光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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さて!今回はオールマイトがやって来て、ヒーローたちの反撃となります!


16話「ヒーローリターンズ!」

平和の象徴。

悪の抑止力の存在、絶対的正義の力。誰もが憧れ、尊敬する。

彼がその場にいる時は、救えなかった人間はいないとも言われてる。そして…いつも、どんな時も、笑顔で人の心すらも救け出す。

 

 

「嫌な予感がしてね、校長の話を振り切りやって来たよ」

 

 

出入り口の前では、その男がやって来たことで、大きく喜んでいる生徒も居れば、安心からくるものなのか、救けに来てくれたことにより嬉しい気持ちから来るものなのか、涙を流してる生徒もいる。

 

 

「来る途中で飯田少年とすれ違って…今起きてることを、あらまし聞いた…!!」

 

 

ギリッ…!

己の内から湧く怒りに、思いっきり歯ぎしりさせる。

 

 

「全く己に腹がたつ!!子供らが、どれだけ怖かったか!!!!」

 

 

歩きながら、自分がここに居なかった悔しさで、怒りが溢れて…それでも、生徒達には優しい目で、暖かい声で話し出し、黒霧によって倒された13号に目を向ける。

 

 

「後輩らが、どれだけ頑張ったか!!!!」

 

 

そして、13号から中央広場に目を移し…圧倒的な敵三人と、忍学生に、ヒーローの卵…生徒たちを見つめる。

 

 

「この子らが…どれだけ苦しい思いをしたか!!!!」

 

 

(しかし、だからこそ……言わねばならんのだ…!!)

 

 

「もう大丈夫!!!!!」

 

 

ブチッ!!!

 

ネクタイを思いっきり握りしめては、破き、投げる。そして全ての感情を混ぜ合わせてこう言った。そして…平和の象徴とも呼ばれる………

 

 

 

 

 

「私が来た!!!!!!」

 

 

 

その男の名は…

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイトぉ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

平和の象徴オールマイト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央広場。

 

 

 

「やったよ…やったよ……よかったぁ…本当に…本当によがっだよ………」

 

 

雲雀は死の恐怖と、仲間が…友達が殺されるという絶望から解放されて、その場に座り込んでは思いっきり泣いた。とにかく泣いた。雲雀は手で涙を何度もなんども拭うが、それでも涙ら止まらなかった。今日でどれほど泣いたか分からない…多分今日ほど泣かされる日はないと思うくらいだ。

 

 

 

「来た……か…………」

 

 

柳生はオールマイトを見て、少し微笑む。もうダメかと思った。自分は圧倒的なる力を持つ敵に、何もできずに雲雀を守れず殺されると……

でも…そんな暗闇のなかで、希望と呼べる光が見えた。だから嬉しかった…自分の未熟さに情けないと思うが、それでも救けが来てくれて嬉しい。

 

 

 

「………」

 

 

改人。と呼べるだけのことはある脳無は、オールマイトが来たにもかかわらず、微動だにしない様子であり、振り向いてすらいない。そう、柳生の頭を鷲掴みにし、体を掴んでいる状態で……

 

 

 

「オール…マイトって、前に私を救けてくれた……」

 

 

ポツリと呟いた少女、飛鳥はオールマイトを見つめている。前に敵が人質に囚われていて、救けに行ってはその敵に攻撃されそうになり、人質を庇ってたところにオールマイトが現れたのだ。

 

 

 

「ようやく、来ましたか!!」

 

 

飛鳥の目の前にいる黒霧は、まってましたという顔をしながら、動揺してるのか、それとも嬉しいのか…先ほどまでとは違い、気持ちが高ぶっている。

 

 

「ケロ…」

 

「やったぁ!!オールマイトだあぁ!!」

 

 

蛙吹はケロ?とした顔で、峰田は涙を流しながら歓喜な声でオールマイトの名前を叫ぶ。

 

 

「オール……マイト…!」

 

 

そんななか、緑谷だけはまだ拭いきれない不安な表情でオールマイトを見つめている。そして…

 

(笑ってない……!)

