光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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161話「焦燥」

 

 

 

 緑谷出久・通形ミリオがパトロールに回り、治崎と接触した場所とはかけ離れた区画。

 慣れない土地に目を移しながら、捜査網の外で大きく街を巡回する雪泉と麗王。忍学生とは言え、善忍と悪忍が隣り合い、任務に励むというのは、些か珍しい光景だろう。

 

「次は彼処の信号を右に回りましょうか、そこから先は暫く真っ直ぐ進んで問題はないでしょう」

 

「はい、そうですね。解りました」

 

 二人とも善悪の立場や初対面がどうであれ、根は優しく真面目なので、こう言った似た者同士が惹かれ合うのは必然なのだろう。

 何一つ嫌な顔を出さずに、物事に真剣に取り組む姿勢は、立派な忍とも呼べるだろう。

 

「あ、あの……麗王さん」

 

 すると、雪泉が顔を伺うように尋ねてきた。「はい、何でしょう?」と、微笑と供に言葉を返す。

 

「麗王さんは、その…悪忍、なんですよね…?どうして、あの事務所を御志望に?」

 

「ああ、その事ですか」

 

 そう言えば、自分が何故この事務所のインターンに所属しているのか、まだ彼女には話していなかったなと思いつつ、口をもごもごさせる。

 

「そうですね…何処からお話ししましょうか?経緯…ふむ、強いて言うならばサー自身、私を指名した…と言うのが正直な答えですかね」

 

 あのサー・ナイトアイ自らが?

 麗王の言葉に驚愕を隠せない雪泉は、目を丸くする。悪忍である彼女を、サーが直々に?

 あり得ない――幾ら忍が善忍と悪忍、手を結び未来を変えようと批評を受けてるのは確かだ。

 

「私は悪忍ですが、サーは兎も角オールマイト自身と直接対面したこともあれば、救われた恩があるのです。

 直接的な関係こそほぼ皆無に近いですが、私を見込んでくれたのなら、あの方の理想も含め、期待に応えたいのが本望です――」

 

 柔らかな微笑に、優しさが伝わる。

 これも何かしら繋がった縁と言うモノなのだろうか…

 

「成る程……如何なる経緯かは存じませんが、それでサー・ナイトアイさんは悪忍である麗王さんを…」

 

「そもそもの話、善忍と悪忍とは善悪の区別が分けられた存在…立場や状況が違うだけで、忍の道や志しは皆同等ですよ――個性によっては反逆者、敵連合の思想や理想、行動に感化される忍も近々増加してるのも事実ですが……」

 

 麗王の言ってることは尤もだ。

 忍の善や悪の口論は立場や状況、任務によって幾らでも変わる。中には悪の中に宿る正義を貫く者もいれば、嘗ては自分達と同じ道筋を通っていた人間も、何らかの事情で悪にならざる者だって存在する。

 世の中全ての悪が、一方的に責められる存在だとは、口には出し難いものなのだ。

 

「忍グレや、敵と徒党を組む者達…何より敵連合――」

 

 忍の存在が明らかになったあの日――神野区の死闘。

 雲雀と爆豪の奪還に成功したものの、オールマイトは平和の象徴としての最期を迎えた。

 元の原因を探れば、連合による大胆な犯罪行動、何より組織を統括し、裏で操作していたオール・フォー・ワンに大きな元凶がある。

 もし敵連合さえいなければ、…きっとこうなることは無かった。林間合宿で何が起きたかどうこうは、詳細は知らない。だけど、彼らの浅はかな行動で、自分達の守り通した忍の歴史や秩序に、ヒビを入れたその行為に関しては、粛清せねばならない――

 

「ええ…彼らの集団行動に感化され、心動かされた者達は皆、自分達が何者かになれる、自分達も大義や偉業を成せる反逆者として、名声を買い注目を呼び集めれると思ってるのでしょう。

 ステインだけでなく、異能解放軍デストロの書籍も出回ってる位ですから」

 

 デストロ…?聞いたことのない名前だ。

 

「抜忍…又は力を培い忍術を持つ忍では無かった者達の行動も、目に余る事件が多いのも難解ですね…」

 

 最初は日陰に住まい、不良並の悪質行為が目立っていたのだが、最近になっては今じゃ誘拐殺人、強盗、テロまで起こす犯罪行動が大きく肥大化に加速している。

 

「何としても、問題のある行為は私達が取り締まらね――」

 

 ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!

