光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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新章がインターン編だ!と思った其処の貴方がた読者殿。ええ…と思ったでしょう?だから紹介編でいつかやるって言ってたのに(後でやるとは言ってない)…まあでも、最初はインターン編続行のままでいたんですが、ストーリー的展開に少し気掛かりが有りまして…急遽変更しました。大変申し訳ありま閃乱カグラ・蛇女躍進編、スタートです。


蛇女躍進編
140話「喧嘩の後に…」


 

 

 

 

 各々の思想がぶつかり合った後、オールマイトと緑谷出久の個性――【ワン・フォー・オール】の存在と供に秘密を明かすのにそこまでの時間は経たなかった。

 多少混乱地味た衝撃も受ければ、彼の頭の回転から察して理解するのに難しくも無かった。正直言ってコミック展開過ぎて受け入れ難い現実でもあるものの、其れを敢えて何も否定せず噛み砕き飲み込むように真実を受け入れた。

 

「成る程ねェ…そらぁオールマイトじゃなくとも誰だって秘密にしたがるし、敵連合のボスヤローもアンタに因縁が有ったのも頷けるわ…

 何よりリスクとデメリットがデカ過ぎる…」

 

「すまないね…今まで秘密にしてて……本来ならもっと早く爆豪少年に頭を下げるべきだった…」

 

「アンタが謝るも何も…クソデクがバラしたのが原因だろ…力の所在やらで混乱を招く上に、関係者そのものまで被害が巻き込む危険性がバカデケェ…

 デカ乳も、クソデクがバラしたのか?」

 

「其れに関しては私から話した。半蔵くんにも言われててね…彼女に話した理由…そして、忍がこの世に存在する理由も話しておこう…」

 

 忍は妖魔を滅する存在。

 脅威たる存在が、神威と呼ばれる所以。

 巨悪の象徴が半蔵とオールマイトと対峙した事。

 彼女が、次に狙われるべき標的だと。

 

「…今度は、知らさねえと逆に危険な目に遭うから身を以て気をつけろッつー注意報告みてーなもんか…解らんでもねえし、嫌がらせとして孫にまで手を上げるって、敵らしい発想だしな…

 デカ乳の場合はれイレギュラーって訳か…つーか何だ妖魔って。初めて聞いたわンなもん…まあ、全部辻褄は合う訳だし、オールマイトがこの場で嘘言うとも思えねえ…」

 

「家庭内でも、学校側でも彼女だけ本校に連れ戻すという考えも…捨てきれてはないのだが…私の思う部分も有ってね…」

 

 彼女が殺害対象として刃先を向けられてる現状、雄英にも被害が及ぶ危険性もあり、林間合宿だけでも滞在させようとも考えてはいたが、試験合格の後に連れて行かないというのも酷な話な上、学生達の安全面を確保するべく存在する彼女一人を手放すというのも、悩む答えだ。

 暫し様子見の結果、彼女自身は三者懇談で頑固たる意志と決断を見出した。

 

(――飛鳥くんは陽花くんに似てるな…と、体育祭で思う部分は何箇所か有ったが…もし私の見込みが正しければ…多分、カグラに近いのは彼女で、カグラすらも超えうる存在になるだろう…

 なら、樺楽(シロ)君がいたら…)

 

 喜んで飛鳥君を次の後継者にしてたのだろうな――

 なんて、もしもの妄想を浮かばせる。

 いや、これ以上の回想は不要だ。

 

「何にせよ…秘密が明かされようと俺のやることは変わらねえや…」

 

 嘗て、高校入学で間もなく挫折を覚えた少年は、敗北を知り強さを得た――

 その揺るぎない強さは、信念として人を更に上へと押し上げてくれる、心の原動力だ。

 オールマイトは、その言葉を知っている。

 

「ただ…今までとは違え…デクに()()…」

 

 ここでようやくデカ乳女と言う蔑称から、名前へと呼び始めた爆豪に、飛鳥は目を丸くする。

 飛鳥や緑谷が、他人の強さを見て吸収したように――自分も経験と供にそれ以上の強さを己のモノとして上へ行く。

 

「俺は二人に負けちまった訳だ…これ以上の敗北は真っ平御免……〝選ばれた〟お前に、半蔵(じーさん)の孫たるお前両者を更に超えて、次のリベンジで絶対勝ってやる」

 

「……ようやく、私の名前呼んでくれたんだね♪」

 

「それ言われんの嫌だから御託並べた前置きの言葉を垂れたんだろうがぁ…!!」

 

