ゾロゾロと敵(ヴィラン)たちは黒い空間から現れて、広場に散り、各々のやるべきことをやろうとしている。
そんななか、戦おうとしない者が3名。
黒い霧で覆われた男。
脳が飛び出てる大男。
そして、掌のマスクが顔についてる死柄木弔という男。
そしてその男は…
「平和の象徴を…殺せ」
不気味と悪意をもった声で、そう言った。
「敵(ヴィラン)!!バカだろオイ!雄英高校に攻めてくるなんて…いくら何でも馬鹿げてる!」
叫ぶ切島に八百万は13号に確認する
「先生!ここの防犯センサーは!?」
「も、もちろん…ありますが…」
しかし防犯センサーがあるのに対して警報が鳴らない、これは非常事態だ。
「そう言えば…あの真ん中の手?みたいな人…確か昨日のマスコミ集団で…」
飛鳥が呟くと、近くに居た轟はいち早く理解したのか、納得したように頷く。
「なるほど…つまりコイツらは先日のマスコミ集団を利用して、セキュリティの警報が鳴ったところで隙を見せてから、カリキュラムを奪ったっつーことか…俺たちがここに来ること、時間まで知ってやがる…おまけに警報も鳴らないということは…向こうには電波を妨害する個性があるからだ…」
轟は一つ一つ丁寧に整理してまとめると、ため息をつく。
「バカだがアホじゃねえ…コイツらは、何らかの目的があってここにやって来てる用意周到の襲撃だ」
「どのみち敵である事実に変わりはない…」
いつもの冷静でクールな柳生はそう答える。
「や、柳生ちゃん…大丈夫?いくら何でも多すぎるよ…それに…」
と雲雀は何かを言いかけたように見えるが、柳生は振り向き、笑顔を見せる。
「大丈夫だ雲雀、オレを信じろ」
「柳生ちゃん…!うん!!」
雲雀は頷くのであった…
しかし飛鳥は冷や汗をかいている。特にあの死柄木を見つめて。
(あの人…なんなの……殺気が凄い…あの時よりも…焔ちゃんよりも!)
焔と戦った時よりも、死柄木という得体の知れない存在が大きい。そして何より死柄木を見て感じ取れるのが…
怒り溢れる憎悪
ドス黒い殺意
恐怖という存在
純粋な歪み
とにかく、アレが危険だと感じ取れる。
「…13号、生徒たちを守れ、俺がアイツらを食い止める。それと教師たちに連絡試してみたがダメだった…上鳴!お前も個性使って連絡試してみろ」
「ッス…!」
上鳴もこの状況に動揺している…相澤がそう言うと緑谷は心配しながら言う。
「せ、先生は…!あくまで奇襲からの短期戦です!多対一は先生として不向きなんじゃ…」
と言うと
「…ヒーローは一芸だけじゃ務まらん」
そう言って敵の集団に真正面で飛びかかる。
「射撃隊出動!」
噴水広場にて、工事のヘルメットを被った男が大声でそう叫ぶと合計3名が束になって相澤をみてる。
「誰だアイツ、情報では13号とオールマイトじゃなかった?」
「が、知らねえあんなヤツは…まあ何がともあれ真正面から突っかかってくるなんて…」
すると3人同時に射撃攻撃しようとする。
「おお間抜け!」
叫ぶが、銃弾や個性が発動してないようだ。
「アレ?出ねぇ」
皆んなは「可笑しいな…」というような顔をすると捕縛用の布は3人を巻きつけ一気に頭をカチ割るようにお互いの頭を頭突きさせる。
相澤が個性を消したために、発動しなかったのだ。
「バカ野郎!アイツはもっとも他でもねぇ、個性を消すっつう…抹消ヒーロー、イレイザーヘッドだぞ!!」
敵がそう叫ぶと、腕が四本ある異形型の男は眉をひそめる。
「個性を消すぅ〜?グヘヘ…だったら俺のような異形型のも消してくれんのかぁ〜?」
「いや無理だ」
相澤は、敵の顔面を思っきしぶん殴り、そしてまた捕縛用の布で拘束してから他の敵にも投げつける。
「発動系や変形系の個性しか消すことはできない…だから、お前らのようなやつは対策している」
戦いながら解説する相澤、しかし死柄木は静かに相澤、イレイザーヘッドについて解説し始める。
「…イレイザーヘッド…個性を消すことによって仲間との連携を取り乱しているな…しかもゴーグルを付けてることによって…一体誰に見られて個性を消されてるのかもわからない…」
首を掻きはじめる。
「いやだなぁ…プロヒーロー…有象無象じゃ、歯が立たない」