 

 

今まではどんな時でも、笑顔で人を救けていた。幼い頃からオールマイトのデビューや活躍動画を何度も見ている緑谷だから分かる。今のオールマイトは、尋常じゃないほど怒っている。そして、初めて…怒ってる姿を見た。と…

 

 

そして…最後に、肝心の死柄木は……

 

 

「ヒーローは遅れてやってくるってか…?まあいいや、とにかく………」

 

雲雀の顔から手を離れさせ、感心してるのか、薄気味悪い笑い声を出しながら喋り出す。

 

 

「待ったよヒーロー…!社会のゴミめ」

 

 

顔は掌マスクで見えないが…完全に笑っている。それは、ようやくオールマイトを殺せるといった喜びから来るものなのか…それとも、この悲惨な姿を見たオールマイトが怒ってるのに満足しているのか…

 

 

残ってる部下達は、オールマイトを見て驚愕している。

 

「あ、あれが…スゲェ、生で見るの初めてだ…!」

 

「馬鹿野郎!アレをやって俺たちが…」

 

そう言いかけた途端…

 

 

ドッカカカカカカカーーン!!

 

 

「っっ!!??」

 

いつの間にか中央広場に姿を現して、部下達をチョップだけで一気に殲滅させたのだ。気絶した敵達はもはや動かなくなり、全員その場に倒れこむ。

そしてその場の近くに、重傷を負ってるイレイザー・ヘッド…相澤先生を見つける。

 

「相澤くん……ケガが酷い、それになんてことだ……生徒を守るためにここまで…よく頑張ってくれたよ………!!」

 

オールマイトは悔やみ、心を痛めながら、気絶してる相澤の労をねぎらう。

相澤を肩に乗っけると、今度は死柄木たちを睨みつける。死柄木はそんなオールマイトを見て何も臆することなく、平然と立っている。

 

 

 

次の瞬間…オールマイトは、緑谷、蛙吹、峰田、飛鳥、雲雀、そして脳無に身体を掴まれてる柳生を助け出し…

 

 

 

ドッ!!

 

 

「っっ…!!」

 

 

 

死柄木の顔を殴った。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

顔を覆っていた手を落として………

 

 

 

 

 

「大丈夫かい…皆んな!!」

 

死柄木たちから距離を離したオールマイトは皆んなを降ろし、生徒たちの安否を確認する。

 

「……え?オールマイ…ええ!?」

 

峰田は何が起きたか分からない顔でオールマイトを見つめている。また飛鳥も蛙吹も同じ様子だ。よく分からないが、これだけはハッキリ分かった。自分たちは助かったんだってことを……

 

 

「柳生ちゃん…!大丈夫…?柳生ちゃん!!」

 

「柳生くん!?」

 

泣きながらも柳生を抱きかかえる雲雀の声に、オールマイトは柳生と雲雀に振り向く。そしてオールマイトは知った。柳生も相澤と同じく、重傷であることを…

 

「柳生くん……!」

 

オールマイトは柳生の側に駆けつけ、傷を見てみる。

 

(頭部に…鼻からも……)

 

心配そうに見ているオールマイトに気付いたのか、柳生はオールマイトに話し出す。

 

「オール……マイト………!オレのことはいい……あいつらはヤバイ………特にあの脳無という奴が………!!」

 

「脳無…?」

 

その名前を聞いて首を傾げるオールマイトに、柳生は脳無に指をさす。

 

「アイツ……だ………しかもアイツらは、オレたち……忍びの存在を………知っている……!」

 

「!?」

 

それを聞いたオールマイトは驚愕した。このことはバレていない筈なのにだ…

 

「アイツらの目的は……オレたち忍びだけじゃない………オールマイト……お前も狙われている………オレたちとオールマイトを殺す………ことが、ヤツらの目的……」

 

「柳生くん…」

 

するとオールマイトは柳生を包み込むように抱きしめた。

 

「………!」

 

「ありがとな……!!そんなヤツらに、君は、君たちは立ち向かって、友を…少年少女たちの命を守ろうと…!!そして貴重な情報を……教えてくれて……!柳生くん…心から礼を言う、ありがとう!」