「けど、名前を呼んでくれたってことは、認めてくれたって意味でしょ?」

 

「はぁ?馬鹿も休み休み言え、誰がいつんなこと言った、あ゛ァ゛?」

 

「へっ?だって緑谷くんがそう言って…」

 

「クソデクてめぇ何有りもしねえ戯言吐いたんだゴラァ゛!!!」

 

「えぇっ!?そんな僕のせいじゃ…!てか、僕の名前はデクのまんまなんだね…まあ、今は気に入ってるから別に良いんだけど…」

 

「デクはデクだろーが!!」

 

「喧嘩はよしなよ〜、まだ傷も酷いんだしさっき喧嘩で決着付いたばかりでしょ?」

 

「テメェが勝手に仕切んな飛鳥!」

 

 夜空の星が輝く下で、三人の声が鮮明に響き渡る。

 先程の気迫感溢れる雰囲気とは打って変わって、まるで喧嘩するほど仲の良い、連れ仲間のような、正に学生らしい三人組の姿。

 

 この喧嘩には、学校としては何の意味も為さない三人同士の感情と心が衝突し合った喧嘩だ。

 其処にメリットだのデメリットだのと関係ない、恨みっこ無しの真剣勝負。

 そんな清々しい戦いをしたからだろう、以前のような見えない壁に隔たれ、距離感が有った緑谷出久と爆豪勝己の関係性が、以前より改善され、真っ当なライバルっぽさが目立ったというのが一番言葉として適切だろう。

 

 かくして、三人の喧嘩は幕を閉じた――のだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「試験終えたその晩に喧嘩とは、お前ら元気があって大変宜しいようで――

 

 

 マジで何してくれてるんだお前ら!!!」

 

 

 ギリギリギリギリギリギリ!!

 窮屈に縛る音が、痛々しく聴こえて言葉の内容が耳に届かない。

 喧嘩した後、三人に待ち構えていたのは、睡眠の時間を削り夜勤を通しながら授業のカリキュラム整理を行い、馬鹿三人組を待ち構えていた――相澤先生だった。

 当然…と言えば、当然だろうな…。

 オールマイトが三人の前に現れた時点で、察しが付いてても可笑しくはないが、あの場では状況と空気の流れで気にかけてはいなかった。

 

「待って相澤くんストップ、捕縛やめて。ね?私の()()だからこれ以上三人の傷を更に深く抉ってはダメだからね」

 

 血相を変えてる相澤に、制止の声を投げかけるオールマイト。

 原因…のワードを耳にした相澤は、炭素繊維の特殊捕縛武器を掴んでた力を緩める。

 その為、縛られてた三人の苦痛に歪めた表情は元に戻る。

 

「原因…」

 

 其れは数十分前の出来事。

 爆豪と緑谷、ついでに飛鳥が問題行動を起こしてる報せを受け、連れ戻すべく駆けつけにいこうと外をでた矢先に待ち構えたのが、オールマイトだった。

 

『また緑谷と爆豪ですよ…?ついでに飛鳥も…何考えてんだかあの馬鹿三人は…彼女が問題行動を起こすなんてある意味初ですよ?』

 

『嗚呼、その事なんだが…私に原因が有ってね…』

 

『原因?貴方と三人がどう原因に繋がって…?』

 

『詳しいことは連れ戻してから話すよ。それに、ここは私から三人に話した方が身の為にもなるし…説得は出来る。お説教はその後でも良いんじゃないかな…?』

 

 ここほどうか譲ってくれという、彼なりの表現と言葉遣いに、何も知らない相澤は呆れた顔で渋々と頷くことしか出来なかった。

 

「そういえば言ってましたね…で、何です其の原因って?」

 

「実は神野区の事件でね――…」

 

 神野区という言葉に敏感に反応した三人の様子を見た相澤は、一先ずオールマイトの話に耳を傾ける。

 神野区半壊事件。

 そう言えば、爆豪が人質として捕まり、緑谷と飛鳥の二名は爆豪と雲雀の救出活動に赴いた張本人である。

 しかも爆豪と緑谷は犬猿の仲というのも織り込み調べ終わってもいるし、線を引くように繋がってるのも何となく理解はしてきた。

 

「実は――…爆豪少年は私の引退に負い目を感じていてね…モヤモヤとした気が晴れないまま試験を臨ませ…結果、彼の積もった劣等感が爆発した。気づけず彼のメンタルケアを怠った大人の失態でもあるのさ…それが喧嘩に繋がり招いてしまった…

 どうかこれ以上は彼らを責めないで頂きたい」

 

「……んん」

 

