチュームは?」

 

首をかしげるお茶子に緑谷は

 

「あ、ああアレ戦闘訓練の時に壊れちゃったからサポート会社に頼んで直してもらってるんだ!」

 

「あ、そっか〜!」

 

成る程という顔で納得するお茶子。緑谷のコスチュームは、この前爆豪と戦ったため大分コスチュームが痛んでしまい、修復を頼んだのだ。

 

「やっぱコスチュームカッコ良いっつったら、轟とか爆豪とか…そこらへんだよな」

 

「あと柳生って、眼帯してるけどアレもコスチュームかなんか…じゃないよな?飾りかな?それとも…厨二なだけだったり…?」

 

上鳴と切島は、コスチュームの話題にハマっている。すると近くにいた峰田は、思い出したかのように、手の内をポン!と叩いた。

 

「そうだ!八百万と飛鳥、柳生、雲雀のコスチューム鑑賞しに行こっと」

 

「やめとけ殺されるぞオイ」

 

と、止める瀬呂に峰田はどこ吹く風か、瀬呂の言葉など耳もくれず小憎たらしい顔を立てる。

 

「あっ!いたぜ八百万と飛鳥に柳生、雲雀が話しながら歩いてきてる…よし、準備完了だ…出動」

 

何処ぞの兵隊か知らないがとりあえず峰田は手遅れだと、この時見ていた男子達は心の中で悟った。動いてしまった彼など、馬の耳に念仏。

四人が通り過ぎ、峰田の視界に映らなくなった途端、四人の身体をマジマジと見つめている。

 

(うわあ〜…)

 

峰田のゲスい行為に、それを見てる者たちは心の中で気持ち悪いものを見てるかのような目で彼を見て、思わずドン引きしてしまい、心の中で本音を吐いた。

 

「へへへっ…ヒーロー科最高!」

 

つい大声で叫ぶと…四人が振り向いた。

 

「…峰田さん?後ろでコソコソと何してるのですか?」

 

八百万は顔を黒く染めて、まるで汚物を見るような目で、それに続き、柳生も

 

「ヒーロー科最高?一体何してたんだ…言え、内容次第ではどうなるかは分からんがな…」

 

見下す…そして八百万同様顔を黒く染めて、赤色の瞳が峰田を睨む。飛鳥は呆れて雲雀は何のことか分からない表情でいて、気にしてない。

 

「あ、え、ええ、えと…これから災害救助訓練できるから、ヒ、ヒーロー科最高〜…って」

 

今の峰田は二匹の狼に睨まれた子ウサギ。峰田は二人の恐怖で動くことできず硬直している。

 

「あー…だから言ったのに…」

 

と呆れていう瀬呂。止めたのに聞かなかった峰田に非があるし、責められても何をされようとも、彼自身のせいであり、自業自得と言っても過言ではない。

 

「君たち早くバスに乗るんだ、番号順に乗ろう!」

 

ピッピッとホイッスルで皆んなをまとめ上げる飯田。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスの中

 

 

「クソ!失敗だ!」

 

バスのなかは皆んなが知ってる席順ではなかったため、この場合は早い者勝ち、すなわち席は自由に座ることにした。

そのことに絶句する飯田。

飯田もさすがにこれは予想してなかったようだ。

まあまあと背中をポンっと優しく叩く芦戸。

 

「まあ、何だかんだ言って飯田はやっぱり堅いよな〜、神経が」

 

ドンマイというような顔をする切島。

すると突然緑谷の横に座っている蛙吹が

 

「私ね、思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

 

「ど、どうしたの蛙吹さん?」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

どうやら梅雨ちゃんと呼んで欲しいらしい…が、次の言葉に緑谷は驚愕することになる。

 

 

 

「あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

 

 

「!!!!」

 

微笑んで、頬が少し赤くなる。緑谷はあまりの驚きに硬直している。

緑谷は正直このことを何と答えればいいか考えているが…

 

「おいおいそれは違うぜ梅雨ちゃん、だってオールマイト怪我しないし、何より似て非なるアレだぜ。まあパワーは納得だけどな!」

 

すると突然、切島が話に入りこみ一気に雰囲気が変わった。ホッとする緑谷に切島は緑谷をみて

 

「けど、単純な増強型の個性か〜!正直派手で可能性も増えるし結構いいよな!」

 

緑谷を誉めたたえると、自分の腕をガッチガチに固めて見せびらかす。

 

「俺の硬化なんかは対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなー…」

 