 

そして最後に頭を撫でた。優しく、暖かくて、心強くて……柳生は再び目から涙が流れてきた。オールマイトの優しさが、十分に伝わり、とても嬉しくて…あまりの嬉しさで…柳生は目を瞑った。

 

柳生に続くように、雲雀もオールマイトに話しかける。

 

「オールマイト先生!気をつけて!!柳生ちゃんの言ってたあの脳無って人…心が無いの!!」

 

「なに…!?」

 

心がない、オールマイトは意味が分からないような顔をする…確かに、オールマイトが駆けつけ、柳生を救けたのに…脳無はまだオールマイトに振り向いていないのだ。

 

「よく分からないが……ありがとう雲雀くん!」

 

「いえ、良いんです!それより、柳生ちゃんを、私の大切な友達を救けてくれて……ありがとう!!」

 

雲雀は頭をオールマイトに下げる、するとオールマイトも雲雀の頭を撫でた。

 

「辛かったろうに…怖かったろうに……もっと早く駆けつけに来なくて、ゴメンな!!本当に…!!だから、もう安心して良いんだぜ…」

 

オールマイトは優しい声でそういった。雲雀はもう安心したのか、頭を上げる。

 

飛鳥はそんな二人を微笑ましく見ると、今度は柳生と雲雀を傷つけた死柄木たちを睨みつける…が、死柄木たちは攻めに来ない…そこに少し不安を持ったのだ。

 

(攻めに…来ない…?)

 

 

 

 

死柄木は手で顔を隠すように覆うと、死柄木がオールマイトに殴られたことに気づいた黒霧は心配そうに近づく。

 

「あの、大丈夫ですか…?死柄木弔…」

 

「………」

 

しかし反応がない、その時…死柄木は急にワナワナと震えだす。

 

「あ…ああ…ああああ…!駄目だ…ああ!ダメだ駄目だ…!ゴメンなさい…ゴメンなさい!!」

 

何度も誰かに謝罪をしながら、先ほど落ちた手に近づく。

 

「『お父さん』…!」

 

手を拾い顔に付けると、落ち着いてきたのか、体の震えが止まった。

 

「救けるついでに殴られた……ははは、国家公認の暴力だ…!けど、思ったよりスピードは速くないし、パワーも全然…あれ?じゃあじゃあ…この話も本当なのかな……?」

 

ブツブツと独り言を呟いていると、手のマスクと顔の僅かな隙間から、オールマイトに満面な笑みで睨みつける。その死柄木の目を見ただけで悪寒が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『弱ってるって話』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もが聞こえない声でそう言った。

 

 

 

 

 

「向こうは三人…見るからにそこらの敵(ヴィラン)ではないようだな……」

 

オールマイトが呟くと、側にいた緑谷が話し出す。

 

「気をつけて下さいオールマイト!!僕のワン…! 腕が折れないほどのパワーであの脳みそ敵(ヴィラン)を殴ったんですが…効かなくて……!」

 

緑谷は不安の表情でそういうと、オールマイトはくるりと回り

 

「ダイジョーブ!それより緑谷少年たちよ、相澤くんを…早く!」

 

ピースをしながらそう言った。いつの間にか怒りの表情から、笑顔の表情に変わっている。いや…表情が変わっただけで、内心は怒ってるんだろう。顔に出してないだけで、冷静を保ち、静かに怒りのコスモを燃やしている。緑谷と蛙吹、峰田は相澤を担ぎ、飛鳥と雲雀は、柳生を担いでいる。

 

 

 

オールマイトは緑谷にそう言い、再び死柄木たちに振り向くと、オールマイトは態勢を低く構えながら、腕をクロス型にして走り出す。

 

「CAROLINA(カロライナ)…!!」

 

死柄木に走りながら、オールマイトが叫ぶと。

 

 

 

「脳無」

 

 

 

死柄木は脳無の名前を呼ぶ。

 

「SMASH(スマッシュ)!!!!」

 

 

 

ズドオオォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!!!!