 

 途端――会話を遮るかのように、端末の音が鳴る。

 着信?このタイミングとなれば、サー・ナイトアイだろうか?そう疑問に思いながら画面を開くと、案の定サー事務所から連絡が入った。

 

「…もしもし、此方麗王。現在雪泉と共に指定された区画を回っております――如何なされましたか?」

 

 穏やかな表情とは一変、気高く凛とした顔立ちに変わる。

 連絡腰の相手に対しても尚、態度と礼儀を忘れない彼女を見て、学生という子供を被った大人なのだと、肌で感じ取れる。

 

「はい……えっ!?…そう、ですか。畏まりました。直ぐに其方へ駆けつけに参ります」

 

 軽く頭を下げながら電話を切る。

 何やら困惑気味な様子が伺えるが…彼女の反応から察して恐らく喜ばしい結果では無いのだろう。なんて漠然と想像を膨らませていると――

 

 

「雪泉さん戻りましょう…サー・ナイトアイから連絡が入りました…

 緑谷さんとミリオさんが、治崎と接触があった模様です」

 

 

 ――雪泉の心臓が、脈を打つように揺さぶられた。

 

 

 

 

 

 

 捜査網から外れた区画を回っていた為、ミリオと緑谷の二ペアよりも遅く、サー達と合流した。

 報告を受けてから直ぐに小降りの雨が降り、次第にその強さは増しては全身がずぶ濡れだ。麗王は鎧を見に纏ってる(客観的に忍なのに色々と目立つのは禁句)為、特にどうという訳でもないが、雪泉の方は少しスケスケで、浴衣と厚い布で縫われてるので問題はないが、もし布の厚さが薄ければ、真っ白な肌と下着が露わになっていただろう。何ともご褒…けしからん。

 

「遅くなり申し訳御座いません、ただ今戻って参りました…!」

 

 若干雨によって空気が冷えたのか、吐く息が白くなり、急ぎ足で事務所に戻って来た為、発汗した汗が雨と共に流れ、区別がつかない。

 

「二人共、お勤めご苦労様だ」

 

 濡れた二人の女性に労いの言葉を掛けなから、サーは資料を整え、パソコンのキーボードを打ち込んでいく。

 

「あの……治崎と接触があったって…」

 

「事実だ。ミリオの報告によると偶然の事故…とは言え、それなりの多大な進展も見受けられた」

 

「進展…ですか?」

 

 淡々と、内容を伝えるサーの指は止まらず、硬い表情を一切変えたりはしない。

 現在――ミリオと緑谷はコスチュームを着替えるべく、更衣室にいる。

 

 

「治崎に娘がいたことが発覚した――」

 

 

「「――!?!」」

 

 衝撃の事実に、二人は息を詰まらせる。

 雪泉は兎も角、あの麗王でさえも言葉が見つからない…と言った感じで、目を丸くしている。

 

「名前は『エリ』と呼ばれる幼い子供だそうだ。容姿的には小学校低学年にも満たさないかとの疑いがある。

 特徴や外見の容姿は緑谷が報告してくれた通り、現在ピックアップして調査に移っている」

 

「娘…ですか、初耳です」

 

「当然、私もミリオの報告が来るまで全く知らなかった……」

 

 サーは現在「エリ」という謎の少女の戸籍を調べる為、独自で調査を図っている。序でにサー・ナイトアイ曰く、何かしら嫌な予感がするのと、最悪な未来を防ぐべく徹底的に死穢八斎會の悪事を止めるべく、チームアップの要請も送るらしい。

 何しろ小さな組とはいえ、敵は敵――評価や報酬としては余り響はしないが、其れでも敵連合との接触があった組織と知っていれば、此方側に協力してくれるヒーローはマイナーも含めて存在するのは確かだろう。

 

「お前達も休んでおけ。これ以上の詮索は無理だろう…怪しまれては折角見せた尻尾を益々逃してしまう羽目になる」

 

「あの、そのエリさんっていう娘さんは……どうなったのですか?」

 

