光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ようやく家事が一通り片付け終えた作者は、再び執筆と投稿の日々に舞い殉じる。
どーもお久しぶりですー!
さぁ、再び投稿率頑張って上げていきましょー!



130話「三つ巴」

 

 

 

 

 

時は遡り三週間前のこと。

 オールマイトVSオール・フォー・ワンによる神野区激戦から四日が経った日。

 

「ヒーローと忍学生を合同に試験を受けさせる?本当に大丈夫かコレ?」

 

 ヒーロー公安委員会本部にて仮免試験企画会議が開かれてる現在、1人の公安委員の疑問溢れる声が漏れた。

 それに連なるように、会議室は騒めき異様な雰囲気を曝け出す。

 

「ヒーローと忍が互いに手を取り組む時代がやって来た今、何としてもその姿勢と経験が必要とのことです」

 

「其れは解るが…忍なんて得体のしれない存在をヒーローに…況してや学生に組ませていいのかって話だ。

 悪忍なんて特にそうだ、目の届かない範疇で身に何かあったら誰が責任を取る?」

 

「我々ヒーロー公安委員会、そして忍の上層部が責任を取るそうです。

 何より上忍から数名の学生を派遣させ監視、及びサポートの担いを受けて下さるようで…仕方ないんですよコレは上司の命令ですし」

 

「まぁ個性の性質によっちゃあ人を簡単に怪我負わせちまうモンだっているし…今更忍がどうこうなんて言ってられねえよな」

 

「一次試験はボール投げに、二次試験が最終目標としてHUCのメンバーに救要活動の役割ポジション…時間経過によって敵と抜忍の乱入??また忍か!」

 

「忍が明るみになった今、抜忍と敵が手を組み犯罪を繰り返す事件が相次いでる中、こう言った犯罪防止としての対策案も必要とのことです」

 

 知っての通り、現世代はヒーローだけが公で活躍する現実では無くなってしまった。

 数百年、千年も隠密として生きてきた忍の存在が、悪の象徴に暴かれた事により、改革が必要となった今、まずすべき事はヒーローと忍の協力態勢と統一である。

 その為として少しでも忍とヒーローの協力関係を慣らせる為に、敢えて合同に試験を参加させるのが、今やるべき最善策と上層部が出した答えらしい。

 

「協調性としても、実力や実績、全てに於いて魅力的な一強を誇るオールマイトが引退した現段階で少しでも穴を埋める決定的な戦力が必要なんです。

 次の彼を待つより、強く結束を強く意識した集団、〝ヒーローと忍の群〟で穴を補う。

 今回の提唱はその足掛かりのようなものと…」

 

「成る程、つまるところ〝シノビマスター〟をモチーフにした感覚か…」

 

 シノビマスター。

 忍の最高称号を誇る神楽の集団を意味指す言葉で、大会を開催し優勝したチームがシノビマスターとしての道が開かれると聞く。

 次のカグラ会議にてシノビマスターに関する話が持ち込まれるとか、詳細は不明だが、着々と準備には取り掛かってる様子でもある。

 

「今のNo.1だけでは不安が残り安心出来ん以上、少しでも戦力が欲しい。だからこそ、何としても築け上げなければならない。

 嘗てオールマイトを始め忍と結束したように、また新たな改革が必要となった。問題は、これからをどう繋がるのかだ」

 

 激戦後に始まった超人社会の変革。

 ヒーローと忍は、少しずつ動いてく。

 良かれ悪かれ、時間は加速する。

 

「少しでも国民たちの心を灯せるような…なんてオールマイトのような偉大なことは出来んが…我々もこれからの未来を、社会を明るく照らす為の努力は惜しまないつもりだ」

 

 ヒーローと忍は、光と影

 ヒーローと忍は、陽と陰

 ヒーローと忍は、表と裏

 

 相反するようで、でも何処か進む道は似ていて…

 何かの為に生き、社会のために動く。

 共通点も存在すれば反対な点も存在する、そんな二つの存在は、他が為に、存在している。

 

 ヒーローは、国民の心を灯し

 忍は、国民の影を支えて

 世は成り立っている。

 

 問題は、これからの未来をどう進むべきか、が今後の大きな課題点である。

 

 

 

 

 同時刻。

 ヒーロー公安委員会が仮免取得試験の会議を開いてる真中、とある地方のヒーロー事務所では――

 

「お前ら、今日から三週間仮免試験の当日までお世話になる助っ人の忍だ。単刀直入で悪いが少しの間だけ、宜しくさせてやってくれ」

 

「どーも、私の名前は華風流よ…子供扱いしたら許さないんだからね」

 

