死穢八斎會の組織、治崎の娘である被害者エリを、必ず救い出す――これが一番最低でも守らなければいけない目的だ。
その他にも、主犯格である治崎廻率いる犯罪に手を染めた組織の従業員、奴等の野望を阻止するのが、最大限の目標である。
何方にせよ、一筋縄ではいかない案件ではある上に、敵連合と手を組んでるという事実が発覚されてる以上、並みの仕事ではないのは察しが突くだろう。
「「今度こそ必ずエリちゃんを必ず救い出します!!」」
不甲斐ない己を悔恨しながら、やっとの思いで声に出す二人の眼差しは、鋭く真剣だった。弱きを援け、強きを挫くのがヒーローであるのならば――八斎會の魔の手からエリを援け、治崎率いる敵に立ち向かう。
「ケッ、ガキが一丁前に粋がるのも勝手だけどな、治崎という若頭はその子を隠しておきたかった〝核〟の存在なんだろ?其れが何らかのトラブルで外に出ちまった…ガキんちょヒーローに見られちまった…!!」
緑谷とミリオの気迫ある意気込みに、ロックロックは舌打ちをしながら言葉を吐き散らかす。
「これがどんな意味を表すか…もう同じ本拠地に置いとくと思うか?もし俺が同じ立場なら少なからず別の場所に移す!攻め入るにしろ、被害者の娘が〝いませんでした〟じゃ話も糞もねぇ…何処にいるのか特定できんのか?」
言ってる事はご尤も。
小さな女の子が酷い目に遭わされ、保護する対象を救い出すにしろ、その目的が実は居ませんでしたでは作戦も話もあったものじゃない。
その辺に対する対策と、具体的に何処に隠すのかが特定出来なければ、エリを援けるなんて夢のまた夢だ。
「問題は其処です。奴ら八斎會の組織が何を何処まで計画を企ててるか不透明な以上、一度で確実に叩かねば反撃のチャンスを与えかねません。
――其処で、八斎會と接点のある組織・グループ及び八斎會の持つ土地を可能な限り洗い出しリストアップしました。皆様に集まって頂いたのはこの為です!」
日本各地――リストに記されているヒーロー事務所のピンポイントは、よく見ると八斎會周辺地区の近くに在するヒーロー達だ。
サー・ナイトアイはきっと「八斎會の周辺地区に事務所を立てたヒーロー達は、土地に詳しい為、拠点となり得るポイントを絞って欲しい」と言う意図なのだろう。
そうする事で、ゼロの確率を上昇させたいのだろう。
「随分と慎重でまどろっこしいなぁ!それでもオールマイトの元サイドキックか!?そないな事してる間にエリちゃん言う子が今頃酷い目遭わされて泣いてるかもしれへんやろ!?」
「我々はオールマイトではない!!そして勿論、『彼女』みたく聖人君子にもなれやしない!!!
予測と分析でより確実に、100%に近づかなければならない」
自分たちはオールマイトではないし、彼のような唯一無二の存在になどなれやしない。
どれだけ努力をしたって、報われないのが世の中だ。
努力をしたから、自分たちが結束を固めても、オールマイトには行き届かない、それが現実だ。
でなければ、今頃はエリも救われてるし八斎會の企みは当に掴んでるし、今頃は敵連合の在り処だって知れている。
そうでもないから、オールマイトではないからこそ、せめて自分達にできる最善を全力で尽くし、全うし、完璧な作戦を遂行しなければならない。
「確かに、なんて言葉が口から漏れちまう程にナイトアイの言ってることは事実だ。焦る気持ちは解らんでもないが早まっちゃあいけねぇ…もし下手に大きく動いて捕らえ損ねた場合、火種が更に大きくなりかねん。ステインの時だってそうだ、結局連合のVPRになっちまってるしな」
保須市事件――ヒーロー殺し、忍殺しのステインに関しては完全に敵連合の策中であり、オール・フォー・ワンの掌の上で転がされていた。
況してや敵連合との何らかの接触が有った以上は、警戒するのに越したことはないのだ。
「況して、相手が個性と忍術を破壊するッつー弾を流してるってことは、勿論奴等も俺たちヒーローの迎撃に備えてブツを所持してるのだって可笑しくねえしな」
「そんなん考え過ぎやろ!!そんなこと言うてたら身動き出来へんで!」
