光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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160話「芽生える因果」

 

 

 

 

 周辺地区のパトロールに赴く緑谷出久と通形ミリオ――街の巡回と、指定された範囲内で調査を進める二人組は、初日にしては思ったよりも順調。大した事件は見つからず、この通り昨日と何ら変わらない街並みの景色だ。

 

「緊張するなあ…」

 

「でもパトロールは職場体感でもやってるよね?あっ!敵連合の接触があるからトラウマでもあるのかな?」

 

「ああ、ヒーロー殺しのことですね…そう言う意味では…いえ、ある意味合ってるっちゃあ合ってますが…」

 

 ヒーロー殺し――忍をも殺害してきた彼の信念と悍ましさは軽く戦慄してしまうものだ。

 保須市にて凶器を振るい、自分達に悪夢を見せた最後の姿は、オールマイトに近い執念を感じさせるものだった。

 確かに…なんて言葉が出てしまう位に、職場体験の出来事は最悪だったし、脳無に続いてと災難な事が多かった。最悪、殺されてても可笑しくなかった上に、友人の飯田天哉の場合は一歩遅ければ人生に終止符を打たれていただろう――

 だがトラウマか原因で緊張してると言うと、実際にはそうでもない。

 

「諸事情で基本活動未経験で……サー事務所の下、初めてのパトロールなんですよ。だからソレで一番…筋肉が強張ったり、こ〜…凄く緊張してて…」

 

「へぇ〜、何処の事務所だったか解らないけど変わってんのね!」

 

 まあ、変わってると言えば変わってるだろう。

 何せオールマイトを鍛え上げた師匠にして、元雄英の教師を一年間務めてたグラントリノだ。

 否定はしないが、もし本人の前で言ったら腹部に蹴りを入れられゲロを吐かされそうなので、口が裂けても言いたくはないのが本音だ。

 

「解らないこととかあったらいつでも俺に相談して欲しいんだよね、と言っても基本的に小難しいことなんて余程じゃない限りあり得ないけど!」

 

 三年生の通形ミリオ先輩は、昨日のことと言い根は優しく経験技術が豊富な人だ。たった二年の実力差が大きく広がることも理解したが、個人的な悩みとして緑谷本人が拭えない点と言えば…

 

(どうして、オールマイトはミリオ先輩やサーのこと…僕に教えてくれなかったんだろう…?)

 

 オールマイトの後継についてだ。

 昨日の採用にて、雪泉と同じく印鑑奪取の条件を課せられた緑谷はサーに言われたのだ。

 

 

『やはりオールマイトの後継は、通形ミリオであるべきだった――お前を選ぶ理由が益々解らない』

 

 

 サー・ナイトアイの言ってた台詞、ワン・フォー・オールの後継者は本来、〝通形ミリオに継がせるべきだった〟と自負していた。

 その言葉を耳にした緑谷は、鈍器で後頭部を思いっきり叩かれたかのような衝撃を受けたのは、必然――

 

 どうして――そんな重要な話を、オールマイトは口に出さなかったのだろうか?言える機会などいくらでもあったのに、あの人は一言も別の後継者がいたことを話さなかった。

 

(そう言えば、オールマイトがサーと会うのは個人的に気不味いとか私情なこと言ってたし…それと関係が繋がってるのかな?

 何にしても、僕だってオールマイトの後継者なのに…)

 

 何にせよ、頭から離れない暗雲が纏わり付いてるにしろ、今やるべきことは街の安全確認とパトロールを含めた八斎會の隠密調査――幾ら自分がインターンに入れたからと言って気を抜いてる暇はないのだ。

 

「あっ、そうそう…そういやさ!ヒーロー名書いてなかったよねお互い!!名前は?此処でヒーロー活動する前にネームド聞いておかないとさ!」

 

 突然ミリオに声を投げられた緑谷は我に返る。

 基本的にヒーロー活動をする上では、ヒーローネームで呼び合わなければならないのが決まりである。

 ヒーローと個人は違う。緑谷出久は個人として――デクはヒーローとして、其々の顔がある。ヒーローである自分と、個人である自分は表裏一体の存在であり、必ずしも二面性を持っているのだ。