 シャチっぽい姿をした、ワイルドでクールなヒーロー事務所の社長、ギャングオルカ。

 現在番付けNo.10ヒーローにして、この事務所を一から作り上げた敵っぽいヒーロー。

 対して此方は横で仁王立ちでもするよう佇み、腕を組む少女は、華風流。

 巫神楽三姉妹の三女にして、小百合に認められた護身の民の一族である。

 

「しゃ、シャチョー!早速忍を雇ったんですか!?」

 

「嗚呼、雇ったと言うより上からの命令でな、忍と手を組めと言われたんだ。

 もう時期仮免取得試験があるのはご存知の筈。尤も、俺は敵役として適してるからな」

 

 シャチョー!真面目なのに流れるような軽いジョークお見事です!!と内心に呟く相棒(サイドキック)達。

 実を言えば華風流では無く鈴音や隼総と手を組みたかったのだが、蛇女子学園の学園長に教師は神野区で重傷を負い、とてもではないが体を動かせない状況、雅緋に忌夢も意識こそはあるが安静にしないとダメだと医者から言われてるので論外(そもそも彼女二人も学生なので雇うのはダメだろうという意見が一番に強いのだが)。

 結果、神野区で爆豪と雲雀の救出活動と敵連合掃討作戦に於いて無傷で残った巫神楽三姉妹に目を付けたのだ。

 大道寺も有りと言えば有りなのだが、雄英高校の期末試験の実技も出てる上に情報が知られてる為無理に近いらしく、更に言えば違う地区での試験担当に選ばれたらしいので、どの道無理だ。

 結果、何とか小百合に頼んで巫神楽三姉妹の内誰か一人譲れないだろうかという話になり、頭脳の高い真面目な三女の華風流が選ばれたと言う訳だ。

 

「まあ雇われたんだから、ちゃんと報酬に応じて働くけど…で?その間何すれば良いのよ?」

 

「我々のことを良く知って欲しいのと、コミュニケーションに連携の取り方、試験当日による作戦を開く予定だ」

 

 巫神楽三姉妹は、護身の民にして巫女の役割を担っている。

 信じられない話だが、産まれてからたったの2歳で忍の修行を受けると言った、常人には成せれない事を日常のようにやり遂げているのである。

 護身の村の掟に沿えば、村人の住人である華風流の口からは一言も言った覚えは無いので、小百合を始めとした関係者は一切知らないが。

 他の人間と関わったことのない華風流は、二人の姉を除いてコミュニケーションと言った連携は不得意な上に慣れていないのだ。

 

「お前の出身地の事は詳しく知らないが…小百合から聞いた話だと余り我々や忍すらも関わったことなど無いのだろう?

 ならば試験当日までに、場の流れの掴み方、連携、協力体制を築き上げていきたい。

 決して馴れ合いなどでは無いから心配するな」

 

「わかってるわよ〜…しっかし本当に大きな事務所ね。全部で何人いるの?これが噂で言うサイドキックって人たち?」

 

 華風流はヒーローに関して殆ど無知な上に、忍すら知識が狭いのだ。決して頭が悪いと言う訳でも無く(どちらかと言えば常人に比べて頭がキレやすく、賢い方)、忍社会の中で理解してるのは半蔵と小百合、黒影、カグラ四天王の四人、合計七人位だろう。

 

「しゃ、シャチョー…大丈夫なんですかあの子?」

 

 華風流は珍しそうに事務所の中を見渡す中、隙を突いて物陰で語るように小さな声で社長のギャングオルカに話しかける。

 

「ん?大丈夫とは?」

 

「えっとその…あの子ども…じゃなくて!学生ですよね?良いんですか?」

 

「心配するな。

 アイツも、巫神楽と名乗る二人の姉も学生では無い。いや、年齢は恐らくそうなんだろうな、だが少し特別でな。学生では無いんだ」

 

「えっ?教育受けてないんですかね?それ、益々心配じゃ…と言うか社長、学生で無くともあの子が我々に付いて行けるかどうか不満というかその…」

 

「貴様!!この俺が人選ミスしたとでも言いたいのか愚か者ォ!!!この俺に抜かりがあるとでも?」

 

「ノ、ノーサーノーサー!!」

 

 言葉が悪かったのか、怒りを弾ませるギャングオルカに相棒の一人が断固否定するように首を横に振る。

 見た目が敵っぽい雰囲気が有り、凶暴な面影に恐怖の印象が強く伝わるので、相手が敵でも泣き出しそうだ。

 ギャングオルカが怒る姿はよく見るが、別に其れが嫌と言うと実はそうでもない。

 

「ちょっと、急に声を荒げないでよ…私まだ貴方達のこと知らないし慣れてないんだから…ビックリしたじゃないのよもぅ〜…」

 

