光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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投稿遅れて申し訳ない。大変面目無い!
投稿したかったけど作者の都合が悪く、忙しがしくて…
更に久しぶりの投稿なので文章力も…本当に文才が欲しいと思うこの頃、最近自分のやりたい章に全然追いつかないので気持ちが…頑張っていきたいな。




138話「意味のない戦い」

 

 

 

 

 

 

 深夜の1時近く。

 明日に向けての授業カリキュラムに課題確認、書類整理、日誌や各々の生徒によるプロフィール確認などに目を通してる相澤梢太は、夜分遅くまで残業を続けている。

 教師という仕事の役割は常人が考えるよりも何倍何十倍も厳しく、マトモに睡眠を取れるかどうかさえ疑わしいと言われている。

 眠た気な眼を擦りながらも、今日も何の変哲もなく通常通りに仕事をこなすだけ。

 

 そんな時だった――監督不行届の連絡が入ったのは。

 

「オイ、イレイザー・ヘッド!オタクノ生徒、A組ガ、グラウンドβニイルゾ!責任問題叱ッテコイ!」

 

 ピタッと、さも時を止められたよう一瞬だけ硬直する。

 センサーによる特殊ロボットの連絡を真に受けた相澤は、眠気や憤りよりも、気怠さの感情が優っていた。

 

「マジかよ…こんな深夜に、本当にウチの生徒が?」

 

「緑谷出久、爆豪勝己、飛鳥ノ三名ヲ確認。

 間違イナシ、個性ト忍術使ッテ暴レテルカラ止メルノ早ヨ」

 

 うわぁ…面倒くせえ…あの三バカは何やらかしてるんだ。

 と心の中で悪態を吐きながら、顰めっ面で教師部屋から外に出る。

 爆豪勝己に緑谷出久…この二人の組み合わせを聞いた時は納得が行ったし、色んな意味で最悪だなと思考が過った。

 

(緑谷と爆豪の二人組みは元から相性や仲が悪いってのは、実技試験が始まる以前に踏み込んでたが…

 恐らくは仮免試験のことで揉めあってんのか?いや、にしては飛鳥は無関係な筈だ…)

 

 飛鳥。

 相澤梢太からすれば、どこにでも居そうな極普通の女子学生という印象がデカイ。

 だがその見た目や性格とは裏腹に、伝説の忍・半蔵の孫という血縁が流れてるのもまた事実である。

 危険性も無く、所々マイペースな部分や明るみな一面を持つ彼女は、到底忍とも思えないが、そもそも自分だって余り忍と連携を組むことはほぼ皆無に等しいので、今の世代に生きる忍があんなものなのかという、軽い主観は持っていた。

 誰とどう仲が良いのかは軽く見た目や生活による問題行動で大抵の把握は可能でも、どうしても飛鳥と爆豪が結びつかない。

 

(そもそも、アイツも暴れるような玉じゃねえと思ってたんだが…

 どちらにしろ、注意しなきゃいけねえのに変わりはねえし…如何なる理由でも叱らねえ訳にはいかないな…)

 

 問題児三名に厳重な注意と、更に自分の仕事が控えてると想像してしまうだけで気が遠くなりそうだ。合理的な主義として、一刻も早く止めに入らねばいけないし、時間を無駄にするのは大の苦手なのだ。

 

「へい、待ちなよ!」

 

「?」

 

 聞き慣れた、でもって何処かユニークな声に、真っ暗な外に佇む一人の男性に視線を送る。

 

「あれ?貴方が何故ここに……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳴り止まない爆音は、火花散り市街地に似せた道路が爆破で煙が巻き起こり、元々視野が悪い状況が更に悪化する。

 三つ巴を体現したかのようなこの戦況、飛鳥も若干顔は浮かんでおらず、横蹴りで食らった横腹を押さえ込んで刀を握る。

 

「待ってって!何も戦い合わ無くたって良いじゃないか!誰も君の憧れが間違ってたなんて一言も言ってないよ!そもそも――」

 

「あんま喋ってると舌、噛むぞ」

 

