光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ハーメルンの調子が悪かったみたいですね、何でも不具合が生じて検索表示が出されなくなったりとか…
まあでも、正常に直って良かったです。
不具合な状態で小説投稿しても、見れなきゃ意味ありませんし。





122話「お部屋披露大会」

 

 

 

 

 

「オーっすお前ら、お疲れ」

 

 雄英寮の施設内。男女共同スペースにやって来た切島鋭児郎は、その場にいる皆んなに軽く挨拶をする。

 男子も女子も、荷物運びと部屋作りに疲労が溜まったのか、寛ぐ者が多い。

 

「切島か、お疲れ〜」

 

「男女共同の寮生活つっても、一から部屋作るのは大変だよなぁ…」

 

 ソファにもたれかかるように寛ぐ切島は、頭に白のタオルを巻いている。

 彼の性格と髪型から見ると、より熱血漢という印象がより強く伝わる。

 怠いような声で反応する上鳴は、軽い白シャツを着こなしスマホを触っている。隣には仲良しコンビの峰田も寛いでいるが、低身長のせいか、足が床に付かない。

 他にも女子は女子同士で談笑したり、テレビのニュース番組を鑑賞、又は単に携帯を触ってる者が多く見える。

 

「そーだ!男子〜!」

 

「ん?どした芦戸」

 

 天真爛漫、明るく活発な女子の声は芦戸三奈。ピンク肌に蟻のような触角を生やす彼女は、ルンルン気分で明るく声を弾ませる。

 

 

「あのね!今女子と話しててね!提案なんだけど――お部屋披露大会、しませんか!?」

 

 

「お部屋披露大会?」

 

 芦戸の提案に上鳴と轟は反応し、表情を曇らせ小首を傾げる。

 そんな二人に芦戸は「そう!」と人差し指をピンッと立てて、皆んなに誇らしげな笑顔を浮かばせる。

 

 お部屋披露大会。

 共同生活の中、自分の部屋を皆に披露する、至ってシンプルなものだ。

 部屋とは人が住まう空間、自身が落ち着く個性的な空間。部屋を見ればその人の性格や個性が視認出来ると言っても過言ではない。

 これは一見愉快で楽しそうなノリイベントだろうが、実際はそう甘くはない。

 部屋を披露する…と言うことは、その人の性格や個性が丸わかりになってしまう。

 つまり、人の趣味や好みが相手にバレてしまう意味も表わしている。

 別にそれはそれでと特に問題を感じない者もいれば、芦戸の提案に乗り息巻く者もいれば――

 

「常闇くん…どうしよう僕、引かれるかな?」

 

「……他人にどう見られようと、己の道を恥じるな緑谷出久。

 闇を背負うは皆同じこと……」

 

「なーなー、オイラの部屋絶対女子に見せらんねえんだけど」

 

 プライバシーに関する事に自己意識を持つ者。つまり、他人に自分の部屋を見せたがりたくない者も少なからず存在する。

 緑谷・常闇・峰田という意外な組み合わせも、意見が一致すると面白いものだ。

 しかし多対一の意見、況してや緑谷たちも自分の口から反対の意見を述べることも出来ないので、部屋披露大会は避けられないものとなっていた。

 そもそも自分から部屋を見せたくないと拒否する行為は、大勢の皆から怪しまれるので、態々そんな事を言いに行くバカはいない。

 

「良いけどよ〜、誰から見て行くんだ?」

 

「えっ?其処は男子……」

 

「ちょっと待ったあぁぁーーーー!!」

 

 話を進めてる芦戸と上鳴の間に割入るよう、背の低い峰田が強引と言った形で横入りする。

 峰田の反応に芦戸は「ゲッ…」と失礼極まり無い反応を示すものの、本人は意に介さず口を開く。

 

「お前ら?何か忘れてねえか?ん?大事な大事な俺たちクラスの仲間を、忘れてやしねえか?」

 

「そいや爆豪くん居ないね?それと梅雨ちゃんも」

 

「爆豪は眠いから寝てるんだってよ〜、部屋作りは大分前から終わってるらしいぜ?」

 

 切島の部屋の隣は爆豪勝己の部屋となっているので、荷物の詰め合わせと部屋作りの整理の際、爆豪は特に何の問題も起こす事なく、手際良く部屋作りを終えてたのだ。

 本当は一人の友達として自分が早く終わったら、爆豪の部屋作りを手伝ってやろうと意気込んでたのだが、どうやら要らぬ心配だったようで、本音を言ってしまえば逆に手伝って欲しかったという点が大きい。

 因みに蛙吹梅雨たること、梅雨ちゃんは不明。部屋作りを終えてるのかどうかさえ解らない。

 

「仕方ねえ、ここは18人でやるっきゃねーよ」

 

「お前らマジで酷えな!オイラが言うのもなんだけど、変態に論破されてる時点でお前らオワコンだぞ!!」

 

「峰田お前、それ自分で言ってて悲しくねえか?」

 

 若干…自虐混じりの峰田の声高い発言に、瀬呂は思わず突っ込みを入れる。

 皆訳分からずと首を傾げたりする者や、「大丈夫峰田?」と大変失礼な対応をする者、呆れてる者、様々な反応を示す生徒の顔色が伺える。

 そんな皆んなに峰田は高らかに、胸を張って声を荒げる。

 

 

「飛鳥達を忘れてるんじゃねぇ!!!」

 

 

 その発言に、皆は『あっ……』と声を漏らし、氷漬けられたかのように凍り固まる。

 

 

「そいや…自分の部屋作りで大変で忙しくて…」

「疲れてたとはいえ…」

「べ、別の寮だし…忘れてたって言い訳も…アレだけど……」

 

