光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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皆んなはヒーローと忍か、敵と忍、どっちが好きですか?自分は全てです。




135話「自由を求めた開放」

 

 

 

 

 朝――目が覚めると、窓から差し込む眩しい日差しが私を襲い、思わず反射的に目を強く瞑ってしまう。

 直射日光の強さに直視出来ない私は、眠た気な瞼を腕で擦り、背筋を伸ばす。

 

「うぅ〜……んん?今、何時だっけ……」

 

 射し込む光から逃げるように、背を向ける私はベッドの横に置いてあるテーブルの上から目覚まし時計を手に持ち現在の時刻を確認する。

 AM:11時42分。

 …うん、遅起きだ。生活的リズムとしては宜しくない時間。もう直ぐ昼食の時間帯に入るであろうこの時刻は、周りから見ればダラけてると言われても否定はできない。

 

「うぁ〜…昨日、深夜遅くまでテレビ観てたからな〜…」

 

 特に何もやってなかったが、暇潰し程度と就寝に陥るまで特に何もすることが無かったので、普通に遅くまで起きてただけだ。因みに昨日の就寝時間(正確には今日とも呼ぶが)はAM:1時56分。10時間分の睡眠を取った訳か…

 確かより多くの睡眠を取る人間は基本、体力が多いと聞く。睡眠と言う安らぐ言葉で勘違いしやすいが、人は眠りに就くと体力を消費するように体はできているのだ。

 例えば老人は早寝早起きをするだろう。しかし其れは身体が弱体化しつつ、体力が疎かになるためであって、多くの老人は早朝に目覚めることが多いそうだ。だからこそ、若者の自分たちはこんなにも遅く堕落的な生活を送ることだって許される。

 

「今日は…いないかな〜…っと」

 

 なんて自分の都合良い回想に浸りながら、私は窓を開けてはベランダに立つ。

 上のベランダからグイッと顔を出し、外の景色を眺める私は、監視を行うも、どれもこれも監視して観ればまともな人間ばっかり…

 元気よく仕事を務める極一般的なサラリーマンに、談笑しながら歩行する三人組の婦人達、仲良く手を握り締めながら初々しく微笑み合うカップル。

 これが半神野区崩壊に平和の象徴不在後、犯罪率上昇中の御世代だとは思えない。

 私は追っ手が近くにいないか、又はどこか監視してないか確認をし終えると、リモコンを操作しテレビの電源を点ける。

 

 

 最初に流れた映像はニュース。

 今話題として盛り上がってるのが、No.2ヒーロー、エンデヴァーに関してのヒーローニュース。

 何やら象徴不在後の彼に関してどう思いますか?とか、彼がオールマイトの代役として適任者か?だの、単純にエンデヴァーについてどう考えて?だの、明らかに半分嫌味でもあるんじゃねえの?って本音をブチまけたい位に住民に声をかけてる辺り、マスゴミってよーまー本当に暇なんだなって思っちゃったりする。

 

「ここの所ずっとこればっかかぁ………」

 

 神野区の激戦後。現時点での社会は善かれ悪かれ未来へ加速するなんて言うけど、私の観てる中ではより一層過激に悪化してる様に見える。

 平和の象徴が不在の今、悪の抑止力として謳われたオールマイトはもう何処にもいない。

 

「あ〜、ウチは絶対イヤだ…なんか同情出来ちゃうな、エンデヴァーのこと」

 

 事件解決数史上最多の肩書きを誇るNo.2ヒーロー、エンデヴァー。

 人々の不安と困難の大部分はオールマイト引退後、彼にのしかかり、批判と願望の声が絶え間ないと聞く。

 何よりも本人が一番皮肉であろうことは、オールマイトと比較されてしまう事だろう。

 彼がオールマイトのことをどう思っているのか詳しく知らないし、多くの国民がオールマイトとエンデヴァーが接する場面すら見たことが無いと聞く。

 私の推測としては恐らく、エンデヴァーとオールマイトの間に何か見えない壁でもあるのだろう…そりゃそうだよね、No.1とNo.2のやり取りなんて裏事、つまり本人同士でしか解らないし。

 しかし、願っても無いNo.1と言う不釣り合いで彼には似合わない称号を得た本人としては焦燥と憤慨に身を焦がしてしまうんじゃ無いだろうか?