 其れは、ヒーロー活動をする上では常識の範囲内だ。

 

「えっとですね、僕はデクです!」

 

「デク…ん?木偶!?良いのソレ!?」

 

「良いんです」

 

「一応確認するけど、漢字の方?」

 

「カタカナです」

 

 まさかヒーローネームが木偶ならぬデクという予想外な名前が返って来たことに驚愕したのだろう、発音だけを聞き取れば確かに蔑称であり、勘違いする人間は少なくないだろう。

 本人も昔は蔑称を幼馴染の爆豪勝己に名付けられ不満要素満載だったのだが、最近は割と本気で気に入っている。

 

「俺のヒーローネームは『ルミリオン』――〝全て(オール)とまではいかないが、〝百万(ミリオン)〟を救う人間になれるよう命名した!

 レミオロメンみたいでカッコいいよね!」

 

 レミオロメン――確かとある何処かのバンド名だったような気が…音楽大好きな耳郎とは違い楽曲に詳しくない上に、知識はそこまで広くはない。

 どちらかと言えば、少々噂話で小耳に挟む程度で、曲に拘りはない。(オールマイトの関連する曲は別)

 

「よし、じゃあお互いヒーローネームで呼び合おう。俺たちは今こうしてコスチュームを身に纏い、街に出ている。

 

 つまり俺たちは〝ヒーロー〟だ!一緒に頑張ろうな!」

 

 先輩の鼓舞する励ましに、胸元が熱くなる緑谷は、元気の良い声で返事をする。

 それと同時に内心「もしミリオ先輩のような、人を笑顔にする人間が後継者として選ばれていたらどうなってたんだろう…」と自然的に思ってしまうことも…

 自分が後継者では無かったらどんな過酷な人生を送っていたのかは、想像もせずに――他人の夢を見る少年は、この後何を見るのだろうか…

 

 

 

 

 そして、現在に至るわけだ。

 

 一際目立つペストマスク、

 冷静さと熱を含まない瞳、

 写真に映っていた男、

 雪泉が一昨日見たであろう八斎會の若頭、

 

 一目見て直感で理解した――この男は間違いなく治崎だ。

 雪泉の証言により警戒網を広げ、調査を進めるのは正解だったとも呼べるだろう、敷地近辺の監視はサー・ナイトアイ達だが、パトロールは学生である自分達…もし警戒網の外へ出ていたら雪泉と麗王二人に悪く遭遇してしまっていただろう。

 不幸中の幸いにせよ、余りにも唐突すぎる事柄に、動機が揺さぶられるような錯覚を味わう。

 

(コイツ…そんなッ!嘘だろ…いきなりかよ!!)

 

 

 死穢八斎會・若頭――オーバーホール

 今回の目標であり、敵連合との接触があったと思われる危険人物だ。

 

「いやぁ、ウチの娘が突然ぶつかってすみませんねヒーロー」

 

 緑谷の内心混乱する心情などお構い無く、治崎は悠々と冷静さを装って語りかける。こういう敵こそ厄介と言うべきか、全く害意は感じ取れない。

 

「遊び盛りでケガが多いんですよ、困ったものです、其方こそ大丈夫ですか?」

 

 何食わぬ顔で、緑谷に微笑みかける治崎。

 とても…指定敵団体の人間とは思えない彼に、何処か悍ましさを感じてしまうのは自分だけだろうか?

 いや…もし彼が敵だと知らなければ本当に気付かないだろう――成る程、それなら雪泉でさえも普通に見逃してしまう訳だ。

 

「あ、ええっと…「まーたフードとマスク外れちゃってるぜ!サイズ調整ミスってんじゃない?ガバガバじゃん!」――!?!」

 

 返答に悩み困ってた緑谷に、マスクを被せるミリオは遮るように言葉を挟んでくる。

 何を――?と先輩の意図が読めない緑谷だったが、元々対象を観察して分析するのが得意だったという意味もあるのか、彼の平坦な顔を見て直ぐに理解した。

 

(そうか…今じゃ僕らと向こうはお互い何も知らない状況なのに…〝嘘だろ?〟の顔が表に出てたんだ!

