尤も、最近は感想や質問を下さる読者が増えて作者の心は潤っています。喜びで満ち溢れています、もっと満ち溢れても良いんですけどね。とまあこう言った読者の声や質問など下さると、今まで伏線やストーリーの展開構成、更には引き寄せやキャラの感情や激励などを書いてて楽しいですし、作品を執筆して良かったな〜って思えるんです。
読者が楽しんで下さるのは、自分の作品への愛情や喜びも示せる事にも繋がって、創作書いてて良かったと実感が湧くんです。やる気が高まれば高まるほどに、よりきちんとしたストーリーやより良い作品にしようと心掛けれますので、この作品がここまで来れたのも、読者があってこそなんです。だから私は今でも執筆を続けることが出来るんです。一部では忙しいものや詰んだもの、または諦めたものもいますが、ここまで来たからには、やっぱりちゃんと投稿はしたいですよね。
ということで、本編をお楽しみ下さい!
時は少し遡り。
夜嵐イナサ、轟焦凍、千歳の三名がギャングオルカと華風流のペアに、二人に従う部下達を相手にしてる中、保護施設の守りを固める緑谷に、次々と救助に成功し連れてくる生徒達が見えて来た。
背中に重傷者を抱えた者、足を動かせる者を安全に誘導する者、中には足の骨に響かないよう配慮しお姫様抱っこで駆けつけにくる者。少しずつだが、着々とFUCのメンバーが減っていくのが見受けられる。
「あの皆さん!保護施設の守りを固めるのに適してる個性か忍術の持ち主はいませんか!?」
緑谷の張り上げた声に反応する人命救助の学生達は、緑谷の方に集まる。
「俺は地面を操ることが出来るぜ!範囲は限られてるが…防御なら適役だ!」
「私は竹の忍術で守りを固めることは出来るわ、弱点は炎だけど……相手はギャングオルカに…水使いの忍?なら安心ね」
「俺も使えるよ〜!」
数名の学生達が反応に答えてくれることにホッとする緑谷は、的確に指示を出して配置や性能などを鑑みて守りを固める。
保護施設を攻められれば終わりだ、況してや試験で対処出来なければ、それこそプロの世界の中生き残れるのは不可能。現実には通用しないだろう。
「よし、後の問題は……」
轟を始め、千歳とイナサが上手く迎撃できるかどうかだ。
轟焦凍は兎も角、千歳と名乗る少女や推薦入学一位のイナサの実力は直接眼にしてないので、未知数。
信じることしか出来ないが、仮に崩されてしまった場合も考えうる。
「どうやって助けるか…」
戦闘組の三人の方向を少しズラし、ギャングオルカの超音波に気絶させられた二人を見やる。
真堂揺、伊吹は体と意識が麻痺してるため、動くことが出来ない。距離も近いと言えば近いし、確実に安全とも言い切れない。轟焦凍、千歳が全力を振り絞り対処できるように、二人を助けることに越したことはない…のだが。
問題はあのセメントガンを発してくる部下達に、ギャングオルカの超音波、華風流と呼ばれる少女の未知数な実力。
先ずセメントガンで四肢に直撃でもしたら身動きが封じられるし、ギャングオルカの超音波は遠距離にまで飛ばすことが可能。況してや相手は手練れのプロ、隙を狙って受けて仕舞えば終わりだ。華風流の忍術は水遁で間違いは無いのだろうが、其れにしてはまだ全力を出してるとは思えないし、隠し球を持ってるに違いはない。
ただ我武者羅に助け出すという選択肢には、それなりのリスキーが含まれている。
だからこそ、単純且つ策略も練ずに突っ込むのは無謀に近い。幾ら轟焦凍達三人がいるとは言え、相手は部下を含めて数十人…フルカウルを駆使すればあり得なくもないが、二人を担ぐというのは、人間二人分の重さを背負わなきゃいけないことになるので、難しい。
「援護に適した個性か忍術…」
辺りを見回すも、防御に個性や忍術といった能力で役割を注ぐ者や、他の増援に手を焼く者も見受けられ、余り期待は出来ない。
「あ、伊吹さんが倒れてる…!」
ふと、斜め右後ろから芭蕉の声が聞こえたことに、反射的に振り返る緑谷。
芭蕉は心配性な上に人一倍仲間想いの強い悪忍の忍学生だ。倒れてる仲間を見れば助け出そうと息巻くのも必然。
「えっと、君は……?」
「あっ、ど、どうも……わ、私は芭蕉と申します…えっと、あの中に気絶してる私の仲間が……」
「う、うん…えっと…その事なんだけど……どう助け出すか悩んでて……芭蕉さんって、忍だよね?どういう忍術を使えるのかな?」
「えっと、私の忍術は墨字忍法と言いまして…筆に想いを念じて文字を書く事で、その文字の効果を発揮する忍術なんですが……」
「えっ?」
――普通に強くない?
