光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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早くもカグラの続きが気になり金曜日になれよと祈る作者。飛鳥の変貌っぷりがヤバすぎて真面目に笑えないレベル。この調子だと今週は雅緋の番やで…多分。




153話「無敵と対立」

ビッグ3。

雄英高校三年生にして上位の成績とそれなりの実践を残す者にのみ与えられうる称号は、並みの生徒では貰うことは出来ないのである。

彼らこそが、今の亡き平和の象徴という大柱を補う、最高戦力でもあり、明るき未来を守り、社会を守る、ヒーローとしても相応しい人材である。

インターンに於いては既に参加してる上に経験豊富、況してや一年生の歳二つ上の大先輩だ。学べる点は幅広く大きいだろう。相澤先生が態々収集に掛けてくれたのも頷ける。

 

ゾディアック星導会。

基立星十字学院と呼ばれる架空の学校内部に存在する忍学生。場所は都会に建てられており、誰も忍学生が存在するとは思ってもいないのは、半蔵学院と同じ仕様なのだろう。

しかし裏は優秀な悪忍を育てる教養学校であり、秘立蛇女子学園とはある種として変わらない学院である。

また、超大金持ちのお嬢様学校であり、訓練や修行は、他の忍学校とは群を抜いているらしい。

 

遠野天狗ノ衆。

忍ノ里と呼ばれる山の中の奥深くに存在する善忍の団体である。忍ノ里とは、現役を引退した忍や、負傷し忍として戻れなくなった者達が多く集まる遠野の集落の村である。

行き先は不明であり、地図にすら記されてない場所は、そもそもの話上層部ですら知り得ないと言われている。あくまで隠密に、そして遠野の居場所を悟られぬ為であり、村の掟として決して他言してはいけない決まりとなっているのだ。

厳密に言えば、忍学校と呼ばれる組織は無いが、里に住む若者には善忍の教えを学び習わせるなど善忍の学舎のような建物は存在するそうで、教えを学び受け、里を守り、善忍としての役目を全うしているそうだ。里には老人と鍛冶屋ばかりがいるそうで、忍の武器調達や日本の忍達が任務を全うする為、妖魔を倒す為と、武器を作っているとのこと。その腕は一流とのことで、現役社会に建てられた忍サポートアイテムや裏サポート、違法商売、忍商会とは格が違うらしい。

因みに、飛鳥が林間合宿に於いて、黒佐波との死闘の際に刀が折れては治してくれたのも、遠野里の刀鍛冶が打ってくれたそうだ。何でも半蔵本人も、若い現役時代の頃からよく世話になってたとのことで、面識もあればそれなりの縁も存在する。

 

英雄を背負い、期待に任されたヒーローに羽ばたくであろう先輩方三名――ビッグ3。

ゾディアック星導会と、遠野天狗ノ衆、二つの善忍と悪忍による選抜ツートップが二人。計五名の生徒がAクラスに赴き、現在生徒達の目の前にいるのだ。

 

「アレが噂のビッグ3か…!パックマンみたいな眼した先輩だな!」

「あの人、イケメンっぽい!」

「ふわふわで可愛い子がいる〜」

「金髪の人、鎧と存在感が…!アーサーかよ」

「あの褐色の子スゲェ可愛い!オドオドしてるのが男子心を擽るというか…新鮮だよな!」

 

入って早々に雑談と化し空気を無駄口に染めるAクラスの生徒方々に、不合理と時間を無駄にするのを嫌う相澤先生の顔色は早くも怒りボルテージがグングン上がっている。

 

「そうだ…思い出したあの人!」

 

ビッグ3の中の内一人、見覚えのある顔を見つけた緑谷は、思い出したように掌を叩く。

三人の内中央に立ち尽くす男は以前、一昨日のゴミ出しで偶然…とは呼べないが、対面したあの不気味な先輩だ。壁から顔を出したり、ドッキリ大成功だのチンプンカンプンなことを抜かしていた為、思い出すことすら出来なかったが、全体を見て記憶が蘇った。

アレは去年テレビで体育祭を観戦していた時のことだ。特にこれといった成績は残してなかったものの、妙にインパクトが強かった為、記憶の片隅に残っていたのだ。

それもそのはず。何せこの男、テレビ生放送の中、競技の際に裸になったのだ。決して悪気があったようにも見えないが、どうにも個性の性質上、裸体になってしまうそうだ。

こう言ってしまうと葉隠はどうなのかと問われてしまうが、透明人間な彼女にその質問は野暮だ。

 

(となると、左右の二人は……体育祭では上位にはいなかったけど、どんな個性なんだろ…?)