 怪しまれない様に振る舞わなきゃいけない…もし向こうが僕らのことを勘付いて警戒でもされたら、それこそ今回の仕事に支障が出る!!)

 

 無難に且つ自然にやり過ごさなくてはならない――その為には何がなんでも堪えなければいけない。

 

「その素敵なマスク、ここじゃ有名な八斎會の方達ですね!」

 

「ええまあ…マスクのことはお気になさらず。衛生面とか、清潔とか色々気にする口でして……」

 

 ヤケにマスクの事に関しては触れて欲しく無さそうで、言葉を濁すような曖昧な口調で視線を微かに逸らす。

 そんな治崎は直ぐにある話に移り変わる――

 

「ところで、貴方達見たことろヒーローですよね?若い新人のように見えますが…初めて見たな…」

 

「そうです!俺たちまだ新人で…まだ慣れないことも多いんですよ。サッ、立てよ相棒!ボサッとしてたらいけないだろ?」

 

「――何処の事務所所属なんです貴方達は?」

 

 相手がヒーローである以上、「ハイそうですか、お勤めご苦労様です」と潔く引き退る程、治崎はヤワではない。

 警戒心を一切緩まず、迫真に問い詰めるような目に、視線をズラさず爽やかな笑顔を向けるミリオは、流石は三年生の経験者だ。相手からも、端から見られても怪しまれない素振りが一つもない、。

 

「所属だなんてそんな、学生ですよ!俺たちはてんで、まだまだ実力にも及ばないピヨっ子でして……オールマイトがいなくなってからヒーロー社会も色々あって、職場体験に回ってるんですよ。昼にはもう区画を回らないといけないんで、それじゃあ…!」

 

 これ以上探られるのは不味いと判断したミリオは、不自然なく区切りある流れで即刻立ち去ろうとする。

 緑谷も経験が浅いとは言え、流石にこれ以上対面しながら話す気にはなれなかったので、ミリオに続いて立ち去ろうと動く――

 

 ガシッ――!!

 

 ……はずだった。

 

 

「行かないで……」

 

 

 先ほどまで無言で俯いてた小さな少女。

 よく見ると長い白髪に、巻貝のような角、苺色の瞳、なによりも…ボロボロのシャツと腕に巻かれた包帯が何故か無性に心を深くナイフで突き刺された錯覚に痛感してしまう。

 

「救けて……!!」

 

 少女の声は震えていた。

 恐怖に染まる顔、

 汗を浴びた肌、

 離さない手、

 

 少女はまるで殺人鬼に捕まりたく無いと、心の底から願うように祈りながら、緑谷の腕を離さない。

 

「………ッ!」

 

 立ち去ろうとした、本来ならオブラートに穏便に、且つ円滑に物事を進めるのが定石だろう。

 

 だけど、こんな…

 こんな恐怖で震えてる小さな女の子に、「救けて」と求められれば――見過ごせるはずがない。

 

 

「あ、あの……この子、怯えてるんですけど?」

 

 

 なるべく冷静に、心を抑えた声で治崎に語り掛ける緑谷は、苦笑いを必死に創りだす。

 そんな緑谷少年に治崎は

 

「……叱りつけた、後なんで――」

 

 声色が微かにブレる。

 この時治崎は初めて、怪訝な表情を見せる。まるで一番探られたくないことを当てられたかのような、其の質問はしないでくれた言わんばかりの顔色に、空気の流れが変わる。

 

「おーい何してるんだよ相棒!その人に迷惑かけちゃダメだろ?」

 

 平静な表情を装うミリオの内心は反面、実は焦燥に走っていた。

 

(不味い…余計な勘繰りはよせデクくん!これ以上は…)

 

 しかしミリオの心の声など届かず…いや、届いてようと緑谷は辞めない。

 この子が、震えながらも強く握りしめている。

 

 デクから一切、離れようとしない――

 

 

「いやぁ、でも…遊び盛りって言う感じの包帯じゃないですよねコレ…」

 

「よく転ぶんですよ。いつも注意してるんですけどね…」

 