 これ以上の言葉は不要。

 何もいらない、

 何の意味もない、

 何の変化にならない、

 さっさと拳を構えて戦えや、と言わんばかりに爆破を使って距離を詰める爆豪。

 狙いは緑谷出久――其れもそのハズ、元々こうなったのは緑谷と爆豪による仲の溝と個性による関係上でこうなったのだ。

 オールマイトや半蔵の関係も含めて全て、この闘いには意味のないようで意味がある。

 向かってくるのなら迎撃を仕掛けるしかない、決死の覚悟でワン・フォー・オールの5%を発動させ、臨機応変に対応する。

 常時5%発動なら、大抵の攻撃は見切れるし、少なくともこの距離なら――

 

 ボオオォン!と破壊と爆破の衝撃は広範囲に渡り、狙われてない飛鳥でも土煙が襲いかかり、視界を奪われてしまう。

 反応し回避の選択を試みても、想定を上回った爆破の威力に喰らってしまった緑谷は、軽い怪我を負う。

 

「どう…して……!」

 

 それは避けきれなかった疑問の言葉ではない。

 どうして、そこまでして闘い争わなければ駄目なのかという、純粋な問いに爆豪の表情が歪む。

 

「んなもん…俺が聞きてえよ…!!」

 

 緑谷の悲壮な声色に、爆豪の苛立ちが加速し、奥歯を強く噛み殺す。

 個性が発現し、緑谷出久が無個性だと知っても、遊び相手では有った。あの時、無個性の出来損ないが才能の溢れた自分に心配されて以来、其れが原因でムカッ腹が立ち、何度もなんども叩き潰すように虐げた。

 

 

 無個性のくせに――

 

『デクって、無個性がないんだって。ダッセェな』

 

 弱虫のクセに――

 

『こ、これ以上は!ぼ、僕が許ひゃなへぞ…!』

 

 道端の石っころだった癖に――

 

『大丈夫、立てる?頭打ってたら大変だよ!?』

 

 

 なんで、何で――お前は立ち上がって、俺の背中に張り付いて来やがるんだ!!!

 

 

 ずっと不快だった。

 時折、奇妙で気持ち悪かった。

 とにかく鬱陶しかった。

 

 無個性で泣き虫で、喧嘩も弱いタダの出来損ない。

 だから見下して嘲笑ったり、蔑んだりもした、虐めに近い揉め事だってしょっちゅう起きてた。

 自分に心配されてから、緑谷出久への見方に嫌悪が混じった時から、彼に対する行動は日々エスカレートしていった。

 別に、好きで虐めたりだの笑い者にした訳でもない。

 

 

 ただ…離れて欲しかった。

 

 

 これだけ痛めつければ、無個性の自分は遠ざかって行くんだろうな…これでもう視界に入らず、心配されることだってない。

 それなのに、こんだけ嫌われるような行動をしたのに…それでも、それでもコイツは…

 

『待ってよかっちゃ〜ん!次は何して遊ぶの?僕も混ぜて!』

 

 俺の跡を、付いて来やがる。

 ここまで来ると、人間軽く悍ましさを覚えてしまう。

 普通、嫌われるような行いをした人間と関わろうとするだろうか?

 少なくとも自分だったらそうはしないし、精々喧嘩勃発レベルだろう。

 何度も引っ剥がしても殴っても、除け払おうと、絶対に離れようとしない。

 そんなことが幼い頃から中学にまで続いて…ずっと不愉快だった。

 

 そんな気色悪いヤツがオールマイトに見初めて貰って、実技試験で協力し合う関係になって…自分だけ納得したように上へ登り詰める緑谷に、焦りを覚える自分に、どうしても認めたくないと否定する自分が確かに存在する。

 

「戦えや!!!」

 

 苛立ちと、焦燥に混ざった声色を発する爆豪は、両手をくっ付け真っ直ぐ、平行線を描くように飛ぶ。

 それに対する緑谷は、咄嗟に体をバク転させ、蹴りを顎に入れる。ガンッ!と何処か鈍くて、嫌な音が鮮明に聞こえた。

 

「緑谷くん!爆豪くん!!」

 

 喧嘩勃発。

 一触即発とした空気の流れが加速を増し、後戻り出来ない場面へと到達。中々見ない、急所にダメージを負った爆豪は、舌を噛んでしまったのか口から僅かながらの鉄の味が広がり、ベッ!と朱く染まった唾液を何処かへ吐き飛ばす。

 

「ご、ごめん…!かっちゃ――「俺の心配なんかすんじゃねえよ!!クソデク!!」…ッ」

 