 

 

 

強烈な一撃を食らわせた。死柄木の命令で動きだし、オールマイトのパワーをまともに食らっても、表情を変えない脳無に。オールマイトの攻撃から死柄木を守るために脳無は、オールマイトの前に立ち塞がり、死柄木を庇ったのだ。そのため死柄木にダメージはない。

 

「なっ…!」

 

流石のオールマイトも顔色が変わる。

 

「なるほど…マジで全然…効いてないな!」

 

何度かオールマイトの技「SMASH」を繰り出すものの、脳無は効いていない。

体、腕、そして脳がむき出しになってる頭部にまで、だが…

 

「顔面すら効かないか…!」

 

オールマイトは叫ぶが、脳無もやられてるばかりではないのか、オールマイトに反撃する。オールマイトはスピードで直ぐに脳無から距離を離すが、脳無は一瞬でオールマイトの間合いを詰め、再び反撃しにくる。

 

「しかも、早い…!?」

 

オールマイトはますます表情を曇らせる。それを見た死柄木はさぞ満足してるのか、手を広げて話し出す。

 

「効いてないのは『ショック吸収』の個性だからさ…脳無はお前のパワーにも耐えれるように『改造』してある、脳無にダメージを与えたいなら肉をゆっくりとえぐり取るとかが効果的だね…まあでも…それを、させてくれるかは別として…」

 

オールマイトや、柳生、雲雀、飛鳥、緑谷の攻撃全てが効いてないのは、脳無の個性『ショック吸収』だからである。柳生の秘伝忍法で巨大なイカを召喚し、脳無に薙ぎはらったため、吹っ飛んだだけであり、あくまでダメージは無かったのだ。しかしここで可笑しいのは、飛鳥の攻撃だ。飛鳥の攻撃は二つの刀を構えて、斬り刻むこと…にも関わらず脳無は無傷であった。

 

だが個性というものは簡単に人にバラすものではない…なぜなら向こうがその個性の事を知れば、対策や立ち回りを考えるからだ。それを死柄木は自慢したいがのためか、脳無の個性を棚に上げ、得意げに話し出す。

それが逆にヒーロー、オールマイトは有利になる。

 

オールマイトは一瞬で脳無の背後に回り、両腕で体を掴む。

 

「わざわざthank you!そういうことなら!!やりやすい!!」

 

バックドロップを決めさせる。

 

ズドオオォォーーーーーーーーンン!!!!

 

 

巨大な爆発が中央広場に轟いた。

 

死柄木はなんとかその場に耐えながら、オールマイトと脳無の戦いをみて

 

「おいおい…」

 

呆れた声で呟いた。

 

 

 

爆発が巻き添えにならない程度の離れた場所で、峰田、蛙吹、緑谷は相澤を担いで、飛鳥、雲雀は柳生を担いぎながら、オールマイトの戦いを見ている。

 

「オールマイト…あのバックドロップが爆発みてーになってる!さすがだ…やっぱスゲェや!」

 

峰田は相澤を担ぎながら感心している。

 

「先生としては新米なのにね…本当に凄いわ…!!」

 

蛙吹も指をほっぺに当てる。

 

「見て、柳生ちゃん…凄いよ、オールマイト先生の力は分からなかったけど、とても強いね…!!」

 

雲雀は脳無とオールマイトの戦いをみて、目をキラキラさせながら。まるで戦隊モノを見てるかのような、そんな目で…

 

「お、オレたちを殺そうとしてた脳無とやらが…あんな呆気なく………」

 

柳生は特に脳無が恐ろしいと思ってしまった。死柄木自身、やることが恐ろしいが…脳無に心がないなど、無表情でいるなど、そして自分が今まで磨いてきた力が通用しなかった…だからこそ怖いのだ。もしそんな敵がこれから現れたらと思うと……考えるだけで恐ろしい。

 

「凄い…ね!あんなに強いなんて…私たちよりも強い…ううん、じっちゃんよりも…なのかな?」

 

