光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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芭蕉ちゃあぁぁん!!
シノマスで芭蕉ちゃんのヤツ手に入れました!ポイント高くてあと報酬で二枚入れば秘伝忍法書の解放…あれ?一つ足りない…




159話「個々の行動」

 死穢八斎會――指定敵団体(ヤクザ者)と呼ばれる小さな組は、サー・ナイトアイ事務所が密かに調査を進めている。

 その中で今の組を仕切っているのが治崎と呼ばれる青年。敵ネーム――オーバーホール。

 

 元々の原因は、とある街でのコンビニ強盗犯――レザボア愚連ドッグスというチンピラ集団から始まった。

 犯罪行為を働き、逃亡を図ってた所を、運悪く八斎會の連中と遭遇したらしく、警察が駆けつけた所、どういう原理か清廉潔白になった状態、つまり無抵抗のまま大人しく署へ連行されたそうだ。

 この関連性から察して確かな証拠はなく(レジのお金は全て焼かれていた)、警察も事件の関連性はないと宣言し、治崎率いる敵達は調査されずのままであった。

 

 しかし、その微かな事件をサー・ナイトアイ事務所は流すことなく八斎會の行方、調査を進めた結果――敵連合との接触があったとバブルガールの報告書には書かれていた。

 現場では血痕が二つ、原型を保たず血肉の破片が汚泥の塊になっていたことから、酷い触発だったのだろうと想像で察しれる。

 ただ八斎會、主に組織を仕切る若頭が悪事を企んでる証拠を掴めず、幾ら現場での揉め事が起きてようと、黒に近いグレー敵扱いが出来ないのである。

 

 

 今回のインターンは、死穢八斎會の犯行証拠を逃すことなく捕まえること。その為にはサー・ナイトアイ事務所が穏便に且つ、確実性の高い計画を円滑に進めながら、その証拠を手にする。

 失敗は許されないし、インターンの生徒が大きな件に手を出すのは些か危険ではあるものの、今までのような甘えた姿勢でのやり方では、今の社会に明るい希望など持てやしない。

 でなければ、サーは可能性のない人間は真っ先に切り捨てるし、今頃緑谷達は寮で勉学に励んでるだろう。

 

 彼ら彼女らが、社会に貢献するに相応しいと判断したからこそ、今ここにいるのだ――

 

 

 

 

 

「私、知ってます――この方、一昨日の……」

 

 微かな出会いに、大きな因縁が芽生える瞬間を、身を以て味わいながら、驚愕の色に染まる。

 この男、間違いなく一昨日ぶつかった男とほぼソックリの人物だ。

 ほんの短時間、なんて事のない僅かな会話、そして何よりも特徴的なペストマスク――

 

 見間違え、人物像が似てるという勘違いは人探しや調査ではよくありがちなこと。だが、仮にそうだとしても態々公衆の前であんな目立つようなペストマスクを、普通は掛けたりなどしない。

 となれば、高確率で一昨日雪泉が遭遇した人物と、死穢八斎會の治崎は同一人物と見なして問題はない。

 

「えっ、雪泉ちゃんマジでか!!」

「一昨日って…」

「…………」

 

 雪泉の斜め上の予想外な発言に、驚愕、困惑、沈黙を重ねる。

 サー・ナイトアイは表情を曇らせながら物事の考えに浸り、何か手掛かりや関連性について思考を働かせてるのだろう。

 

「雪泉さん、彼と遭遇した場所と事柄の詳細を教えてくれませんか?些細な事でも構いません、出来れば具体的に……」

 

 物事に動じず、常に冷静で判断し素早く行動に移したのは麗王――柔らかな口調、優しく冷静さを保つ言葉を掛けながら、雪泉に質問を訪ねる。

 

「えっと……」

 

 

 

 

 

 繁華街――いつになく絶え間ない雑談と人々の交わる声が、街中に溢れ返っていた。

 慣れない地で大勢の人波が押し寄せるのは窮屈だが、捜査とあらば止むを得ないし、ターゲットの為だ、弱音を吐いてる暇はない。

 

「ここの、曲がり角と…信号を右に……」

 

 一昨日の出来事を脳内で再生しながら、記憶を探り確かな目的地へ足を運ぶ雪泉と、その後ろ跡を追う一同。

 彼女がオーバーホールと鉢合わせたのならば、それはそれでメリットと同時にデメリットも存在する。そして勿論、今後の捜査には大きな影響が出る。

 