「………」

 

 微かにサーの指が止まる。

 まるで小石に挟まって一瞬だけ動きがブレたかのように――

 

「私も現場にいなかった為、詳細は不明だ。

 ただ緑谷からの証言によれば、治崎から逃げてた娘が、突然大人しく引き返したらしい。ミリオ曰く、殺意を当てて態と釣り寄せた…とのこと。

 目に見えない強引なやり手だな」

 

「なっ……」

 

 雪泉は絶句した。

 自分の娘に対して殺意を向ける…それこそ聞き間違いか耳を疑った。

 家庭内の事情は人によって其々変わるにしろ、実の娘に対して殺意を向けることなど、あって良い訳がない。

 確かに相手は敵だ。だが、非情と忍の世界に背いてきた黒影でも、自分に殺気を当てたことなど、今までに一度だってなかった。

 いや…そもそも、仮に娘では無かったとしても、こんなものは弱者を利用する悪質な手のやり方だ。況してや小さな年端も行かない子を相手に、脅しなど…清く正しい純粋な雪泉からは考えもしない出来事である。

 

「なら、助けに行った方が良かったんじゃ…」

 

「相手が本当に娘かどうか証拠がないのにか?」

 

「もし実の子でなければ尚更!誘拐ではありませんか!!その子は傷だらけで、怯えていたんですよね?だったら――」

 

 

「雪泉、お前も傲慢な考えをするんじゃない」

 

 

 雪泉の口論に、厳しい口調でサーは鎮めさせる。重い言葉が空気に溶け込み、一気に悪化する。

 

「良いか、仮に娘で無かったにしろ血縁者の可能性だってある。政府や法が、貴様の浅はかな言動が世に通じると思うか?ヒーローや貴様が感情論で踏み入れて良い話しじゃないし、解決できる事件ではない。

 今はまだ情報が足りなさすぎる、確実性や実行に移る人員に其れなりの計画を練る必要性だってある。今はまだ攻め時じゃないのだ」

 

 情報が足りない。

 証拠も揃ってない。

 悪事も解らない。

 

 何から何まで条件が揃ってないし、足りなさすぎる。

 仮に全面突破をしたとして治崎を捕まえるにしろ、八斎會には組のヤクザだけではなく、幹部だって存在する。

 無闇矢鱈に嗅ぎ付けば、手の届かぬ場所へと逃げてしまう。

 様々な可能性が、阿弥陀籤の如く分岐し、未来の予想が付かない。

 

 

(私の個性なら、事前に見ておけば…接触は防げていた……)

 

 

 そんな黒潰しされた結末を、サーは個性の予知で見据えることは可能だが、それと同時に其れなりのデメリットと個人的な悩みが存在する。

 

「知っての通り、我々はオールマイトじゃないし、彼の様な大義を成せる人間にはなれない。相手の行動を予測し分析を重ねた上で万全な準備を整えなければ、救える命は救えない。

 

 志だけで救けれる程、世の中は甘くないし、それが可能であれば大半の人間は今も生きていた」

 

 

 ――真に賢しい敵は、必ず闇に潜む。

 不可視な闇を拭えぬ限り、敵の素性や悪事を暴く事不可能なり。

 

 

(勿論、陽花…君のような聖人君子にもなれやしないさ……そうだ、志だけで救えるのなら、陽花だって今でも安心して生き永らえ、妹と供に幸せな家庭を送っていたんだ。あの子達は死ぬべき存在ではなかったし、忍の皆んなが彼女を必要としてくれていた…)

 

 陽花――サー・ナイトアイから言わせてみれば、ユーモアの才能に溢れ、人々の笑顔を照らしてくれる太陽の子だと自負している。

 彼女がオールマイトのコンビを組んでた理由も当然納得出来たし、自分がオールマイトの相棒を務めたのも、陽花の後釜…と呼べるものではないが、逝去した彼女の為にとも含めて、オールマイトの側で働いていた。

 

(あの子は、如何なる状況でさえも…心を折ることを知らず…他人を救ってきた。可笑しな話だ…自分は忍なのに、他人の命を、幸せを第一優先に考え先行し、その人が一番掛けて欲しい言葉を、いつも掛けてくれる…)

 