芭蕉の忍術の性能を耳にした緑谷は、正直驚きと衝撃を隠せなかった。
例えば、「爆」と文字を書けば、爆豪のような爆発を生み出すことも出来れば、「氷」で轟の個性を出したり、「雷」で上鳴の個性を発動することが可能という、オール・フォー・ワンに少し似た凄味が有る。戦闘向きからサポートメインまで主に活躍できるその忍術を聞けば、簡単に救い出すことも可能だろう。
ただ欠点が有るとすれば、彼女の忍術はよく失敗することが多いらしく、余り有効的では無いらしい。
強力な物ほど、難しくなるのだろうか、まだ謎が多い部分もあり、緑谷自身は本当なら直ぐにノートにでも纏めたかったのだが、これ以上の雑談は減点されてしまうのでやめておこう。
「す、凄いね……文字通りの言葉を発揮するなんて…これって下手すればプロヒーローをも凌駕出来るんじゃ…」
「そ、そんな別に私は…!!全然、失敗ばっかしちゃいますし…最近はよく教官に叱られてばかりで…」
「そ、そうなんだ…えっと、早速策があるんだけど…成功できるかな?」
策はこうだ。
先ずは緑谷の足を無理やりでも動かすように出来るだけ早く気絶してる二人に駆けつけ、救助を果たす。
二人を抱える重量感でも、スピードを殺したくはないので、素早さに特化した墨字忍法でカバーしてほしいという、シンプルでわかり易く、簡単な事だ。
「そ、それなら滑走をうまく使えば…」
滑走。
滑らかに走ると書いて、滑走と呼ぶこの文字は、回避性能や予測不可能な動きで相手の攻撃を空振りに終わらせると言った安全面でカバーしやすい能力の効果を発揮する。
一見地味に見えるが、汎用性の高い忍術である。その分操作に難有りでもあるが、体術を如何に活用する緑谷の肉体面と、たった数日で個性を上手く扱えるよう導き出した精神面を備える彼ならば、直ぐに克服は出来るだろう。
こうして、二人が出会って数分の出来事だが、場繋ぎとして最悪な状況を回避し、改善可能な場面へと持ち込むことが出来たのである。
轟!っと激しく燃え盛る灼熱の炎に、竜巻の如く唸りを上げる烈風、二つが混ざり併せ、炎と風の檻を作り出すことで、敵に痛手を与え身動きを封じる合体技は、ギャングオルカを封じ込めるのには充分だった。
熱で風が浮くのなら、下から掬い上げれば良い。
炎と風の相性の良さなど、小学生の理科でも直ぐに理解出来る法則だ。
「身体は動かさなくとも…個性なら話は別…か!」
超音波の影響を受けた三人の内二人は、常に体からでも放つ事が可能な個性だ。
しかし、其れでも個性まで影響は受けてないと言えば嘘になる。個性は身体機能の内一つにして、体内への影響も関係してあるので、麻痺してても問題ないという現象は整理学的な法則としてはあり得ない。
その証拠に、イナサの風の威力・精度は減退してはいるが、遠距離だった為に麻痺の効果が不十分。ギャングオルカの超音波攻撃は確かに驚異的で厄介な能力だが、遠距離であれば効果は薄くなる。
一方轟は至近距離で超音波を浴びてしまった為、完全に動く事は不可能、更に個性の操作も不安定ではあるが、位置取り的には問題なく、イナサの風をくべることで、風の威力をカバーする事に成功。
千歳は轟と同じく身体を動かす事は出来ない。出来ない…のだが、彼女の忍として、野生的な彼女としての本能が、まだ諦めまいと麻痺状態でありながら、必死に抗い立ち上がろうと、身体を動かそうと力ませる。まるで無理にでも動かそうと体に鞭を入れてるようで、痛々しくも思える彼女の姿には、確かな覚悟と決意が見受けられる。