飛鳥はその場でオールマイトの力がどれ程凄いのかを見ている。自分たちよりも遥かに強いんじゃないのか?と……飛鳥の祖父は伝説の忍びの半蔵。忍びの世界で名を轟かせたのだ。そして忍びである半蔵は、裏の社会を支えている。

 

表の社会ならオールマイト。

裏の社会なら半蔵。

 

ヒーローと忍びはどこか同じように見えて、似ているのだ。表と裏…社会を支え、平和の象徴と言われるだけのことはある。それに、それ程の実力があるならじっちゃんである半蔵のことを知ってるのも大いに納得がいく。

 

 

しかし、そんな緑谷は…緑谷だけは、皆んなの考えとは違った…

 

 

 

「オール………マイ………ト……」

 

 

(僕、だけが知っているんだ……オールマイトの…ピンチ…)

 

 

数々の言葉が思い上がる。

 

 

 

『5年前、この傷は敵の襲撃で受けてね…ヒーロー活動は今の所3時間が限度だ』

 

 

僕…だけが

 

 

『プロは何時だって…命がけさ…』

 

 

 

知っている

 

 

 

『平和の象徴とは、決して悪に屈してはいけないんだ』

 

 

 

秘密(ピンチ)

 

 

 

土煙が晴れていく、そして姿がみるみると見えていく…その姿は、オールマイトが脳無にバックドロップで決めて、地面に埋めている姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではなかった…

 

 

 

「…ック!」

 

オールマイトは口から少し血を吐き、バックドロップを決めている姿ではあるが…しかし脳無は、オールマイトの体を掴んでいる。

そしてその地面は、二つのワープゲートが繋がっていて…

 

「そ、そういう感じか!」

 

「!!」

 

 

皆んなはその姿に驚く。

オールマイトが脳無の体を掴み、バックドロップで地面にめり込ませるハズだったが、ワープゲートが発生し、脳無の体がそれに繋がりオールマイトの体をつかむといった状況だ。

それを見ている死柄木は満足そうに呟く。

 

「深くコンクリに突き刺して動きを封じる気だったか?それじゃあ脳無を倒すことなんざ出来ないぜ?脳無はお前並みの『パワー』になってるんだからさ…」

 

「!?」

 

オールマイトは俄然驚く表情を浮かばせる。

脳無がオールマイト並みのパワー…それはすなわち、オールマイト級の敵だと言うことになる。それなら柳生がボロボロになるのも無理はないだろう…死柄木は続けて話し出す。

 

「あっ、そうだオールマイト。分かっちゃいると思うが念のために言っとくな?あの柳生ってヤツをボコったのは脳無だ。アレは面白かったぜ?良いもの見れたな……俺に歯向かった罰だからああなって当然なんだけど……忍学生でも、オールマイト並みの強さを持つ脳無にはなんてことなかったなぁ…」

 

死柄木はオールマイトに煽りまくり、言いたいことを言ってその場を楽しんでいる。相当気に入らなかったのだろうか、子供のように根に持ってるようだ。すると死柄木は黒霧に振り向く。

 

「いいね良いね!黒霧、さっきの失敗を成功に活かしてる…期せずしてチャンス到来だ!」

 

「……」

 

黒霧はオールマイトを睨みつけている。

 

「あいたっ!?」

 

脳無はオールマイトの体を掴んでいる手の指で、体を突き刺し、服に血が滲む。オールマイトは離させようと脳無の指を掴む…が

 

(…!?離れん…!全く動かん…!)

 

オールマイトの全力の力でも、脳無の指は動かない。

 

(そ、『そこ』は弱いんだ…やめてくれ!)