「………」
黒い霧の男は相澤と生徒たちを見つめて。
「す、すごい…!相澤先生の得意戦闘は多対一だったんだ!」
「感心してる暇はないぞ緑谷くん!早く13号先生に従って避難するんだ!」
意外な顔をする緑谷に飯田は早く避難するように声をかける。が、一人だけ立ち止まっていた。
「……私は…避難よりも、戦う!!」
「!!」
この現状で戦うことを決意する飛鳥に飯田は飛鳥のやろうとしてることを止める。
「何を言っている飛鳥くん!相澤先生も言ってただろう?生徒たちの避難と言ってい…」
「皆んなが避難出来るようにするために、私は…皆んなを守るために戦うんだ!!」
「…っ!」
飛鳥の決意に、飯田はたじろいでしまう。飛鳥の目つきはいつになく真剣で、本気の目だ…
「それに、相澤先生の為にも!」
確かに相澤先生は、個性を消せる個性を持ってるとはいえ、敵の集団の集まり…何が起こるかわかったものでは無い。
「し、しかし…」
「飛鳥さん!委員長の言う通り避難を」
13号が呼び止めたその時。
「させませんよ?」
ズズズと黒い霧が広がり、13号と生徒たちに忍びたちの前に突如姿を現した。
「!!?」
まるで行く手を阻むかのように、生徒たちと13号の前に立ち塞がる。
この男が敵(ヴィラン)たちを移動させた男だ、イレイザーヘッドの隙を見て、空間を使ってここまで来たらしい。
(…しまった!1番厄介そうな敵が…)
イレイザーヘッドは後悔するような思いをしたが、これは仕方ないことでもある。
黒い霧をまとってる男は、目は黄色いゆえに細く、眼球はない…生徒たちを見つめて自己紹介する
「初めまして、私は黒霧と申します。そして我々は敵連合…僭越ながらも、ヒーローの巣窟である雄英高校に攻め込んで来たのは…」
黒霧と名乗る紳士的な敵の発言に、皆んなの心臓は高鳴る…一体何の目的か。
次の言葉は、皆を凍りつかせるに充分だった。
「平和の象徴であるオールマイトに、息絶えて頂きたいとのことでして」
「は?」
緑谷は顔を真っ黒にする、まるで絶望を目の前にしてるように。
コイツは、なにを言ってるんだ?
皆んなの表情もおかまいなしに黒い霧の男は話を進める。
「本来ならばここにオールマイトが来るのですが…」
その次の瞬間。
「たあああーーー!」
「っ…!おっと危ない…」
黒霧に二つの刀で斬りつけに来たのは、飛鳥であった。だが黒霧はなんとか飛鳥の攻撃を躱す。
「ちょっ、飛鳥ちゃん!?」
突然なる驚きの行動に慌てるお茶子。だが飛鳥の顔はとても真剣で怒りの表情を出している。
「なんで…なんでそんなことを!?一体なんのために…どういう理由で!?!」
飛鳥の激情に、黒霧は何故か逆に感心したのか、薄い笑みを浮かべている。
「これはこれは…随分と活発で正義的な女性なのですね…あなたのような心構えある女性が居るなら、生徒たちに
「
飛鳥は眉をひそめると…次の言葉も、その場の全員を凍りつかせるに充分な理由でもあった。
「この学校に繋がり、存在している…『忍』とやらも、オールマイト同様に息絶えて頂きたいとのことです……」
「え?」
は?
その場の全員は、思考そのものが止まったかのように、目の前が真っ白になる。
意味が分からない…
なんでコイツらが忍の存在を知ってるんだ?…と。
いつバレてしまったのだ?
頭の中で色々な事が湧き上がり、混乱している。
そんな、真っ先に掛けられた理不尽の問題に、黒霧は目をニヤリと細める。
(なるほど、やはり
黒霧は冷静な判断で、心の中で状況を読み取り、整理をする。
「おや?おかしいですね…?皆さま顔色が悪いようですが…」
黒霧は意地悪そうに、質問する。分かっていることなのに…そして御構い無しに話を続ける。
「まあ良いでしょう…それに問題なのはオールマイトがここに居ないこと…おかしいですね、カリキュラム通りならここに居るはずなのですが…何かあったのでしょうか?」
首を傾げるものの、皆は動かない。
「ああ、それよりも…」
すると黒い霧を増幅させる。
「私の役目は…
黒霧は、まず目の前にいる飛鳥に黒い霧で襲おうとしたその瞬間。
ボーーーーーーーン!!!!