 オールマイトの言葉を率直で理解した相澤は、これ以上深い勘繰りはしなかった。

 オールマイトの立場もあり、その原因が無事に解消したのならば特に文句も無ければ問題もない。同じ学校の教師とは言え元・平和の象徴…一先ず彼の意思に尊重するが…

 

「しかし如何なる理由があれとルールを破って問題起こして済む話でも有りません…

 下すべき処罰はしますし、言葉巧みだけで終わるほど俺は落ちぶれちゃあいません。反省を形として証明しなければコイツらバカの為にもなりませんし…

 

 おいお前ら、先に手を出したのは誰だ?」

 

 だからと言って罰そのものを許す訳ではない。

 犯罪を起こした敵が罰を受けるように、騒ぎを起こした生徒は如何なる理由があろうと罰を受けなければならない。

 まあ、除籍処分にならないだけ大分マシではあるが、余り気乗りはしないし、受けて喜ぶものでもない。

 

「俺」

 

「僕は仕掛けられて対抗してガンガン…」

 

「私も緑谷くんと同じく…っていうか、鬱憤晴らしの相手になるとか宣言しちゃってたし…」

 

 オイ、その理由は普通に考えてアウトだろ。と内心飛鳥に突っ込みを入れる相澤は、顔を曇らせる。

 

「爆豪は四日間!緑谷と飛鳥は三日間の領内謹慎!その間の領内共有スペース清掃!朝と晩!そして反省文の提出!」

 

 結果、相澤先生から下された罰の内容はこの通り。

 仕方ないと言えばその通りだと思うし、寧ろこれだけで済むのならまだ可愛いレベル。もし生徒達の保護と神野区がなければ最悪除籍処分にされても可笑しくは無いのだから。

 

「怪我に関しては痛みが増したり治らなかったり、重傷の場合は保健室行け!余程のことが無い限り婆さんの個性には頼るな!勝手に付いた怪我は勝手に自分で治せ!其れが理解したらさっさと寝ろ!以上!!」

 

 お説教も終わり、深夜遅くなった三人は疲労と傷の痛みに浸りながら部屋に戻り就寝する。

 

(相澤先生に酷く怒られちゃったなぁ〜…まあでも、無理ないか……しかもあの後なのに、問題起こしたらそりゃあ謹慎になっちゃうよね…)

 

 今思えば、半蔵学院では戦闘許可も許されてたし、忍の訓練や授業はヒーロー科とは違って特殊な部類である。

 尤も、昔までは善悪の殺し合いを生業としていたので、当然なのだが、一年生と比べて今振り返れば随分と変われたなぁ…と呆然と考えたりもする。

 

(今日は疲れたし…明日も早いし清掃しなきゃいけないからもう寝よう…)

 

 疲れ果てた彼女の思考は、そっと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…今日の任務終了報告も終わり、資料は提出した…次は……」

 

 真夜中――場所は打って変わり蛇女子学園へと移る。

 天守閣の最上階に達する部屋、嘗ては道元や伊奈佐が王の座として居座り胡坐を掻いていた場所。

 今は正式にカグラの称号の中から選ばれ、蛇女子学園の教官の立場として収まり活動してる小尾斗は、あの二人よりかは随分とマシだし、安全面も高い。

 

「……雅緋と忌夢は明日を以って退院か…前に面会した時か、忌夢はさておき雅緋の回復は早かったな…選抜筆頭を名乗るだけはあるが…」

 

 ここまで回復が順調に進み、退院も可能と言うのは少し信憑性に疑いを持ってしまう。

 

「いや、俺も現場に居合わせて無かったが…傷が浅かったのか?まあ何にせよ…それなら手続きもしなくちゃな…

 明日は…ん?雪不帰からの手紙?」

 

 資料を確認し整理を済ませていく中、彼の目が捉えたのは一通の手紙だった。

 内容は、簡潔に言えば会って話をしたいという内容。

 特にそれ以外の物は書いてなく、詳細は書かれていない。いや…書かれてない方が自然なのだが、其れにしては…

 

(いや、話せない内容か?態々俺に?

 俺がコイツと会うのなんて陽花の葬式以来だぞ…?)