「フン、其れは失礼した。

 とは言え…アイツを子ども扱いしてるのなら…お前たちは忍で言う死地の戦場で必ず寝首を狩られる側になるぞ。

 油断は大敵、俺の事務所に置かれてる者は皆、俺が信頼に置ける人材だ。其れを心して日常に励め」

 

『サーイエッサー!!』

 

 信頼してくれるから、社長の気持ちに応えたい。

 自分達を導いてくれるから、付いて行ける。

 自分達も社長を信頼してるから、頑張れる。

 

 ギャングオルカは爆豪ほどでは無いものの、常に強者としてのプライドと其れなりの自尊心を誇っている。

 シャチとしての生物的本能の影響か、はたまた強者であるべき姿が好ましいのか…どちらにせよ、この事務所内のサイドキックはギャングオルカを信頼し、何より強者で生きようとする彼を尊敬している。

 彼がNo.10の座にいるのも、何となく頷ける。

 

(軍隊のモノマネかな?)

 

 そんな華風流は傍で呆けた顔でギャングオルカ一同のメンバーをソッと眺めてるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 救助活動の真中、敵と抜忍の襲撃。

 元々のシナリオは敵と抜忍がテロリストとして大規模爆発を起こし、被災現場にて大勢の民間人が負傷し傷病者が相次いで続出されたという設定。

 ならば此処にも当然、敵と抜忍がいるのも不自然では無い。

 

 敵役はギャングオルカ

 抜忍役は華風流

 

 ギャングオルカは敵っぽさをイメージしたのか、白のタクシードスーツの容姿ではなく、白とは真逆に漆色のスーツに肩や腕には何かを装着している。

 対して華風流は今までの巫女の服とは違い、忍装束に似せた白に赤のラインの刺繍が入った、中々な美しさを引き出し、独特なセンスが噛み合った新しい巫女の装束。

 そして相棒達は全員体全身を覆うスーツ、特撮で言う戦隊モノのザコ敵が着こなしてそうだ。腕はサポートアイテムのセメントガンを装着している。

 全部で数十人、数としても少なくなく、かと言って多くも無い。

 テロリスト集団は救助活動の近くで発生。華風流のホイッスルの音が鳴ったと思いきや否や、敵達は素早く的確な陣形でHUCが保護されてるであろう保護施設に狙いを付ける。

 

「えぇっ!?しかも保護施設の近くから始まるの…?幾ら何でも卑怯じゃ無い??」

 

 飛鳥の愚痴が思わず口から溢れる。

 この試験は今の現実をモチーフに表したもの。当然、このようなケースは少なくないし、大人になれば避けて通れない難関。この壁に躓いてるようでは、目標は愚か、試験に合格することすら危ういのである。

 

(クソっ、考えろ!先ず最前すべき行動を…!

 あっちも救助はまだ…かと言って此処を放置する訳にもいかないし、敵がHUCのメンバー全員に危害を与えてしまえば減点以前に滅茶苦茶だ!!

 其れにここの人員だって…)

 

「どいてなキミ!俺がやる!!」

 

 緑谷の深い考察スイッチが付くも、すぐ様反応し迎え撃つのは真堂揺。

 傑物学園二年生にして一次試験で強力な地震を叩き込み、硬い陣形を割るように分断させた張本人だ。

 頭は割とキレる方で、洞察力や体力面に於いてもかなり優れてる優等生だ。

 

「インターバル一秒程で震撃かまして時間を稼ぐ!キミは少しでも重病者を奥に避難させてくれ!

 後キミ、え〜っと犬っぽい人!ちょっと手を貸してくれ!俺一人じゃ流石に忍は手に負えない!」

 

「はうぅ〜ん私は犬じゃ無いですよ普通の女の子です!伊吹と呼んでくださいそこの普通の人」

 

「何でも良いから早く!!」

 

 若干巫山戯てる伊吹に苛立ちと焦燥で怒鳴る真堂。

 彼は一度半蔵学院の生徒を直視し、忍術もこの目でしかと見たとは言え、結局は相手がどのような能力を備えてるのか、解らない以上忍を相手にするのは愚策。

 ギャングオルカは大凡想像は付くものの、忍がどう動きを見せるかによって変わるので、ここは忍同士相手にさせるのが最善策だろう。

 

 しかし

 

「甘すぎよ、アンタ」

 

 華風流は伊吹に目もくれず、水鉄砲を真堂目掛けて狙い撃つ。

 ピュンピュンと弾け飛ぶ音は何処か爽快感があるも、直に当たると中々に痛い。

 銃弾を直撃したような衝撃的な鋭い痛みは無く、そんな大袈裟ではないが少しでも隙を作るのには丁度良い。

 

「水ッ!しつこ――」

 

「眠れ」

 

 水浸しになり、コスチュームも顔面も濡れ、眼に水が入った真堂は荒げた声を張り上げながら腕で拭うも、其の腕をまるで小枝でも掴むかのように、力強く握り締める相手が、ギラついた眼光を輝かせながら手をかざす。

 

 キィン――!