 皆の表情が段々と青ざめて行く。

 飛鳥達だけでなく、ど変態中のど変態、峰田実にまで罪悪感を抱いてしまう。

 幾らヒーロー科専門の訓練授業の際に八百万百の胸を凝視するとは言え、非常時に梅雨ちゃんの胸を触ると言ったラッキースケベを発動する変態とは言え、バスで官能トークを発動するエロスとは言え、林間合宿の女子風呂を覗く覗き魔とは言え、今回ばかりは峰田を責めることは出来なかった。

 

「それを何だお前ら!オイラを変態とかゴミとかクソ雑魚ナメクジとか言ったり!「――いや誰もそこまで言ってねえよ」……汚物を見るような目で見下ろしたり!峰田大丈夫って何だ!?オイラは全然正常だわい!」

 

 様々な変態行為に手を染めた峰田が正常と言う言葉も些か可笑しなものだが。

 否定出来ない点もあれば、流石に峰田への反応も悪かったと言う点も存在していたので、流石に悪いことをしたと反省する皆の衆。

 

「ゴメンね峰田〜、態とじゃないんよ〜」

 

「でもそうされても可笑しく無い行動をアンタは取ってるんだから、非がないとは言え責められるのは致し方ないと思うけどね」

 

「あ〜なんか解る〜。変態という性根を正せばウチらも見直すけどさ」

 

 しかし耳郎の言い分も尤もなので、結局はプラスマイナス思考の回路で辿り着いた結果、どっちもどっちという形で特に揉め事にはならずに済んだ。

 峰田も欲を言えば「お礼におっぱい揉ませろ」と言い張る気でいたが、今回は別の目的があるので敢えて伏せておいた。それが懸命な判断だったのか、余計な一言で峰田へのイメージ悪化(手遅れだが)が進まずに済んだ。

 

「じゃあ忍基地行って誘おっか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳なのです」

 

「成る程ね〜」

 

 んで現在。

 お茶子から事情を全て聞いた飛鳥達三人。飛鳥は苦笑を浮かべている。

 

「けどお披露目パーティー、雲雀もやってみたかったんだ!!」

 

「お、オレも…雲雀の部屋を見たいと…ずっと思ってたからな……」

 

 純粋無垢そのものを表した雲雀、そして彼女の隣にいる柳生は頬を紅潮に染め、涎を垂らしながら何かしらの妄想をしている。

 端から見ればエロ葡萄たる峰田実と余り変わらないような気もするも、本人の前で口にするのはタブーだ。

 お部屋披露。

 別に悪くないんじゃないかな…と思う飛鳥は、どちらかと言えばワクワクしている。

 他人の家に上がり込んだ経験すらない彼女からして見れば、お部屋披露大会とは正に夢のようなもの。

 大袈裟かもしれないが、自分は伝説の忍になる為の修行と経験を積むのに忙しかったので、先ず友達作りもしなかった。

 因みに幼稚園の頃は、よく友達と一緒に遊んでたりしたのは今となっては懐かしくもありいい思い出。

 況してや国立半蔵学院というマンモス学校に通うようになってから、忍学生として休める日も遊ぶ暇も無かったので、どちらにせよ誰かの部屋の内装を見るのは楽しみで仕方がない。

 しかしソレは飛鳥だけでなく、柳生と雲雀の二名も同じ気持ちだろう。

 雲雀はイメージ付き易いが、柳生もクールっぽく見えるだけで雲雀と同じ一年生なのだ。

 

「じゃあ最初は〜……」

 

 雄英寮。

 このお部屋披露大会を主催する審判の芦戸(いつの間にか決まっていた)は、勢いよく人差し指を向ける。

 

「えっ?ぼ、僕!?」

 

 緑谷出久。

 突然芦戸から指名を受けたことに、挙動不審な言動を見せる。

 理由は単純、最初に見て廻るのは男子からと女子の話では決まっており、二階から順に上へと上がり見に廻ると言う事業だそうだ。

 一階の部屋は――峰田・緑谷・青山・常闇、の順になっている。

 部屋の順番の組み合わせは担任の相澤先生が決めたことなので、何かしら余程な理由が無い限りは変更にはならないそうで、特に組合による拘りや理由は無い。

 

「わあぁぁ!ダメダメ!ちょっと待って――!」

 

 慌てふためき皆を止めるも遅し、皆の衆はわいやわいやと賑やかな雰囲気で緑谷の部屋に入る。

 

 緑谷ルームを簡潔に言えば『オタク』だ。

 机の上にはオールマイトのフィギュア、壁紙のポスターも全てオールマイト、本棚に収まってるのは教材ではなくオールマイト写真集、特集、そして超常黎明期から現在に至るまでのヒーロー百科事典まであるという、部屋全部がヒーローの概念に染まりきっている。

 一同から発せられた言葉は、「歩くヒーロー百科事典」とまで仇名を付けられる羽目になり、このクラスでヒーローの知識に勝る者は存在しないとさえ声が掛けられるほど。

 

 

 彼のオールマイト魂は眼に染みる程知ったので、緑谷の部屋から次は常闇の部屋に映る。

 

「フン…下らん……」

 

「そう言うの良いから、どかすよ〜」

 

「オイッ…!貴様等よせ!やめろ!」

 

 玄関扉の前で背にもたれるようクールに佇む常闇を、まるでブルドーザーでどかすかのように、芦戸と葉隠は強く押し、隙が出来た所で部屋に突入。

 

「暗!漆黒!!」

 

 部屋の中は一言で言えば闇の狂宴。

 電気を付けてないとはいえ、人の肉眼では殆ど見えにくく、よく見るとドクロ型のランプや洋風の剣を表したキーホルダーなどがあり、まるでファンタジーな世界観が映し出されている。

 どちらかと言えば、魔女が住みそうな部屋だ。

 

「常闇くん、迂闊にダークシャドウちゃんでも出したら部屋滅茶苦茶になるんじゃない?」

 

「早く出てけ貴様ら!!」

 