 

一人の男性は褐色の女性と同じくクールこそ伝わってくるが、どこか引っ込み思案な所は似てるし、一方で女性の方は明るく活発的で、青白い長髪の子は笑みを絶やさない。

 

「まあ良い…時間をこれ以上無駄にはしたくねえ。他校の学生を連れて来て説明しますじゃ混乱するのも無理はないが……先ずは手短に雄英の先輩方から…そうだな、最初は天喰から」

 

「………」

 

相澤に指名された天喰と呼ばれる彼は、一歩前に足を踏み入れる。この先輩は特に目立つ所が無く、どちらかと言えば口数が少なさそうに見えると言った方だろう。

 

「………ッ!」

 

グワッ!とくる威圧感ある眼差しに、一同クラスは肌身で感じ取る。痺れるような存在感は、流石ビッグ3と呼ばれるだけのことはある。

飯田だけでなく、轟自身も、まるで咆哮を浴びるように、その実力をより実感する。

 

「………」

 

しかし天喰は見渡した後、暫し沈黙して壁に向かって手を置く。

 

 

「だめだ、皆んなの顔…じゃがいもだと思って観ても、緊張感が…!!」

 

――は?

 

天喰の予想外な発言に一同は呆然としてしまう。

先程の覇気の篭った気迫は何処へ行ったのやら…天喰は声を震わせながら口を開く。

 

「ダメだミリオ、波動さん……頭部以外が人間だから、ジャガイモだと観ても意味を成してない!……だめだ、頭が真っ白になる…帰りたい」

 

「最後帰りたいとか言っちゃったよこの先輩!!」

 

皆の言葉を代弁するように、瀬呂は壮大なツッコミを入れる。その言葉に関して同意する皆に続き尾白も「本当に雄英のトップなんですよね?」と相澤に確認を取る。どうやら先生本人も予想外な展開に頭を悩ませてるようだ。

因みに遠野の善忍筆頭の子は何処からか親近感が湧いたらしく、小声で「なんだか、私に似てる…」と呟いている。

 

「あっはは!ねー聞いて!そういうのって、ノミの心臓って言うんだって!人間なのに不思議!」

 

波動と呼ばれる彼女は、天喰を指差してケラケラと笑う。そんな微笑ましい彼女の笑顔は、まるで天使のようだ。

 

「私は波動ねじれ!そんでこのノミが天喰環!今日は相澤先生から校外活動の話を頼まれてやってきました!

……それにしても気になる子達がいっぱい。ねーねー、この中に忍学生の子達いるんだよね〜?」

 

どうやら先輩方でも忍学生のことは多少、話題となっているらしく、好奇心旺盛な波動は当然、この事に関して食い付いてくる。

 

「ああ、三人は今本校の事情があってクラスには…」

 

「ねーねー、そこの君はなんでマスク付けてるの?それと髪分けの子も!火傷跡は個性によるもの?」

 

「………」

 

「あーんー…すいません彼女、いつもああなんです!!大目に見てくれると幸いで…ね?」

 

聞き出しておいて別の話に切り替えようとする彼女の幼稚的な行動に、相澤先生の額に青筋が浮かぶも、本人は気付いてない様子で、ミリオが代わりになって陳謝する。

 

「そこの紫色の君、頭に貼り付いてるもぎもぎな玉はなぁに?散髪はどうするの?ピンク肌の君、触角切れたら生える?動く?まるで蟻ん子さんみたい!どの子達も気になる子ばかりで不思議だね!」

 

「待ってオイラの玉が気になるって…ちょっ、やめて下さいよ先輩ぃ!!オイラ興奮しちゃうじゃないですかぁ!!人生初の逆セクハラとか最高かよぉ!!!」

 

「絶対ちげぇから」

 

さり気なくツッコミを入れる瀬呂だが、峰田本人は涎を垂らし、興奮のあまり聞こえていないらしい。

 