 

「がっ……」

 

 刹那。刃物のような鋭い音が鼓膜を揺らぎ、脳から全身に伝わるよう麻痺が生じり、体の自由は効かなくなり白目を剥く真堂は、前のめりになって倒れてしまう。

 

「おいおいヒーローよ、もう少し粘ったらどうだ?歯応えがねえぜ?」

 

 正体はギャングオルカ。

 野生のような凄みある眼光は、まるで狙った獲物を喰い殺すかのような、獰猛な肉食獣を連想させる眼つきだ。

 

「はうぅん!?あの普通の人やられちゃったんですか早くない!?何だか気持ち良さそう……あっ、でもでもここで気持ちよくなっちゃったりしたら減点されちゃうから…ここは、え〜〜い!!」

 

 伊吹は巨大な金属製の鋏を担いでた背中から取り出し、ギャングオルカ目掛けて、切り離すかのように凶器を振るう。

 

「ほい、やっ、せい」

 

 華風流は水鉄砲を相手の顔面に狙い撃ちをし、眼に水が入った伊吹は「わぷっ!?」と声を上げ、視界を封じられてしまう。

 

「緩いぞ小娘」

 

 一瞬、隙を作ってしまえば後は簡単。

 其処を突くようにギャングオルカは柔らかい頭部に超音波を纏い、伊吹の額に頭突きを叩き込む。

 

 

 キイィィン――!!

 

 

「きゃううぅぅ〜〜ん!!♡」

 

 今度は強度の高い音波で叩き込み、相手の脳は完全に麻痺してしまい暫くは動けなさそうだ。膝を震わせ絶頂したのか気持ち良さそうな面で気絶してしまう。

 

「殿二人この程度?おいおい華風流、俺たちも随分と舐められたものだな?」

 

「味気無さすぎ、アンタ達何の為にここまで頑張って来たんでちゅか〜?はい、論破」

 

 不敵に笑う二人は、現状端から見れば敵と抜忍の最恐コンビである。

 

 ギャングオルカ――個性『シャチ』

 陸上でもシャチっぽい事ができる。

 その内の一つが超音波アタック。シャチは水中の狩りに於いて超音波を得意とし発する事で、相手を麻痺させ獲物を食らうと言う性能がある。

 別名、海のギャングと呼ばれるだけは有る。

 

 華風流――『水弾忍法』

 イルカをモチーフにした二丁の水鉄砲を巧みに使い、水の弾を発射させる。

 また、個性を応用したのか屈折を利用し予測不可能な弾丸で相手を翻弄させる事も可能。

 ついでに言えば相棒のルカは雲雀の忍兎と同じく秘伝動物の扱いな為、秘伝忍法と掛け合わせることも出来る。

 

 鯱と海豚、混戦の場に参上――戦火の宴に舞い踊る。

 

 

「あの二人がやられた…!俺たちも行くっきゃねーな!」

「一気に数で攻めろ!!個性や忍法とかやたら撃ちまくれば」

 

 多勢のヒーローや忍がこの場に赴き、敵達の行方を阻むかのように増援が到着。

 やはり一対一に持ち込もったとしても二人が厄介な以上、最善策を練ろうにしても簡単に破れ散ってしまうのがオチだ。

 

「二人ではダメだと理解した途端、今度は数で攻めに来るか」

 

「まぁコレも想定内よね。じゃあ、出し惜しみせず()()やる?」

 

「当然だ、相手を一掃するには丁度良いだろう。其れに、我々の実力を示すのに持ってこいだ」

 

 お互い顔を見合わずとも、軽く言葉を交わすと二人は構えを取る。

 華風流が後方で二丁の水鉄砲を手に持ち、ギャングオルカは前方の位置に立ち、超音波を纏っている。

 

 

「個性〝合体〟秘伝忍法――『オール・エコーサウンズ・フェスティバル』!!」

 

 

 ギャングオルカの前に水の輪が出現し、リングから無数のイルカの形をした水弾が飛び出る。ギャングオルカの超音波で付与することで、超音波を纏ったイルカが、まるで水中を泳ぐかのように、縦横無尽に一帯を飛び回る。

 華風流の秘伝忍法――『オール・レンジ・フェスティバル』に、ギャングオルカのシャチによる個性の内一つ、超音波を駆使して編み生んだ合体技である。

 

「超音波を纏いしイルカを前に、貴様らは無事でいられるかな?」

 