「いやいや、普通じゃないですよコレ…だってこんなに小さな子どもが声も出さずに怯えてるんですよ?」

 

「………人の家庭に自分の普通を、押し付けないで下さいよ……」

 

 

 流れは留まることを知らず、悪化していく一方。

 緑谷出久と治崎の間には見えない線を引かれてるような、何かしらの形で睨み合う。

 表面上では冷静な返答で誤魔化せてはいるものの、現状は荒々しい波乱を巻き立てている。

 

「でも、人の家庭には其々事情が付き物だよね」

 

(デクくん、これ以上はやめるんだ!明らかに詮索を嫌がっている…これ以上刺激を与えれば益々シッポを逃してしまう!無難にやり過ごすんだ…!)

 

 これ以上探るのは明らかに危険すぎる。

 予想外な展開とは言え、これは非常に不味い…そう判断したミリオは心の中で緑谷が留まることを祈る。

 

(いや…違う!ダメだ先輩、逆にその方が怪しまれる――確かに相手は詮索を嫌がってる…でも、コスチュームを身に纏った人間が、怯えた女の子を前に見過ごす訳がない…!)

 

 意思疎通――言葉では出さなくとも、相手の目や呼吸、微かな作動、感覚で相手の心情を察する二人は、テレパシーとまではいかないが、ある程度は伝え合うことが可能だ。

 

「この子に、何したんですか?」

 

 

 ヒーローは、目の前にいる困ってる人間を困ってる人間を困ってる人間を、「救けて」と涙流して求める女の子を、無視したりなんか絶対にしない絶対にしない――

 

 

 ミリオの行動も正しい…だからこそ、緑谷出久の行動も充分に正しいのだ。

 怯えた小さな少女の頭を、優しく撫でながら、恐怖心を打ち消すようにがっしりと抱きしめる。

 

 真剣な眼差しが、治崎を睨む――

 

 

 

「フゥ…やれやれ、これだからヒーローはお人好しと言うか…人の機微に敏感ですね。分かりました――」

 

「「!!」」

 

 

 降参でもしたかのように、諦念した治崎はため息を吐く。

 

「ではお恥ずかしいですが…家庭内に関して人目に付かない場所で…こう、お話ししましょう」

 

 治崎は呆れたような物言い口調で、人目が立たない場所を模索する。そんな様子を他所に、二人はお互い顔を見合わせ息を呑む、

 

 これは…誰もが予想だにしなかった展開だ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近、娘のエリについて…悩んでたんです。それで少し冷静さが欠けたというか、つい厳しい物当たりする口調になってしまって…」

 

 足を踏み入れた場所は、人気のない薄暗い裏路地だった。空気が悪く、清潔症の治崎からすれば、拷問紛いに近い最悪な場所だろう。しかし人目を避ける為なので、やむを得ない。

 

「子育て…ですか?大変ですね…」

 

 娘、と言っていたことはつまり、エリと呼ばれる少女の親が治崎である可能性は格段に昇ったのだが、サーから娘がいるなんて報告は一切聞いていない。

 エリの悩みと、震えた少女の怪我した体を見るからに察して、虐待に近いことは推測できる。

 

「ええそうです…特に近頃の幼い子どもは特に難解でしてね…」

 

 そんな治崎は、後ろを振り向かずに薄い手袋を脱ぐ。

 

 

 

「自分が何者かになる・なれると――本気でそう思っている」

 

 

 刹那――凄まじい殺意の矛先が二人に向けられる。

 濁ったドス黒い殺気、只ならぬ歪な気配、死を錯覚させる現実味のある敵意。其れ等は限りなく二人を惧れと絶望の淵へと沈めるに等しく、鳥肌が立ち止まらない。

 緑谷はまだしも、表情こそ出してはいないが、当てられた殺気にミリオも動揺を隠せない。

 

「ッ――!!」

 

 これ以上はマズイ――そう確信したミリオは緑谷の腕を引っ張ろうとするも、その前に行動を移した者がいた。

 

「えっ…?」

 

 ペッタ、ペッタ、ペッタ――素足の音が、静寂な空気を破る。

 掴んでた緑谷の腕を離し、治崎の下へ駆け寄るのは、先ほどまで怯えていたエリだ。

 