「……合理性に欠ける、不合理の極みだね?」

 

「大丈夫ですイレイザー・ヘッド!大トリは俺なんで!!」

 

不機嫌な相澤を何とかカバーで機嫌を取り戻そうとするミリオに、深い溜息を吐く。

波動ねじれ。

性格はイマイチよく分からない天真爛漫でマイペースな部分のある彼女だが、アレでもビッグ3な上に実力は本物。今ではインターンでNo.10ヒーロー、リューキュウの元で活動をしているとさえ耳に入っている。

 

「次は…と言いたいところだけど、俺が言っちゃうと二人の出番無いと思うんで、忍学生の方からで宜しいですかね?」

 

「ん?ああ、別に構わんが…」

 

あの流れで中断…というのは、恐らく実戦経験を一年生達にさせるつもりなのだろう。いつものパターンだ…と、相澤は気怠くボサボサな髪を掻く。

 

「んじゃあ忍学生の…っと、お二人さん、先ずは遠野の方から」

 

「あっ、えっと……私、ですか?」

 

「?何か問題でも?」

 

「ああいえ……大丈夫です……」

 

何処か気の弱い性格は、蛇女選抜補欠の芭蕉に似てる気もするが…彼女はオドオドとしながら深呼吸をする。

 

「えっと……雄英の皆さん初めまして……遠野天狗ノ衆選抜メンバーの筆頭を担う、夕焼……と、申します……

雄英の方々に、神野区の噂は聞きました……えっと、その…本日から私も、インターンに参加させて頂く所存ですので……少しでもヒーロー学生達のことと、都会に触れて行けたら良いなと、思いまして……」

 

「うわぁ、頑張り屋さんだー!」

「ふむ、成る程…忍学生もインターンに参加…その為、我々ヒーロー学生に触れることで、知識を身につけようという協力体制を…」

 

(飯田、便利だなぁ)

 

飯田の台詞は的を射ている。

詳しい説明はゾディアック星導会の筆頭を後にするのだが…

 

「私の故郷はその……人知れずの隠れ里……山の奥深くに存在する村で育って来たので…

那智さんとは違い、ヒーローについては勿論、都会のことは全く知識がなく……今回の件を機会に、触れていくことで学んでいけたらと…」

 

「飛鳥達もそうだけど、夕焼さんスッゲェ忍らしい!」

「忍ノ里ってなんだろ!?行ってみたいよねぇ!益々忍らしくてカッコイイ!」

「都会知らないのか、何処か良いラブホあったっけ…」

「女子の紹介で一々セクハラ発言しないとダメなのか峰田は?」

 

忍ノ隠れ里、遠野、というワードに反応する生徒達は、初期の頃、雄英から転校しに来た飛鳥達と引けを取らない反応でクラスが騒めいている。

 

「オメェら、静かにしろッ。俺が最近注意してねえからって怠んでるな、ア?」

 

しかし相澤の静かに燃える怒声に一同は一瞬で縮こまるように静寂する。相澤先生の髪が逆立つ光景も、久しぶりに見た気もしなくもない。

 

「あ、あの……もしかして私の…せい…なのでしょうか?」

 

「ん?いやそう言った訳じゃないから気にすんな。じゃあ次は…」

 

相澤の軽い視線に反応した彼女は頷くと、一歩前に足を踏み入れ口を開く。

 

「初めまして雄英高校の皆様、私はゾディアック星導会の選抜メンバー筆頭、麗王と申します。貴方達の噂は、夕焼さんと同じく聞いております」

 

夕焼とは対照的に、頼り甲斐がありリーダーシップが活用されてる美麗な女性だ。凛々しくも美しく気高いその姿勢は、正しく王に似た風格を表している。

 

「ゾディアック星導会に、遠野天狗ノ衆、この二つの組織は雄英の寮と忍基地を投資して下さってる方々だ。是非とも、無礼だけは働くなよ」

 

「ふえぇ!?そうなんですか!?麗王さんって言う人は兎も角、夕焼さんも……お金持ちなんやなぁ…」

 

「あ、あの……私ではなくて、那智さんが……ですね……」

 