「でも相手が異能破壊弾を手にしてるのは厄介ね…八斎會の居場所も含め、例の薬の対策も必要なんじゃないかしら?イレイザーのように人が個性を発動してる訳でも無いのでしょう?」
「あっ、それなんですけど俺からも話があるんです」
此処で、相澤先生たること…イレイザー・ヘッドは恐縮そうに手を挙げる。
「皆さんこの件のブツ、ご察しの通り俺の個性に似てるんですが、実際は違うんです。
俺のは破壊ではなくあくまで抑止…制御するだけで、攻撃をしてる訳じゃないんですよ、其れに個性は消せても、忍術までは消せません」
林間合宿――敵連合開闢行動隊と名乗るメンバーの内、蒼志という抜忍と一騎打ちになった時、抹消の個性を使っても消えなかったことから、忍に対して有効ではないのは、明らかになっている。
「つまるところイレイザー・ヘッドの上位互換やんけ!益々危険だわ!!しかもそんなもんが世界中にばら撒けられてるとか何処の都市伝説やねん!!」
確かに、想像するだけでゾッとしてしまう。
イレイザー・ヘッドの抹消でさえ敵に回すと厄介なのに、対して異能破壊弾は忍にも効く上に、更には生産可能…これを常人が聞いても信じてくれないだろう。
「個性は消せても忍術は消せない…片方のみが絶対条件に対して、裏で出回ってるブツは両方消せる…下手すれば超人社会に再び大きな穴を開けかねませんね…」
能力の制限、忍が表に現れた以上、闇市場でこの情報を噂として吹き込めば、八斎會は確実に市場を独占出来るだろう。
金の亡者、支配権、名誉、なるほど…随分と計算されたことだ。
「そして個性や忍術を消されるのを防ぐのを含めて此処で提案なんですが…サー・ナイトアイ。貴方の個性で全員の予知を見れば、最悪な予想は確実に近い状態で防げれるのではないでしょうか?」
イレイザー・ヘッドの言葉に、「その手があったか」と一同は心の中で呟く。
幾ら相手が凶悪で能力を壊すクスリを所持していようが、予知を見て防ぐ作戦を開けば、此方にとってとても有効だ。個性を壊されるのなら、それを防ぐようにすれば良いし、そもそも異能云々関係なく今回の目的も無事に遂行することだって可能だ。
相澤先生の何時も口に出す〝合理的〟なプランだとも言えよう。
「それは――出来ない」
――だが、サー・ナイトアイは其れを拒絶する。
「出来ないって、どう言うことなんです?」
「私の個性――予知に関しての性能ですが、発動したら24時間、丸一日のインターバルを要します。
そして一日に一時間一人しか視ることが出来ません」
サー・ナイトアイの個性『予知』は、一日に一時間、一人対象でしか視ることが出来ない。その後は24時間のインターバルを要するこの個性は、万全無敵のようで実際は違う。
発動してから一時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見ることが可能。テレビの録画再生としてではなく、一コマ一コマの僅かな動きと周辺環境が脳裏に映されるのだ。
「私の個性は決して誰もが甘んじるような万全個性では有りません」
「いや、万全ではないのは兎も角、出来ないことはないでしょう。予知を見るだけで多かれ少なかれ充分役立てますし……」
イレイザー・ヘッドの至極真っ当な正論に、サー・ナイトアイは苦虫を噛み殺すよう、辛抱しながらある言葉を口に出す。
「私の個性は、予知を視た途端…全ての未来が決定事項として変えられない…何度も未来を変えようと試した所、変えられた未来は一度も有りません」
「…?」
「もし予知の対象として視られた人間に、無慈悲な死が待っていれば、どうしますか?」
とても、言いたくはない。
こんな何度も味わって来た辛くてにが苦しい想いをしたくはない。
だけど…全員の安全も含めて、どうしても言わなければならないのだ。
「私の個性は決して頼られるモノじゃない…勝利と目的達成の確立を最大限に上げて…それでもって時、いざという状況に使う、謂わば駄目押し――その時に使う個性なんです」