 弱者が虐げられればその者の代わりになって憤り、

 生きる希望を無くした者に心の原動力を与え、

 如何なる状況でさえも、相手が困っていれば何がなんでも救い出し、

 己の犯した罪を嘆く者に、優しい言葉を囁いてくれる、

 

 市民や我々ヒーロー、敵に忍、そして剰え妖魔でさえも、救ってきた彼女は誰が何と言おうと善の鑑そのものだ。

 

(だが、過去を悔やんだって時間は帰ってこない。巻き戻せるなら誰だってそうしたい…けど無理なんだ。

 私はオールマイトや陽花の様な人間にはなれやしない…だけど、せめて…明るく笑顔で、ユーモアに溢れた未来を作ることは出来る)

 

 

 あの二人のような偉大な人間にはなれなくとも、その必要はない。

 明るい象徴や穴は補えれば問題ないし、皆が皆――人々を笑顔に輝かせるユーモアのある人間として、努めれば良いだけの話。

 確かにその中では不法や偽善と呼ぶに等しい、悪質なヒーローだっている。敵の買収やヤラセ、時に賄賂や不正行為、裏金に闇売買の経路など、世の中にはヒーローを気取った敵に等しい邪悪な人間だって存在する。

 

 だけど、其れは世の中に佇むヒーローの軟弱した姿勢に原因が当たる訳で、そんな汚れた行為とは直接因果関係には当たらない。

 

 

「今回、エリと呼ばれる娘…深追いの詮索を禁じたのは私ではなくミリオ自身だ。まあ…勿論私が現場にいたらそうするし、彼は私の代わりに動いてくれただけ。

 そうでもしなければ、万全な態勢も整えないし、取り返しの付かないことにもなる。今日はこれにてインターンは終了とする。二人共、改めてご苦労だった」

 

「………」

 

 霧が晴れない…靄が纏った心に、雪泉はキュッと胸に手を当てる。

 

 何故だろう…この妙な胸騒ぎは一体……

 

 

 

 

 

 

 週明け――インターン初日、荒ぶる不穏な雨と供に日は去っていき、晴天な日差しが差し込む。

 夏休み明け、秋の季節に移り変わろうとする月日の中でも、日光の暖かさを堪能出来るのは、気温が丁度良いからなのだろう。

 

「………」

 

 インターン生徒はこの週間が一番多忙な時期で有る。

 タダでさえ一般の授業の難易度が高めな上に、午後からヒーロー訓練が控えている。

 にも関わらず授業後は寮に帰宅…と言う話にもなる訳がなく、事務所に戻ってインターンとしての活動を行わなければならない。

 

 

 ハッキリ言おう――想像の倍以上の負担と疲労が半端じゃない!!

 

 

 他にもインターンでは無いが、仮免取得に不合格だった轟と爆豪も酷く、仮免講習はスパルタだったと苦情を耳に挟めば、轟曰く、時々爆豪と千歳が揉め事を起こすそうで、そこをギャングオルカが仲裁(生温くはない)で強制的に鎮めさせるの繰り返しがあったそうだ。

 

 だが問題の注目を浴びたとすれば、緑谷出久もそうだ。

 登校から教室に入る緑谷にかけられた言葉は「事務所どこに入った?」「エロい女の子いなかった?」「良ければ私も入れて〜」だのと、色々な声が上がったが、特に緑谷は自分のことやサー・ナイトアイの言われた言葉も含めて、話を聞く所ではなかったらしい。

 生徒同士の会話ならまだしも、授業や訓練にまで支障(相澤先生曰く、両立出来ないのなら辞めさせる)が来たしてる為、何時までもこのままではいられないと判断した緑谷は、オールマイトに直接あって話をすることに決めた。

 

 善は急げ――職員室にてオールマイトが不在だったので、ミッドナイト先生に訊ねたところ、どうやら外に出てジョギングを始めてるらしい。

 引退したにも関わらず体を鍛え始めると言うのも、何だか妙な話だが...取り敢えず会話をするべく直接駆けつけることにした。

 

 

 「オールマイトおおぉぉ――!!!!」

 

 