――先ほどまでの愚行が消えるわけではない…しかし、良いじゃないか。
「フフッ…!」
雨降って地固まる、敗北者に成り下がるより…己の愚行や誤ちに気付き、取り返さんとする必死な抗い。
そう言う足掻きは、決して嫌いではないぞ、お前たち――!
ギャングオルカの強者たるプライドと固執から生まれた、不敵な笑みは、一矢報いることには成功したものの、まるで効いてない様子だ。尤も、ギャングオルカの弱点は熱と乾燥に弱いという、弱点を突くダブルパンチで対抗したにも関わらず、ギャングオルカは微かに眼を細め、笑みを浮かべていた。
「シャチョーーー!!」
部下たちの悲鳴に似た叫び声が、辺りを支配する。
「ちょっ、嘘でしょ!?」
激しく唸る炎風の檻に閉じ込められたギャングオルカを目の当たりにした華風流も、流石に動揺を隠せない。
「どーすんだっぺ!?シャチっぽいシャチョーは熱と乾燥に滅法弱いんだぞ!」
「落ち着きなさいよアンタ達!良い?取り敢えず私たちがやれるべき事は、先ず炎と風を放出する二人を阻止すること!アンタ達は風を、炎は私がやるわ!オーケー?」
『サーイエッサー!!』
状況が覆されるケースなど、上の世界ではよくある話。動揺はするも、其れでも冷静さと思考力を欠けない辺り、流石はギャングオルカの元で研修を重ねて来ただけの事は有る。
華風流の指示に受け応える部下達は、返事を返す。腕に装着してあるセメントガンでイナサに標準を定める部下達は、すぐ様発砲しようと試みるも
「墨字忍法――斬!」
芭蕉のか弱くも、覇気の篭った声に呼応するように、元々札に墨字で描かれた斬の文字が、効果を発揮し斬撃を飛ばす。
殺傷力は無くとも、相手を翻弄するのには充分。彼女の忍法による斬撃を浴びた部下達は、昔ケラの様に悲鳴を上げ吹き飛んでしまう。
「チッ…蛇女の生徒も厄介ね…けど、セメントガンの効果を受けてるのも確か…」
二丁の水鉄砲を構える華風流は、苛立ち横目で芭蕉を睨むも、部下達だって弱いわけではない。死角からセメントガンで攻めて、彼女の動きを封じようと浴びせてるので、攻撃は通っている。
「悪いけど、終わらせてあげるわ」
華風流は水鉄砲を、地べたに這いずる轟目掛けて発射。
鋭い水の弾が轟を襲うも氷の個性を発動し壁にする事で、水の弾幕を阻止することに成功。
「アンタ…同時に出すことも出来るわけ!?複合個性も良いところじゃないのよ!しかもオルカの超音波浴びてんのに…」
華風流の悪態吐くセリフに、心の中で「まあな」と呟く轟は、炎と氷を休む事なく放出し続ける。
確かに炎と氷の同時発動は中々に操作が難しく、動作が鈍くなるので、戦術としては現段階としては宜しくないのだが…
(今動けねえ状態なら…別に問題ねえよな)
身動きが取れない状況下に於いては、存分に出し惜しみせず力を出すことが可能なので、問題はない。
近づけさせなければ、こっちが邪魔される事もないので、このまま休む事なく延々と炎と氷を出せば良い。但し能力においても限度があるため、永遠に続くとも言えないのだが…
「こうなったら…半々に別れてヘルプ崩すか?」
「いや待て!」
1人の部下の声に制するもう一人の部下は、何かの動きに反応し、臨時体制を取るも