「ここ、ですね――ここの道端で、事務所に向かうところをぶつかって…えっと、資料を落としたんです。

 触られてはいません、内容はあの角度や見方から察して見られてないので問題はないと思います…ただ色々と質問をされたり…」

 

「質問ですか?」

 

「ええ、貴女は何処の学校所属ですか?とか…研修先は何処ですか…とか……上手く誤魔化せてはいましたが…どうですかね?」

 

 顔色を伺うように質問を訪ねる雪泉に、サーは冷淡に答えた。

 

「不幸中――素性や我々の事務所内に雪泉がいることがバレていないのならば、幸いか…現段階では支障はないし問題ない」

 

 返って来たサーの言葉に安堵の息を吐くも、「ただ…」と言葉が付け加えられた。

 

「雪泉はなるべく捜査に赴かない方が良い。情報としては有益だが、同時に雪泉が事務所内にいることが相手に知られてしまえば、捜査は愚か、相手の尻尾を取り逃してしまう危険性は充分に高い。下手して警戒心を刺激させ、身を隠してしまえば折角積み重ねた労力は台無しになる」

 

「そんな……」

 

 確かに――なんて言葉が出ても可笑しくない程に、その事実は説得するのに充分だった。

 運が善いか悪いかは判決こそ曖昧だが、少なくとも若頭(治崎)が何かしらの計画を立て、目的がある以上自分達の野望に支障は出したくないのが普通だ。

 もし捜査の際に雪泉が目標と二回も遭遇してしまえば、それこそ敵は身を隠してしまう。

 

「だがその分、ここの捜査網を広げた方が良さそうだな。雪泉のお陰で多少は有益となった。次はこの現在地点から此処の範囲内まで…」

 

 地図を広げながら指をさし、捜査の範囲を広げるサーを遠目に、雪泉の表情は晴れやかではない。

 

「あー、雪泉ちゃん落ち込まなくて大丈夫。たまたま悪い偶然が起きちゃっただけだから、気にしないで良いんだよ?」

 

 そんな彼女の心情を察したバブルガールは、あやすように頭を撫でる。頭から手の感触が伝わるのを感じながら、「有難う御座います…」と言葉を返す。

 

 折角、サー・ナイトアイを含めた事務所の役に立てるよう助力に励みたかったのだが、こうなってしまった以上残念な結果だと心が痛んでしまう。

 その上、死穢八斎會の手掛かりや捜査が狭まると言うのは、何とも歯痒い気持ちだろうか…

 

「では、ペアは緑谷出久、通形ミリオ――雪泉は麗王と組んでくれ。ヒーロー学生の方はこの警戒網に関してもう少し調査を願いたい。雪泉と麗王はこの警戒網の外を調べてくれ。

 

 パトロールも事務所で勤める上では必要不可欠なことだ。二ペアで同時進行するのは実に有効な方法だからな」

 

 サー・ナイトアイ事務所は主に死穢八斎會の組織を厳重に監視、調査に赴いてはいるが、ヒーローの事務所として立ち上げる以上はパトロールも欠かせない。

 最近は敵連合との事件や関連性を追うのに必死で務めていなかったので、序で…とは言わないが、初日という意味も含めて忍学生にはパトロールを優先するようにと判断したまでのこと。

 

 先ほど前述した通り、雪泉が治崎と対面してしまった以上、最悪な未来を防ぐ為には、なるべく彼女の存在を公に映すのは良くないだろう。それでもサー・ナイトアイ事務所のインターンとバレない以上はまだマシだろうが…

 

「それに雪泉ちゃんや麗王ちゃんもあんまりこの地域は詳しくないでしょ?慰めになるかは判らないけど、これを機に土地に慣れるのも良い案だと思うよ!」

 

 バブルガールの明るい励ましに、表情こそは晴れてはいるものの、内心はモヤモヤと靄が纏っている。

 いや、しかし解っている。

 これはこれで仕方がないし、寧ろ言わねば今後の調査や進展に支障が生じるので、雪泉には皆感謝してるのだろうが、何故か心は余り心地よくない。

 いや……それは自分が活躍出来なかったからとか、そう言う自己満足の私欲では無く――

 

「もし、私があの方の正体を知っていれば……」

 

 

 ――もっと有益な情報を取得出来たかもしれないのに…

 

 

 尤も、あの状態では確かな証拠や手掛かりなど探れるような体制では無かったのもまた事実だが…

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり――街外れの孤立した島に佇む大きな特別病棟。

 端から見れば何処か不気味で、昼間なのにその異様な気配は、全身の血を騒めき、悪寒を感じさせるものだった。其れも、夜になれば完全に廃病棟の心霊スポットと噂が流れても可笑しくない程に――