 

 陽花。

 忍の象徴にして、カグラという存在を超えし存在。

 その知名度はカグラとしては誰もが知っており、小百合すらも超えうる姉的な少女のことだ。

 彼女の人望や期待度はヒーローでいうオールマイトと同じであり、大勢が彼女に期待と尊敬の眼差しを向けていたのは事実である。

 

「……いや、そもそも陽花の死など認めない。俺はまだあの人が死んだことを絶対に認めてない」

 

 俺を否定した家族。

 男に産まれたことで罵声の言葉を浴びせられた日々。

 野生の蛇としか友好関係を築けなかった、根暗ボッチみたいな価値のない俺を…彼女は俺に手を伸ばしてくれた。

 その手をどれだけ振るい払おうと、自分のように必死で懸命に接してくれる彼女の温もりに、俺は救われた。

 

(だが…彼女は生きていない…結局俺は、他人の死をも受け入れられない弱き者……)

 

 いや、いい。

 もう考えるのは辞めよう…余計に虚しさと悲哀が込み上がるだけだ。

 あの人が…死んだという事実を受け入れるしかないのだ。

 

「しかし、カグラ会議の収集で逢えると言う物…なぜ、こんな時に限って俺を…」

 

 特に想い当たる節は無く、彼女と対面はほぼ皆無に近い。連絡のやり取りも無ければ、彼女の名前に関する話題すら、カグラの周りでは挙がっていない。

 

「シュルルル……」

 

「?どうした?」

 

 アオダイショウの蛇丸が、微かな鳴き声を漏らす。

 まるで不吉な予兆に警戒を示すような、そんな気配。

 

(随分と様子がよろしくないな…コイツらが警戒を示す時はいつだって不吉な前兆がやって来る…知らせの声……まさか、雪不帰が原因…なんて訳が無いだろうな?)

 

 ブワッ…と、冷たい風が横殴りに吹き溢れる。

 窓を閉めて無かったせいか、一陣の風が通り過ぎ、資料は風に沿って舞う。

 しかしそんな事など一切目もくれず、これから起こりうる不吉な予感に、ただただ頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 

「えーっ!?三人とも喧嘩して謹慎とか、馬鹿じゃん!!」

 

 朝一から掃除する三人に理由を聞いたクラス。

 最初に出たのは罵倒に似た芦戸の言葉だった。

 顰めっ面で掃除機を動かす爆豪。

 解せぬ…と言われるがままに掃除をこなす緑谷。

 たはは…と苦笑を浮かべる飛鳥。

 芦戸の言葉に続き、他の皆も呼応するよう一人一人の生徒が次々と嵐のように言葉を投げかける。

 

「争いなんてナンセンス☆」

「爆豪くんとデクくんは解るけど、飛鳥ちゃんはホンマに意外やな!」

「愚かな…」

「ダセェぞ!仮免試験では俺にへのへのもへじとか言ってた癖に!」

「わ〜…爆豪のことだから麗日ん時みたくボコボコに殴ったりとかしてそう…してないよね?」

「男と女の拳の語り合い、俺は嫌いじゃねえぜ!」

「やっぱ爆豪おんめぇドSッつーか…リョナ好ぶべらッ――!?!」

「全く気が付かなかったわ…何にせよ個性同士の争いなんて…何か思い悩むことでもあったのかしら?」

「骨頂ですわね…」

「取り敢えずガトーショコラお食べ!」

「俺で良ければ相談乗るよ?」

「俺も、尾白と同じく話が有ったら聞くが、話にくいことでもあったのか?」

「それよりウチは相澤先生の怒鳴り声すら気が付かなかったことに、自分の深い睡眠に驚愕してるよ…」

「あっ!喧嘩ってもしかして仮免試験の事とかじゃね!?昨日の夜に喧嘩とか、合点が行きそうだよな」

「つうか爆豪、瀬呂の言葉で思い出したが仮免試験の補習どーすんだ?」

「…な、仲直りは…できたの…?」

「寧ろ反省でよく済まされたな…仲直りはできたのかい!?」

 

 皆の言葉に、謎の重圧感が引き寄せてきた為、殆どの言葉は聞き流していた。

 ご覧の通り、皆からは「馬鹿だなぁ〜」「喧嘩も程々にね?」「逆になぜ喧嘩が起きたのか聞きたい」と言われることが多々存在するが、自分たちの行いに決して悔いは残してない。

 因みに柳生からは「飛鳥、お前…以前より問題活動起こして無いか?逆に心配になってきた…大丈夫か?」と、何故か哀れみの眼を向けられ。

 雲雀からは「ええっ!?爆豪くんと喧嘩するなんて飛鳥ちゃんどーしたの!?」…爆豪と喧嘩のキーワードが衝撃的で緑谷出久と言う存在を忘れてしまっていた。

 

 そして朝は皆、始業式で出席してる為、寮内に残るは昨夜バカをやらかした三人組である。

 ついでに言えば、寮内はヒーロー科だけでなく、忍基地も含まれてる為、仕事はまだまだ残っている。

 