「敵を制圧します――!」
緑谷出久のワン・フォー・オールのシュートスタイルで呆気なく、木っ端微塵に崩される。
蹴りの衝撃と、的確に狙う彼のコントロールの良さと繊細さに、呆気なく翻弄されるのも無理は無く、スピード勝負では緑谷の方が一線を超えていた。
「強っ!?なんちゅー学生…セメントガンでガンガン浴びせて固めろ!」
「じゃあ借りるね」
「はえっ?」
何処からか聞き慣れない声に、素っ頓狂な声を上げる部下は、気付けば腕に尻尾が絡みつかれ、セメントガンを発射し止めようにも遅く、尻尾に腕を利用され、仲間にセメントガンを浴びせてしまう形になった。
「尾白くん!怪我人は!?」
「もう済んだって!後何人かがこっちに加勢来るから、もう一踏ん張りだ!」
FUCの数は残り三名ほどで、着々と終わりに近づいて来ている。
守りを固めながら、救助を進め、敵の足止めというのは、初戦にしながら中々に良い結果が出せている。まだ何名かに無駄な動きや素人じみたものは感じるも、其れでも何人かが協力し場を繋ぐことによって、最悪な結果を阻止することが出来たのも、皆のお陰でも有る。
「オレ達も加勢しに来たぞ」
他にも、柳生や常闇、芦戸の姿も見受けられ、何十人かの部下達は成す術なく痛手を受ける始末。
「ゾロゾロ湧いて来たな…一掃射撃だ!せめて華風流ちゃんの邪魔だけはさせるな!」
部下一人の声に全員首を縦に頷く全員は、セメントガンと陣形を固めて構えを取る。
これなら死角からの攻撃を受けることなく、何十人かの動きは防ぎ固めることが可能だと考えたのだろう。しかし、其れも生徒に崩されることになるなどいざ知らず。
「ガッ――…?」
鈍い衝撃が、頬に伝わり吹き飛ばされる一人の部下。なんだ何だと集中が切れる者共は、また一人と次々に吹き飛んでいく。
「ふう、間に合って良かったわ」
忽然と姿を現したのは蛙吹梅雨。
全く気が付かなかった…気配もなく、まるで忍のように他の者達に気付かれることなく敵の懐に入り、難なくあしらう彼女に何処か大胆な所を感じる。
「蛙吹さんいつの間に!?」
理由は簡単。
個性を磨く練習で実戦レベルに到達し、結果彼女が生み出したのは〝保護色〟という新技を身についた。
相手の眼を欺き、敵の陣地へ攻め入る彼女の行動っぷりは、流石としか言いようがない。
他にも、雄英だけが全てではない。
「そちらにイナサが向かった筈なんだが…こんなに残ってたとは思わなんだ…これでは士傑の名折れよ!」
士傑高校二年のクラス委員長、毛原長昌。
体毛全てを個性の伸毛で伸ばしまくり、絡みつく毛を利用し敵を行動不能に陥れるこの技は、拘束用としては立派な戦術だろう。
「チッ!千歳のヤツめ、油断したな?」
ジャラララ…と不愉快な金属音を奏で、空間を支配するかのごとく鞭のように振り回すのは、総司。
美しき金髪は多少乱れており、紅き瞳には僅かな屈辱感が伝わる。
「こんな結果では…〝教官〟に何て言われるか…想像するだけで腹立たしい!!」
どうやら自分たちの教官にかなりの不満を感じてるらしく、良い想い出が無いそうで、総司にとってはとてもらしくない言動だった。
次々と敵が薙ぎ倒されて行く光景は、ヒーローと忍側がとても優勢を敷いてるようで、このまま行けば合格も僅かだろう。
――有る一点を除いて。