 飛鳥の言葉を振り払うよう、常闇は憤慨に満ちた眼光を解き放ち皆に立ち去るよう追い払う。

 余りこう言った独特な部屋を他人に見られたくはない…というのは、厨二チックな性格上仕方ないのだろう。

 自分の好みでも、人前では見せたくないというのは、可笑しな事では無い。

 しかし見られた屈辱さと羞恥心は、例えで言うなら、ノートに纏めた厨二世界設定を、相手に見られるのと同じくらいなものだ。

 因みに余談だが、秘立蛇女子学園の雅緋も実は影で秘伝忍法による必殺技の名前を、『DEATHNOTE』と書かれた漆色のノートに纏め書いてたりする。

 しかしその事実は、親友の忌夢でさえも知らない(本人が秘密にしているので)。

 本人曰く見られたら死ぬらしい、恥ずかしさで。

 

 

 常闇に追い払われた皆は、次に隣部屋の青山優雅の部屋を観に映る。

 

 

「どう?僕の部屋、ま・ば・ゆ・い☆でしょ☆」

 

 

 これも一言で言おう、『眩しい』――以上。

 ハッキリ言えば常闇の逆バージョンと言った感じで、ゴージャスな貴族風の部屋には違いないだろうが、想定内の範疇と言った所で、特にどうと言うものでも無い。

 

「目が痛い…」

 

「同意……」

 

 柳生は眼帯じゃない裸眼の方の目を手で抑え、常闇は目を細めている。

 烏はヒカリモノが好きという習性があるが、常闇の場合は光とは影の抑止力。つまり、弱体化するという意味だ。

 

「えっと、この階だとあと一人は……」

 

 想像してたよりもずっと楽しい。

 飛鳥は嬉々初々しそうな声を弾ませ、まだ見てない部屋の扉に視線を移すと――

 

 

「なぁ、来いよ…お前ら女子にスゲェもん見せてやるからよぉ…なぁ、おい」

 

 

 峰田実(不審者)らしき変態がいた。

 玄関の扉の隙間から覗くように、指で「来いよ」アピールをする。

 表情は気味が悪いほどに笑ってはいるが、ほぼ目が死んでる。

 まるで煩悩の塊が泥沼のような汚れた気配を曝け出し、峰田に見る目もくれずに一同は「次、行こっか」と先を急いだ。

 

「なあぁぁ来いって!!お前ら女子にスゲェもん見せてやっからよぉ!!!なぁ!!ムラムラさせてやっからさぁ!!」

 

 峰田という得体の知れない煩悩を置い残して。

 

 

 

 こんな調子で次々と暴かれていく男子達の部屋を見て周り、口田の部屋まで来て不覚にもペットのうさぎたること『ゆわい』ちゃんに女子は大人気。

 雲雀なら尚のことではないだろうか、抱っこしたり頭を撫でたりと、うさぎに夢中になっている。

 雲雀の秘伝動物は兎、そして相棒の忍兎も存在する、うさぎ愛好家だ。

 口田ルームでは女子の「カワイイ」のコールが絶え間なく降り注ぐ。

 

 

「なあお前ら…俺思ったんだけどさ……なんか釈然としねえよな」

 

 口田のお部屋披露が終わり、三階から四階へと移動する矢先、上鳴の発言に男子達は立ち止まる。

 皆何処か思い当たる節があるのか、納得のいかない者、気持ちが釈然としない者の顔立ちが垣間見える。

 

「確かに」

「同意☆」

「奇遇だね…僕もだよ」

 

 常闇・青山・尾白の順にリズム良く頷く三人は、少々この立場に納得がいかなかった。

 常闇は厨二チックな部屋だと言われ、青山に関しては何の興味も示されず、強いて言えば目が痛いという言葉が上がっていた(本人は眩ゆいと直接脳内にコンバートされたのか、褒め言葉として受け取った)。

 尾白に関しては「普通」という一言だけで終わった。

 飛鳥からも普通過ぎて「こう言うのも有りだね」と言われた始末。

 部屋の内装をどう決めるのかは個人の自由だが、常に男子が女子に言われっぱなしと言うのも納得がいかない。

 

「男子だけが言われっぱなしなのも変だよなぁ?お部屋披露『大会』つったよなぁ?!

 なら女子の部屋を見るのも、その場の流れというもの…違うか?!

 なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねえか?誰がクラス1のインテリアセンスか、全員で決めるべきなんじゃねえのかなあ!?」

 

 いやお前は単に女子の部屋見たいだけだろ、と普通ならばここで全員が口にするセリフなのだろうが、今回ばかりは譲れない。

 峰田の意向や趣旨はどうであれ関係ないし、寧ろ峰田の思考など配慮してないが、男子達が常に言われっぱなしという何とも拭えない気持ちが晴れないのも事実。

 よって、女子の部屋も拝見することになった。

 因みに男子達全員の意見に芦戸は「良いよ〜!面白そうじゃん!」とそれはそれでこの状況を楽しみ、活気良くはしゃいでる。

 そんな芦戸の陽気な性格などいざ知らず、隣にいた耳郎は「えっ?マジでやんの?」と頬を赤く染める。

 少数とは言え、どうやら乗り気でない者もいるらしく、大半の男子(部屋紹介してない者)達はどうでも良いと呆れスマホを触っている。

 ここでもし峰田実ただ一人、この場で発言していれば変態という肩書きのある彼に向けられるは汚物を見るかのような視線。

「来んな変態」と罵倒を受け一蹴されるだろうが、これが一人では無く数人であれば話は別だ。

 少なくとも男子達の自尊心とも呼べるプライドを傷付けられ、黙っていられるほど彼等はヤワでは無い。男子の心に火を点ければ後は簡単。

 

 流れは川の如く勝手に動き出し、自然的に〝女子の部屋を物色する〟事が出来る!!