 近辺には駅や住宅街は愚か、工場や店と言った地の利が存在しない為、荒廃した土地と人工芝、鉛色の病院の建物が錆び付くように残されている。

 これだけ見れば、夜に見る隔離病棟は完全に身の毛もよだつ心霊スポットという噂が流れても可笑しくはなさそうだ。

 

 衛生面でも喜ばしくないことは勿論、一般人の立ち入りは禁じられており、関係者以外は許可されていない。

 鯖色の鎖で封鎖されたバリゲードは、凡ゆる侵入者を一切通さない様に設置されている。

 

「はぁ〜、やだやだ。信じられないよねぇ全く」

 

 孤立した島、薄暗い病棟に赴く三人は荒廃した地の上に足を踏み入れながら、騒々しく歩みを進める。

 一人は薄い水色の長髪をなびかせ、黒紫色のドレスに紅いスカーレットのスカートを履いている。

 一人は顔面がツギハギに縫われ、火傷した皮膚が露出し目立っている。

 一人は容姿がイグアナの様な爬虫類に、乾燥した鱗で覆われながらもヒーロー殺しのコスチュームに身を包んでいる。

 

「死穢八斎會の奴等、折角のし上がる為に戦力拡散してたのに…こんな時に部外者が邪魔しちゃってさ。

 アタシがいたら犠牲者出さずに返り討ちに出来た。少なくとも半分は確実に相手を仕留めれたのに、残念を通り越してまー絶望だわ」

 

「あのオカマが死んだんだっけか――まあ、戦力としては役立ってたよな。敵同士の抗争なら死者が出るのはあり得なくもねえ…」

 

「なぁ、漆月と荼毘――目的地に着いたのは良いが、これからどうする気なんだ?」

 

 不機嫌そうに声を荒げる漆月に、どうでも良い様に冷淡に言葉を返す荼毘。その隣でバリゲードの方角に指を差すスピナーは、小首を傾げる。

 この三人はメンバー内での連絡は愚か、組織内では滅多に会う機会が少ない人物達だ。

 これだけ聴くと、三人が揃い会う光景はとても奇妙で斬新だ。

 

「病院…隔離で孤立した島……おい漆月、お前一体何が目的だ?お前が人手が欲しいからって来てみりゃあ…ここって確か極悪人が行き着く病棟だったよな?」

 

 訝しげに、目を細める荼毘の言葉に「そっ」と軽く言葉を発する漆月は先行に立ち、繋がれた鎖を掴む。

 

「重罪犯は勿論――マフィアやギャング、悪名高い組織の人間が搬送されてると呼ばれる病院。

 中でも一生治らず植物状態のままで生を終えた囚人患者もいるらしく、ゴーストタウンの様な風貌に、治る見込みが無いと判断された者が行き着くことから世間では『病と悪霊の墓場』なんて物騒な名前を付けられてる程よ。

 

 ――とまあ、大半が完治した場合即座に個性を使われてお陀仏になってしまう危険性を防ぐ為だから、正確には完治目的じゃなくて無力化した人間の監視――が、しっくり来るかしらね」

 

 そう呟きながら、手に持つ二刀丁の一本を取り出し鎖を断ち切る。

 ガキィン!と、金属を斬る不快な音が耳をつんざくも、少女は表情一つ変えずに、何事も無かったように刀をしまう。

 

「成る程な…そりゃあそうだ。だがな、それとお前の目的の意図が読めねえ。此処が刑務所なら襲撃して世間に名を馳せ、仲間を集める、一石二鳥のやり方かと想定してたが、病院じゃあなあ…」

 

「ハァ〜〜……もう、荼毘ってクール振って偉そうな口叩いてるから頭良いと思ってたけど、トガのこと言えた口ではないんじゃないの?」

 

「あ?燃やすぞテメェ…」

 

「おいおい喧嘩すんなよ!…で、漆月は此処に来て何するつもりだ?一般、家族との血縁からも拒まれてるこの厳重な隔離施設、仲間にするって選択肢が仮にあったとしてもだ!病が治ってねえ病人なんざ足手まといだろ?そんな正気とも思えねえ…いや、お前は元から正気じゃねえか…だとしても、無意味なことはしねえだろ?」

 