 緑谷の善意を、薙ぎ払うような荒々しい言葉が、緑谷の行動を制する。爆豪の瞳は、少しずつ震えており、息遣いも荒い。これは、顎の激痛と舌を噛んでしまった痛みとは違う。

 

 

「あん時もそうだった…

 ――そうやって、何食わぬ顔で……無個性のテメェが!俺の心配なんかしやがって!!あの時からずっとそうだった!!!」

 

 

 あの日を境に、自分と緑谷には何処か見えない壁に隔たれ距離を置くようになった。

 無個性の人間が自分の側に居ることに目障りと感じるのもそうだし、素直じゃないという性格も合点が行くが、何よりも爆豪にとって緑谷に対する怒りと嫌厭は、彼の底が知れない優しさ。

 個性も、力も、才能を持つ自分が――無個性で、無力で、凡人以下の人間に心配された。

 そして、あれだけ嫌われる行いを、況してや中学のヘドロ事件前の学校内では「来世に賭けてワンチャンダイブ!」など、自殺をお勧めする程のガキ大将。最早、世間で言う悪質な〝イジメ〟と呼んでは過言では無いほどに。

 

 其れなのに、離れないどころか…背を追い求めようと張り付くどころか…

 

 

 ――君が、救けを求める顔してた!!

 

 

 なんで、テメェが俺を救う?

 自尊心や格差関係なく、なんでここまで痛ぶってた人間を救おうと手を差し伸べる?

 常人の考えでは明らかに、見捨てるかヒーローに託すべきだろう。あの時から既に個性を持ってたのかは未だに謎に包まれてる。しかし、其れでも…救おうとは思わないだろう。

 

「気色悪いんだよ!!デクもデカ乳女も!!何食わぬ顔で平然と前に進んで!!!

 デクは無個性だったのに強くなってて…俺よりも先に行って…背中に張り付いてたヤツが…!俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()…!!んでもって俺が弱かったせいで…飛鳥(オマエ)の爺さんに酷え目に遭わせちまった……」

 

「かっちゃん…?」

 

 爆豪の、何かしらの枷が外れたのか、怒号に似た大声を曝け出す。

 頭をクシャクシャと掻き毟り、肌に浮かび上がる脂汗が滴り落ちる。とても先程まで冷静で落ち着いてた彼とは別人のようで、それでもって口を開けば暴言と悪意の言葉しか吐き出さない、不良を表した爆豪とは思えない様子だ。

 冷静さを無くし、突然マグマが噴火したような、彼の焦燥と憤慨を兼ね合わせた印象に、二人は戸惑う。

 

 何よりも、緑谷出久にとって大きな衝撃は――爆豪の口から〝自分の背中を追う存在になってしまった〟という発言だ。

 今まで他人を見下し、時に強者には敬意を表し、そして…絶対の正義であるオールマイトの勝つ姿に憧れてた人間が、今まで石ころと見下し雑魚と蔑み、痛ぶり滅多打ちにでもしてた幼馴染が、自分(ボク)に憧れている。

 その事実は、衝撃と変わり、目頭が思わず熱くなる。

 自分は今でも爆豪勝己を尊敬し、背を追い続けてる。今でも自分の実力では彼には敵わないと不安が染まってるし、固定概念に囚われてるからか、逆らえる気にもなれなければ、憧れの視線は変わらない。

 

 そんな人間に、自分を憧れと認識してたことが何よりも嬉しくて、衝撃的で…そして、それすら気付かずに一人で全ての想いを背負わせてたことに、悲哀の感情が重なる。

 

「何でだよ…何で飛鳥(テメェ)は俺を責め立てねえんだよ!!「お前のせいだ」って、「お前さえ捕まらなければ」って、何でそんな簡単なことも!怒ることすらしねェんだよお前は!!!