 ギャングオルカの言葉など耳に届かず。

 辺り一帯の忍とヒーロー学生は跡形もなく、たった1分も経たず全滅状態。

 水でびしょ濡れになり、超音波の影響があってか意識が有っても自由には体が動かせない模様。

 

「これなら楽勝ね、ホラ…アンタ達」

 

 ピッピッピー!!とホイッスルでサインを出すと、黒ずくめの部下達は「イエッサー!」と意気込みある掛け声で返事をし、ギャングオルカと華風流を囲み、二人が中心になるように守りを硬める。

 華風流はこの日までにギャングオルカの相棒達にサインの練習や意味など、様々な工夫と練習を積み重ねて来た。

 そのため、号令に反応すればすぐ様対応してくれる。いわば女王の

 名に相応しいだろう(容姿が子どもなので、プリンセスが一番似合うだろう)。

 

「このまま保護施設に向かって滅茶苦茶にすれば良いわけね。まあ近くに多少茫然と突っ立ってるのもいるけど…」

 

「ただ油断はするなよ華風流、忍術や個性によっても相性ってものが――…ッ!!」

 

 華風流の余裕地味た声色に、油断するなと深く忠告するギャングオルカ。

 するといち早く気配に勘付いたギャングオルカは、超音波を多数連続で吹き飛ばし、紫色の銃弾を防ぐ。

 

「じゅ、銃弾!?なんだ!!」

 

 其れでも前衛の部下達は半分吹き飛ばされてしまい、防御が少し手薄な状態になってしまった。

 

 

「敵との戦闘は私が引き受けます」

 

 

 茶髪でアホ毛二本がチャームポイント、そして金色な瞳で相手を睨みつける少女を一言で例えるなら野良猫だろう。

 ここに辿り着いたのは蛇女選抜補欠の千歳。大型火縄銃を肩に担ぎ、引き金を引く。

 

「アイツって、確か千歳だっけ……何でも殆どのヒーロー公安委員会の人たちが合同訓練に却下の言葉が降り注いだとか…」

 

「アレは履歴の話だろう。現状、特に物騒な騒ぎも起こさず、目立ってなければそれと言った問題行動も起こしてない。まァ、警戒するのは解らんでもないがな」

 

 どうやら千歳のことは少し耳に入ってたようで、華風流はそんな千歳を凝視し、ギャングオルカは表情を変えず、真剣な眼差しを向けているだけ。

 

「私は()()()()()()()()()……ならば、敵退治こそ私の専門的な分野の一つ…

 

 予め忠告しておきます。

 私は蛇女の身…手加減はしませんし全力で行きますので、怪我を負う覚悟を」

 

「心配は無用だ小娘。喰うか喰われるかの世界に、怪我のない戦場などこの世には存在しん。

 デカイ口を叩いた以上、逆に喰われる覚悟はあるのだろうな?」

 

「死ぬ覚悟なら四歳の頃から出来てます」

 

 千歳の指が銃の引き金に触れ、ギャングオルカと華風流は無言で相手を凝視し、水鉄砲の引き金と、超音波を全身に身にまとう。

 

 

「取り込み中、悪いな」

 

 

 ――刹那。凍てつく割れた氷の音が、一帯に佇む人間の耳を貫き、予想外な攻撃にギャングオルカは華風流を庇うかのように前に立ち、超音波を盾にして防御する。

 氷山の一角と思わせる広範囲の氷結は、文字通り凡ゆる一面を凍り付けにし、ステージを氷点下へと変えた。

 

「敵退治…かなり手を焼いてるみてぇだなコレ」

 

 急激に温度差が変わった事により、白い息を吐く少年、轟焦凍はギャングオルカと華風流の二人を見定める。

 氷結攻撃では幾ら水で追撃しようにも防がれる上に、下手すれば凍り付けにされる。

 ギャングオルカが身を呈して庇ったおかげで怪我らしいものは無い。

 対して横にいる千歳は訝しげな瞳で、轟を横目で見やるも当の本人は気付いてないようだ。

 

「アイツ、エンデヴァーの息子!マジか!!」

「来ちまった…いや、こっちには華風流ちゃ…サンにシャチョーもいる!一人相手なら――」

 

「何だか熱い展開になって来たじゃないッスかあああぁぁぁーーーーー!!!」

 

『!?!』

 

 ドスの効く張り上げた声、聞くだけで暑苦しくなるこの言葉遣い、そして部下達が強烈な突風で吹き飛ばされる光景、誰が誰だか直感で解ってしまう。

 

「敵乱入!是が非でも、俺もその熱い嵐に乗っちゃいますよォ!!!宜しくお願いします!!」

 

 夜嵐イナサ。

 コスチュームと個性の扱いにより空中浮遊が可能な彼は、飛鳥の忍術と少し似た性能が有る。

 