「はぁ!?おいちょっと待てや言ってる事が分からねえぜサー・ナイトアイ!!死だって有限な情報だ!!そうならねぇ為に策を講じることだって出来るぜ!?」
聞いてて埒が開かないと判断したロックロックは、指をさしながら捲し立てる。
端から見れば、「都合も確率も悪いから使いたくありません」と言ってるようなもので、一部の人間を除けばサー・ナイトアイの個性に納得がいかない模様だ。
「良いか?未来を変える権利は皆んな平等にあるんだよ!!俺を見てみろ幾らでも回避してやるぜ!!」
「――ダメだ」
占いとは違う。天気予報のように予想が外れることはない、百発百中の未来予知は、危険要素が高すぎる。確定された死を防ぐことは出来ない以上、闇雲に見るべきではない。
一同は顔を顰め、困惑、戸惑いの色が映し出される。
これ以上の言葉は意味がないと判断したロックロックも、諦念したのか何も言わなくなった。
「……とりあえず、今は〝困っている子がいる〟これが最も重要よ。私たちが今ここで騒いだって何の打開策にもならないわ」
リューキュウは眉一つ動かさず、冷淡に発言する。そのお陰か、静寂で重苦しくなった空気の流れが変わり始めた。
「そうだ、無理なもん要求したってどうしようもねえ。個性のことを知ってるのは本人なんだ、あんま責めないでくれ。リューキュウの言う通り、被害者の娘が何処にいるか、八斎會のこと含め、そこから詮索を始めるべきだ」
「娘の居場所の特定・保護――可能な限り角度を高め早期解決を目指します!どうかご協力宜しくお願い申し上げます!!」
PM7:00――協議会を終えた頃、外はすっかり夜暗く、街灯が真っ暗な街を明るく点々と照らしている。
「そんなことがあったのか緑谷……」
大人のプロヒーローではない学生達は、これ以上の議会は大人達のみの話があるので、参加しなくても良いとのことで、忍学生の彼女達も揃って、事務所に置いてあるテーブルに座っている。
「悔しい…な……!」
切島の悔恨と悲痛に混ざった声が、嫌に胸に突き刺さる。
少年も同じだ――緑谷出久の境遇は同情するし、自分を重ねてしまう部分がある。
責任感の強い切島は、林間合宿の際に爆豪と雲雀が拉致されたと聞いて居ても経ってもいられず、先走る言動が有った為、今回の件に関しては雪泉に次ぐ理解者だろう。
現に通形ミリオも、此処まで深刻な顔をするのは親友の環でさえ初めて見たのだから。
「でも…悔しさで言えば雪泉さんも…」
恐る恐ると口を開く芭蕉は、控えめな口調で彼女の様子を伺う。
「いえ…まあ、悔しくないと言えば嘘になりますが……お二人方に比べれば全然……其れに、私は忍の知識はさておき、ヒーロー稼業や敵の事に関しては無知な部分が多かったですから…」
無知は罪――とはよく言ったもので。
其れでも余り名の広がってない弱小ヤクザの肩書きと、特に世間では余り騒がれてない指定団体なので、雪泉だけでなく他のヒーロー達も知られてないので無理はない。
特に雪泉の状況ではほぼノーヒントで何の手掛かりもなかった上に、打開策はほぼ皆無だったので、彼女までもが気に悩むことはないのだ。
尤も、気にするなという方が彼女にとって酷であり無理であるが――
「あっ、と…それと蛙吹さんにお話が…」
「ケロ、私…?」
突然自分を指名された蛙吹は、雪泉の申し訳なさそうな表情を見て首を傾げる。
「その……この間、神野区での救出に赴いた後、雄英で起きたお話、轟さんから聞きました」
雪泉は席を立ち上がり、頭を深々と下げる――
「あの時、先輩の身でありながら身勝手な行動と、ご心配をお掛けして申し訳有りませんでした――」
彼女の謝罪と言葉の重み。
以前、蛙吹は神野区で爆豪と雲雀の救出活動に赴いたのを聞いて、自分で止められなかった不甲斐なさと、大切な友達を危険な目に遭わせてしまった事に深く気に悩んでいたのだ。
あの頃は半蔵は勿論のこと、全員ともあの場で謝罪をしたものの、当時は雪泉が居合わせていなかったので、謝る機会が無かったのである。(あの後、轟は雪泉に謝るよう連絡をした)
「雪泉ちゃん……」