まだ、こちらには救助が済ませてない学生と、何よりも対処出来てない敵が二名存在する。
一人は、抜忍役の華風流。
轟を封じると息巻くもアッサリ見破られ看破された彼女は、違う行動に出ていた。
もう一人は、炎と風という地獄に相応しい監獄に閉じ込められたギャングオルカ。彼の方が尤も重傷に近いだろうレベル。しかし、彼はなお何の表情を変えず、平然と突っ立っている。
対峙しているのは、倒れ伏せている三人を除いて芭蕉だけ。
彼女の手元には武器はない。ギャングオルカが握ったまま離さず、現在炎と風の中でもなお、肌身離さずと言った様に、自分の武器でも扱うかの様に、握っているからだ。
「炎と風の熱風牢獄…か。良いアイデアじゃないか。
効果は覿面、もし超音波による効果を受けず、フルパワーで放出されていれば、これの倍以上の効果が発揮されたであろう合体技。
並の敵であれば、諦め泣いて、許しを乞うだろう……」
彼の言葉から返ってきたのは、賞賛だった。
皮肉にも感じるが、何より恐ろしかったのは、彼が平然と無傷でいることが、一番の衝撃だった。
そもそも炎というのは、火傷を負わせる危険性がある個性だ。風という相性の良い属性と絡ませるのなら尚一層。例え相手がギャングオルカでは無いとしても、無傷なんてのは免れない。
「ただ、そうでなかった場合…又は、既に相手の策を見抜き技が免れた場合は?対処され看破されたケースは?
次の一手を講じておくものが戦場としての常識…少なくとも、忍側では下忍以下でも解るぞ」
ギャングオルカが指を鳴らした刹那、大量の水が上から雨のごとく降り注ぐ。
いや、雨というよりもまるで滝に近いイメージだ。他にもバケツで上から水を捨て去る様な想像にも近い。
風が来ようと関係ない、上から水を浴びせれば問題ないのだ。
水を浴びる爽快感をBGMに奏で、乾燥と熱を吹き飛ばし、肌の潤いを再現して復活するギャングオルカは、超音波で一掃する。
この手の正体は華風流だ。
秘伝動物のルカの尻尾を利用し、大量の水を一気に放出することで、竜巻の如く手も足も出ずに相手を翻弄する忍術を、上に放出することで強風の法則に従うことなくギャングオルカに水を浴びせるという算段だ。
空間式把握、距離の計算、何処を狙えばギャングオルカに行き届くのか、頭脳が優れた華風流にとっては造作もないこと。
熱と風を吹き飛ばしたギャングオルカは、一歩一歩と重みある足踏みで千歳と芭蕉に近づき、無防備な芭蕉の胸ぐらを掴み、顔を近づける。
「で?次は???」
鋭利な刃物の歯、初めて他者に見せる野生的な眼、口を大きく開く鯱の口は、正しく海の王者に相応しい称号だ。
敵の笑顔もここまで来ればゾッとする。手も足も出ない芭蕉は「ヒッ…!」と思わず声を漏らしてしまう。
万策尽きたと思われた直後、腹部に重い衝撃を受けたギャングオルカは、一気に表情を歪ませる。
「彼女から……離れて…下さい……」
声の主、そしてギャングオルカの腹部に邪弾を撃ったのは千歳。
体への麻痺や負担がかかっていながらも、それでも全ての気力と恨みを火縄銃に込め発砲することで、普通の何十倍もの威力の銃弾を撃つことが出来る。
「千歳さん!!」
「……………」
芭蕉の声とは裏腹に、ギャングオルカは無言で相手を見下ろす。地べたに這いずる彼女の火縄銃を、蹴りで退かす。
「そんな…やはり……効いて…ない?」