「風…か」

 

 乾燥に弱いギャングオルカの口から、思わず溜息混じりの声が漏れる。

 シャチの弱点は火と風、元々水中に徹してるこの個性から考えて火や風が弱点なのは当然だろう。

 

「庇ってくれてありがとオルカ…けど、風は無理でしょ?なら私があの暑苦しい風使い相手するから…」

 

「俺は残り二人を片付ける。特にエンデヴァーの息子は俺にとって厄介だ…早々に消し去るのが利口だろう」

 

 これで最高戦力が三名揃ってしまった。

 クラス一、二位を争うNo.2の息子、轟焦凍。

 雄英高校推薦一位、そして士傑高校一年生、夜嵐イナサ。

 一次試験最初の通過者にして選抜補欠メンバー、千歳。

 

 この三人が敵を抑制する役としてはかなり適してる上に、ポイント的にはかなり高く、判断も良い。

 千歳や轟は災害救助よりも、最高戦力として乱入して来た敵と対峙するのが、この場としては一番効率が良い。

 夜嵐イナサも災害救助こそは可能で、使い方も良いが雑な上にやはり向いてないのだろう。

 それでも戦力の補助としてはこの場の流れとしては良い方向に加速している。

 

 

 しかし、其れはあくまで結果論としての話。

 文字通り三つ巴となった現状、三人の顔は険しくなる。

 千歳は轟と夜嵐を見て嫌悪を示す表情を立て、轟は千歳と夜嵐に対し怪訝そうな顔を、夜嵐は轟に対してのみ不愉快そうな面を示す。

 千歳は特にイナサに対する嫌味も苛立ちは無いが、ハッキリ言えば邪魔と鬱陶しい以外の何でもなく、どちらかと言えばさっさと失せろのような眼差しに近く、当の本人は気付かない様子。

 

 共通点があるとすれば、千歳と夜嵐は轟に対する何かしら嫌悪する感情が剥き出しになっているのは確か。

 何かしらの因縁が有るのか、この二人はえらく轟に苛立ちと嫌悪の矛先を向けているのだ。

 

 

「……何だよテメェら、退いてろ。

 俺が一人でやる、風使いのお前は戦力よりも救助に適してるんじゃないか?

 あとよく解らねえお前も、困ってるヤツの手伝いしたらどうなんだ?」

 

「ムムゥ…其れは俺が邪魔だって言いたいんスか?やっぱ昔と何も変わってませんね。

 少しだけ、体育祭で変わったかと思ったら…!」

 

「そう言う貴方こそ困ってる人を救助したらどうなんです?

 そもそも、最初に到着し相手にしたのは私です。貴方に退いてろなんて言われる筋合い無いと思いますが?」

 

 口を開けば憤慨する言葉が飛び交う。

 この三人は能力的にも連携を決めれば上手く迎撃でき、完封できる最強ペアだ。

 だが、それ以前に連携や協力体制が疎かな分、上手くいけるハズが上手くいかず噛み合わない。

 

「取り敢えず俺の炎で、一掃する」

 

 話し合っても埒が明かないと直ぐに理解した轟は、目の前の出来事に集中するように、炎を放出しギャングオルカと華風流を狙う。

 

「来るぞ」

 

「待ってアイツ炎使いなの!?」

 

 それだったら私もアイツ相手にしないとダメなの?と子どもらしい眼で相手を観察する華風流に、ギャングオルカはこれ以上何も口を開かない。

 あの炎がもし先ほどの氷結と同じ広範囲であれば、かなりマズイ。

 セメントガンを装着してる部下達でさえも抵抗出来ない。華風流は咄嗟に後方へ下がるよう号令を出し、部下達は逃げ出すかのように後方へ退がる。

 

 しかし、轟の炎が部下やリーダー格の二人に当たることは決して無かった。

 

 

「何で炎を出すんですかアンタ!熱で風が浮くんだよ!!」

 

 轟が炎を出した時、それとタイミングが被るようにイナサの強烈な突風が吹くも、位置と使い方が悪かった為、軌道が逸れてしまい上手くいかない。

 

「さっき氷を出したら防がれたんだ…それにお前の風のせいで俺の炎が吹き飛んだ。邪魔するんじゃねえよ()()()よ」

 

「またアンタはそうやって俺を!!!」

 

 見ようとしない!