「あ、エリ?…ちゃん?」

 

 突然、かけ離れた少女に動揺する緑谷。しかしエリは何も言い返さない。その顔色は、まるで何かに諦めたかのような…いや、まるでこれ以上はやめて欲しいと言わんばかりに――

 

「なんだ?もう駄々をこねるのはやめたのかエリ?」

 

 静かな声で尋ねる治崎に、エリは無言のまま首を縦に頷く。冷や汗を流す少女は、心の底から湧き上がる恐怖を無理矢理圧し殺してるかのようにも見える。

 

「いつもこうなんですよ…すみません悩みまで聞いて貰って、ご迷惑をお掛けして…それではお仕事、頑張って」

 

 短くそう告げると、治崎はエリを連れたまま闇に溶け込むよう、奥へと歩み進める。

 

 

「ちょっ…何で――「これ以上の深追いはダメだデクくん」…!」

 

 

 納得いかない緑谷を制するミリオの表情は、何処か険しかった。あの無敵とも思える先輩の表情は、初めて見た。

 

「気付かなかったかもしれないけど、もしあのままだったら完全に殺られていた…殺気であの子を釣り寄せたんだよ…」

 

 向こうにその意思が無いのなら、殺意を浴びせ、恐怖心を煽らせれば自然と食い付いて来る。

 治崎の敵らしい一面が垣間見えた瞬間である。

 

「とにかく今は、サーに報告を入れよう。流石に今回の件は偶然とはいえ…」

 

 何より治崎にエリと呼ばれる娘がいた――という事実が一番の衝撃であり、これだけで大収穫でもあるが、余り喜ばしい雰囲気でないのも確かである。

 

 タイミングを示し合せるように、空模様が怪しく染まり、ポツリポツリと、小降りの雨が降る。

 緑谷の表情も、拭い切れない暗雲へと募らせていく。

 

 

 

 

 

 此処が何処の場所に当たるか分からない…だけど、随分と歩かされたように思えるのは、やはり同じ背景と道を延々と歩き続けてるからだろか、実際は20分間無言で歩き続けている。

 

「クロノ、最近の若者はこう…病んでるな。外の空気に触れてみれば、汚染された空気にどいつもこいつも…有象無象に広がる病人ばっかりだな――」

 

「言葉から察してご機嫌斜め…といった所でしょうかい?随分とご立腹な様子だ…」

 

「ああ、だから風呂の用意頼む――それと…」

 

 不愉快そうに顔を顰める治崎…オーバーホールは、ツカツカと靴の音羽を立てながら、通路の奥に立ち塞がる扉に視線を向ける。

 その側には仮面で顔を覆う構成員が、気不味そうに頭を下げている。

 

「すいません若!このガキ…!ちょっと目を離した隙に直ぐ逃げやがっ――」

 

 構成員の必死な弁解を遮るように、治崎は問答無用で

 

「ゴミの掃除もしとけ」

 

 肉体を弾け飛ばした。

 見るにも無残、原型は勿論――血肉や骨までも残さず、壁にはベットリと異臭漂う血痕が付着した。

 

 

「英雄気取りの病人共が…!!」

 

 

 血も涙もないとは正しくこのことを指している。

 顔には僅かな蕁麻疹が沸騰するよう発症し始め、クロノに抱えられたエリは、見たくもないと言わんばかりに目を瞑り、両手で耳を抑える。

 

「エリ、いい加減に我儘は止せ。お前の行動一つ一つが人を殺す、罪深い人間となぜ気付かない?