「今思えば、冷静ではなかった…なんて言葉は単なる言い訳に過ぎません。雄英生の皆さんは私達にとっても誰一人欠けて欲しくない大切な人達ですから…
だから自分の行動が原因で、貴女達を困らせてしまったのなら、謝らない訳にはいかなくて…あの、本当にすみませんでした!!」
彼女は人一倍責任が強く、彼女が泣いたと知った時は己の浅はかな行動と、困らせてしまったことに関しては頭を下げなければならない。そもそも、先輩の身であるのなら後輩達を止めるべきだ。それを自分の感情論で動いた結果、万が一死傷者が出てしまっていては責任を負う所か、顔向けすら敵わないだろう。
「良いのよ雪泉ちゃん。貴女が其処まで深く気に掛けて、謝ってくれるなんて驚いたわ。大事に至らなくて良かったし、逆に違う言い方をすれば私達のことを思ってくれる気持ちは、素直に嬉しいもの――だから顔を上げて」
褒められた形跡でもない。
本来なら叱られるべき結果だ――それでも蛙吹梅雨はニコッと笑顔を作る。其れはあの時、梅雨刻に濡れた雨のような涙ではなく、雨雲から晴れた晴天のように。
「…!有難う御座います……!!」
彼女の優しに思わず目頭が熱くなる。
自分の行いは後悔してないし、自分が正しい道だと判断した結果、その道を進んだまで。
処罰を受けようと、何をされようとその覚悟も出来ていた。そう言う己を顧みず、大義を成そうとする所は黒影とソックリだ。
だが――自分の行動が正しいと信じてた道に、大切な人が泣いているのなら、困っているのなら、それ相応の責任と謝罪をしなければならない。自分だけが全て正しく、何も悪くないと言うのは偽善以前に、以前の自分と同じだ。
雪泉と蛙吹のほんわかとした雰囲気の中、区切りを見計らってた芭蕉は、何か思い当たったかのように
「そう言えば、雅緋さんはどうして…今回の件でインターンに?」
質問する。
其れに反応した雅緋は「ああ、そう言えば言ってなかったな」と呟きながら口を開く。
「今回、ある上忍のコネで上手く参加させてくれたんだ。敵連合との接触絡みの事件と聞いてな」
焔達が所属してた蛇女と、雅緋達の被害は膨大だ。
一度は踏み台に、二度目は悪夢に晒されるなど、最早黙って見過ごす訳にもいかない領域にまで達しているのだ。そもそも雅緋の目的は敵連合の壊滅と確保も目的であるので、一石二鳥とやらだろう。
「アイツらは確実に潰さねばならない……どれだけ虚仮にすれば気が済むのやら……」
私怨ではない、純粋な怒りと煮え滾る闘志が、肌に痺れるほど伝わってくる。
蛇女の生徒が無意味に惨殺され、名誉も地位も泥を塗られ、剰え憑黄泉という害獣と深い関わりを持つ。この理由だけで雅緋が動くのには充分過ぎる。
「お前ら通夜でもしてんのか」
などと雑談(殺伐で、悲しみと物静かさに浸った空気で)をしていると、半分呆れ混じりの声が聞こえた。声の主はA組担任の相澤消太。今は学外の場なので、イレイザー・ヘッドで通さなければならない。
「先生…あっ、イレイザー・ヘッドでしたっけ」
「ああそれで良い。……しっかし、面倒なことになったなぁ…忍学生はさておき、担任の俺から話があったのに…」
「話って、さっき言ってたあの?」
そういえば、と――麗日は会議が始まる前、担任と話してたあの時の事を思い出す。
些細で僅かなやり取りだったが、確かに「話さなきゃいかんことが有る」と言われた。きっとその話をしに、自分達に用があったのだろう。
「今日は君たちヒーロー学生のみ、インターン中止を宣言する予定だったんだがな…」
「ええ!?今更なんで!?!」
切島の台詞は、一年A組全員の心の声であった。
代弁者として声を張り上げつつ、何故今更インターン中止を宣言するのかを訪ねる。
「敵連合と関わる可能性があるって話を聞かされたろ?何度も襲撃許す訳にはいかねえし、話は変わってくる」
これ以上、敵連合との接触は避けるべきだし、何度も接触を許してしまっては、警察もマスコミも黙っていられない。
あの時はオールマイト脱退で何とか担任教師としての面は保たれたが、少しでも奴等との接点が有るのなら、未然に防ぐべきだ。雄英の失態と、敵の襲撃は益々許されない形なのだ。