爆発の音が響き渡る。煙が上がり、よく見えないが、人影が二つある。
「顔色が悪いだぁ?寝言は寝て言いやがれ!何処が顔色悪いんだ?ああ!?このモヤモブが!」
「その前に俺らにやられることは考えてなかったのか!?」
切島と爆豪は大きく叫ぶ。
「ふう…危ない危ない…!本当に油断も隙もありませんね貴方たちは…流石と言ったところですかね」
しかし黒霧は何ともなかったかのように言う。
「なっ、き…効いてない…!?」
切島は驚愕する。いや、その場の全員もそう思うだろう…物理攻撃が効かない敵と思わざるを得ない。
「そんな…攻撃が効かないなんて、どうやって倒せば良いの…!?」
雲雀の言う通りだ。黒霧を倒す方法が分からない限り、この敵は何かしやらかすだろう。何より敵の出入り口なのだから…黒霧は
「おっと、忘れてました…そう、あなた達も優秀なヒーローの、金の卵…まずは」
すると身体の霧を大きく膨らませて襲いかかる
散らして
「っ…!」
轟はいち早く回避するが……遅かったようだ。
なぶり
「クッ…」
飯田は砂糖とお茶子二人を腕で抱えて、障子は芦戸と瀬呂を庇い、柳生は雲雀の前に立ち、番傘を開きガードしている。
殺す
「皆んなーー!!!」
飯田は叫ぶが、返事はない…おそらく何処かへ飛ばされたのであろう。
「…ん?」
目を開ける飛鳥…しかしその先に映っていた光景は、水面だ。
「え!?あっ、ちょっ…!キャアアァァーーーーーーー!」
ジャバーーーーーーン!!
水に落ちた時の大きな音が鳴り響く。どうやら飛鳥は水難ゾーンに飛ばされたようだ…飛鳥は水中から上がろうとするが…
「おっ!キタキタ」
顔がピラニアのような敵は飛鳥を見て、まるで待ちきれんばかりの様子で殺す気満々のようだ。敵は口を大きく開けて
「オメェに恨みはねーけど…サイナラ!」
飛鳥めがけて突撃してくる…突然のことに身体が硬直して動けれない…つい目を閉じてしまう、その時
ドゴッ!
水中で何やら鈍い音がした。目を開けてみると
「あ、梅雨ちゃん!」
「飛鳥ちゃん!」
その姿は足で敵の横顔面を蹴ってる蛙吹、ついでに回収したのか、峰田と緑谷を抱えている。蛙吹は舌を伸ばしてグルグルと飛鳥の身体を巻きつけて、物凄いスピードで水中を泳ぎ去っていく。
……ジャパーン!