 況してや全国の国民を背負い守り、No.1としての肩書きを持ちながら生きていくことは、恥晒しよりも酷いものだ。

 勝手に期待されても困りますよってのは、痛いほど分かる。

 

 私はベランダの窓とカーテンを閉めて、太陽の光に遮断された薄暗い密室の部屋で寝巻を脱ぐ。

 ホザボサとした長い茶髪を揺らがせながら、上から下の順に脱いで行き、白い肌が露わになる。太ももや、桜色のブラジャーで止められてる豊満な胸、透き通った背中、肩や腕には忌々しい傷痕が残っており、これを見るたびに父親のことを思い出す。

 

「………」

 

 覇気の篭ってない無気力な眼で、私はボロいクローゼットに手を伸ばし服を着る。

 学生服だと平日と今の時間に違和感を感じると思うので、敢えて私服で街を巡回する。本当はボロい一軒家から出て調査を行うのは余り気か乗らないが、追っ手が来ないことを祈りながら、私はテレビの電源を消し外へ出る。

 

 

 

 外の新鮮な空気を吸い込む私は、一先ず深呼吸をする。なるべく怪しまれない様に少し可愛げのある格好にしてみたが、似合うだろうか…

 まあ、しょうがないよね?小・中学でずっとお洒落やファッションのことなどに時間を費やすことは愚か、遊ぶ暇さえ作らせてくれなかったから、こういう…なんて言うのかな?自分が女の子としてどう似合うのか、どう可愛く見えるのか、詳しく解らないのだ。

 周りのアイツらは特にどうとも気にしない様子だけど、私だって一応女の子の身である訳で…

 

「………でも、女子陣に褒められたり、可愛いとか言われたりするのも、嬉しいかな…」

 

 まぁ、女子も女子で頭のネジ吹っ飛んでるヤツが数名いるんだけどね?あっ、決してバカにしたりしてないからね?いや寧ろ仲間バカにしたり蔑まされたりするヤツ嫌いだから。そこまで人間を捨ててない。

 

 外に出た私は足早と範囲内のルートを巡回し、警察やヒーローの眼、忍の追っ手などを意識し警戒しながら、何の変哲も無い街を歩んで行く。

 特に一般人の視線から察して怪しむ素ぶりは見えないので、ここの周辺は一先ず大丈夫だろう。

 

「今日の収穫は無いかな〜?ここ数日間ずっと何事も起きてないけど…」

 

 起きたら其れはそれで警察やヒーロー、ついでに忍までここの地域を警備強化し、調査し辛くなるが、辛抱しなければならない。

 逆に考えろ、同志を探し出すことが出来るじゃないか。

 まあ、当然今の御世代は外れも多い訳で、個性を持て余した輩や抜忍は以前と比べて数多く姿を現している。

 

「キャーーッ!?ちょっ、誰か!強盗よ捕まえて!ヒーロー!!」

 

 とても犯罪率が上昇してるとは思えない街並を歩く中、女性の甲高い悲鳴が上がり、私はすぐ様視線と供に意識を集中する。

 事件の匂いだ。

 私は素早く、でもって怪しまれない反応で事件が発生した方角へ突っ走る。

 

「アッハハはチョロいなレジのババアも!すげぇぜイエロー!お前の図体のデカさと馬鹿力でレジごと持ってくとか!」

「いやいやいやぁスリの白浪姐さん、我慢出来なくてやっちゃったの!俺の取柄は図体デカイのと力自慢が売り文句でさ☆」

 

 コンビニの方から自動ドアを突き破るよう豪快な登場をしたのは異常型と若い女性の二人組み。

 一人は図体デカイ黄色の体色をしたイッカククジラが擬人化したであろう敵。もう一人は下忍と思われる抜忍。青い忍装束を纏ってるので、忍で間違いはないだろう。

 レジを片手で持ち逃げし、肩に乗っかる女性はレジの強盗に胸が踊ってるのか、欲望が満たされてかなり満足してるそうだ。

 

「なんだ…コンビニレジの一般強盗…ハズレだぁ」

 

 あんな光景これで10回は観たな。

 なに?最近の敵はコンビニに恨みでもあるのかしらん?最初のおにぎり万引きと比べればこっちの方がハードル高いと思うしウケもいいと思うけど、結局はショーモないね…しかも実力的に雑魚だし。

 

「誰か頼むよォヒーローいないの!?」

 

 そりゃあ簡単にヒーロー来ちゃったらねぇ…って側から心の中で呟いていると。

 