「ただなァ…緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ。後序でに爆豪と飛鳥とで喧嘩してたしな」
信頼――相澤の言う言葉の意味を理解するのに、其処まで時間は掛からなかった。
雪泉と蛙吹のやり取りもあってか、神野区で許可なく独断で行動した事を言ってるのだと、直感で理解した。
『正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい』
緑谷は相澤先生に言われたことを脳裏に浮かべ
『今度こそ必ずエリちゃんを必ず救い出します!!』
相澤消太は緑谷の気持ちを汲み取り――互いの心を繋ぐ。
「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまい、無茶をやらかすと俺は確信してしまった…」
此処で緑谷出久を止めてしまえば、また同じ事を繰り返してしまう。
また謹慎にでもされたり…いや、教師の免許を剥奪だけでなく、雄英全体に大きな問題も起きかねないだろう。
其れはとても危険的で、先生としてもその結果は合理的ではない――
「だから俺が見ておく――するなら正規の活躍をしよう」
するなら〝合理的〟に――生徒の意を汲み、肩に手を置く。
掴み損ねた手はエリにとって、必ずしも絶望だったとは限らない――少女と出逢わなければ、こうなることすら叶わなかったかもしれない。
俯いていたって仕方がない――前を向いて行く。相澤先生にしてあげれることは、励ますことと許可を出すことしか出来ない。
「それと雪泉…だっけか、アンタにも話をしておきたくてな…」
「もしかして、ですが…神野区の…」
「ご察しの通りだ…話が早くて助かる」
…やはり、いや仕方がない。
月閃と雄英が協力関係を築いてる上に、自分があの場で止めれなかったことを咎められるのは必然。
況してや自分一人で突っ込むのはさておき、一年生達を危険な目に巻き込んで良い理由など、何処を探っても存在しないのだから。担任の相澤先生が話をするのも、想像付くだろう。
「俺の監視不届き…ってのもそうだが、アンタがあの場にいたのなら、せめて止める位のことはして欲しかったな…」
「…大変、申し訳ありませんでしたッ…その、私は先輩として其れに似合う相応しい行動を取れず、剰え危険な目に遭わせ…――」
「皆まで言わなくて良い、本人が自覚してるのなら良かった。もしアンタがその事に何も責任を感じてない奴だったらどうしようかと考えてた」
相澤の台詞の最後ら辺はとても嫌な想像しか浮かび上がらないが、先生の話に耳を傾ける。
「反省と責任や負い目を感じてる人間に深追いしたり追い討ちしたりする趣味はないんでね。それでもやっぱりアンタには責任取ってもらう」
「責任…ですか?」
弱々しく、でもって勇気を振り絞って声を出す。
「アンタが胸を張って、緑谷を始めた
ポンと、軽く肩に手を置いて、励ますように言葉を添える。
相澤の責任を取れという願いに、雪泉は呆然としたまま目を丸くする。
――てっきり、厳しめな処罰を受けるものかとばかり考えていた。相澤先生は厳しいと聞くし、轟焦凍とのたわいないメールのやり取りで、「いつも除籍処分の威圧が凄まじい」と評されている位だ。
共に、生徒を守る――自分が側にいるからこそ、誰かを守ることが出来る。神野区でしてあげなかったことを、今度はこのインターンで皆を守る。
生徒を安全に守り抜くことで、此処で初めて相澤先生からも認められ、信用を取り戻す。
「雪泉、少なくとも八斎會の的確な居場所が解った後、戦闘は避けられない。戦いの場に身を投げるという事は、守り助ける場を与えられたのと同じ――自分の命も含めてな」
相澤の言葉は、雪泉の心に深く突き刺さる。
まるで凍てつく氷に杭を叩き込まれたような錯覚だ。忍にとって一寸先は死――例え公に存在が明かされたとしても、その生業は変わらない。