「そ、そんなことないよ!凄くカッコいい個性だし、何より単純で出来ることも多いと思うよ!!例えばホラ、その気になれば倒れてきたものとか、自分が硬くなれば自分に危害はないし、落下してきても何も問題ないし…あとは対人だと硬めて攻撃するだけで普通の人がパンチを食らわすよりも何倍もダメージが与えると思うし……盾にもなれば武器にもなる……凄い個性だし何よりプロにも匹敵するし、スカウトされたりとかするんじゃないかな?!」

 

「プロなー!やっぱヒーローつったらそういうもんあるからな!人気商売とかもあるぜ?そういうお前こそ、調整できりゃあよ…」

 

緑谷の長いセリフに感心しながらも、切島も緑谷の個性について話し出す。切島は根も心も良い少年なので、緑谷とは相性が良いのかもしれない。

 

「けどやっぱり派手で強えっつったら飛鳥と柳生と轟と爆豪だよなー!」

 

というと爆豪と飛鳥、柳生の三人は反応するが、轟は眠っているため反応していない。

 

「これが忍だ…」

 

「そ、そんなことないよ…!私はまだ…」

 

「ケッ…!」

 

柳生は物静かに目を閉じ、轟と同じく睡眠をとろうとする。と言っても距離はそこまで遠くないので、うたた寝くらいだろう。飛鳥は自分の実力などまだまだだと言わんばかりか、謙遜する。爆豪は平常運転なのか、そっぽを向くだけで噛み付いてこない。

 

「まあ、あの巨大イカとか飛鳥ちゃんの凄い二刀流見せられたらな〜…派手だし!カッコいいしよ!爆豪のはあんなん見せられたら誰だって派手だって思うよな、轟は派手だっつうよりも瞬殺だけど…」

 

「けど爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそうだわ」

 

蛙吹は思ったことをそのまんま言った。ここで今まで黙っていた爆豪がようやくキレだし蛙吹に噛み付いてきた。

 

「ハァ!?何言ってんだテメェは!普通に出すわ舐めんなやクソが!!」

 

「ホラね、ケロケロ」

 

何の悪そびれもなく、ベロを出して指差す蛙吹に続き、上鳴も弄りたいのか、爆豪の神経を煽り出す。

 

「けどさ、この付き合いの浅さですでにクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってお前は本当にスゲェよ。いよっ、流石は有名人だ!」

 

「テメェのボギャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

 

そんなやりとりをしている中、緑谷は恐るおそる震えながら心で呟いた。

 

(かっちゃんがイジられてる…信じられない光景だよ…流石は雄英だ…!)

 

「全く…低俗な会話ですこと」

 

目を細めてつぶやく八百万に、隣に座ってる雲雀は天真爛漫な笑顔を向ける。

 

「けど、なんかすっごく楽しそうだよ!」

 

雲雀と同様、お茶子も麗らかな笑みを浮かべる。

 

「こういう明るいのなんか好きだな私!」

 

そしてそれを遠くで見て、緊張が解け思わず微笑んでしまう緑谷は、「本当に良い人だなぁ〜」と心の中で呟く。もしここで今口に出してしまえば、告白に近いものとなってしまう。

 

「爆豪くん君は本当に口悪いな!直したまえ!」

 

「俺に指図すんじゃねえよクソメガネ!!」

 

「もう着くぞお前ら…いい加減にしとけよ」

 

すると相澤の低い重圧の声がバスの中に響き渡る。

 

「ハイ!」

 

そんな相澤から放たれるプレッシャーに、一同は又しても静まり返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスから降りて施設の中に入ると、そこにはとても広い面積を持つ訓練所、様々な災害ゾーンが設置されていた。しかし見た目からしてそれは、娯楽場…いいや、USJとも思わせるような施設なのであった。

 

「スッゲー!USJかよ!」

 

「わあ〜!USJみたい!アトラクションとかあるかな?雲雀はジェットコースター乗りたい!皆んな三回乗ろうよ!」

 

「普通に吐くわ」

 

皆んな(特に雲雀)が大きな声で叫んでいると。

宇宙飛行士のようなコスチュームを着用した人が人差し指を立てて説明する。

 

「水難事故、土砂災害、火事…etc. あらゆる事故や災害を想定し…僕がつくった演習場です。その名も…ウソの災害や事故ルーム!略して…」

 

 

「USJだったー!!」

 

 

みんなは頭文字を英語にして、略してUSJと見抜いた。確かにこの施設内はまさにUSJだ。

緑谷は宇宙飛行士をみて感動するような目で説明する

 