水中から出た飛鳥、緑谷と蛙吹に峰田4人は、水難ゾーンにある救出用の船にベロで飛鳥と緑谷を横に置くようにすると、横で気絶している峰田が呟いた。
「クッ…カエルの割になかなかどして…オッパイが…」
「…!!」
頬を赤らむ蛙吹は峰田を思いっきり船に叩きつけるように投げ捨てる。
「ガハッ!」
船の地面に思いっきり背中を打ったために、正気に戻ったようだ。
「あ、ありがとう…蛙吹さん…!」
「梅雨ちゃんと呼んで、しかし大変なことになったわね緑谷ちゃん」
蛙吹梅雨 『個性』蛙 見たまんま、カエルっぽいことは大体出来る。水中戦では彼女の独壇場。
「敵が襲撃して来るなんて…考えてもない、予想外な出来事が起きたわ…」
蛙吹が呟くと、飛鳥は目を細めて心の中で呟く。
(確かに…襲撃……か。昨日、焔ちゃん達が攻めてきた時とは違う…でも、何処か似てるんだ……やり方とか、それに…焔ちゃん達とはろくに戦えなかったのに、戦えるのかな……私…)
不安で胸がいっぱいな飛鳥は、表情を曇らせる。
「学校に襲撃が来るなんて、昨日の悪忍が襲撃して来たばかりなのに…これで二度目だよ…」
「う、うん…言われてみれば確かに……それに、僕たちを飛ばして…オールマイトと飛鳥さんたちを殺す…なんて、随分と無茶なことをやらかすよね…一体なんの目的で」
冷静に状況を整理しようとする緑谷に峰田は体制を整えて、ボクサーの仕草をしながら
「けどよ、オールマイトだぜ…!アイツらなんか屁でもねーよ、オールマイトさえ来ればあんな奴らケチョンケチョンに」
「峰田ちゃん」
興奮している峰田を蛙吹は止めて冷静に言う。
「オールマイトを殺せる算段があるから、連中…こんな無茶してるんじゃないの?」
「……え?」
「そこまで出来る連中に、私たちなぶり殺すって言われたのよ?」
「……」
「オールマイトが来るまで私たち持ちこたえられるのかしら?オールマイトが来たとしても、無事に済むのかしら?」
「……!」
「それだけじゃないわ、向こうは忍び……飛鳥ちゃんたちそのものを狙ってるもの。忍びの存在がどうしてバレたのかは知らないけど、それでも向こうは知ってる上で宣言したのよ?それにさっきも言ったけど私たちだって無事という保証はないわ、それでも…私たち無事で済めるのかしら??」
「みみ、緑谷ぁ!んだよアイツぅ!」
蛙吹の正論にたじろぎ、緑谷の袖に捕まって指差す峰田。
「……」
「……」
緑谷と飛鳥は正直認めざるをえない顔だ。
飛鳥は何かを考えている。
(皆の様子から見れば、誰かがこのことを漏らした、なんてことは考えにくいし…となると、一体なにを…)
そんな彼らのやりとりの中、さっき蛙吹に蹴飛ばされた敵が水中から出て再び殺しにかかろうとする。
群れで
「んのヤロォ!ガキが!殺してやる!」
「大漁だあああぁぁぁぁ!!」
「…」
緑谷は状況を整理しながら物事を考えている。
(奴らはオールマイトを倒す算段がある、多分その通りだ…それ以外考えられない…でも)
なんで殺したいんだ?
敵(ヴィラン)…悪への抑止力となった人だから?
平和の象徴だからか?
(それにもう一つ、何で飛鳥さんたちを??バレるどうこう以前に…一体何の理由で?)
忍びの存在を知ってどんなものなのかを知りたいから?善忍が目障りだから?
「ていうか…今、理由なんて…理由なんて…」
日々重なるオールマイトと過ごしてきた思い出。
短いようで長いように感じる汗と涙の、緑谷にはかけがえのない輝かしい思い出。
それが、それが…
『平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいとのことでして』
「知るか!」
大声で叫ぶと蛙吹と峰田、飛鳥の三人は緑谷に振り向く。
「奴らに、オールマイトと飛鳥さんたちを殺せる算段があるなら…僕らが今から…」
僕らが
土砂災害ゾーン
パキパキと氷の音が聞こえる。
轟はどうやら土砂災害ゾーンに飛ばされたようだ、当然そのゾーンにも敵の群れはいるが、一瞬にして凍らして一瞬で勝負を決めた。
「子供一人に情けねぇなオイ…」
「…っ!」
凍らされた敵を、冷たい目で睨みこう言った
「しっかりしろよ…大人だろ?」
僕らがすべき行動は
火災ゾーン
「う、うぐおっ…んだよコイツ…強え!!」
「ほ、本当に子供か!?あ、あの眼帯野郎が特に……こ、怖え…」
ほぼボロボロになってる敵たちは、柳生を見て恐れている。柳生はここに飛ばされた瞬間、秘伝忍法で勝負を決めたのだ。尾白も柳生の光景に固唾を飲んでいる。
「す、スゲェ…戦闘訓練で分かってはいたけど……」
尾白が呟く中、柳生は敵たちに近づく。
「オイ、お前たちに聞きたいことがある」
すると番傘を敵の顔に近づける、敵の顔は化け物でも見てるかのように怯えてる様子だ。
「何でオレたち忍の存在を知ってる?それと、その理由は?あと、雲雀は何処だ、言え」
こんな時にも雲雀を心配する柳生に、尾白は感激している。いや、この時だからこそであろう。
「戦って、
緑谷は大きくそう叫ぶ。