 スピナーの意見は至極真っ当だ。

 病棟に来たのは良い、此処が悍ましい施設病院であることも理解した。しかし、此処へやって来た理由が仲間に引き入れるという選択肢は明らかに低い。

 ギャング、マフィア、敵組織の人間、これだけ聞くと悪の支配者と謳歌する人間は多くの使える人間を仲間に引き入れるだろう。

 ただし此処は病院――刑務所とは訳が違うし、完治した人間がいない、ある種の意味で捉えた監獄に等しい場所だ。

 

 

「そうねぇ…表面上で捉えれば、だけどね♡」

 

 

 そう言いながら、錆びついた扉を開ける。

 悠々と、何食わぬ顔で彼女は荒地を踏みにじりながら、目的地である隔離病棟――『長期療養型刑務所病院』を目指しながら歩いていく。

 

「チッ…だがまあ、逆らったらそれはそれで色々と面倒だしなぁ」

 

 荼毘の怠い言葉に、スピナーも返事こそはしないが、首を縦に振り頷く。

 漆月は珍しいことに、自分自身の寝首を刈りに来ても問題ないと言ってはいるが、但しそれと同時に「お前らの命や身の保証は取らないよ」と言っているので、裏切り行為や反逆が、喜ばしい結果になるとは思えない。

 

「ハッ、まあ良いだろ?アイツは無意味な行動はしない筈だぜ…アイツの行動に付き合うのも悪くはねえ…何よりも其れが仲間ってもんだろ?」

 

「お前、ヒーロー殺しの意思は?」

 

 

 

 

 

 

 中に進めば当然、看護師や病院の先生はいた。

 こんな人気のない場所に医者がいたことでさえ少しばかり驚きではあるのだろうが、ここが刑務所病院であるのだから、当然といえば当然だろう。

 

「うわッ、グロイなお前…」

 

 明かりの灯さない影の回廊から、血生臭い臭いが充満する。

 病棟に佇んでた医者や看護師の死体が、バラバラに転がり血が付着する。

 たった数十秒遅れて来てみれば、もう彼女は惨殺ショーを繰り広げていたのか、一体何が起きたのかは不明である。

 

「し、漆月…!コイツらは一体…?」

 

「ん、なに?腰抜かしてんのスピナー?口止めに連絡網を途絶えさせんのは常識でしょ?

 私、もう昔とは違って容赦とかそういうのないから――」

 

 頬に冷たい返り血が滴り落ちる感覚に優越や快楽を覚え、血の海とかした廊下を歩き、前にいる肉の死体を踏んづけ前に進む。

 まるで「死んだお前らは何も言えない」と言わんばかりに、眼中にないその瞳には、以前拠点をヒーロー達に荒らされる前までの彼女とは確実に違う。

 

「とまあコイツらのことは良いのよ別に――」

 

 そう言いながら彼女は更衣室に向かい、ロッカーから女性として魅力的なナース服を取り出す。

 

「問題なのは、此処の隔離病棟に搬送されたある囚人を仲間に引き入れる――これが本来の目的で、直接的な関係には繋がらない」

 

「あっ…?どう言う…は?」

 

「ちょおッ!?」

 

 荼毘は真剣な話を逃したりはしないものの、呆然と目を丸くする。スピナーに至っては顔を真っ赤に両手で顔面を覆い隠す。

 

「色んなネームドを持つ敵や、抜忍として珍しい部類が影に潜んでるのもある程度は網羅した――元々諜報活動や隠密行動は得意でね、更には殺生方法や暗殺の仕方も小さい頃先生に拾われたから書物や読書で知識を吸収したわ」

 

 記憶が蘇ったと言うのは、単に物事や過去の現状、経緯だけが全てではなく、勉学や知識量も予め封印されていたので、彼女の記憶が開花したお陰で、その実力や強さは以前の彼女とは比にならないのは確かだろう。

 そう言いながら彼女は自分の衣装を脱ぎながら、下着姿になる。肌が露出し、滑らかで柔らかな肌が曝け出していた。

 ブラジャーや下着のパンツは黒色で、残虐且つ殺人鬼でもありながら、その妖艶な気に触れ、心が騒ついてしまうのは、現状が現状で仕方がない。

 

「んで、此処からが本番――本来なら黒佐波の代わりとして穴を補おうと思ったんだけど…

 私の予想だと幾つかこっちの戦力が削れちゃうのかしら?誰か…とはまだ不明だけど」

 

 そのまま医療のナース服に着替えていく。

 