「スペースヒーロー『13号』だ!災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なプロヒーロー!」

 

「わーー私好きなの13号!サイン欲しい!」

 

「うん!僕も!」

 

うおおおー!と大きく叫び興奮する、その余り腕をブンブンと振っている。

そんな皆んなの状況をおかまいなしに相澤先生は後輩である13号に話しかける。

 

「13号…オールマイトは?ここで待ち合わせてるハズだが」

 

「先輩…それが」

 

13号は指を3つに立てて説明する。

 

「どうやら通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでます。あと少しだけなら顔を出せると言ってますが…」

 

「不合理の極みだなオイ…あの人本当にここでやってけれるのか?」

 

誰にも聞こえない小さな声で二人は話し合っている。相澤はイラつく余りか顔をしかめているが、直ぐに生徒たちを見て

 

(まあ、念のための警戒態勢だ)

 

「仕方ない…始めるか」

 

切り替える。

 

「先生、今日は全部で何人ここに教師が来るのですか?」

 

と質問する八百万。

「俺と13号にオールマイトの3人だ」

 

「そうですか…ですが何故オールマイトがここに居ないのでしょうか?」

 

もちろん二人は皆んなが聞こえない程度で会話をしていたので、当然オールマイトについては知るはずが無い。

 

「連絡をとってる、そんなことより今は授業に集中しろ」

 

「分かりました」

 

なんとか切り替えることに成功した相澤。

 

「えー、では!始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

 

(増えてる…)

 

指を立てるのも増えていく13号に対し皆んなは心の中でつぶやく。

 

「えー、まず皆さんは僕の個性をご存知だとは思いますが…僕の個性は『ブラックホール』どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

13号は災害救助といった人助けを主に働くヒーローであるが、実際彼の持つ個性は、とてもじゃないが残酷で、驚異的で、その気になれば災害すら起こせるような個性だ。

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!例えばそこらに倒れてる危険なものや、瓦礫、雪崩や土砂崩れと言ったものとか…火まで簡単に!」

 

ヒーローを研究し尽くしたヒーローオタクの緑谷は、熱心に13号の個性を語り出す。横にいるお茶子は高速で顔を縦に振ってる。まるでシェイクを振ってる時の感じだ。緑谷の解説に頷く13号は、「ええ」と一言頷く。

 

「しかしそれと同時に簡単に人を殺せる強力な力です…皆んなの中にもそういう個性がいるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで、一見成り立っているように見えますが一歩間違えれば簡単に人を殺せる『いきすぎた個性』を持っていることを忘れないで下さい」

 

この社会では個性の使用を厳しくしているため、ある意味犯罪の抑止力にもなっている。しかひ難しい先はまた先の話になるであろう…

 

「相澤さんの体力テストで自身の秘められている力の可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」

 

相澤は入学初日に個性把握テストを、オールマイトは初めてのヒーロー基礎学にて戦闘訓練を。

 

「そして飛鳥さん、柳生さん、雲雀さんは忍と呼ばれる、裏社会の人間です。そう、非常に戦闘力が高いと思われますが…もしその力を、使い道を間違えれば、先ほど私が申し上げた通り、簡単に人を殺せてしまいます」

 

飛鳥、柳生、雲雀の三人は真剣な顔で13号の話を聞いている。

 

「もし関係のない人を殺してしまえば、貴方たちは処分されるどころか、それすらも背負えなくなるほどの責任を負ってしまいます…そうならない為にも、貴方たちにもこの災害救助をやって欲しいとのことです!」

 

三人にも、命の大切さを知って欲しい。人の命とは何なのか…なぜ忍は影で人を支えるのが……改めて考えるにはこの授業は正に絶好なチャンスとも言えるだろう。

 

「この授業では心機一転!人命のために個性をどう使うのかを学んで行きましょう!」

 

さっきの真剣な雰囲気を一気に解きほぐし、明るい雰囲気に変えた。

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない」

 

 

13号…!

 

 

「救けるためにあるのだと心得て下さいな!」

 

 

カッコいい!!