麗王は見た限り、八百万のようなブルジョワ感が漂っているので大方予想通りだが、忍ノ里からも投資してるとは思わず、お茶子は意識が遠のいていく感覚を味わう。

因みに麗王は斑鳩や叢と同じく財閥家のお嬢様なのである。

 

「神野区のオールマイト以降、忍の存在が明らかになり、供にヒーローと忍が手を打つという話は以前伝えたから知ってるはず…

このお二人方は優等生にしてインターンに参加する忍学生だ。」

 

「なるほど!我々雄英に協力してくれてる方々だからこそ、筆頭の二人が選ばれ、呼び集めた訳ですね!」

 

「飯田の言う通りだ。

よーはそのお礼…と言って良いのかはアレだが、インターンに参加する二人は事前にヒーローについての在り方を知りたいとのこと…まあ、お前たちのことも含めて良い機会なんじゃないかという、校長の話だ。早い話、彼女二人は予行練習の為に来たと思ってもらって良い」

 

麗王は社会に於いても大人に近い部類だが、表の社会に触れてるだけで、ヒーローについての基礎、そう言った専門的な実戦経験は乏しいのだ。

夕焼は言わずとも…である。

 

「ハイ、今回我々がインターンの説明に参加するべく、雄英にお越しになったのも、相澤先生が仰った通りです。

悪忍である私がこうして現れたことで少々混乱を招いたこともあるかもしれませんが…これを機に、我々と協力をして下さると幸いです」

 

深々とお辞儀する彼女の仕草に、とても蛇女と同じ悪忍だとは信じ難く思う一同は、困惑していた。

お嬢様が悪忍…というのは、無くもないのだろうが…

 

「これから先、時間も敵も環境も待ってくれません。オールマイトという平和の象徴の戦力、穴を埋めるべく出し惜しみはしたくないのが、上や私からの意見でもあります。

問題は、これから協力を結ぶ上、我々は貴方達を…貴方達は我々を知らなければならない…というのが、今社会の立ち回り方だと思うのです」

 

何も知らない人間と一緒に協力しようにしろ、急造チームアップで無いのなら、事前に知っておくべきだと言いたいのだろう。麗王の言い分は尤もである。

 

「そして私を含めた他の悪忍とも、この先何れ協力する機会は一方的に増えるハズ。そんな中、悪忍とヒーローの間での協力に一瞬の迷いと躊躇が生まれる…少なくとも、ヒーロー志望の方はそうだと思うのですが…」

 

間違っては無いな…と心の中で頷く相澤は、麗王の大人じみた発言に多少は驚きつつも、彼女が何故表社会としても生きていけるか僅かな時間で納得した。

 

(麗王…こいつは悪忍というレッテルこそ貼られてはいるが、表社会では数々の企業やグループ、そして社長すら従える人権を持つ彼女は、間違いなく上の人間としても注目されてる忍…

ホークスと少し似てるが、10代の頃から既に大人の世界に踏み入ってる、現代社会に於いて尤も適応してる人間だ)

 

忍学生や悪忍というのは、あくまで立場上の話だけであって、これだけ聞くと、この社会としては重要な人物にして無くてはならない存在なのである。

そう言った意味では、悪忍もこの世界には必要だというのも充分に理解出来る。

成る程、根津校長にオールマイトが認めるだけのことはある。

 

「その場合、気持ちの問題を解決するには、我々は知り合う必要があると思っています。

経験により心の靄を振り払うことで、お互いもしもの場合に於いて強力な連携を発動する事が出来るのではないかと言うのが、私の意見であります。

ヒーローに於いても同じです。手を組むにしろそうでないにしろ、ヒーローは時に敵の命も救わなければなりません。それが例え、因縁のある敵であろうと、ヒーロー殺しだろうと…」

 

その言葉に飯田が敏感に反応する。

ヒーロー殺し、又は忍を殺害することで社会を正し、贋物や悪意を粛清してきた時代錯誤の原理主義者、オールマイトを追い求めた殺人鬼。

ヒーローが相手にするのは、敵や抜忍だけでなく、時には環境や災害と向き合わなければならない…その際、人命救助に於いて救う人間は選ばない。もしその中に敵が、抜忍が含まれてたとしても、ヒーローである以上は救わなければならないのだ、選択肢を選ぶ余地など、無い。

 