 

 これが峰田実という策士たるや、エロ葡萄の目的。

 男子達の意見に乗じる事で、民意と捉えられる。逆に『峰田だけダメ』、と言えばそれはもう差別的な問題が生じるし、先程の一件である峰田の真面目な口論もあり、批判的な言葉はまず出ないはず。

 変態という勲章を持つ彼が、自然的に女子の部屋を観に行くその光景は、性的犯罪者も尊敬の眼差しを向けるだろう。

 現に彼は今、目にじんわりと涙を溜め、口から溢れんばかりに大量の唾液を零してる。

 しかしまだ男子達の部屋の拝見は終わってないので、引き続き中断してた披露大会を再開し、四階へと上がっていく。

 

 

 

 

「まあつっても、俺のはあんま大したことねえよ」

 

「轟の後だと誰だってそうだよ」

 

 男子達の部屋も締めくくり、最後は五階フロアの砂糖力道のお部屋披露の番に移った。

 五階は瀬呂・轟・砂糖という順番で、五階は男子三人だけだ。

 瀬呂の部屋は、中々にエイジアンな内装で、何処か新鮮な雰囲気を曝け出し、女子からはギャップ萌えを受けた醤油顔である。

 彼の性格上、健康食品好きな彼から考えて尾白のようなシンプル的な部屋がお好みかと思ったが、予想を遥かに超えた。

 

 続いて轟焦凍。

 元々部屋にあったフローリング的な内装とは違い、日本を主張した和風の空間となっていた。

 翠色の畳、障子戸、四角い木枠の照明、箪笥に置物の手毬、達磨、壺、盆栽、壁には紅梅の絵画が飾られてある。

 轟の実家は日本家屋、フローリングのような洋風の部屋は心地よくないのか、落ち着かないそうだ。

 特に地面に足をつけ歩くとペタペタする感触も気になるし、見慣れない部屋で過ごすのも釈然としない。

 本来ならこんな和風に凝った部屋にはならなかったのだが、リカバリーガールが「ゴミ倉庫から好きなだけ自由に持って行きな」と中には使い慣れてない新品な畳や四角い木枠の照明、様々な家具が倉庫に置かれてあったのを持ってきただけだ。

 ゴミ倉庫だなんてとんでもない、寧ろ轟からすれば貴重な品物ゆえに感謝まである。

 そこから実家から送られた荷物から、家具を部屋に運んだだけ。特に労働的な作業はならず、飛鳥と同じくスムーズに進める事が出来た。

 轟の部屋の出来具合に瀬呂のギャップは遥かに超え、飛鳥からは「我が家に帰って来た気分」と一言。

 

 

 

 

 そして現時点で砂糖に当たった訳だ。

 尾白や障子みたく、至って普通の部屋ではあるが、机の上には金属製ボウルの中にクリームがあり、電子レンジがある。

 食器棚や調理器具等があるのが室内に大きな印象を与えていた。

 

「なんか、甘い匂いがするよ?」

 

 部屋内に漂う菓子類に似た甘い匂いに、雲雀が声を出すと、砂糖は「ああしまった!!」と忘れてた記憶を呼び覚ましたかのように、取り乱した様子で慌てて電子レンジを開ける。

 

「だいぶ早く片付いたんでよ!皆んな食うかと思ってシフォンケーキ焼いてたんだ!」

 

 電子レンジの中からはなんと、甘々しくて美味しそうなシフォンケーキ。

 中から開けられ甘い匂いは更に強さを増し、部屋は甘い香りに支配されていた。

 それに嗅ぎつける女子は、目を輝かせそのシフォンケーキを見やる。

 

「ホイップがあるともっと美味いんだが…お前ら食うか?」

 

『食うー!!』

 

 ホカホカ出来立ての美味しそうなシフォンケーキに食い付く女子達に、砂糖は押されそうになりながらも手慣れた手付きで包丁を扱い、均等に切る。

 皿に移し全員に配り、一口食す。

 口の中に広がる甘み、フワフワな食感は、女子達からは絶対的人気を集めた。

 

「美味しいよ砂糖くん!普段よく作ってるの?」

 

「お、おう!個性の訓練がてらな…俺の個性は〝シュガードープ〟…糖分は俺の力になるし、それに趣味で作ってることもあるから…」

 

「砂糖さんは素敵なご趣味を持ってますのね!今度、私の紅茶と合わせてみません?幻の紅茶、〝ゴールドティップスインペリアル〟をご馳走致しますわ!」

 

「お、おお…凄い反応だな…!正直ここまで食い付いてくるとは思わなかったから…意外な反応だ……」

 

 飛鳥と八百万に褒められ、恥ずかしがるも内心はかなり嬉しい砂糖は、瞬く間に女子の人気を得ていた。

 

「悪くない…美味いな……」

 

「おぉいしぃ〜♪砂糖くんはシフォンケーキ以外何作れるの〜?」

 

「クッキー、ドーナッツ、バウムクーヘンは勿論。カヌレやティラミス、アップルパイにタルト、ホットケーキ、ノルマンド――」

 

「パティシエかよ!!」

 

 思わず突っ込みを入れてしまう瀬呂は、甘くてふんわりとした美味しいシフォンケーキを咀嚼しながらも、彼の凄さと料理の腕は素直に褒めざるを得ない。

 流石はシュガーマンの異名を持つだけのことはある。甘党は正義と言わんばかりに菓子作りに適しており、到底学生とは思えない程の腕前を持っている。

 ヒーローではなくパティシエの道もあったんじゃとさえ疑問を抱いてしまうのは、瀬呂だけでは無いハズだ。

 

「さて!男子のお披露目も終わったことだし次は女子棟!最後は忍基地のお部屋披露と行こっか!」

 

「時間はダイジョーブ?」

 

「へーきへーき。9時までなら問題無いし大丈夫でしょ、時間はまだあるんだし」

 

 砂糖の菓子を充分に味わい深く口の中で咀嚼しながら、芦戸はノリ良く歩みを進める。

 乗り気の無い耳郎や恥ずかしそうな八百万などお構いなく、お部屋披露大会は進む。

 

 

 

 

 

 