 そして現在。

 ジャージ服で軽くジョギングを行う、痩せ細ったオールマイト…いや、この姿の場合は八木俊典と呼ぶべきか、脱兎の如く駆け走る緑谷に、吐血を吐きながら若干驚いた表情を立てる。

 

「緑谷少年がああぁぁ…来た!!!ゴホッ、何故私がここにいると?」

 

「ミッドナイトから聞きました!…その、貴方とちゃんとお話しがしたくて……

 

 ……聞きました……サー・ナイトアイから……」

 

「……何を?」

 

「惚けないで下さい…全部、知ってたんですよね?」

 

 一陣の風が、頬を伝う。

 木の枯葉が宙を舞い、空へと流れるように舞っていく…

 それでも、オールマイトは足を止めることなくジョギング活動を続けてる。

 

「ワン・フォー・オールのことも、通形ミリオ先輩が後継の候補だったのも…そして、オールマイトのコンビを組んでたのが、『陽花』さんだって忍も…」

 

「――ッ」

 

 時が止まるような錯覚に囚われた俊典は、止めなかった足を止める。沈黙が重く続き、口に出したくない言葉を、自身の苦悩を押し殺すように声を絞る。

 

「陽花くんのこと、何処まで聞いた?」

 

 その声はとても重々しく、辛い感情を吐露しない様に隠し通ている。それでもその痛々しい声に、自然に彼の心情が伝わった緑谷は息を呑みながら言葉を紡ぐ。

 

「……てんで、詳しいことは聞いていません……ただ、陽花さんって人が、オールマイトのコンビとして手を組んでいたと言うのは聞きました。正確に言えば、話された…と言った方が妥当…

 ホラ、オールマイトは留学先が海外で、日本にはいなかったと言うのはニュースでも語られていましたよね?帰国してデビューして、その功績から多くの市民に認められて平和の象徴に……

 そんでふと思ったんです。オールマイトがいない間は日本はどうして膨大な被害が及ば無かったんだろうって…不思議に思ってたんです」

 

 平和の象徴と謳われる前、オール・フォー・ワンに支配された日本は、平和とは呼び難い時代だった。

 犯罪は勿論、オール・フォー・ワンの支配下として遣われた裏社会の人間が息を潜み、反逆者…或いは自分に仇なう脅威を排除するため、彼の息の根がかかっていた。

 もしオールマイトが不在の今、仲間を集めるのは容易く、今頃死者は大勢…何より忍は壊滅するだけでなく市民ですらオール・フォー・ワンの思うがままの支配下となってただろう。

 

「陽花さんって忍が…日本を守り続けてたんですよね…?そんな大それたことを可能にする人間は、オールマイトを除いてそんなにいない…だから、陽花さんって忍がオールマイトとコンビを組んでたのは納得しましたし、その…驚きました」

 

 その頃は忍の存在は秘密、故に雄英に入るまで知り得なかった事実なので、この事を隠してたことは仕方ない。

 ただ…それでも本人の口からどんな人かは聞きたかった。

 

「……どう言う経緯で、彼女を知ることに繋がった?」

 

「…僕が、後継者に相応しいかどうかの話の時です…」

 

 

 採用に値する価値があるか否か、見定めるべく緑谷を試したサー・ナイトアイの口から語られた言葉――

 

 

『仮にお前がオールマイトの後継者だとするのなら、コンビである陽花の話は聞いてるのか?彼女が、どういう経緯で日本を守り続け来たのか…お前が平和の象徴になれずとも、忍の象徴として幾重もの人間を明るい未来に照らせる人間になれるのか?』

 

 

 心臓の鼓動が脈を打ち、鮮明に血液が循環する感覚さえ感じてしまう程、頭部に残る重い衝撃が、彼を大きく惑わせた。

 知らない真実が、緑谷を拒み否定する。何も知らない少年にサーは、心底呆れながら「益々、お前が後継者に選ばれてる理由すら見つからない」と吐き捨てられた。

 

「そうか……それで?彼女の件も含めて、君に言う必要……あったかな」

 

 

「――あるでしょ!!!!」

 

 

 オールマイトの言葉に、緑谷出久は激しく過剰の反応を映す。

 焦燥、義憤、悲哀、様々な感情が溜め込んだ表情を曝け出す緑谷は止まらない。

 

「新事実ばかり突きつけられて!よく分かんないまま否定されて!オールマイトの事知ってたつもりでいて!!何よりオールマイトの意図が解らない!!!