常人が食らえば重傷は免れない、全身全霊を込めた一撃を喰らってもなお、立ち尽くすシャチに驚愕するのは必然。
「いや、今のは応えた。中々に良い一撃だったじゃないか……しかし、この食うか食われるかと問われる弱肉強食の中、簡単に食われる側になるほど俺も落ちぶれちゃあいない」
片手で芭蕉の胸ぐらを掴み、もう片方の手に持つ墨筆を遠くへ投げ飛ばすギャングオルカ。
後ろからはルカを離して二丁銃でギャングオルカの後を追う華風流も見受けられる。
「教えてやるよ――絶対強者のプライドを、食物連鎖の頂点をな!!!」
喉から吐き出す覇気の篭った大声に、二人はピクリと反応してしまう。圧倒的な捕食者の眼、幾多ものの血を流させたであろう刃物に近いギザギザに並べられた歯、鮫に近いトサカに、獲物を喰らい尽くすであろう口は、正しく自分たちが食われる側に回ってることをより強く実感させられた。
蛇と鯱の勝敗など、殆ど眼に見えてる状態。
二人を助けるべく行動を出そうにも、もはや一手を封じられた轟とイナサは悔やむ様に諦観する。
ギャングオルカの爪先が、千歳をえぐる様に振り下ろされた瞬間――
「二人から、離れて!!」
優しくも、怒気を孕んだかのような声に反応したギャングオルカは、すぐさま腕で顔を守るように防御に測る。
二本の刃物が、腕に食い込み血が滴り落ちる。
「コイツは……半蔵と小百合の…孫!」
相手の正体は飛鳥。
二つの刀を力任せに振り下ろし、ギャングオルカに攻撃を仕掛けるも防がれた以上、手を出さない。だが、此方も同じこと。しかし、胸ぐらを掴んでた芭蕉を離せば、相手にカウンターを仕掛けることは出来る。片方の手で飛鳥の刀を手に持ち相手の行動を防ぐ。
「武器を封じればお前も…」
――終わりだ。
そう告ごうと口を開いた刹那、彼女は手に持ってた武器を態と離すと、体を駆使して二本の足をギャングオルカの頭めがけてふるい落とす。簡潔に言えばかかと落としだ。
「しまッ――」
ギャングオルカの凶暴な一面とは違い、初めて見せる焦り色の表情。飛鳥は御構い無しと、二本の腕を封じたギャングオルカに追撃を実行する。
「オルカ待ってて!!」
華風流は瞬時に水鉄砲を発射させようと試みるも、手に重い衝撃が迸る。
「痛ッ――!」
「飛鳥さんの邪魔はさせません!!」
何処か頼もしく聞こえる男の声の主は緑谷出久。
蹴りで華風流の二丁の水鉄砲を離させ、少し遠い方へ銃が吹き飛んでしまう。
華風流にも焦燥の一面が見受けられた。
銃が無ければ、殆どフルに活用できないというのに、こんな時に限って妨害を受けるとは思わなかった。
華風流は「ルカ!お願い助けて!!」と腹の底から大声を出し助けを乞う。こんな非常時だからこそ、ルカの手を借りればまだ勝機は有る。地面から現れたルカは「お嬢!助けるぜ!」と大きな口を開き緑谷を襲う。
体制も悪い今、攻められれば避けられない。お互い緊迫と化した空気の流れに沿いながら、どう打破するかを――
『終了〜〜〜〜ッッッ!!!!』
アナウンスが流れ、ハッと我に帰る数名の学生と敵は、攻撃を止める。
試験終了の合図に、全員は立ち止まる。
どうやら配置されたFUCのメンバーは全員無事に回収することに成功したらしい。
長かったようだ短かったような、緊迫とした試験は、今を持って幕を閉じた。
緑谷と飛鳥、他にも芭蕉や千歳、轟とイナサは安堵の息を吐く。もしこのまま流れに沿っていけば、どちらかがやられていた。