 女子棟の部屋も見終わり、最後は忍基地の半蔵メンバーである飛鳥達に当たった。

 因みに月閃メンバーはB組と一緒にお部屋披露大会を開いてるので、現在は不在だそうだ。

 

「じゃあ先ずは…雲雀ちゃんの部屋からだー!」

 

「俺読めた、ぬいぐるみと玩具で部屋いっぱいにしてそう」

 

「モーレツプリユア10とか置いてな、おままごとしてそう。

 それ以外に考えられん」

 

「お前らの中で雲雀は何歳設定なんだ」

 

 瀬呂と上鳴の会話に、半ば呆れながら突っ込む障子。

 実際に体育祭を運動会と言ってる(体育祭終了後、訂正したのは皆お気付きでは無い)のと、容姿が子どもらしい幼気な雰囲気を持っているのだから、そう皆から解釈されても可笑しくは無いのだろうが、障子からすれば雲雀は立派な高校生だと思っている(確かに少し子どもらしい雰囲気もあるが)。

 そんな男子達のたわい無い雑談の中、玄関が開かれた。

 

「いらっしゃ〜い!どうぞ〜♪」

 

「お邪魔しま〜……っす…ってうおおぉぉ!!??」

 

 雲雀の部屋に入る一同は驚嘆の声を上げる。

 可愛らしいハート柄なラブリーのカーテンに、ピンク色のしたフワフワな生地のベッド、兎や熊の可愛らしいぬいぐるみは勿論飾ってある。

 ここまでは男女関係なく案の定と言った形で、葉隠の内装と似ていたし、普通の女の子らしいドキドキする空間だ。

 しかし意外なことに子どもらしさとは対極に、本棚の上には名のある有名で大人気なヒーローフィギュアが置かれてたり、本棚には超絶人気の少年漫画、ワ◯ピースやハ◯キュー、ナ◯ト、ブラッ◯クローバーと言った有名な漫画作品を全巻買い揃えてたり、小説はとある◯術の禁断目録や、魔法科高校の◯等生、S◯Oと言った人気小説から、ラノベや人気作品とは無縁で程遠い、読んだことも無い推理小説まで収録されている。

 他には裁縫道具や救急箱、お洒落でブランド寄りの手提げバックからキュートなバック二つ、机の上には〝為になる運動トレー二ング〟の教材や、忍百科事典が置かれてある辺り、彼女からは考えられない品物。

 壁にはアニメ等よくあるキャラクターが映し出されたポスターやパズルが貼られている。

 更にはなんと、最新型のパソコン機材やゲームも置かれており、理想的な女子の部屋と、男子の想定内な部屋が合わさった、独特な空間の部屋になっていた。

 ゲームは家庭用からネットゲームなんでもござれ、3DSや某新天堂Switch、コジーのVitaやPS3、PS4、そしてVRも揃っており、正に娯楽の聖地と呼んでも過言ではなかった。

 

「ひ、ひ、雲雀さんこれって!!超激レアのオールマイトフィギュアじゃん!」

「おいこれって超鳥ヒーロー『グリフォース』じゃ無いか?期間限定のレアフィギュア、超常黎明期で噂になってた人気ヒーローだ」

「あああぁぁぁぁ!!!それ持ってない!!欲しかったけどお金と都合で買えなかったんだよ!」

「吸血ヒーロー『プテロバット』、古竜ヒーロー『プテラ』、兵鎧ヒーロー『ソルジャー・ランサー』、後なんだこれ?」

「ラビットヒーロー『椎名』じゃなかったっけ?」

「思いは一つ!ラビットピースの椎名だよ!昔有名なヒーローで、実力は折り紙付きさ!」

 

 緑谷・障子・尾白は本棚の上に飾り立ててあるヒーローフィギュアで盛り上がり、緑谷は熱心に語りながら、羨ましそうな眼でフィギュアをマジマジと見ている。

 忍家系で育った彼女がヒーローフィギュアを持つことなど誰も想像付かないし、飛鳥でさえも意外だと声が上がるほど。

 因みに緑谷はオールマイトだけではなく、他のヒーローに関しても熱中になる癖が有り、一人のヒーローを解説するだけで小一時間は掛かると言う程のヒーローオタクなだけあって、流石は歩くヒーロー百科事典だ。

 

「わ〜!雲雀ちゃん漫画読むの意外!この漫画すっごく面白いよねハ◯キュー!これ読んでから家族でバレーの試合観るようになったんだよ!」

「仮想空間…娯楽という名に浸かりながらもその世界は……生死を賭けたデスゲーム……ふむ、雲雀が読むとは意外だったな…」

「女子の人気も高いよね〜、努力!友情!勝利のテーマを沿った忍者漫画のナ◯トは神!」

「おい雲雀!ToLOVEるダー◯ネスが無えじゃねえかよ!!ゆらぎ荘の◯奈も買えや!アレ単行本だと◯首出るんだよ◯首!」

「峰田、お前ここ女子部屋だぞ?自重しろや」

 

 漫画で盛り上がり、立ち読みで熱狂するのは葉隠・常闇・芦戸・峰田(コイツだけ何か違う)の四人組。

 雲雀はてっきり少女漫画でも読むかと思っていたが、意外とこう言う少年漫画を読むことに内心驚きはあるものの、趣味や好みが合って嬉しいと思う反面もある。

 

「筋トレに役立つ本とか読んでんのか!?雲雀!今度本貸してくれ!これ鉄哲も見たら喜ぶんじゃねーか!?」

「お裁縫道具も揃えてあるのですね!」

「忍百科事典…うわ!有名な忍達がいっぱい!」

 

 切島・八百万・飛鳥の三人組も、分厚い本に手を取り中を見るやで興奮している。

 八百万はそもそも雲雀が裁縫セットを持ち合わせてるとは思ってもいなかったらしく、雲雀を褒めるやで当の本人である彼女も嬉しそうに照れてる。

 

「…………」

「…………」

 