 何とか言えやデカ乳女ァ!!」

 

「爆豪くん…違うよ…?違う、爆豪くんのせいじゃないよ……?だって、元の原因は敵連合でしょ?それに、爆豪くんは捕まってた囚われの身だった…だから…」

 

「あんなん目の前で見せられて!!死んでたかもしれねえ爺さんの姿見せられて、被害者面出来る訳ねェだろうが!!!」

 

 あんな物を見せられて。

 あの場所で何も出来ず。

 ただ観てるだけだった。

 神野区から放映で流れてた死闘の中、半蔵がオールマイトを庇い致命傷を負っていた。

 液晶画面でも伝わる、血の海に浸る祖父に泣きじゃくる飛鳥。雪泉に体を支えて貰いながらも、それでも絶える事のない涙を流し続け少女。初めて見せる彼女の泣き顔。

 

 俺は、アイツの笑顔と幸せさえも…壊しちまっんだなって――俺の心の何かが、亀裂を生じさせた。

 

 

「お前の幸せを実の祖父を!あんな目に遭わせちまったのは俺の原因でも有るんだよ!!オレなんかを救っちまったから…!俺みてえな弱え奴の為に…!!

 なのに…お前は何も言わねえ笑顔で前向きになってさぁ…!!考えないようにってしてたけど、フとした瞬間に脳裏から湧いて来て…!そこからもう…一日中悩みを抱え込んだりして!!………――畜生がぁぁ…!!」

 

 段々と涙混じりに染まっていく爆豪を見て、胸が締め付けられる程に痛みを感じる飛鳥は、首に巻いてるスカーフをキュッと握る。

 

「何でだよ…なんで、何で…!!何で俺は憧れのオールマイトを!!お前の大好きだった半蔵を――終わらせちまったんだ!!!」

 

 

 小さい頃の憧れ。

 今だから見える他人の幸せ。

 大好きだったオールマイトを、捕まった自分が原因で時代と供に終わらせてしまった。

 学炎祭の期間中、寿司屋で一緒くたになる時、いつも微笑み幸せそうに世間話や友人の話で頬を綻ばせる彼女の幸せを、祖父の笑顔。片隅で観てた自分だから少しは理解できる。

 そんな彼女と祖父の家庭を少しでも崩壊させてしまった自分に、責任の自負を背負っていたのだ。

 そんな…何も出来なかった足手まといの自分が、神野区後に「爺さん大丈夫だったか?」なんて心配言を言える筈も無く、心に晴れないモヤモヤが募り溜まりに溜まったガスを発散させる。

 

「もう…自分でもどうすりゃあ良いか解らなくなっちまったんだ!!」

 

 様々な困惑が爆豪勝己を悩ませ呪縛する。

 緑谷出久に越えられたこと、

 オールマイトの引退、

 半蔵の重傷、

 飛鳥と半蔵、

 思考を巡らせるだけキリが無い。

 煮え滾る負の感情が溢れ返り、自虐する。だから、自分の元凶で悲しませてしまった自分を殴ってでも良い、責めて欲しかったのだろう。こんな爆豪勝己は見たことがないし、本当にあの爆豪だと疑い深く感じてしまう。

 

 

「そっか…そうなんだ………だから、戦おうってなったんだね…爆豪くんは、優しいな――」

 

 

 ――はぁ?

 最初に出てきた彼女の言葉は、誹議とは無縁な慰めだった。

 そんな彼女に唖然としてしまうのも無理は無く、飛鳥の瞳は潤いが漂っていた。

 爆豪勝己が自分とじっちゃんや、オールマイトの為にここまで叱咤してくれるなんて、初対面と比べれば信じられないだろう。けど、日々を積み重ねることで理解したこともある。

 爆豪は確かに周りにも自分にも厳しいが、それと同時に相手に対する敬意や気遣いが確かに存在する。

 単純そうに見えて、実は繊細で些細なことや細かいことを視察し考察する辺り、不器用というか器用というか…他人からの視点では外側しか知られない、実は内心では他人の心に気遣いの出来るヒーロー向きな少年なのだろう。

 

「俺に気遣いなんかするんじゃねえよ!!俺は…オレは……!」

 

「オールマイトや緑谷くんの件だけじゃない、私やじっちゃんのことでここまで悩んでくれるなんて…私はそんな爆豪くんが優しく無いとは思えないよ。

 でもね――」

 

 飛鳥は意を決した目つきで、一呼吸し、一気に距離を詰める。

 そして…指に力を込めて思いっきり――

 

 バチィン!