「今回私が仲間に引き入れるのはこの治療を受けてる囚人患者――ソイツは忍じゃなくて敵。

 とある不幸な事故か、はたまた神様から見捨てられたのかしらね、今もこの病棟の近くにベッドの上で寝込んでるわ」

 

「まあ、忍は専用病院みてぇなのあるしな」

 

「昔ね、とある大病院を務めてた院長がいたのよ。三人家族――妻もいる、娘もいるお金に困らない裕福な家庭でね。でもそれはあくまでも表面上、中身はかなりドロドロの重いお話…

 父親の院長は世間でも有名だったんだけど、後ほどニュースで明かされたのが数々の医療ミスを金で揉み消してた事が発覚――如何なる道理か不明だけど、自白したらしいわね。

 中でも家庭内での内容、詳細は深く追うと不倫とかしてたらしい、まあ敵にも勝るとも劣らない下劣な人間であることは間違いではないわ」

 

 お前が言うか?と口に出しそうな言葉をなんとか堪えた荼毘は、スピナーと供に沈黙に浸りながら話を聞く。

 

「母は病院の人間ではなかったけど…そう言えば娘が行方不明になったというのは聞いたことがあるわね――朝になってたら娘がいなくてパニック起こしてたらしいし、今も子供が何処にいるかも分からないんだって」

 

「で、その過去の事件性とお前の目的が何に繋がってる?」

 

「医療ミスを揉み消しにされたヤツが、今回の目的だとすれば?」

 

「ッ――」

 

 全てが繋がったと言わんばかりに、荼毘は息を飲む。

 まさか…だとは思うが、コイツ……

 

 

「敵ネーム『ダークマスター』、本名は『黒柴 粒子(こくしりゅうこ)』――

 Dースクアッドの組織の一員。どう言う経緯で彼女が軍人としてあの危険犯罪テロ組織に入ったのかは不明だけど、少なくともそこらの有象無象よりかは遥かに格が違うわ。

 ターゲットを捕捉して、躊躇いなく惨殺。命令とあらば拷問役としても重宝されてた彼女は戦績も高い、今の社会としては充分に危険すぎるわ。

 

 個性を発動せずに対象を殺害できる腕から、他の者達に慕われてた…言うなればカリスマ性も含まれてたのよね。だけどそれも超常が始まってから解体も多くてね、忍に運悪くやられちゃった患者よ――」

 

 しかし問題なのはコイツの身体能力は勿論――何よりも強すぎる個性である。

 漆月曰く、『既に特異点は過ぎ、連合に入れば絶大な戦力を誇る』と評されていることから、期待は寄せても良いのだろう。

 

 

「さッ――話は後よ。先ずはスピナーと荼毘、今から患者の治療を施すから、アンタ達は手伝いなさい」

 

 

 漆月の生真面目な言葉に、二人は耳を疑う。

 薄々と予想は付いてはいたが、意外なことだ…

 

 漆月が医術を身に付けていたとは、考えてもいなかった――

 

「お前、出来んのか?つか、初めて知ったぞ…お前が医療の知識に長けてるなんて」

 

「医療にも興味があったからねぇ…憑黄泉を実験に手術とか解剖とか、骨の関節を折ったり、血脈を計ったり面白いことやってたら、重い病気や癌とかじゃない限りは回復できそうよ」

 

 何とも原点が酷いことか、医者が聞いてたら間違いなく顔面蒼白、ブルーベリー色に青ざめていただろう。

 

「良い!?治療は最先端なる技術と、的確な処置が全て!微かなミスは許されないわ!!

 主にやるのは私――アンタ達はサポートに全力で徹しなさい!私の指示に従えば猿以下でも出来る簡単よ!だから人手が必要なの、難しい作業じゃない、単純で私の言葉通り行えば良いだけ」

 

 漆色の瞳は、闇の中に浮かぶ月の如く輝きを増し、強き眼差しを二人に浴びせる。

 可笑しなことだ――全国指名手配にして、人間同士の血の争いを間近で観察するイカれた思想、死柄木弔に勝るとも劣らない悪意を持つ彼女が、人の命を救おうと全力を以って励んでいるのだ。奇妙奇天烈とは正にこの事を指している。

 この姿勢と気迫の言葉から察して、嘘偽りはない――

 

 

 

「因みにアンタ達に、拒否権ないから――♡」

 

 

 言葉の有無を言う前に、拒否権を取られてしまった二人は、渋々と彼女と付き合わなければいけない羽目になったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 漆月達三人組が、誰にも知られる事なく密かに行動を起こしてその頃の同時刻――

 

 

 ペタペタ、ペタペタペタペタ――素足で建物の間を走る少女は、息を荒げながら一心不乱に何かから逃げている。

 

 ――だれか…だれか!