「緑谷く〜ん、そっち終わった?」

 

「うん、後はそっちの方残ってる!」

 

「おいゴミ袋出すけどもう無ェか?」

 

 想像していたよりも順調にスペースは上がっており、清掃も三人で協力し合い効率よく進められてる。

 溜まった悩みを吐きあってぶつけ合って…距離感が縮んだとは言えここまでの効果は、かなり影響が有ったとも言える。

 

「……あのさ二人共…僕のシュートスタイル…どうだった?」

 

 緑谷の覚束ない、弱々しい声に反応する二人は、見向きこそしなかったが、最初に口を開いた飛鳥は

 

「悪くなかったけど…動作が単純と言うか……パワー任せと力量ぶつけて様子伺ってるような気配も有ったから、やるならガンガン…

 足技は菖蒲ちゃんに聞いたんだろうけど…やっぱ実戦あるのみ…かな?」

 

 つまり経験値を増やして其れを活かせ、とのこと。

 爆豪は飛鳥が言い終えた後、数秒間黙り込み、

 

「予備動作がデケェ、速度上がってもギリ反応出来たし、乱打戦にゃ向いてねえ…ここぞと言う時に足技は使うもんだ…

 ただ、あん時食らった蹴りは、強かった――」

 

 認められた、とも言い難い曖昧な言葉に、思い掛けず頬が綻ぶ。

 今までは、啀み合っては口をまともに開けない程の、犬猿な関係だったが、少しずつ改善しているようにも見える。

 

  「わ、私のオリジナル忍法…どうだったかな?新しいの…」

 

 緑谷は戦闘不能に陥り体験はしていないため、上手く感想は言えない。諸に喰らった爆豪本人にしか聞けないことだ。

 

「……フラフラになってからの連続パンチはかなりムカついた」

 

 これは、〝お前の攻撃は強かった〟と言う認識をしても良い物なのだろうか?

 何にせよ、爆豪の口からムカついたと出るのなら、其れを脅威と感じても良かったのだろうか…?

 半蔵学院とは違い、焔ちゃんのような関係を、もっともっと築き上げたら…きっと…――

 

 

 

 

 

 こうして、飛鳥達三人組が清掃を行ってる間に始業式は幕を挙げ、夏休みから心機一転。

 晴れて二学期を迎えた雄英生徒達にほんの数名の忍学生。

 と言っても、半蔵学院の三名と月閃女学館の三名、計六名しか在籍してない訳だが、それでもこちらからすれば少し多いと思える位だ。

 各学校ももう時期夏休みは終わるのだろうか?それとも、既に始まってるのだろうか?

 忍学校に休日はあるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 そんな夏休みが晴れて、新たな新学期を迎える真中――影に蠢く悪意もまた、次の段階を踏まえていた。

 

「ふむふむ、うん!もう既に()()()に到達しているね。〝いつ暴れても〟問題ない位にバリバリ!!これなら、大勢の犠牲者を出すのにうってつけになったね」

 

暗い部屋で一人、幼女はデータの資料が映し出されたモニターを目視しながら、指を素早くキーボードを打っていく。

誰もいない部屋には、ゴミ袋が沢山置かれており、壁には文字や写真集でいっぱいだが、よく見えない。

 

「実験も特に問題ないし、動作確認も取れたしぃ〜。うんうん、これなら喜んでくれるよ!後は一応培養カプセルで一時待機かなぁ…『トガっちちゃん』が暴れたくてうずうずしてるねぇ、ふふっ♪可愛いなぁ、頑張って戻ってこれたら、お祝いしてあげなくちゃねぇ〜♪一応、テストをするって言ってたし…よぉ〜し、これで一応仕事はお〜わり!えへへぇ、この子で何百人壊せるのかなぁ?♡」

 

 

 ギギャア゛ア゛ァ゛ァ゛ァァァァーーーーーー!!!

 

 妖魔の血塗られた咆哮が、倉庫に鳴り響く。

 其の雄叫びは、さも悪意を求めるかのような、血に飢えた貪欲な獣。

 悪意の矛先、次は少女達に刃を向ける。

 暗躍する悪、蠢く絶望、底知れぬ悪意は今日も、闇の中で生きていく――

 

 

 

 





少し本編を省略しちゃいましたが、まあ次の新章(インターン編)で相澤先生が再度説明してくれるので問題ナッシング。
それと今までのより少し短いと感じた君、実際文字数は7000だからね?今までは10000超えてました。

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