「すいません!私下忍ですが事件の噂に嗅ぎつけて参りました!」

 

 おっ、ヒーローではないけど忍がやって来た。

 見た所高卒かな?見た目ではアテにならないこともあるけど、善忍が来てくれたようで、周りの人間は一安し…

 

「参りましたじゃねえよボケェェ!!」

 

「がっ――!?!」

 

 しかし、現実は思い通りにはいかない。想像通りの展開に描いてくれない。

 背後から突如、姿を現したのは竹刀を持ったスケバンの不良女だ。竹刀を背後から頭蓋骨を砕くように強く嬲り打ち、後頭部を強打した女性は痛みに悶絶し気を失う。

 

「ハッハハだっせぇバーーカ!!」

「おい早くしろよイエロー!あのバカレジごと持って来やがった!」

「忍法、マキビシの術ー!ハハッ!辺り一面マキビシだらけで近づけねーだろ!」

「こんな効率よく派手に金稼げるとか、汗水垂らして飯食うよりこっちの方が効率よくね?ハハッ、本当信じらんねーよな」

「クジラの姉御!もう直ぐに出発しましょう!!」

「ははははっ!この世は金と暴力さ!良いかい?アタイらの名前しかとその身に刻んときな!チーム〝レザボア愚連ドッグス〟よく覚えときなタコ女!」

 

 赤信号、皆で渡れば怖くないとは正にこのこと。

 最近は敵と抜忍が徒党を組み、計画的に行動する奴らが目立ち始めた。

 因みに愚連とは紅蓮隊のことでは無く愚連、つまり愚かな連中と書いて愚連らしい。忍がグレたことから、忍グレなんて呼ぶ連中が多々存在しているらしく、焔紅蓮隊とは一切縁もゆかりもない無関係な名前である。

 忍グレの存在が発覚したのは、神野区後の一週間後位に頻繁的に増えるようになり、器物損害ならまだ可愛いレベルだが、犯罪レベルの案件にまで取り掛かり、ニュースでは忍の評価が少しずつ低下していき、上層部も頭を悩ませてるようで私としては歓喜的な結果だ。ああ言う自分が上の立場で偉くふんぞり返ってる野郎どもが、悩ませ泡吹く姿を想像するのは愉快なものだ。

 善忍と悪忍は現段階に於いては、ヒーローと手を組むべき助力の存在だ。しかし、こう言った問題騒動を起こす抜忍は容赦が無く、犯罪行動まで染まる姿は、誰が何を言おうと敵そのものだ。

 逆に、最近として問題行動を起こさない抜忍は、自警団扱いとされている。焔紅蓮隊が良い例えだろう、他にも自警団として扱われてる抜忍は少なからず影に潜みながら生活を送っていたりもする。

 

「ただ、それでも私たちと同じ生き辛いって言う分には変わらないだろうけど…」

 

 中でも忍の追っ手に迫られる人生を送るのは中々に厳しく、夜中に寝る際も警戒を怠ってはいけないので、兎に角安心が湧く生活が送れないのだ。

 

 ♪〜♪〜♪

 

「ん?電話?」

 

 懐から鳴り響いた着信音に気付いた私は咄嗟に耳に手を当てる。

 

「もしもし?蒼志?」

 

『お久しぶりです、元気にしてましたか?なんて言葉は不釣り合いでしょうけど…どうです調子は?』

 

「あ〜ん〜…ビミョー…」

 

『何ですかそのはっきりしない返答は?まさか、忍の追っ手に狙われてるとかではありませんよね?』

 

「違うって。たしかに絶対安全という保証が無い今じゃ警備も強化されてるし、得なくもない話だけど…それだったらもっと緊迫感有るよ?こんな女子とも思えない気怠い声なんてしないし」

 

『そう…ですか。フム…なら、良いですが……所で、ここ暫くの間調査はどうです?何か収穫ありましたか?』

 

「コンプレスと儀欄から連絡があったのと、荼毘と漆月は知らねえか?って連絡しか来てないわね…因みにここんところの騒ぎがあるとすればコンビニ強盗くらいかな?」

 

『コンビニ強盗って…、こっちは銀行強盗に人質誘拐犯など物騒な事件が絶え間なく私の目前で起こってるので活動に悪いですね…しかも追っ手の目から察して自由に上手く動けないというのも、トガヒミコの言う生き易い世の中にしたいと仰る気持ちは解らなくもないかと……』

 

「あははっ、確かに!