 

 秘密にする意図が分からないからモヤモヤする!何で教えてくれないんですか!?僕は単に貴方の背中を追い求め尊敬する一人のファンじゃない!一人の後継者として教えて欲しい!!!」

 

 荒ぶる声は余りにも切なくて、己の苦悩を叫ぶ様に轟いた。

 後継者を語る人間が、何も知らずにオールマイトの意思を継ぐことが出来ると言えるのだろうか?

 オールマイトが隠し事をする人間と言うのは知っているし、現にワン・フォー・オールの真実が脅威なのも、所持する人間として秘密にするのは当然の義務だろう。

 だが…何も言わないのも混乱を招く原因に繋がるのだ。

 そう言う意味では、面会の時に遭ったオール・フォー・ワンの「真実を伝えない君が原因に当たる」というのは、些か否定できない事実だ。

 

「確かに…一理あるね。オール・フォー・ワンの存在を知ってるだけでなく、神野区での激戦を経て…君た今だからこそ、潮時なのかもね…

 でもね緑谷少年、それでも私が隠し通した理由は、これは君の為にならないと判断したからだ。陽花くんの詳細は個人的に話したくないし、話すべきものじゃない……彼女以外のことなら話せるが、それでも聞くかい?」

 

「秘密にされるよりかは断然マシです」

 

「……呉々も、決して後悔するなよ…」

 

「――はい」

 

 

 こうして、隠された一つの真実が、オールマイトの口から発せられる。

 

 

 

 

 元々サイドキックを雇わない主義だった私だが、そんな彼の大ファンに根負けする形となって、11年程活動を共にする。

 ヒーローの基礎知識、法律、経済面、社会の貢献する姿勢、其れ等の要素は素晴らしい物でもあったが、身体能力は及ばず、褒めるべき要素はなかったが、ブレーンとして私を支え、効率良く有意義に過ごしていた。

 

 その頃は当時、陽花くんと一緒に活動していたし、彼女曰く「二人よりも三人いた方が仕事が捗る」と言ってくれた。

 その言葉が救いだったのか、はたまたサー・ナイトアイに見込みがあると踏んだのか、スムーズに事が運び進んでたし、陽花くんの負担も軽くなった事で喜ぶ形になれた。

 そんな彼女が逝去したのは9、10年前…これ以上は深くは言えないが、オール・フォー・ワンに殺されたよ。それだけ言えば充分かな。

 

 うん、それで…サー・ナイトアイにも責任を感じてるのか、あの時予知を使っていなければ、彼女の「死」は免れてたのではと、後悔の念を背負っていたよ。

 私だって日本に離れてたし、もし私が側にいれば陽花くんを救えたんじゃないかと、自暴自棄に走ってたよ。其処をグラントリノと小百合様が全力で静止してくれたんだけどね。

 

 

 そして前にも話したが、私がオール・フォー・ワンを倒してから丁度6年前…私の負傷に、サー・ナイトアイと相棒を解消した。

 

 理由?確かに戦える形じゃないからと言うのは事実…価値観の違いさ。

 

 

 呼吸器官はやられ、腹に穴を開け、致命傷を負いながらも何とか一命を取り戻した私がこれ以上無理強いしてまでも活動を続けることに、大きな反論をしていたよ。

 象徴論…私が消える事で、世の中の人々は怯え続けなければならないし、継ぐに値する人間が見つかる確実性も低い、現実味のある話でも無かった…だからせめて、後継者が来るまで私は抗うつもりだったよ。

 でなければ、新たな悪の象徴が生まれ出ずる可能性は高かったしね。その意味も含めて、膝を折る訳にはいかなかった。勿論サー・ナイトアイは話せば解るし、私の言葉は理解してくれた…でも、納得はいかなかった。

 

 そんな私に、サーは予知を使って視てしまったからね……

 

 

『やめるんだオールマイト!貴方がこのまま行けば…陽花くんと同じ…言葉に言い表せない…惨たらしい死を迎えてしまう!!それだけは…嫌なんだ!!!』

 

 