 

「お前は本当に、どうしようもない奴だな」

 

 ――いやだ…もうもどりたくない……だれがたすけて……!

 

 冷徹な声に、心が騒めく少女は、背後に迫る大人から逃げている。捕まってしまえば終わり…何とか隙を突いて、折角あの訳わからない迷路状の地下から逃げだせたのに…こんな所で捕まったら、下手すれば今度こそ…

 

 ――だれか、だれか…おねがいだれか…たすけて!!!

 

 

 光の差す場所まで走っていくと、不注意なことに誰かとぶつかった。

 

「おわっ…?」

「いたッ…!」

 

 相手も此処から人間が出てくるとは予想しておらず、自分よりも大きな背の高い人にぶつかってしまう。

 ぶつかった衝撃の際に尻餅をついてしまったが、この際に生じた痛みなどどうでも良い。

 

「ゴメン、大丈…って、子供?大丈夫?痛かったよね?怪我はな…」

 

 緑髪の少年は、少女に謝罪しながら怪我の安否を確認する。だが少女は外の世界も知らない為、大人に良い縁を持たない彼女は、疑心暗鬼の為に怯えた様子で後退りする。

 

「どうしたのかな…?もしかして迷子…「ダメじゃないか壊理――ヒーローに迷惑を掛けちゃあ…」ッ――!?」

 

 壊理の体が一瞬すくむように震え、筋肉が硬直する。

 聞きたくない…もう見たくもない…関わりたくもない、あの人がいま…自分の背後…近くに立ち尽くしている。

 それと同時に、緑髪の少年の顔色もまた、暗雲に染まり汗を滴らせる。

 

 

「――帰るぞ、壊理」

 

 

 其れは、サー・ナイトアイ事務所がマークしている対象人物、オーバーホール。

 

 

 此処からが、本番のインターンが始まろうとしていた――

 

 

 




月閃中等部のご報告&キャラクター紹介!

月光「はい皆さん!お待たせしました、裏ストーリーでは少々の活躍をお見せした月光と――」

閃光「…閃光だ。活躍と言うより、アレは悲惨だったろ」

月光「まあまあ♪そんなこと言わずに、今日もキャラクター紹介していきましょう?と言っても、本日で2回目になるのですけどね」


ヒロアカグラ・マスターズカード

緑谷出久

ヒーローネーム『デク』

所属:雄英高校ヒーロー科1年A組
誕生日:7月15日
血液型:O型
出身地:静岡県
好きなもの:カツ丼
戦闘スタイル:近接格闘

ステータス ランクA

パワーE
スピードE
テクニックB
知力B
協調性A

個性技:DEIAWARE・SMASH
敵三体に大ダメージを与える[クールタイム中]

必殺技:DETROIT・SMASH
敵全体に特大ダメージを与える[クールタイム小]

リーダースキル
[ヒーロー学生]の攻撃力、体力を20%アップ

パッシブスキル
【敵キラー】[敵]への攻撃力が50%アップ
体力が30%以下になると、個性技を二回連続で発動できる。

リンクスキル
雄英A組三人生徒 攻撃力が30%アップ
対象キャラクター 緑谷出久+爆豪勝己+轟焦凍

平和を守る者達 攻撃力50%アップ
対象キャラクター 緑谷出久+飛鳥

雄英高校ヒーロー科 攻撃力10%アップ
対象キャラクター 緑谷出久+雄英高校

月光「個性技はオールマイトと似てはいますが、何かしら関係があったりするんですかね?」

閃光「知らないが、被った個性なんて世の中幾らでもいるだろ?まあ、オールマイトと同じ個性を持つ人間という存在自体が充分凄みはあるが…」

月光「もしかしてオールマイトをリスペクトしてたり?」

閃光「そうなんじゃないか?確かアイツ、オールマイトオタクなんだろ?私にはそう言った分野に興味はないが…ノートを纏めて分析するというのは、私も納得する部分がある」

月光「そうなの?因みに昨日夜遅くノートを書いてたみたいだけど?勉強かしら?」

閃光「いや、名言や必殺技とかだ。
例えばそうだな…12ページの『次に貴様が何を知る(視る)か、それは…神のみぞ知る』や『邪悪な権化に万の責め苦を――』、後は『暗闇に穿つは聖なる拳…滅びるは、悪の存在』、最近自信作なのは…」

月光「…………」

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