 ――そーだ蒼志、アンタ荼毘と漆月のこと知らない?」

 

『知りませんよ。私もかれこれずっと連絡をしてるのですが…一向に繋がらなくて…私として連合のメンバーは誰一人とて欠けて欲しくないですし、裏切りという線も考え難いですが…

 取り敢えず死柄木が今度全員に収集を掛けるそうなので、荼毘と漆月も来るはずでしょう』

 

「そう…なら良いけど……まあ、お互い頑張りましょう蒼志」

 

『ええ、貴女こそ捕まるなんてヘマ犯さないで下さいね?龍姫』

 

 プツンッ――!

 ツーッ、ツーッと通話の切れた音が私の耳の中に残り、端末を再び懐にしまう。

 

 

 ちょっと、遅れたけど…私のことについて語ろっか?

 私の名前は龍姫――本名は竜胆沙汰。敵連合のメンバーにして抜忍の身である私は、実は善忍家系で育った忍なのだ。

 そんな私が一体なぜ、敵連合なんていう犯罪集団の味方に加入してるのかって、疑問に思う者は少なからず存在するだろう。

 

 私の忍術は――『龍闘忍法』

 闘気を操り龍の姿へ具現化させる私の忍術は、戦術や対人戦としてはかなり優れてる方だ。

 遁術は無。龍の闘気が属性に触れることで、その属性の効果を吸い、そのまんまの属性の効果を発揮する、いわば吸収型だ。

 例えば蒼志の蒼炎忍法を出せば、そのまま炎を吸い効果を己のものとするし、相手によって属性も変われば、吸収出来ない遁術は無い。

 まあ、龍脈からその効果が来てる訳なんだけど…其れはオール・フォー・ワンだっけ、死柄木の師匠が少しネタバレしちゃったので想像で解ると思う。

 

 

 私の家系は善忍と言っても、そこらの学生とは違いどちらかと言えばエリートに近い肩書きを背負ってた。

 何せ私の家は龍式武術家の元で生まれ育った娘で、次の師範後継者として産まれた時点で既に選ばれた。

 龍式武術とは、戦闘力と技術技量の全てを注ぎ込まれた、忍術を一切使わない武道の事である。

 だから龍式武術家に産まれ育ったと聞けば大方察しが付くだろうが、私も龍式武術を学んでたし、少なからず基礎から中級までは身に付けている。

 

 

 でもねぇ…私は弱いんだ其れでも、才能が無かったんだよ。

 

 

 何しても上手くいかない。

 血反吐の努力を注ぎ込んでも報われない。

 無能の私には誰からも褒めてくれない。

 

 逆に才能があるとすれはトガヒミコか漆月辺り…

 神野区の激戦に終止符が打たれ、漆月はあの後別人のように変わり始め、彼女は「私に武術を教えて」なんて言い出して来た。

 最初は戸惑ったし驚いた。

 才能の無い私でも教授することは可能なのかと疑問を心に募らせながら、その流れに沿うように学びたいと物申して来たのはトガヒミコとスピナーだ。

 私は止むを得ず、親に言われ培った知識をそのまんま伝えたわけなんだけど…トガヒミコは忍らしい訓練なんて受けてないのに、一週間で基礎を学んだわけ、凄いよね?

 スピナーは筋肉に悲鳴が上がってギブアップしたので、始めて三日で終わったから何とも言えないけど…

 

 でも、一番の才能を持ってるのは漆月。

 一体、どうやって生まれればあんな風になれるのか、理解にするのに頭が痛くなる…

 漆月はたった三日で私の教え込んだ武術を全て習得し、今じゃ私よりも段位的にも実力的にも全て上だ。

 ああ言うのを才能マンと言うのだろうか…

 

 

 

 おっと、話の論点が逸れてしまったようで……

 私が幼少期の頃。立派な師範となり道場の跡を継ぐべく、小さい子供が受けて良いレベルでは無い鍛錬を毎日強いられた。

 忍の訓練を受けるのはどの忍家系の子供も同じだろうし、親の期待に応える為にも懸命に頑張ろうと、文句の垂れ言は吐かずめげずに、親の指示に従って来た。更に言えば武術も学ばなければならないので、他の忍学生よりもハードだった。