 嘗て起きた過去を、悔やみ苦しみ葛藤するサーの発言…私は一生忘れもしなかったさ。

 私がこの先進めば、彼女と同じ死が免れないと…忠告を受けた。それでも私は、止める事が出来なかったよ。

 

 そして未来の対立に巡り、ケンカが起きてコンビは解消…

 今思えば、全てが狂ってしまったのは…陽花くんが死んでから全てが変わったよ。

 大切なものを失った人間の観る世界が一変…なんて言葉はよく聞くけど、正に本当に其れそのものだったよ。

 

 その後、陽花くんの後継者は結局誰も現れず…ワン・フォー・オールの後継者は通形少年と根津校長は薦めてくれたよ。

 話は聞いたし、サーが一任するに相応しいと見込んだ人物だった。私も彼に託そうかな…なんて思って頃に――

 

 

 

 ――君がいた。

 

 

 

 あの時、ヘドロ事件で爆豪少年を助けようと、無個性でありながら、他が為に命を賭して救おうとした、一人の少年に――

 

 

 

 ごめんな、緑谷少年…君に大事な話を隠してて…

 

 

 




月閃中等部のご報告&キャラクター紹介!

月光「さぁ!なんやかんやで4回目、始まりました!」

閃光「よく続けれるな…まあ良いだろう、最初の登場も大分ネタ切れになってきたし、手短に行くとするか」

月光「あら意外ね、閃光がメタ発言するなんて♪」

閃光「い、良いだろう別に…!それよりも本日の紹介は雄英でもヒーロー社会でも一際大きく目立つ、噂に名高いエンデヴァーの息子だ」


ヒロアカグラ・マスターズカード

轟焦凍

ヒーローネーム=ショート

所属:雄英高校ヒーロー科1年A組
誕生日:1月11日
血液型:O型
出身地:静岡県
好きなもの:蕎麦(温かくない)
戦闘スタイル:中・遠距離戦闘

ステータス ランクA

パワーA
スピードB
テクニックA
知力B
協調性C

個性技:アイススピア
敵二体に大ダメージを与え、低確率でその敵を凍結にする
[クールタイム中]


必殺技:フリージングディザスター
敵全体に特大ダメージを与え、高確率でその敵を凍結にする
[クールタイム大]


リーダースキル
「陰」「陽」の攻撃力、体力が20%アップ

パッシブスキル
通常攻撃で稀に相手を「凍結」にさせる
「ヒーロー学生」の攻撃力を20%アップする


リンクスキル
雄英A組三人生徒 攻撃力が30%アップ
対象キャラクター 緑谷出久+爆豪勝己+轟焦凍

託された後継者 攻撃力50%アップ
対象キャラクター 轟焦凍+雪泉

雄英高校ヒーロー科 攻撃力10%アップ
対象キャラクター 轟焦凍+雄英高校

因縁深い親子関係 攻撃100%アップ
対象キャラクター 轟焦凍+エンデヴァー


月光「轟焦凍さん。雄英高校の推薦者、No.2の成績を誇る、成績も爆豪さんに比べて負けず劣らず良い功績を持つ優秀な生徒なんですよね。流石はエンデヴァーさんの子です!」

閃光「一部、雄英の違うクラスや他校…ああ勿論、私達が通う忍学校、中等部の生徒達からも、体育祭で人気が高くて名前がよく上がるな」

月光「モテモテなんですねぇ♪実力に於いても申し分ないほど強力ですし、敵の無力化も鍛錬次第では強くなりますし、将来有望な金の卵と言われてるんですよ♪」

閃光「まあ、その分初期では冷たい態度を取ったり、雪泉先輩とは揉め事が起きたり…今となっては学校内では穏やかになってたりするな。仲が深まった印象も強い…
強いと言えば、是非とも手合わせ願いたいな」

月光「能力的には雪泉先輩の氷と風、轟さんの氷と炎が対極になってるのも面白い対比になってますよね♪雪泉先輩はカキ氷が好きですから、轟さんも個性を使えばかき氷作れるんですよねぇ♪」

閃光「夏には熱中症対策は効果抜群か…そいや髪の毛が半分になってるのも個性の都合上、分かりやすくする為なのだろうか?」

月光「ああ、それはどうなのでしょうかね?」
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