「そう言った精神面と向き合う技術や経験を積むのも、ヒーローにとっては必要不可欠…今後とも、そう言った場面が増えることもある。そんなこれから先の未来を見据えて、我々は凡ゆる面においても対策案を講じなければなりません。

その上で、私は貴方達と供に協力して行きたいと願っております」

 

彼女は知っている。

唐突に訪れる理不尽を。

その悲劇が死ぬ程辛いことを。

それは、彼女が誰よりも一番に身を以て知っているから。

彼女は悪忍ではあるが、人並みの常識と人間としての尊厳は保っている。誰よりも一足先に大人の世界に触れ、厳しい現実に耐え抜いた彼女だからこそ、言える言葉。

その協力的な姿勢は、紛れない本心であることが見解出来た。

 

「っと、まあ…長々と話してしまい申し訳ありません…私の悪い癖で……」

 

「いや、良い。アンタの言葉で少しは生徒たちの主観も変わっただろう……」

 

正直、本音を言ってしまえば相澤先生自身も驚いた。

こんな、ヒーロー学生と歳が一つしか変わらない二年生なのに、こうまで違うのか…と。

ヒーローとしての知識や基礎は頭では充分に理解している。しかし、体術による物理的な経験が乏しい彼女だからこそ、己の至らぬ欠点を補うべくインターンに参加したいのだろう。

 

「す…げぇ…なんか難しいこと言っててよく分かんなかったけど!」

「悪忍って人も色んな人がいるんだねぇ…敵っぽい認識してて誤解してたかも!」

「気高い王妃のお言葉…」

 

息を呑む一同は、感嘆する。

口だけの人間は沢山いると言うが…彼女のはそういう類のものでは無いと、子供でも直感で理解できる。

 

(あの人…麗王さんと言う人はミリオと似ている……

先を見越し、対策し且つ打ち勝つという見方に関しては、ミリオのやり方と同じだ……)

 

額を壁に押し付けてる天喰は相変わらずネガティブなのだが、推察力に他人への信頼はかなり高い。

冷静でいれば判断力や臨機応変な対応は彼にだってできる。ただメンタルが弱いのと、冷静さを失ってしまうのが難点なだけで、それさえ克服出来れば、上位ランカーのプロヒーローや上忍でさえも同じ立場に入れるだろう。

 

「いんやぁ〜、なんか俺が言うことを更に覆すようなセリフ言っちゃったよね!!正直ビックリして俺の言葉説得力あるかなって位!!」

 

「も、申し訳ありま…「でもそれを更にプルスウルトラするから問題ないんだよねーー!って、責めてないからノープロブレムなんだよね!!陳謝しなくて大丈夫!」はぁ…そ、そうですか…」

 

麗王とは真逆に、ハイテンションでボケるような一面を見せるミリオは、HAHAHA!と豪快に笑いながらグッドポーズを取る。

 

「さてさてさーて!最後はビッグ3の俺、通形ミリオだってばよ!前途〜〜〜!?!」

 

「……?」

 

「多難ーーー!!なんつって!よぉし掴みは大失敗だ!!」

 

ミリオのジョークに笑いの起こらない一同の中、ミリオ一人が中心に笑い声をあげる。

 

「なんか変人だけど…このノリ、オールマイトに似てない?」

 

麗王の時のような真面目と気迫のある空気はテレビのチャンネルの如く切り替わり、騒めいてしまう。

 

「まあ何が何やらって顔してるよね。そりゃそうだ、必修…ならまだしも、任意のある校外活動で何で三年生が態々やって来たのかって顔してるし…

まあしかも?今年はアレが起きたとは言え一年生で仮免取得、合格者の数だってかなり占めてるし…うん、うんうん。今年の一年生は凄く元気があるね??」

 

「ミリオ…?まさか…!」

 

いち早く察知した天喰の表情が強張る。

波動は何も表情こそ変えてはいないが、ミリオのこれからやることに感知したようだ。

 

 

「よしっ、そんじゃあ一年生の皆んな!まとめて俺と戦ってみよう!」

 

 

ミリオの宣言に、一同はただならぬ音量の驚嘆を上げる。

 

 

「えええぇぇぇぇぇえええーーーーーーッッッ!!!??」

 