 何せ訓練を受け始めたのが四歳の頃なので、今思い返せば尚更無茶をやらされたなと言葉が漏れるのは無理もない。

 

 でも幾ら訓練を続けても、武術を磨こうと私は他の子と比べて一向に成長しなかった。

 成長速度が遅いのか、鍛錬が少ないのか、父親は焦りを覚え私に過激な訓練を受けさせた。訓練のミスや口答えをしてしまうと、父親に何度も虐待に近い暴力を振るわれ、言う事聞かなければ丸一日飯や風呂は入らせず反省室なんて言う可愛いレベルとは違い、ボロい倉庫に一晩中入れられたこともあった。それでも柳の木に近いボロボロな体で何度も激痛に耐え忍ながら訓練を受け続けて来た私は、心も壊れかけていた。

 そんな私だからこそ、こう思った。

 

 

 なんで、忍にならなきゃいけないのだろうか…と。

 

 

 そう考えるのは歪だろうか?

 そう考える私は異端者だろうか?

 そう考えてはいけないのだろうか?

 

 願っても無い希望に託され、望んでも無い後継者として育てられ、私に何のメリットが有るのだろうか?

 そう考えてしまう私は、もうこの頃から既に忍に向いてなかったのだろう。

 12歳の頃から、親との頻繁たる喧嘩が勃発し始めた。

 忍になりたくない、何で私が後継者に選ばれなきゃいけないのか、勝手に他人の希望を自分に擦り付けるな、と。

 だけど父は『ダメだ!我が家系は代々、武術家として伝統を築き上げて来たのだ。独り身のお前が後継者にならなければ、龍式家は誰が跡を継ぐ?お前の身勝手なワガママに付き合う暇はない!そんな戯言を言う暇があるのなら訓練しろ訓練!お前には死塾月閃女学館に入学し、我が道場を背負う義務があるのだ!』聞く耳持たずで私の言葉なんて理解してくれやしない。

 父親にとって大事な価値基準は娘よりも道場なのだ。本当に、自分の父親がコイツなのかと疑いを持ちたくなる。

 

 だから、中学まで続いても跡取りの事柄や、才能の無い私を自分以上に鍛えさせるべく、遊ぶ暇すら作ってくれなかったし、友達作りすら許してくれやしない。

 学校帰りなら尚のこと――一人で帰宅路に足を運ぶ私は、周りの女子学生を見ると、自分も違う場所に生まれたら、こう言った普通の人生を送れたんじゃ無いかって思う。

 

 食べ歩きながらお互い携帯を見あったり、

 何人かの友人と誘ってカラオケに行ったり、

 一緒にファッションについて語ったり、

 

 女の子らしい生活を送れたんじゃ無いのかな。

 なんて、ありもしない幸せを望みながら私は毎日を過ごし、日々を重ねるに連れて忍に対する嫌悪感が生じていた。

 大体忍と言うのは上層部の命令に従う駒であり、大名や主人の為に命を投げ捨てる鉄砲玉のような存在だ。其の考えに対して父は当然だと言わんばかりの言葉を立てる。

 

 そんな考えに、私はどうしても納得出来なかった。

 

 忍だって生き物云々関係なく一人の人間だ。

 そんな人間だけが特別に死んでも良いという考えに賛同できない私は、ある一件をきっかけに家出をした。

 

 

『本物を!取り戻さねばならない!誰かが、誰かが血に染まらねば――!』

 

 

 ヒーロー殺し・ステイン

 別名・忍殺しステインなんて悪名背負う彼の所業は、終わりの垣間見えた執念に、私は思わず身震いした。

 彼の歪にして殺意と悪意が溢れる執念は、只ならぬ憤慨と憎悪に染まった言葉は、正しく反乱者。忍やヒーローの、現実の常識を壊さんとする姿勢は、私の心の導火線に火を点けるのに充分だった。

 別に意思を継ごうとか、フォロワー地味たことを口に出すつもりは無いが、今の自分を変えれるんじゃ無いかと思った。

 

 そこから、私は決別するように最後に父親に言ってやった。

 私は道場の跡継ぎはしたくないし、忍にもなりたくない、と…ダメ元で言ってみたけど結果は同じ…父は猛激怒し反抗する私を痛め付けるように猛威を振るった。

 まあ結果は見ての通り…力及ばずと言った形で、私は血まみれになりながらも床に倒れ伏せていた。

 口の中には鉄の味が広がり、肩や腕には深い火傷を負い、こうして今も忌々しい傷痕が嫌味のように残されている。

 肋骨は折れたわ、内臓にダメージもあったで、滅多打ちにされ死にかけた私は決心した。

 