 その言葉が出したくとも、声に出なかった。

 特に轟の「失せろ」の言葉に過激に反応したイナサは、とてもではないが落ち着く素ぶりは見受けられなく、冷静さを欠けてしまう。

 

「漫才コンビも見てて不愉快ですね、私が仕留めます」

 

 横目で眺めてた千歳は、呆れた口調で大型火縄銃を構えて発砲する。

 巨大で複数の邪弾がギャングオルカ達を襲うも、その破壊を示す銃弾は、直撃しない。

 

「なっ、」

「くっ…!」

 

 なんと千歳の銃弾が轟の氷に直撃してしまい、千歳の邪弾も轟の氷結も、相殺と言う形で崩れてしまった。

 

「お前…」

「何するんですか…!貴方、私の邪魔をして楽しいんですか?何で私が狙撃した矢先に氷で妨害を――」

「してねえよ!!さっきあの風使いが炎出したことにムキになって、また逸れるかと思ったから今度は氷を出したんだ!そうしたらお前の銃弾に直撃しちまったって話だ…

 お前こそ俺の邪魔してんじゃねえか、妨害はそっちだろアホ毛が」

「俺のせいだって言うんスか!?!

 自分が上手くいかないと今度は自分を棚に上げて他人を責めるんすね!!やっぱりアンタはサイテーな人間ッス!ヒーロー向きじゃない!」

「私だって邪魔したくてした訳じゃ有りません。そもそも貴方を相手にした所で利益も何もありませんから。

 ただ、今すぐに氷を出さなくても良かったんじゃないですか?何故、私が狙撃したタイミングで合わせるように個性を発動したんです?どー見ても狙ってるようにしか見えません」

「は?何処にそんな根拠が有るんだよお前ら」

 

「有りますよ、だって貴方は――」

「いいや有るね!だってアンタは――」

 

 

「「エンデヴァーの息子だから!!」」

 

 

 

 

 ピキッ――と何かの拍子が砕けヒビ入った嫌な音が、轟焦凍から聞こえた。

 

「さっきから……本当に何なんだよお前ら……」

 

 憤慨、

 憎悪、

 嫌悪、

 

 其れ等の負の感情が心を支配し、敵意の視線を送る。

 轟自身からして見れば、二人は突如と喧嘩腰になって吹っかけてくるような連中だ。

 相手がどれだけ自分を憎もうが蔑もうが、苛立ちこそ湧いて来るが特に気にしないようにと振る舞い、無視すれば問題ないだろう。其れが大人としての対応というものでも有る。

 しかし、轟焦凍にだって触れられたくない事情だって有る。

 

 特に、エンデヴァーの息子という言葉だけ。

 

 賞賛したり凄まれたりするのは、何処か複雑な気持ちでは有るが別に苛立ちは湧いてこない。

 ただ父親を思い出すことに対して腹立たしく思うだけで、一人一人の人間に怒りを露わにするのは気が引けるし、そう言ったことは無い。

 

 だが、

 父親だからお前も悪い。

 エンデヴァーの息子だから気に入らない。

 アイツの血を通ってるお前もお前だ。

 

 そんな罵詈雑言は、轟が尤も耳にしたく無いものであり、怒りに触れる言葉だ。

 

「揃いもそろって、エンデヴァーだからって…お前等は其れしか言えねえのか…アイツは関係ないだろ」

 

「有るんだなーソレが!!俺はアンタの父親を尊敬してた!」

 

 最初の否定的な言葉とは一変、イナサの言葉から意外な声が上がった。

 アンタの父親を尊敬してた。

 其れはつまり、元エンデヴァーのファンだったのだろう。

 どんな理由でエンデヴァーを嫌うのか、焦凍には理解できないし、一人一人を相手にするのも気が引けるので、結局のところ深くは追求しないし聞く気にもなれない。

 

「けど、俺はアンタの父親の眼が嫌いだった!遥か先を憎むような、ヒーローとは思えない荒ぶるその眼だけが!!

 そして、推薦入学の時、初めて出会った時のアンタの眼は同じだった!!」

 

「同じだと?巫山戯るな…俺はアイツじゃねえ…乗り越えたんだ……俺は、アイツなんかじゃねえ…」

 

「………」

 

 イナサと千歳の嫌味たらしい言葉に、頭の中が掻き乱れるように、物事に集中が付かず、意識出来ない。

 

 

 俺は、アイツを乗り越えた。

 憎悪は捨て去った。

 恨み辛みで生きることを辞めたハズだろ。

 

 己の心に問い聞かせるも、エンデヴァーに似せた憎悪たるや炎が再び轟焦凍の心を支配し火を灯す。

 とても荒々しく、気が削げるこの怒りは、以前の頃と同じ血に囚われてた過去の自分が、重なる。

 

 

 ――煩え、やめろ。俺はアイツとは違う、血の繋がりや個性なんて、関係ないだろうが!!!