因みに最後に救出を果たしたのは爆豪、上鳴、切島の仲良し三人ペアだ。
「シャチョーに華風流さん…お疲れ様です!!」
「すいません自分達、仕事できませんでした…」
「お怪我は大丈夫でしょうか?」
一斉に部下達がギャングオルカと華風流の元に駆けつけに来る。華風流は二丁銃を再び拾い上げ、痛みが生じる手をぱっぱと払う。
対してギャングオルカは表情を変えず「嗚呼…」と受け答える。
「お前達もご苦労だった…華風流も、以前とは違い立派に動いていた……感謝する」
「……いーわよ誉めなくたって…其れにしても改めて凄味を感じたわ…炎と風、そして千歳の忍術を受けても立ち尽くすなんて…」
「何を言う、お前がいなけりゃあ最悪、元々所持してたペットボトルの量でも足りなかったかもしれん。超音波で吹き飛ばすのも良いが…ダメージが残っちまうのには変わりはない。
何よりも、一番脅威と感じ取ったのは飛鳥の方だ…」
「飛鳥?小百合様の孫よね?少し話は聞いたことあるけど…まあ、そりゃあ元カグラの血を継いでるんだもの。
それなりに実力があるのも頷けるし…けど、炎と風の方が一番脅威じゃないの?」
「確かにな…だが、飛鳥のヤツ…俺の弱点を狙い突こうとした」
実はギャングオルカの弱点はもう一つ存在する。
炎と風、そして頭部。
鯱と言う生き物は、超音波を纏わせて頭部で頭突きをする習性があるも、実はとても柔らかいのである。
多くのものはメロンと名付けているが、鯨と違って脳油を固めることは出来ないため、頭を突かれるのは炎や風よりも一番致命的なダメージを受けるのだ。
「でも華風流ちゃんにギャングオルカさんも凄いっすよ…だって、『拘束用』プロテクターを装着してるのに、あんなにも猛威を振るえるなんて……」
もし今の言葉を他の生徒に聞かれれば絶望に耳を疑うだろう。
つまり、華風流とギャングオルカは全然本気ではなかったという事だ。
例えで言うのであれば、雄英期末実技試験で、教師達が身につけてた圧縮重りを捉えれば良い。
――いや、炎と風の檻の渦は俺も痛手を受けた。周りからは無傷に見えたのだろうが、所詮は単に誤魔化してるだけ…それ程に魅力だった上に千歳の最後の悪足掻きは、正直堪えたな。
まだ腹部に痛みが出てる…なるほど、これが闇に生きてきた獣の為せる技…鈴音に続き小尾斗も、中々に良い生徒を持ってるじゃないか。
そして最後の飛鳥…アイツは、武術でも習得してるのだろうか?蹴りの技は、とても素人じみた動きではなかった…かといって玄人という訳でもない、中途半端な表現だが、頭を狙われば終わりだった…弱点を知ってたのか、或いは気まぐれか…何にせよ、あと一歩早ければどうなってたことか…
「フフ、今年の生徒は、中々に活きが良いじゃあないか…強者が増えるのは好ましい事…アイツらの経験の糧になれば、喜ばしいのだがな…」
先ほどの敵らしき面影は既にどこにも無く、生徒思いの優しい鯱である。
「そーだ華風流、お前小百合の孫と話さなくても良いのか?」
「…別に。どーせまた会うだろうし…」
「そうか…」
こうして第二次試験は幕を閉じ、もう直ぐ試験の合否が発表される。
誰が脱落したのか、誰が受かったのか、そんな悩ましい時間の中で少年少女達は時間を過ごす。
教えて!為になる!べべたんと作者の質問コーナー!