 想像の斜め上を遥かに超えた上鳴と瀬呂は何も言えずじまいなのか、唖然としていた。

 そりゃ無理もない。本当に幼稚園っぽさのある彼女が、まさか高校生と変わらない上に此処まで超絶人気を誇るとは夢にも思ってはいなかったらしく、自分たちの部屋を見た反応と比べて天と地の差が開く現実に、ただただ唇を噛み締めるだけしか出来なかった。

 

「あら、あんた達どーなのよ?ん?」

「耳郎…黙って、ごめん本当に想定外だったわ……」

「俺、今の見て雲雀へのイメージが1080度変わったよ」

「三回転して元の位置に戻ってるんだけど」

 

 どこか落ち込み気味の二人に耳郎は傷に塩を塗るように一声かけるも、二人の反応はそこまで変わらない。

 

「ゲーム見て良い〜?」

「うっわ!VRも在るじゃねーか!今じゃ何処も売り切れで予約しようにも出来ねーよ!」

「なぁ見ろよ…雲雀のやつ、ポケ◯ン図鑑全部コンプリートしてある……プレイ時間800超えてるんだけど……」

「ドラクエ11にスナイパーゴーストウォリアーにダーク◯ウル全シリーズ……あっ、これってストリートファイター!?鉄哲が今一番ハマってるっつう格ゲー!

 

 ――ッッッ!!どうしよう!スゲェやりたいんだけど!!」

 

 ゲーム機に触れるとそれはそれは、まるで近所の友人の家に遊びに来てゲームで盛り上がるかのような光景は、中々に愉快で盛り上がる。

 芦戸は雲雀にゲーム使用許可を求めるわ、砂糖はVR機を触れてマジマジと見つめるわ、峰田は3DSを開き目を大きく開いて画面の時間プレイ数に驚愕するわ、切島は沢山のゲームの種類に興味を注がれるわ、なんやかんやで今この部屋が一番騒がしく、そして披露大会で一番人気の高いのが雲雀の部屋だ。

 実は雲雀の好きなものは甘いお菓子は勿論、ゲーム全般が好きで、特にはテレビゲームをプレイしている。

 フィギュアやぬいぐるみ、本など実は兄や姉からのプレゼントでもあったりする。

 雲雀の家系はこう見えてかなり特殊なものらしく(華眼もその理由のウチ一つ)、戦国時代から既に忍として活躍していると言う、忍社会の中で割と有名な方なのだ。

 簡潔に言えば飯田天哉や轟焦凍の家よりも凄いのかもしれない。

 

「ね、ねえ皆んな〜…そろそろ行かない?早くしないと9時になっちゃうし……」

 

「ひ、ひ、雲雀の匂いぃ〜……」

 

「柳生ちゃん!?何してるの変態だよ?!」

 

 ベットの上でボフンと寝転ぶ柳生は、顔を枕に埋めながらスーハー…と深呼吸する柳生に飛鳥は鋭い壮大なツッコミを打ち込ます。

 

 

 

 

 

 

 ホカホカな気分とは打って変わって、次は柳生の部屋に移り変わる。

 先程、雲雀の部屋で匂いを嗅いでた彼女とはまるで別人のように気持ちを切り替え、沈着冷静な表情を浮かべながら無言で扉を開け招待する。

 

「うわぁ〜すげぇ!!」

 

 柳生の部屋は常闇のように少し暗がかっているが、照明が青いブルーライトとなっているので、まるで青と黒が混ざり合った物静かな空間にいるようで、何処かと心が落ち着く。

 それに夜のため、眠気がやって来るものの、コレを見れば驚くのも無理はないだろう。

 

「柳生お前魚飼ってんのか!!」

「口田に続いて柳生もペットはズリィわ…てか色んな種類あんのな」

 

 何個もの水槽が置かれており、色んな種類の魚がスィーッと泳いでいる。

 一個につき1種類と決めているらしく、観賞用のアロワナ、グッピー、ピラルクー、この3種類だ。

 見てるだけで和やかになり心が落ち着くのは、観賞用の魚の見所だろう。

 このまま過ぎていく時間すらも忘れてしまうような気分だ。

 

「柳生ちゃんもぬいぐるみね〜って、全部魚のぬいぐるみだ!」

「ウツボ、イカ、タコ、ジンベエザメ、シーラカンス……まるで水族館みてえだな」

「柳生、お前は本当に魚が好きなのだな…特に烏賊」

 

 葉隠・上鳴は柳生の独特な部屋の出来具合に微笑んでおり、障子はイカのぬいぐるみを触りながら感心している。

 こう改めて見てみると、イカやタコのぬいぐるみも悪くはないと思うものの、女子ならまだしも男子がぬいぐるみを持つのもどうかと思うので、やはりやめておこうとソッと元の位置に人形を戻す。

 障子の部屋は驚くことに、何もない。

 テレビもない、パソコンもない、本棚や置物などもなく、あるのは勉強机と布団のみ。

 ある意味、相澤先生に似たような部屋になっており、正直何もなさ過ぎて珍しいとさえ思えてしまう。

 

「お、オイラも……ぬいぐるみとして扱ってくれても良いんだぜ柳生…?