 

 もうこの家とは縁を切ろう――話し合っても埒が明かない。

 

 

 こうして私は、敵連合の味方に着いたって訳。

 スピナーや荼毘、トガみたいにステインに固執する訳じゃないけど、でもステインと繋がりが確認されたわけだし、入るならここしかないだろうと、そう思ったからだ。

 

 

 私たちだって、自由が欲しい。

 己の欲望に忠実でも良いじゃないか。

 好き勝手に生きるのが一番だ。

 

 別に逃げ出したと罵倒を受けても気にしないし、寧ろこれで良かったと心の底から悔いは無かった。

 私以外にも漆月を始め、鎌倉や蒼志、闇に黒佐波(捕まっちゃったけど)など、忍に不満を抱き反する者や、衝動を抑えきれない者、連合の味方になりたい者、差別せず死柄木は受け入れてくれた。

 逃げ場として利用してるように見えるかもしれないが、私を受け入れてくれた以上、棟梁はもちろん、仲間の皆んなやメンバーの一員として役立ちたいのが本望だ。

 

「まぁその分、月閃の取り消しもあったし、親が汚名を被ってはいい気味だよね」

 

 また、私のこれからの行動は全て父親に対する反抗。恥を晒し泥を塗らせる。

 私は駒じゃないし、道具に成り下がる気も更々無い。少なくとも連合の中に所属してるメンバーの多くがそうじゃないだろうか?私は――

 

 

 ――ズドオオオオォォーーーン!!

 

 

 違う方角から轟く爆発音に、私は足を止める。

 方角に視線を向けると、黒煙が巻き起こっており、恐らく爆発による火事が発生したのだろう。

 大勢の人間が蟻の群れと化し、逃げ去るように悲鳴を上げながら一目散へと逃げ去っていく。

 

「今度は…なに?」

 

 これでまた小さな事件だったら欝憤晴らしに忍術使って暴れてやろうかしら?なんて半分冗談地味た言葉を並べながら現場へ足を踏み入れると

 

「――えっ?」

 

 私は、視界に映る現場に無意識に息を詰まらせる。

 燃え盛る火事、先程小型トラックで逃げてたであろうコンビニの強盗犯の〝レザボア愚連ドッグス〟が、原型のない無残な姿で大炎上し歪な光景を晒していた。

 イエローと呼ばれてたイッカククジラはタイヤと混ざっており、白浪と呼ばれてた下忍は、電柱に埋まれたように手足が出てて少し気色悪い。

 他のメンバーはコンクリートの道路やトラックに混ざるように溶け込まれており、何が起きたのか頭の中での理解が追いつかなかった。

 

 

 

「おいおい、何だよ…拍子抜けだな。

 大の大人が…況してや敵と抜忍が徒党を組んで小さなコンビニのレジを盗むだけ?

 

 変だと思う…普通これだけ集まればもう少し大きな目的を持つと思うのに……」

 

 

 事を起こした敵と思われるメンバーは五人、道路のど真ん中で燃え盛るトラックを前に、並び揃え立ち尽くしていた。

 一人は全身に鱗を纏った翼を持ち、トカゲらしい男は尖ったマスクで口元を隠している。

 一人は全身黒ずくめのスーツを着用し、ハット帽子がお似合いの男性側らしき人物はペストマスクで顔面を覆っている。

 信号の上に座り込む白いコートを着た男は、同じく顔を覆うペストマスクで札束を数えている。

 図体がデカいのが特徴的で、拳にはメリケンサックを着用し、ペストマスク…にしてプロレスラーのような風貌は限りなくパワーファイターに近いだろう男性は、拳に地面を突き立ててる。

 最後の一人は、真ん中に立ち尽くし小さな声で独り言を呟いている。客観的に見えて恐らくこの四人のメンバーを纏める頭と思われる人物だ。

 

「世間ではお前らのことを何て言うか知ってるか?