 

 

 

「そうだよね…」

 

飛鳥は小声で自分の手を見つめた。

 

(私の力は、皆んなのためにあるんだ…皆んなが傷つかないで欲しい…そして誰かを守るために……ん?あっ、そっか…これって)

 

飛鳥は何かを思い出したような表情に変わる。

 

「じっちゃんの言ってた…刀と盾…」

 

ポツリとそう呟いた。誰もが聞こえないような声の大きさで。どうやら皆んなは聞こえてないため13号は一度ペコリとお辞儀をする。

 

「以上!ご静聴ありがとう御座いました」

 

「13号ステキー!」

 

「ブラボー!ブラーボー!!」

 

感激して満面な笑みを浮かべるお茶子に飯田はパチパチと壮大な拍手をする。

 

「よし、そんじゃあまずは」

 

相澤が生徒たち皆んなに今回の授業で一体何をやるのかを、個々人で一体どう立ち回るのかを教える。

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズ…ズズ…

 

 

 

 

 

 

 

黒い何かが動いて…

 

 

 

中央の噴水広場で

 

「……?」

 

何かの異変を感じた相澤は振り向く。

 

(んだあの黒いの…って)

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズズ…ズズ…

 

 

 

 

その黒いものは次第に広く、デカくなってきて…

 

 

 

「!」

 

(まさか…!)

 

ハッと何かに気づいたような相澤。

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

黒い空間の中から掌が顔についてる男が覗き込むように、相澤と目が合った。危険を察知した相澤は皆んなに振り向く。

 

「一かたまりになって動くな!」

 

大声で叫ぶ、初めて皆んなにみせる相澤の焦りの表情に…生徒たちは棒立ちで不思議そうな顔をする。

 

「13号!生徒を守れ」

 

「先輩…?」

 

ヘルメットを被ってて分からないが不思議そうな顔をしているのだろう、首をかしげる13号。

皆んなは相澤の向いている噴水広場に目をやった。

 

「オイオイ、何だアレ」

 

砂糖はそう言うと

 

「なに…これ………なんなの………?」

 

飛鳥は、何が起きてるか分からない様子でもあるが、この異常とも呼べる出来事に混乱している。

隣にいた緑谷は飛鳥の表情に目をやる

 

「…飛鳥…さん?」

 

皆んなに見せたことのない焦りの表情。飛鳥自身なにをそんなに恐れてるのかは分からない…

ただ、飛鳥が見ているその先の人物は、掌が顔に張り付いていて、髪が薄い水色、服が黒い男のことだった。

飛鳥はその人物を見ていると、気味が悪い、関わりたくない、怖い、など…ついそう思ってしまうのだ。

その黒い空間からは次々と何者かが現れる。

脳が出ている大男。

骸骨のようなマスクをした男。

カメレオンの男。

いかにも普通の人ではない、続々と出てくる。

 

 

 

 

 

 

奇しくも

 

 

 

 

 

 

「もしかしてもう入試ん時と同じもう始まってんぞパターン?」

 

「違う…なんだあの殺気は…?」

 

とぼけてる切島に柳生は否定する。柳生の表情も、段々と険しくなっていく。焦り、不安、恐怖、それらの感情が柳生の心を揺さぶる。

 

「ふええ〜…!柳生ちゃん!!なんか怖いよ!!何なのあれ!?明らかにおかしいよね…?」

 

「分からない…が、雲雀!取り敢えずオレの後ろに隠れろ!」

 

雲雀は涙を流しながらも柳生の後ろに隠れる。柳生は雲雀を守るように前に立ち、番傘を開く。

 

「アレは…(ヴィラン)だ!」

 

相澤は黄色のゴーグルを装着して生徒たちに伝えるよう、大声でそう答える。

 

 

 

 

 

プロが何と戦っているのか

 

 

 

 

 

すると今まで開いていた黒い空間は閉じ、黒い霧を全身にまとっている男は不思議そうに呟いた。

 

「13号にイレイザーヘッドですか…先日頂いた()()()()()()では、オールマイトがここに居るはずなのですが…何か変更があったのでしょうか?」

 

「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」

 

舌打ちする相澤先生。

飛鳥と柳生は皆んなよりも早く警戒態勢に入り、こう言った。

 

「アレが…(ヴィラン)……」

 

「飛鳥は前に遭遇したことがあるんだったな…」

 

飛鳥は前に一度会ったことはあるが、しかし、今回のソレとは比にならない…

 

 

 

何と…向き合っているのか

 

 

 

「どうします?死柄木弔」

 

その黒い霧の男は、掌が顔についてる男 、死柄木弔にそう聞くと、

死柄木は呟く。

 

「…どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ、オールマイト…平和の象徴…いないなんて…」

 

顔を見上げて、死柄木は子供たちを見てこう言った。

 

 

 

 

「子供を殺せば来るのかな?」

 

 

 

 

それは…途方もない悪意




此処で忍び&ヒーローVS敵になりました!次回も引き続き頑張っていきたいです!

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