 

「「ッ!?」」

 

 殴る。

 表現では平手打ちを殴ると言い表すこともあるが、飛鳥は指の爪先を掌の肉に食い込ませ、グーで顔を殴っただけだ。

 突然の行動に殴られた本人の爆豪は勿論、見守ってた緑谷も驚きを隠せない。

 

「――そんな、自分の所為だなんて二度と言わないで!!!じっちゃんは、そんなこと絶対に思わない!口が裂けても絶対に誰かを責め立てたりはしない!!!」

 

 飛鳥が他の誰かに見せる、激憤。

 それは曇りなき純粋な怒り。

 別に嫌いで爆豪を怒ってる訳では無いし、逆鱗に触れたとか、悪いことをしたとか一切関係ない。

 確かに爆豪勝己がここまで自分に責任を抱いて、悩んでくれたのは嬉しいことだ。多分、焔ちゃんに「飛鳥、お前は最強の友達だ!」と真正面から堂々と言われる程だろう。

 だけど…「自分なんかの所為で」、「俺なんか」、と自身を誹謗する言葉は、半蔵やオールマイトの善良な行為を否定してしまうことに繋がるから。

 

「救ける人間に価値も無価値も存在しない!じっちゃんは、じっちゃんが決めた忍道を信じてやり遂げたんだ!!爆豪くんや雲雀ちゃんが捕まったからじゃない、其れが原因だって言うのなら私たちだって救えなかったことに非があるんだから。

 何でもかんでも一人で背負って、自分だけの所為にしないでよ!」

 

 飛鳥の意見は尤もだ。

 自分だけが悪い理由にはならない。

 確かに自分の非力さに打ちのめされてしまい、責め立ててしまうのも自然なのかもしれない。

 半蔵学院に帰ってきた雲雀ちゃんがそうだったし、爆豪くんがそうなってしまうのも、今の本音を聞いて納得した。

 でも、其の理屈で筋を通すのなら友を救えなかった自分達こそどうなのだ?

 其れだけならまだしも、延々とオールマイトの背中を託し、信頼して安全を預けていた上層部達もどうなのだ?

 

 皆んなが皆んな、原因に当たるわけではないか。

 

 

 そんなのは結局、オールマイトや半蔵の引退する原因にはならないのである。

 そもそも飛鳥は、半蔵が床に伏せる原因を恨んだりはしていない。大体他人を怨む暇が有るのなら「そんなことよりも、修行は順調かのう?」なんて心配してたのが馬鹿馬鹿しく思える位の事をじっちゃんに言われそうだ。

 

「忍だって常に命懸けで事を為して、想いを抱えて闘ってるの。いつ死ぬかも解らない闘いに身を投じて、明日が来るのも解らない道を歩んで…私たちは強くなってるんだよ。

 じっちゃんだってそう、神野区の件だけ覚悟してたんじゃ無い。如何なる任務も常に生死を賭けてたんだよ。だから、じっちゃんがああなっちゃったのは悲しいけど…でも、今思えば誰も救えずに生き延びるより、誰かを救い役立つ事のほうが、じっちゃんは後悔してないと思うよ。私ならそうするし、少なくともじっちゃんの気持ちは理解できるよ」

 

「………もし、テメェの爺さんが本気であの場で死んじまっても、同じこと…言えんのかよ」

 

「大切な存在を失って無いからハッキリとは言えないよ?でもね、私ならじっちゃんの想いを背負って生きていきたいと思ってるよ。

 オールマイトが、緑谷くんに託したように…今度は私が責任を持って…そして、じっちゃんの分も闘う」

 

 死んだら其れは悲しむんだろうなぁ…

 辛くて泣き叫んで、殻に閉じこもってしまうかもしれない。

 けど…大切な人を亡くし、泣きじゃくるのは決して悪いことじゃ無いから。

 涙が枯れた頃にはきっと、強くなってるかもしれない。

 少なくとも、忍の死は決して無駄ではないのだから。

 

 

「死んでしまった命は二度と回帰しない…でも、その人の思想や意思を引き継ぐことは出来るから。

 だからじっちゃんが死んじゃっても、精々堂々と胸を張って生きていくよ。其れに、私が笑顔でいないと、じっちゃん心配して化けて出てきそうで怖いし!」

 

 最後は少し明るみがかったような、お調子者のペースに戻り若干困惑する。

 彼女の楽観的主観に思わず、自分が心配してたのが本気でバカバカしく思えてしまう。

 

「でも、其れでも納得がいかないなら…鬱憤晴らしたいのなら、何時でも相手になるよ!