「おっ、掴み取り成功?因みにドッキリじゃないからね!それに実戦する為に来たわけだし、麗王くんの言葉を借りるなら、これも一種の経験ってヤツ!どうでしょうかねイレイザー・ヘッド!」

 

鼻を啜るような仕草を取るミリオは、確認を取るよう視線を向ける。ミリオ自身、ボケを連発でかますような芸人みたいに見えるが、中身はきちんとしている。

 

「好きにしな……」

 

担任の言葉と共に、皆は体育館γに移動する。

 

 

 

 

 

 

 

体操服を着こなした雄英生達を前に軽いウォーミングアップで体を慣らす通形ミリオに、皆んなは実戦を躊躇っていた。

 

「あの、マジでやるんすか?」

 

「マジだよね!!」

 

瀬呂の不安を代理する言葉に、ミリオは自信満々に返答した。

最初は風格を感じない(麗王の後なら)変な三年生かと思いきや、とんでもない発言に驚愕するA組。

一応相澤先生は特に何も言わなければ止めもしない…三年生にしろ歳が上にしろ、幾ら何でも舐め腐っている。ここにもし爆豪がいたら怒り狂う余り天に召されるだろう。

因みに夕焼と麗王は、ヒーロー達の戦い方を生で見たいとのこと。夕焼なら尚のことだろうが…

 

「轟、お前参加しなくていいのか?」

 

「あ、俺…仮免取ってないんで……」

 

こう言う時だけ丸くなりやがって…と心の中で愚痴る相澤は「まあいい…」と言葉を漏らす。

 

「あ、あの……麗王さんは、あの人のこと、どう思います?」

 

「あの人…ミリオさんの事ですか?ふむ…」

 

夕焼の問いかけに指で唇に触れる彼女は暫し沈黙し答える。

 

「……一言でいえば、ジョーク溢れた活発な青年、と言うのが一番と言いますか。インターンでほぼ経験を積んでると話は聞いたことがあります。あの人の眼をみる限り、挑発をしている訳でも、虚勢を張ってるようにも見えない…勿論、相手を見下してる訳でも」

 

近くで壁にもたれかかってる天喰は「君はよく分かってる…」と小声で言いながら、チラリと眼差しを向ける。

 

「何よりも、あの人はサー・ナイトアイの事務所で活動している学生です。個性なしの戦闘だとしても、私ですら勝てるかどうか…」

 

「わ、私でも…勝てないんですかね?」

 

「夕焼さんはその…非常に申し難いのですが……」

 

何やら口をもごもごとさせているようで、とても言い難い様子だ。それに勘付いた夕焼は「あっ、そうですね……私の場合は見境い無しですもんね……」と、若干心に引っかかる言葉を付け足す。

夕焼と麗王の会話を他所に、向こうは語り合ってる様子だ。

 

「あの…俺ら忍学生の子達もいないし、向こうに比べて色々とハンデとかありますけど…」

 

「俺たちはプロの下で活動したり、敵と戦闘だってしてるんですよ?」

 

「準備できたー?!俺はいつでも良いからねー!!」

 

いやこれはどっからどう見ても舐めてるとしか言いようが無いだろう。皆の言葉をさも一蹴するような掛け声に、一同は若干怒りが込み上がる。

 

「あの……こう、言いたくないんすけど、そんなに雑魚に見えます俺たち?」

 

「うん!ぶっちゃけ、どっから掛かって来ても良いんだよね」

 

ミリオの余裕っぷりは雄英のトップとして相応しいのだろうが、それにしては余りにも馬鹿げてるとしか言えない。

しかし幼馴染である天喰は知っている。

 

(通形ミリオは決して蔑む訳でも見下ろしてる訳でもない…一年生達が、ミリオの努力を知らない以上、少なくとも勝算は無いよ…

どんな強個性が相手でも、今のミリオに勝てる人間はほぼいない。例え相手が忍だろうとね…)

 

「んじゃ、僕から行きます!!」

 

「緑谷?」

 

緑谷の意外な行動に若干驚きつつはあるも、彼の焦りと皆に追いつきたいという言動を知ってるクラスの皆んなは、頷く。

近距離戦、遠距離戦などを得意とする者達は様々な陣形を組み、立ち位置を変え、個性を発動できるよう準備する。

 