 ――病人さ。お前ら全員病気だよ?病人は俺と壊理で治さなくちゃあなぁ?」

 

 言葉から察して、間違いなく大物に近い人物だ。

 今まで拝観して来た有象無象なチンピラとはレベルが違うコイツは、限りなく強い。

 

「若ァ、次はどうします?」

 

 ここで竜人っぽい男が、棟梁と思わる人物に言葉を投げかける。

 

「クロノ、金は?」

 

「はい、レジの金は全部頂きやした。騒動に駆けつけに来るヒーローや警察…ああ、勿論忍が来る前にこっちもトンズラずらかりやしょーや…――『オーバーホール』」

 

 クロノと呼ばれる人物はオーバーホールにそう言うと、若頭は無言のまま焼き尽くす火事を見届ける。

 

「どいつもこいつも…病人ばっかだな…」

 

 さもゴミでも見るかのような蔑んだ視線を送るオーバーホールは、軽く咳払いをし立ち去ろうとする。

 

 

「…成る程ね。イカれた現実社会に不満を持つ人間は、穴の貉同士で居場所を作るってワケね…」

 

 私は何故かと高揚感が昂り、久し振りに胸を躍らせた。

 今までは、仲間探しに夢中になっててアレだけど…今度は組織ごと引き入れるという話も…悪くはないかもしれない。

 物陰で眺めてた私は口角を釣り上げ、敵グループに目を付けた。

 

 

 上層部や親の言いなりなど関係なく、上という立場のしがらみに支配されることなく、今の自分を大切にして欲しい。

 今の忍達は上の常識や価値基準に心を縛られてる人間が数多くいる。其れを解放することで、私と同じ悩み苦しむ忍を救うことに繋がると信じて行動してる。

 

 大事なのは自分が何になりたいのか、何をしたいのか…だ。忍としての基準など関係なく、人間としての心を大事にして欲しいのが、善忍だった私から言える一言だ。

 

 

 

 

 場所は打って変わり、半蔵学院と雄英高校A組が仮免試験に挑む頃――とある特殊拘置所では。

 

「そろそろ後期が始まるだろう?いや、もう始まってるのかな?忍とヒーローが手を組み合う世代はどうだい?陽花が望んでた結果と、僕が望んでた結果が一致したのかな?なんて…ハハは。

 

 まあ前書きは置いといて…だ。君はてっきり弟子の教育に専念するものかと思ってたけど、意外だなぁ――それで?僕に何を求めに来たんだい?――〝オールマイト〟」

 

 タルタロスの面会室にて

 

「ケジメを付けるだけさ――オール・フォー・ワン」

 

 

 神野区で激突した善と悪の師匠が再び、衝突する。

 

 

 




う〜ん、文章書くのが難しかったな…時々書き方忘れたりするんだよね…少し落ち着いて小説でも読んで文章鍛えようかな。

ここでプロフィールです。
キャラクター紹介&シノビマスター。

龍姫

本名・竜胆沙汰
所属・敵連合開闢行動隊
好きなもの・スタミナ丼
誕生日・7月29日
身長・163㎝
血液型・A型
出身地・不明
戦闘スタイル・近接戦闘、遠距離戦闘、

ステータス ランクB

パワーA
スピードB
テクニックA
知力D
協調生B

秘伝動物 双龍

敵連合開闢行動隊の一員にして、元は正しい善忍家系の娘として生まれ育った武術家。
道場を継がせようと捲したてる父親に、忍を駒としか扱わない上層部に嫌気が刺し、ステインの騒動をキッカケに家出を決意。何とかブローカーに目を付け敵連合へ入りたいと懇願し、マグネとスピナーと供に連合へ赴いた。
好戦的な一面もあるが、根は真面目で優しい姉御肌な表面も持つ、仲間想いの強い少女である。

シノビマスターカード

忍法:龍戦の鉤爪
敵2体に大ダメージを与える

秘伝忍法:ドラゴンズロア
敵全体に超絶ダメージを与え、中確率で敵を混乱にする[コスト中]

リーダースキル
敵連合の攻撃力・体力を20%アップ

パッシブスキル
攻撃を受けると稀にカウンターをする。
火傷を必ず無効化。

リンクスキル
敵連合 攻撃力10%アップ
対象キャラクター 敵連合メンバー+龍姫

戦に舞う龍の乙女 攻撃力30%アップ
対象キャラクター 葛城+龍姫


作者だけのちょい裏話!「龍姫ちゃんの家は戦国時代から伝わる忍家系で、武力が高いのが有名で誇りある一族だったんだって!因みに葛城の両親も龍式武術家の門下です」

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