 お前は必ず、人を殺してしまう呪われた存在なんだ――」

 

 クロノはエリに巻きつかれた包帯を丁寧に解き、腕に付かれた傷痕が露わになる。鋭利な刃物で何回も刻まれたその痕は、まるで自分が呪われた存在だと証明付けるような、戒めに近いモノ。

 

 

 エリの顔は、絶望のどん底へ連れ戻され、希望そのものが潰えたような諦念に近い表情を、鮮明に曝け出していた。

 

 彼女はもう「救けて欲しい」とさえ願わず、自分がこの世に生まれたことを、ただただ怨むかのように、宿っていた微かな希望は死んでいた――

 

「お前は計画の核だ。鬱陶しいヒーローと忍の手品なんて、お前の力があれば全てを虚無と化せる。

 お前は、理を壊す存在――全ての原理を変えることが可能なんだ。だからもうこれ以上俺の手を煩わせるな」

 

 厳しくも、熱がこもらない冷酷な言葉を浴びせ、病室に似せた椅子へ座らせ、手足を拘束する。

 端から見れば異常――我が娘をこんな、人体実験地味たように扱い、さも当然と言わんばかりに息を吸うよう()()()()()()を行う。

 

「オーバーホール、死柄木から電話」

 

 小さなぬいぐるみから発せられた言葉に、治崎の動きは静止する。

 後ろを振り向くと、本部長――『ミミック』が端末を差し向けた。

 

「この前の案件の返事、聞かせてやるってよ。漆月は不在だが構わないか?だってさ」

 

 

 

 躍進、不穏、暗躍――静かに着々と、物語は加速する。

 

 




月閃中等部のご報告&キャラクター紹介!

月閃「始まりました!今回もいつも通りやっちゃいましょう!」

閃光「一応、ヒーローキャラクターの多くは『キャラクター・アーカイブ』にも載ってはいるが、忍学生も調査しているから地道に観ると良い」

月閃「敵や、B組でも解明されていない生徒のステータスも、此方で判断し情報公開する所存でございますわ♪」

閃光「また、キャラクター同士の紹介で提示された者達(飛鳥、焔など)は省く。作者が考えに悩み、遅れて紹介してるんだ。心中察してくれ」


ヒロアカグラ・マスターズカード

爆豪勝己

ヒーローネーム=現在不明

所属:雄英高校ヒーロー科1年A組
誕生日:4月20日
血液型:A型
出身地:静岡県
好きなもの:辛い食べ物、登山
戦闘スタイル:ヒット&アウェイ

ステータス ランクA

パワーA
スピードB
テクニックA
知力B
協調性E

個性技:爆指斬
敵三体に大ダメージを与える[クールタイム中]

必殺技:ハウザーインパクト
敵一体に超極大ダメージを与える[クールタイム中]

リーダースキル
[ヒーロー学生]「自身」の攻撃力、を30%アップ

パッシブスキル
「陰」「閃」の攻撃力が30%アップ
個性技を発動後、攻撃力100%の状態で二回個性技を発動出来る。


リンクスキル
雄英A組三人生徒 攻撃力が30%アップ
対象キャラクター 緑谷出久+爆豪勝己+轟焦凍

強者のプライド 攻撃力50%アップ
対象キャラクター 爆豪勝己+焔

雄英高校ヒーロー科 攻撃力10%アップ
対象キャラクター 爆豪勝己+雄英高校


月閃「前に紹介した緑谷さんとは幼馴染とのことですが、中学校時代までは犬猿の仲…と言うより、一方的に貶めていた…の表現が正しいのかしら?」

閃光「緑谷本人は嫌ってはいたが、爆豪に対して何も言ってなかったしな。よくある虐めの流れに似たものだろう」

月閃「才能溢れた自分の側に、欠点だらけの汚名がいれば自身のプライドが傷つく…ふむふむ、なるほど……其れが返って完全無敵の才能マンである彼の弱点に繋がってるんですね♪」

閃光「まあ雄英に入ってから、そんな幼稚なことばかりする暇もないと、意味がないことも含めて知ったんだろうな。同じエリート校に通う私でも同情はする」

月閃「とある彼の友人からは根は悪くないと言ってたんだし、閃光も試しに爆豪さんの下で勉学やヒーロー基礎学に触れてみれば?」

閃光「あのなぁ…座学は優秀の方だろ?強者と戦いたい気持ちは山ほどだが…」

月閃「けど、ああいう爆豪さんみたいなツンツンした人間を揶揄うと楽しいのよね♪どんな反応をするのかが興味深い上に、もしかしたら可愛いかもよ?」

閃光「本人の前では余りそういう事言うなよ…ややこしくなる…」

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