「んじゃ良い?行くよ!」

 

相手はトップ。

油断は禁物、隙は許されない。

緊迫感のある空気に、皆は固唾を呑む。さぁ…相手は一体どんな個性を…

 

スルッ――

 

 

瞬間、ミリオは裸体と化した。

 

 

「はぁあああッッ!?ちょまっ、えぇ何で裸!?!」

 

予想外過ぎる唐突な光景に顔面真っ赤にする耳郎は激しく取り乱れる。少なくとも女子陣は兎も角、観戦してた夕焼は「ひゃっ!?は、はしたない…です」と両手で顔を覆い、麗王は取り乱れてはいないものの、赤面こそはしてるが視線はずらしている。

 

「ああゴメン、これ俺の個性だから。コスチュームが有れば全然良いんだけどねぇ…」

 

「そこっ!!」

 

悠長に駄弁ってるミリオ先輩に一発かますべく、足蹴りをするものの、ミリオの体は幽霊の如くすり抜ける。

 

「はぁっ!?」

 

衣服のとき見たく、今度は緑谷の足をすり抜けたことに驚嘆の声が自然と漏れてしまう。

 

「速攻で顔面とかマジかっ」

 

一度空気を吐いては吸って、口を閉じると同時に、遠距離攻撃の嵐がやってくる。

それでも意味を成さないよう、全ての攻撃が虚無と化し、ミリオは消える。

 

「消えた!?」

 

大規模による猛攻撃を繰り出したからか、視界が悪く見え辛かったとはいえ、あの一瞬で跡形もなく消えるというのは、どうにも信じられない。

 

「……何処へ?」

 

「ここなんだよね!」

 

「ッ!?」

 

突如、飯田の真後ろに出現したミリオに、皆は対応出来ない。

すり抜ける個性に、瞬間移動の個性?

まるで、複数の個性を兼ね合わせた強敵と戦ってる気分だ。しかも相手の個性が不明な上に、弱点も突破口も見つからない辺り、状況を覆すのは極めて困難。

 

「必殺の〜…」

 

 

 

こうして、時間はあっという間に過ぎた。

いや、〝過ぎた〟というのは時間感覚がズレてるから来る発想ではなく、本当にあっという間だったのだ。

A組全員が倒れ伏せる時間はざっと7分弱。ミリオ一人で全員を完封し、天喰と波動はただ観戦しているだけだった。

 

たった一人の先輩が、一年A組全員を圧倒したのである。

いや…全員というのは少々語弊か、爆豪に、轟、飛鳥、雲雀、柳生の計5名がいないのでフルとは呼ばないが、それでも到底辿り着けないこの明らかに開いた戦力差は、経験によるものだった。

 

「お前ら、しっかり鍛えて貰え。それとこれが終わったら麗王と夕焼の二人が控えてるからな。

因みに、俺の知る限りでは通形ミリオは、プロを含めて最もNo.1に近い実力を持つ男だ」

 

通形ミリオ

個性「透過」

身体の部位や全体に個性を発動させ、調整することで物質をすり抜けることが可能。無機物のみならず有機物にも適応する個性は、沈むことも可能。

地中に沈み、タイミングよく解除することで「弾かれ」地上へ戻ることで瞬間移動に似た個性を発揮する。

因みに発動条件は息を止めてる間。その間は光や酸素すら透過するといった、複雑な個性にもなっている個性だ。

 

 

「なるほど…これが、No.1に近いと呼ばれた雄英のトップ…」

「り、理屈は色々気になりますけど……す、凄いですね……人には、色んな個性が……」

 

麗王に夕焼も口から自然と言葉が溢れる。

夕焼は人知れぬ忍ノ里で暮らしていた為、都会のみならず、外の世界は見知らぬものばかりなのである。その為、様々な個性をめのまえにして驚くのは無理もないし、当然だろう。

一方で麗王は大人の社会で生き延びてる上に、様々な人間を見ている。だからこそ、彼がどんな人間なのかも、大方読める。

 

「ふぅ〜……取り敢えずこんなものかな?」

 

ミリオのケロッとした言葉とは、裏腹に彼は。

 

(戦って分かったけど、皆んな悪くはないけど…特にあの問題児は、良い)

 