 ほら!!この愛くるしいゆるふわキャラな俺を胸に埋めて――」

「そうだな、サンドバッグとしては丁度良いし、今度地面に埋めてやろう」

「……冗談に聞こえない」

 

 峰田の軽々としたセクハラ発言に、眉ひとつ動かさない柳生は、眼中にないといったような口回しで、峰田に背中を見せる。

 彼女が言うと冗談には聞こえないので、正直怖いと言えば怖い。

 

 

 

 

 

 

「さて!最後は半蔵学院リーダーの飛鳥ちゃんに締めてもらおう!!」

 

「なんか緊張するな〜……」

 

 雲雀、柳生の順にとお部屋披露が終わり、最後の一部屋で終盤を迎えていた。

 彼女は頬を赤らめながら指でポリポリと頬をかく辺り、落ち着きがないように見える。

 それもそのはず、女子ならまだしも男子達が自分の部屋を見るのだ。

 雲雀も柳生も男女共同で見て回ったので、何ら可笑しくは無いのかもしれないが、自分からすればそれでも気持ちが拭えない。

 

「で、では…どうぞ?」

 

「おお〜〜!!可愛い〜〜!!!」

 

 部屋の中は雲雀や葉隠に似た通り、女の子らしい部屋になっている。

 ラブリー的な印象を受けるこの空間は、飛鳥らしいといえば飛鳥らしいが

 

「蛙のぬいぐるみに、床のカーペットやベットの布柄も蛙…飛鳥ちゃん蛙好きになったんだね!」

「わあ、刀置きの……なんか侍っぽい!」

「動物百科事典、読まなさそうな所が逆にあざといわぁ……」

「わあ〜!パジャマが猫と蛙みたいな服だ〜!子供服だけど…うわぁ〜これ欲しいなぁ」

 

 雲雀や柳生の後だと普通の部屋に見えるのも仕方ないが(そもそも部屋に面白さを拘っていない)、こうして普通に可愛らしい部屋を見ると落ち着くのは勿論、一周回ってホッコリする。

 

「ヒーロー科最高」

「峰田くん!?人の部屋に入って無断でタンス開けるのは止めようね!?」

「に、匂い……飛鳥の匂い!プ、ププ、プルスウルトラ!!」

「ちょっとやめて〜!峰田くんプライバシーの侵害にも程があるよ!?」

「何言ってんだ飛鳥お前!人様を部屋に上げてる時点でプライバシーの侵害もクソもねえ!それに男ってのはな、寧ろこう言うの気にするタイプなんだよ誰だってこうするんだよ世の中の男子はヨォ!!」

「ふぇっ?そ、そうなの?」

「な訳ないでしょ、飛鳥に何変なこと吹き込んでんだこのバカ」

「へぶぅっ!?」

 

 峰田の相も変わらずの平常運転に耳郎は呆れながら長い耳朶のイヤホンプラグを峰田の目ん玉に突き刺し爆音をお届けする。

 特にこれと言ったものは無く(雲雀と柳生の後だと誰でもそうなる)、こうして飛鳥のお部屋披露も終わった。

 

 

 

 

 

 雄英生の寮。

 一階の男女共有談話スペースにて、忍学生も含めて全員揃っている。

 これから行われるは投票結果発表だ。

 お部屋披露大会を経た今、誰がインテリア1部屋王の称号を飾るに相応しいかが決まるのである。

 因みに、自分への投票は無しというルールのため、クラス委員長決めの時みたいな結果にはならないハズ。

 

「さて!それでは爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第一回部屋王暫定一位の発表――!!

 

 得票数8票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は――砂糖力道!!」

 

「はああぁぁ!?!ええっ!?」

 

 部屋王は何と、全員誰もが考えてなかったであろう、シュガーマンたること――砂糖力道だ。

 当の本人が一番驚いている。

 

「因みに全て女子票!理由は「ケーキ美味しかった」だそうです」

 

「いや部屋関係ねえだろうがぁ!!」

 

 女子8人は全員ヨダレを垂らし、今でも忘れないあの味わい深いシフォンケーキの食感を脳内再生しており、幸福感に満たされたような顔をしている。

 柳生は最初、雲雀に投票を入れるつもりだったのだが、女子全員の話(雲雀も含めて)という事で、あの柳生でさえも砂糖に票を入れたのだ。

 そんな女子にツッコミを入れる峰田は

 

 

「テメェ砂糖唇ゴラァ!ヒーロー志望が贈賄してんじゃねえよ!!」

 

「いやしてねえよ!何これでもスゲェ嬉しい!!アハハハ!やめろよお前らアハハ!!」

 

「笑ってんじゃねー!」

 

 峰田と上鳴の暴言など何のその、砂糖は笑いを止める事なく二人とじゃれあっている。

 しかし二人はそうでもなく、どちらかと言えば嫉妬が大前提で、恨みの一撃一撃を砂糖の体に打ち込むも、効いてないのか笑っている。

 

「じゃあ俺たちもそろそろ寝ようぜ、明日から授業始まるんだろ?」

 

「うむ!ケーキ食べた後は歯磨きしなくてはな!」

 

 お部屋披露大会を終え、ようやく自由行動になれた轟は眠たそうな目を擦り、真面目な飯田は非磨きを催促する。

 

「あっ、轟くんちょっと待って!デクくんに飯田くんも…それに切島くん八百万さん、飛鳥ちゃんに雲雀ちゃん柳生ちゃんも……ちょっといいかな」

 

 自然と解散しようとする轟達は、自室へ戻ろうとするも、制するお茶子の声に呼び止められる。

 なんだ?と軽く疑問に思う轟に、お茶子はバツが悪そうに顔を下に俯き伏せる。

 

「あのね、梅雨ちゃんが話ししたいって……取り敢えず、外でよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 9時近くの夜は、既に真っ暗な空色に染まっており、外接設置されてる灯に照らされる十人は、寮の外で静かに梅雨ちゃんの話を聞くことにする。

 蛙吹梅雨は、常に冷静な判断や、視察、洞察力の高い蛙の個性をした少女。

 お部屋披露大会で爆豪勝己と同じく参加しなかった理由は、体調が優れないと聞いていたのだが、実を言えばそうではない。

 今ここに集まってるメンバーは、よく見ると神ノ区で爆豪と雲雀の奪還、そして敵連合に拉致され捕らわれた者達が揃っていた。

 爆豪勝己は既に寝てしまっているので、起こすのも悪いと思い呼ばなかった。

 雪泉はそもそも死塾月閃女学館の三年生、その上忍基地にも居ないので呼ぶことが出来ない。

 お茶子は梅雨ちゃんの心情を聞いているので、この場に居合わせてるだけだ。

 梅雨はヤケに悲しそうな表情を浮かべて九人を見渡す。

 