べべたん「なあ、閃乱カグラに遁術の属性があるじゃんか?アレってこの作品だとどの位数が有るんだ?」
作者「火、水、風、土、雷、氷、毒が原作通り。だけどこの作中では更に追加、陰、陽、閃、そして煙、木、無、回復が出るんよ。
煙と木は全くでないので、殆ど失われた属性と言われたり、無は実はかなり強力だったり。何も出来ないのでは無く、状況下に応じて殆ど、又は全ての遁術が使える感じかな。春花が良い例え。春花の遁術は無だけど、傀儡の技術を扱えてるから、ガスバーナーの〝火〟や、電気ショックで〝雷〟、薬品では氷や毒、つまり殆どの遁術が使えるんや。そう考えると春花さんはかなり強いね。ただ焔や飛鳥みたく一つの遁術を磨くのと、今扱える遁術の熟練度を高めるのにはやっぱ常人と比べて技術や量が必要だからそれなりに難しいんやで。回復はシノマスの美野里が良い例えかな。
因みに作中では命懸けが無い設定です。その代わり服がはだけたり、露出が多いほど防御が薄く、代わりにパワーは上がるので、追い詰められれば追い詰められるほど、強くなったり立場も変わったりするんだ。つまりゲームで言うステータスのパラメータ設定は無し。属性として扱われる三属性はこんな感じ、陽は光、陰は闇、閃は斬撃と闘気、こんな感じやな」
べべたん「はえ〜…属性にもこんなものがあるんだな…紫の遁術は陰、大道寺は閃、鈴音は風で良いのか?見てると二つの遁術を扱うのもいるよな。飛鳥とかだと風に時々土も使ったりするが…雪泉は氷と風だよな。その場合、どう言う基準で遁術の属性を決めてるんだ?」
作中「せやで、べべたんも賢くなったなぁ〜。
おっ、良いところに目を落としてくれたねべべたん。飛鳥は確かに風もあるけど土も扱う…別にそれ自体は何ら不思議では無いんよ〜。中には轟くんの個性婚みたく父と母の属性を受け継いだ者もいるからね。そうなると、自分の忍術の戦闘スタイルと、秘伝忍法に関わって行くで。飛鳥は土も扱うけど基本は風を使うでしょ?だから多くその属性を扱うものに基準が設けられるんや。雪泉の場合も、風と氷をよく使うけど、秘伝忍法の黒氷や覚醒では氷王になるやろ?風はあくまでカバーで派生し氷を武器として扱ってるから氷で間違い無いんやで」
べべたん「じゃあ両備や華風流はどうなるんだ?更に柳生は設定のwikiでは属性雨になってたけど、どう説明するんだ?」
作者「これ実は遁術ってそう考えるとめっちゃあるんよ。例えば獣、岩や水、雨、音、爆発、花、木、煙、そして麻痺に臭い、空気、そう考えるとメッチャあってややこしくなるんよ。そこで派生の元となった属性に与するんばい。
爆発は火から、岩は土から、雨、水は氷から、花は木、木は陽や水から、音は雷から、煙は火から、麻痺も雷から、臭いは陰から、空気は陽や閃から。
つまり、両備は火、華風流は水だけど元は氷、柳生は雨属性だけど氷を扱うから氷なんやで〜。ただ獣は少し違って、閃に属するんだけど、古代忍法の恐竜になったり神獣になったりする得体のしれない忍も存在するから、近々新たな遁術として生まれたりするかもね。因みに何で閃になるかと言うと、獣は牙や爪を使う為、斬撃や打撃に特化することから閃になったんや。叢の狼ちゃん、小太郎達を振り返ると納得いくやろ?叢は斬撃を得意とするから閃だね」
べべたん「成る程なぁ〜。ていうか、普通は氷じゃなくて水じゃねえのか?」
作者「昔は水やったで。ただ作中でも話した通り、水の属性を扱う忍が少なくなってきたから氷になったんや」
べべたん「ウルススショックはどんな属性?」
作者「キミ、なんで他作品の技を聞いてくるの?」