一昨日、顔出しした甲斐が有っただけのことはあった。

彼と交戦した際、緑谷出久は反応ではなく、敢えて相手の行動を予測してからの攻撃に移っていた。緑谷の得意分野にして、グラントリノですらも認める男だ。

 

相手の攻撃を、未然に防ぐよう、予測を兼ねた行動…

 

 

「なるほど!サーが好きそうだな…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

カタカタカタという、キーボードを打つ音が、暗い室内によく響く。

パソコンを開き、調査に写すサラリーマンの風格をした男性は、一切指の動きを緩めることなく、眉ひとつ動かさずただ一人この部屋で、いつも通りの仕事を全うする。

そんな時だ、静寂な空気が打破されるのは――

 

「た、大変ですサー・ナイトアイ!!!ってうわ!今日もいつに増して地味ですね!」

 

「バブルガール、報告は元気に一息で――」

 

「っはい!ホシに動きがありました!

現在捜査中の指定敵団体組織、〝死穢八斎會〟その若頭!敵名『オーバーホール』が…!

全国指名手配犯の犯罪組織、敵連合と接触があったそうです!!」

 

 

 

 

 

その報告の元に、裏では敵同士の対立が今まさに起きていた。

 

 

「へいよぉ!死柄木、龍姫ちゃんの連絡受けて来たらこのトリ公と会ったんだ。是非とも上に逢わせろってスゲェ優しいヤツなんだ!感じ悪いよなコイツ!」

 

「へへん、どーよ死柄木!ウチが街を巡回してたら偶然見つけてさ、見たところかなり強いらしいし…どう?」

 

テンションはいつでもフルスロットルのトゥワイスに、敵連合としての組織に少しでも役立てたのではないかと、胸を躍らせながら声を弾ませる龍姫の隣に、さも不愉快そうに咳払いするは、チーム〝レザボア愚連ドックス〟のグループを壊滅させた張本人。その名もオーバーホール――

 

「……龍姫が見つけたんだな?」

 

静かに声を発する死柄木弔に、龍姫は「そう」と返事を返す。

 

 

 

「龍姫、トゥワイス、お前らさ……とんでもない大物連れてきた来たな」

 

 

 

 

死柄木弔とオーバーホール、敵同士の筆頭は、闇の中で静かに因縁を芽生えさせていた――

 





敵連合、LINEグループ

死柄木「漆月」
死柄木「おい、漆月、無視すんな」
死柄木「返事しろ」

黒霧「彼女も忙しいんですよ、要件は私が伝えましょうか?」

闇「グループで連絡すると言うことは、何か相談でも?」

死柄木「お前らには関係ねえよ」

スピナー「個人で話せよ」

トガヒミコ「弔くん激おこプンプン丸〜?٩(๑`^´๑)۶」

死柄木「トプ画をヒーロー殺しにすんなトカゲ」
死柄木「別に怒ってねえよ、それと顔文字ウゼェから二度と使うなイカれ女」

蒼志「もしや寝てるのではないでしょうか?」

死柄木「今昼の1時だぞ?」

荼毘「通知が溜まってクソうぜぇ」

死柄木「お前のトプ画がなんでジバ◯ャンなんだよ、キッズかよ変えろや」

龍姫「モンスターストライク!今なら始めませんか?URL…」

死柄木「あ?」

龍姫「今モンストやれる人いる〜?」
死柄木「勝手にやってろクソが、つかグルに送るなよ」

鎌倉「今おっぱい!!」

死柄木「は?」

鎌倉「ごめん変換ミスった、今起きた!」

死柄木「今のでお前の本性が全員に知れ渡ったぞ」
死柄木「つーか寝すぎだろww今何時だと思ってんだよwww」

トゥワイス「エロさ撲滅!鎌倉ちゃん溜まってんの?良ければ俺が相談に乗ろうか?」

死柄木「自然に食いつくな。どんだけここのグルに変人しかいねぇんだよwww」
死柄木「やるなら個チャでもやってろ、ここでキモいことすんな」

Mr.コンプレス「俺はまともだよな?」

死柄木「知るか」

マグネ「鎌倉ちゃん!既読無視だけして後黙り込んじゃったじゃない!!」

死柄木「自業自得だろ」

漆月「今開いたら凄い事になってんだけど」



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