 

 そんな憎悪の炎を振り払う轟は、否定するように頭を横に振る。

 

 

「ねぇ、黙って聞いてるけどアイツら何で喧嘩してんの?」

 

 華風流の退屈そうな言葉に、ギャングオルカは溜息を吐きながら呆れた様子で手に頭を置く。

 

「……さぁな、ただこれだけは言える。

 アイツ等はもうダメだ。やるべき事が見えず、喧嘩する始末…愚か者以外の何でもない、ああ言う馬鹿どもは論外だ」

 

 試験の合格基準は不合格の点数にまで陥らないこと。

 つまり、不合格になる条件は個々による基準値の点数が50点以下になること。

 合否のアナウンスは発表されないので、誰が既に不合格になってるのかは不明だ。

 少なくともギャングオルカの言う通り、三人は確実に合格に受からないだろう。

 

 

「兎に角!俺はアンタの事が気に入らない!以上ーー!!」

 

 イナサの荒々しい風が吹き、轟とは以下の波長が合わず又しても同じ結果となってしまう。

 炎は風で消し飛び、風は熱によって浮いてしまう。

 

 

「ああもう!だからなんで――」

「おい待て、そっちは確か!」

「ッ!――伊吹さん!」

 

 イナサの風によって軌道が削がれ吹き飛んだ炎は、麻痺して動けない伊吹と真堂に向けられる。

 このままだと、二人に被害が――

 

 

「何やってんだよ!!」

 

 なんて最悪な予想が脳に過ぎる瞬間、怒号を飛ばす緑谷出久の声が聞こえた。

 足に「滑走」という墨字で書かれた札を付け、真堂と伊吹を抱きかかえ何とか救出した緑谷は、怒る瞳を三人に向ける。

 

 

 己を変えてくれた友の声が、轟を支配してた憎悪を振り払う――

 

 

 




華風流
本名・不明
所属・巫神楽
好きなもの・勉強、チューチューアイス
スリーサイズ B73/W52/H60
誕生日・5月5日
身長・152㎝
血液型・B型
出身地・護身の民の村
戦闘スタイル 遠距離射撃、後方指揮

ステータス ランクB

パワーD
スピードB
テクニックB
知力A
協調性B

秘伝動物 イルカ

逆俣「華風流は常に愛用してる二丁の水鉄砲を巧みに使い、相棒のルカとコンビネーションを取りながら相手を翻弄する攻撃スタイルだ。
遁術は水、忍やカグラには水の遁術を使うものは少ないらしいな。
基本コイツの口調は赤ん坊を真似たり煽ったりすると言った喧嘩腰になることは多いが、根は真面目で何事にも真剣で取り掛かる姿勢は俺も賞賛する。
ただ、己の苦手とする分野に対して積極的でないのが欠点だがな。他にも「論破」や「すたる」などの言葉が多発するうえ、無理にでも大人としての格を作ってるようにも見えるがな。

因みに相棒のルカは秘伝動物で有り、しかも喋るそうだ。まるで雄英高校を務める校長・根津みたいだな。まァあの方は個性が発現したもの。それでも希少といえばそうだが、人が異形系でない限り、動物が喋る姿は見た事がないな。
超人社会だ、何でも有りの世界で一々気にしてても始まらんがな。

コイツと手を組むのなら、現場としての活躍や仮免試験だけでなく、息抜きとして水族館の手伝いも似合うんじゃないか?なに?俺が水族館を経営するようには見えない?
実は丑三つ刻水族館で何度か世話になった事があるんだ。…いや、俺の話はいい、また今度で構わない。あと華風流の以外的な凄さといえば腹の耐性だな。

アイツ、俺のいない間に棒吸いアイスキャンデーを30本も食したんだぜ?腹は壊れなかったそうだ」

華風流「ちょっとちょっと〜…私の紹介の中に言って良いことと悪い事があるでしょ!?そもそも棒吸いアイスキャンデーじゃなくてチューチューアイスです〜」

逆俣「ふむ?悪い事でも言ったか?そもそも紹介だぞ、一つや二つは構わんだろ。あと変わらんだろソレ」

華風流「あるわよ!無理に大人の格を作ってる〜とか、私は立派なオトナです〜、小さいとか言うな!」

逆俣「誰も小さいとは言ってないんだが…」

華風流「心の中で言ってたんでしょ!」

逆俣「少し妄想が激しすぎないか?考え過ぎだぞ華風流よ」

華風流「そ、そう…?なら、良いけど…
それにしてもオルカって改めて見ると本当にシャチっぽいわよね〜…」

逆俣「まあ個性の性能上だからな」

華風流「ね〜ね〜、ルカのモノマネやってみてよ!」

逆俣「マネ?…ああ、口癖で良いか?」

華風流「うん!ホラホラ早く〜」


逆俣「…惚れるなよ」(イケヴォ

華風流「か、カッコいい…!け、結構似合ってるじゃない///」

ルカ「……お嬢?」

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