 其れに、爆豪くんとはあんまり喋らなかったし…これを機会に貴方とも交流を深めたいと思ってるもん」

 

 飛鳥の得意分野は、死ノ美を交えて他者との友好を深めることだ。

 爆豪という雄英生徒を相手に死ぬ気でというのも些かオーバー過ぎる気もするが、爆豪なら「本気出せやクソカス」と暴言が放たれるので手加減はしないつもりだ。

 

「……ハッ!デクよりもある意味厄介で面倒な女じゃねえか……

 解ったよ、お前の気持ちも…言いてえことも、本心で俺を憎んでないのも…理解した。

 けど、それで引き退るほど俺は二流じゃねえ…喧嘩吹っかけた以上、最後までやり通すつもりだよ…」

 

 これ以上、半蔵や飛鳥の件で引きずるつもりは毛頭ないし、寧ろ本音をぶつけてくれて気持ちが晴れやかになったのが第一の理由だ。

 

「かっちゃんの言いたいこと、僕も解るよ…」

 

 ふとした瞬間、飛鳥の横から口を挟むように出てきたのは緑谷出久。

 その声色は落ち着いており、優しさが含まれていた。

 

「確かに、幼馴染とは言え…あんだけ酷いことされて、それでも背中に引っ付いてる僕を見れば、鬱陶しくもあったり気味悪がられたりするのも、何となく解る…」

 

 そこまで自覚して、何故ここまで固執するのか?

 爆豪の疑問や拭い切れない疑問は其れでもあるのだろう。

 

「だって、僕もかっちゃんに憧れたから――オールマイトと同じ、僕も君の背中を追い求めてたから…!」

 

「――ッ」

 

 緑谷出久もまた、彼の背中を追い求めていた。

 爆豪勝己が緑谷出久を認めたように、緑谷出久は爆豪勝己の勝つ姿に憧れた。

 だから幼少期はどれだけひっ叩かれても、中学時代でどれだけ酷い目に遭わされても、緑谷は頑なに離れなかった。

 幼少期からの、もう一つの憧れを追って。

 

「今まで、僕とかっちゃんとは面を向かって話し合いなんてしなかったから…本音を言い合える機会なんて、いっぱいあったのに、それを僕らはして来なかったもんね……だから、こうなっちゃった責任は僕にもあるし、咎められても何も文句は言えないよ…」

 

 緑谷出久の今までの人物像では強者、ガキ大将、意地っ張り、ワードは様々浮かんではいるが、友好的な意味は皆無に等しいし、殆どが嫌な奴というのが一番だ。

 そもそも緑谷だって嫌いな人物を好んで後を追ったりしないし、普通であれば友達という縁も切ってるだろう。

 でも、幼馴染関係なく爆豪に絡むのは、尊敬の言葉がそれ以上に強いから。

 それが、緑谷出久を突き動かしていたと呼んでも過言ではない。

 

「君の背中を、僕はずっと追ってたんだよ…だって、君の勝つ姿が、オールマイトに負けないくらい輝いてたから」

 

 お世辞でも謙虚でもない、緑谷の口から放たれた本音。

 爆豪も先ほどと同じくまた唖然とする。こんな、無個性と罵られ無能とまで認識してた、こんな気色悪いとばかり思ってたヤツが、自分に憧れていた。

 其れに対して、嬉しいと思ってしまう自分がいることに、戸惑いが隠せない。

 

 

「かっちゃん…言ってたよね?二人でまとめてかかって来いって…ちょっと違うかな」

 

「戦うなら、ニ対一なんて卑怯地味たことじゃなくて…やるならとことん…三人とも敵同士だ!」

 

 

 飛鳥は拳を握りしめる。

 今なら、試す機会としてはうってつけだ。

 

 

「武器を使わずに、戦ってみせる!」

 

 今こそ、訓練の成果を見せる時。

 憧れから来たその想いは、互いにぶつかりあう物となり――

 

 

 

 






最近思うこと。
自己紹介やってない…せや!次の話でやろう!
それとこの作品のヒロアカグラの曲に似合いそうなのと言えば個人的には新しい閃乱カグラのOP、ODD future、グロリアスデイズ、黒髪乱れし修羅となりて、凛として咲く花の如く、フィクサー、VS、カゲロウ、fortissimo、CQCQ、永久のキズナ、位かな?
自分独自のシーンで脳内再生というMAD的なのを再現してたりしてます。

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