だから、初めて忍ではない人間に「自分の命も含めて全員を守り抜け」と言われて、不思議と嬉しくて、つい心が温まる。
「約束だぞ、アンタが責任を感じてるのなら、な」
「はい!!」
「――解れば良い」
気合いと気迫の篭った声に、相澤は心の中で安堵の息を吐く。
どうやら、先生の話すべきことは終えたようだ。
「蛇女のアンタ達は…とやかく言う気はないし、その分信頼はできん」
「それで結構…簡単に人を信用する奴は背後を刺されやすい。それで良いそれが良い、私達はお前達が活躍できるのなら喜んで悪者扱いだって受けれるさ――もう、昔とは違うんでね」
相澤先生からすれば、蛇女は完全に殺伐とした悪いイメージが固定されている。雅緋も昔の頃とは違って別人のように変わり、前までの余裕のない彼女とは全く違う。
「すげぇ…やっぱ雅緋先輩漢らしくて…ヒーローよりカッケェんじゃねえかって思っちまいやした!!俺イレイザー・ヘッドと一緒に一生付いて行きます!!」
「だから漢呼びはやめろおオォォォォォーーー!!!」
「おい、サラッと何言ってんだお前…一生は辞めてくれ」
最後は皆が笑って、冷たくて暗掛かった雰囲気は、明るく希望を持つようになった。
そうだ…自分達が今此処で挫けてメソメソしていては、エリちゃんを救うなんて夢のまた夢なんだ。
「ねえミリオ知ってる?落ち込んで後悔してたって、仕方ないんだよ!」
「ミリオ、一緒に頑張ろ。俺も側にいるから」
「ねじれ、環…」
落ち込んでるミリオに、優しく声を添える二人は、伊達にビック3を名乗っている訳ではない。
仲間が、親友が落ち込んでいたら、言葉を投げるのは当然だ、
「ああ…!!」
鼻を啜りながら、悔恨を抑えつけ、今はエリの救出を優先的に考える。救けると一度心に決めた以上、もう後にも戻れないし、この先どんな苦難が待ち構えていようと、今の義憤に満ちた状態なら、どんな化け物が来ようと怖くはない。
一度は挫折し、心折れ、負い目と悔恨に心が潰されかけた。
それでもやはり人は前を向いて行かなきゃいけなくて、過ちや後悔を嘆いていたってしょうがないのだ。
こうして、本格的に波乱のインターンが幕を上げる。
此処にいる皆んなが、それぞれの想いを胸に秘めながら、決行日が来るのを待ち望んで――
月閃中等部のご報告&キャラクター紹介!
常闇踏陰
ヒーローネーム『ツクヨミ』
所属:雄英高校ヒーロー科1年A組
誕生日:10月30日
血液型:AB型
出身地:静岡県
好きなもの:薄暗いところ、リンゴ
戦闘スタイル:広範囲攻撃
ステータス ランクB
パワーD
スピードC
テクニックB
知力C
協調性A
個性技:ダーククロウ
敵一体に中ダメージを与え、相手の素早さを20%ダウン[クールタイム小]
必殺技:黒き腕の暗々裏
敵全体に大ダメージを与える[クールタイム中]
リンクスキル
漆黒月死乱闇拳 攻撃力が30%アップ
対象キャラクター 常闇踏陰+閃光
漆黒のDarkness 攻撃力50%アップ
対象キャラクター 常闇踏陰+雅緋
雄英高校ヒーロー科 攻撃力10%アップ
対象キャラクター 常闇踏陰+雄英高校
閃光「常闇踏陰、個性は黒影とよばれる漆黒を纏いしモンスターを生み出す特殊な個性だ。漆黒烏の憑代…影の穿つが爪、猛威たる闇の荒神、朝日光は弱く、闇雲に覆われた漆黒の夜には強い。
奴が忍の身であるなら喜んで手合わせ願いたい…いや、妖魔戦でもかなり役立ちそうな優秀な個性の持ち主だ!」
月光「そ、そうね閃光…その、いつもよりテンション高くない?」
閃光「気にするな、私はいつだってフルスロットルだぞ!それに見ろ、黒影を!」
月光「お喋り出来るし、ちゃんとした意思も持ってる…忍は影に身を潜めて諜報活動を行うから、忍としては相性は抜群ですね♪それにしてもあの黒影…一体どんな風に…」
閃光「深淵闇躯、私のアサシンモードに似てるな…しかも己に憑依なんて素晴らしい案を…宵闇よりし穿つ爪、黒き腕の暗々裏、雅緋とは違って感じのみで捻るのが何ともネーミングに味のあるセンス!!」
月光「………やっぱり、閃光のコレは私にはちょっと理解し難いわね…」