「私思ったことは何でも言っちゃうの。でもね、何て言ったらいいのか解らない時もあるの。病院で私が言った言葉憶えてるかしら?」

 

 梅雨ちゃんの言葉に、緑谷・轟・飯田・切島は病院内で話し合った出来事を思い出す。

 八百万百は敵連合の脳無に発信機を付けた事で、敵の住処が解り、オールマイトと塚内刑事に、あらゆる情報を隅から隅まで洗いざらい情報提供して居たので、その場にいなかった八百万は心当たりが無く、疑問の顔色を浮かべる。

 

「……と言っても、その場にいなかった八百万ちゃんを始め、飛鳥ちゃんに柳生ちゃん、雲雀ちゃんは知らないけれども……それでも気持ちが晴れないのも確かだわ」

 

 飛鳥と柳生は忍専門病院に緊急で搬送され、柳生は体全身に細かな刃物の切傷が付き、飛鳥は全身打撲と骨折、火傷で、悲惨たる重傷を負っていた。

 その場に居なかったとはいえ、梅雨ちゃんと同じく何名かの他校の忍学生に止められたのも事実。

 

 雲雀は敵連合に拉致されたので関係ない…とは一概的には言えないが、それでも気持ちが晴れやかではない梅雨は、彼女にも話を聞いて欲しかったのだろう。

 

「心を鬼にして辛い言い方をしたわ…本心じゃ無くとも、それでも皆んなの為を思っての発言だったのよ……」

 

『ルールを破るというのなら、その行為は敵のソレと同じなのよ』

 

 辛い言い方なのは百も承知。

 もしかしたら皆から嫌われるような台詞を吐いたとしても、それでも皆んなには行って欲しくなかった。

 そりゃそうだ。

 飯田と同じく、忍学生も含めてこの一年A組はかけがえのない大切な生徒なのだ、立派な友達なのだ。

 そんな大切な友達が、爆豪と雲雀が拉致された事によって、目の前の矢先が真っ暗になり、誤った危険な道に進む友を止めるのが、友達という者だ。

 だから、どんな酷い言い方をしても、危険な目には絶対に遭わせたくなかった。

 

「それでも皆行ってしまったと、今朝相澤先生から聞いてとてもショックだったの…

 信じられない程に…

 

 止めてたつもりになってた不甲斐なさや、色んな嫌な気持ちが溢れて…何て言ったら良いか私、解らなくなって……皆と楽しくお喋り出来そうになかったのよ」

 

 友を止められなかった己の不甲斐なさ。

 友に対する己への責任。

 友が危険な目に遭うと考えてしまうだけで、嫌な気持ちが溢れるような気持ち。

 

 落ち込み俯いてた彼女は、顔を上げ、皆んなの顔をしかと見つめる。

 眼は潤い、溜まってる涙で瞳が揺らいでいる。それは、蛙吹梅雨が此処に来て初めて見せる表情。

 

 

「でも、それはとても悲しいの」

 

 

 

 ケロ…ケロ…と啜り泣く蛙の声が聞こえる。

 彼女がここまでして心配して、涙を流してる事に、爆豪と雲雀の救出に赴いたメンバーは、己の行動に心を痛める。

 飯田も蛙吹梅雨と同じ意見だからこそ、同情する部分もあれば、彼女が何を言いたいのかも解る。

 

「だから…まとまらなくっても、せめてちゃんとお話をして

 また皆と楽しく仲良くお喋り出来るようにしたいと思ったの」

 

 そんな泣きじゃくり指で涙を拭う梅雨ちゃんを見て、お茶子は肩に手を置きながらも自分の思うことを伝える。

 

「梅雨ちゃんだけじゃないよ、皆すごい不安で拭い去りたくって。だから…部屋王とかやったのもきっとデクくんたちの気持ちはわかってたからこそのアレで…だから責めるんじゃなく。またアレ…なんていうか…ムズいけど…とにかく、また皆で笑って…頑張ってこうってヤツさ!!」

 

 お茶子はグッと腕を挙げ、ガッツポーズを作りながらニッ!と強い笑顔を見せた。

 

「すまねえ梅雨ちゃん!話してくれてありがとな!」

「ぼ、僕も…あっすぅ……ゆちゃん…ゴメンね!」

「わ、私も…!梅雨ちゃんと楽しくお喋りしたいよ!!ゴメンね梅雨ちゃん…心配かけて本当にごめんね!」

「………あの場に居なかったとはいえ、不快にさせてしまったのは事実…蛙吹、すまなかった」

「私も…梅雨さん申し訳ありません!」

「俺は梅雨ちゃんと同じ意見…だが、友をあの場で止めなかった俺も、謝らなければいけない…すまなかった梅雨ちゃんくん!」

「雲雀は……梅雨ちゃんの気持ち、良く分かったよ。だからもう泣かないで?これからは明るく元気でいこ?」

「すまねえな蛙吹…今度、雪泉にも連絡入れて謝るように伝えておく」

 

 八人は必死に泣き噦る彼女に寄り集まり、謝罪する。

 雲雀は優しく彼女の頭を撫で、切島と飯田は思いっきり頭を下げてと、彼女が泣き止むまで、気が済むまで付き合ってあげた。

 

 

 

 皆、戻そうと頑張ってくれていたんだ。

 いつもの、そう…いつもの――各々がそうなりたいと、目標を目指し、切磋琢磨するあの――日常へ!!

 

 

 

 







雲雀ポケモンガチ勢、ゆえにPBSのパラダイスエピソードのシノモンGOでシノモン図鑑をコンプリートしたとかいう紫に負けず劣らずのゲーマーである。

因みにヒーローフィギュア、ゲームの何個か、漫画は兄で、漫画、裁縫セット、ぬいぐるみ、ブランド寄りバックは姉、他は自分。
実は兄と姉は何人かいて、雲雀は一番年下という大家族。

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