 

『そこ』とは、オールマイトが5年前、敵の襲撃で受けた傷のことだ。肺の呼吸器官はやられたものの、幾多ものの手術でなんとか治療は成功したが、それでも後遺症は今も残っている。

オールマイトは死柄木、黒霧、脳無の三人を睨みつける。

 

「初犯でコレは…!君たち覚悟しろよ!」

 

オールマイトの怒り…だが死柄木は何の悪そびれもない様子を見せる。

 

「……黒霧、殺れ」

 

そう言った途端、ワープゲートが少しずつ縮まり閉じようとしている。オールマイトは敵が何をやらかすのか分かったため、なお焦り、脳無に離れようとするが…やはり動かない…無口の脳無は少しずつオールマイトをワープゲートに引き込ずりこみ、脳無は少しずつ下半身で地面に足を着いているワープゲートから段々と体を戻してきてる。

そんなオールマイトの様子を見てる黒霧は話し始める。

 

「目にも止まらぬスピードを拘束するのが、脳無の役目…そして半端な状態でゲートを閉じ、貴方の体を引きちぎるのが…私の役目」

 

「クッ…!」

 

オールマイトは悔し混じりで絶句すると、黒霧はさぞ感心して、嬉しそうに目を細める。

 

「本来ならば、血や臓物が溢れ出るので嫌なのですが…貴方ほどの人間ならば喜んで受け入れる」

 

黒霧はグロテスクな発言を言いながらも、少しずつ…少しずつ、ワープゲートを閉じてきてる。

 

 

 

 

 

「………」

 

遠くでそれを見ている緑谷は、焦りながら、蛙吹に話しかける。

 

「あす…っ! 梅雨ちゃん…!」

 

「頑張ってくれてるのね、どうしたの緑谷ちゃん?」

 

「ゴメン、相澤先生…担ぐの任せたよ…」

 

「?良いけど…どうしたの?」

 

首をかしげる蛙吹、すると緑谷は思いっきりオールマイトの方へと走り始めた。

 

(嫌だよオールマイト…!)

 

 

緑谷は涙を堪えながらも

 

 

(だってオールマイトと、まだ話したいことが…!)

 

目の前で苦しんで、殺されそうになってるオールマイトを助けるために

 

(!?緑谷少年…本当に…君ってヤツは!)

 

 

オールマイトは、緑谷が何をするのかが分かった。

 

(教えて貰いたいことが!まだ…)

 

次第にオールマイトとの距離が近づいて…

 

 

 

 

 

(沢山あるんだ…!!!!)

 

 

 

 

緑谷の救ける思いが…進むたびに強くなって……

 

 

 

 

ズオン…!

 

 

 

 

「!?」

 

緑谷の目の前に、黒霧がワープゲートを使って現れる。

 

「浅はか…そして、さようなら」

 

黒霧は緑谷を包み込むほどの…スポッと入れるくらいの大きさにワープゲートを開き…緑谷を飛ばそうとしたその時だった。

 

 

 

 

 

ボオォォーーーーーーーーンン!!!

 

 

 

 

「!?」

 

突然黒霧の右横から爆破が襲いかかってきた。そしてその爆破の主はこう言った。

 

「退け!邪魔だ!!デク!!」

 

その正体は

 

「か、かっちゃん…!」

 

緑谷はさっきの絶望の顔色が反転し、希望の顔色へと変わった。爆豪は黒霧を思いっきり『掴んで』地面に伏せるように

 

ドン!!

 

叩きつける。それだけではなかった…

 

 

パキパキ…!!

 

 

「!?」

 

その場の全員が驚いた、何故なら脳無の左側が凍りついたからだ、その氷の主は

 

「テメェらがオールマイト殺しの実行犯だと聞いた…」

 

冷気を纏い…冷たい声で、正体は勿論。

 

「と、轟少年!」

 

オールマイトは轟を見て名前を叫ぶ。

 

轟は、飛鳥たちの方に目をやる。

 

「おいおい…柳生のヤツが重傷じゃねえか、となると、アイツをあんな目にしたのも…この脳無っつー化け物がやったってワケだな……」

 

視線を再び死柄木たちに向ける。

 

 

 

死柄木の後ろから

 

「でりゃあーー!」

 

血気盛んな声に、死柄木は振り向くことなく、難なく避けた。

 

「クッソ…イイとこねーな!」

 

ガチン!と拳と拳を打ち付ける切島。緑谷は皆んなが無事で、そして集まってきてくれたことに、感動する。

 

飛鳥たちは…

 

「………皆んな……」

 

飛鳥は皆んなが来てくれたことが嬉しかった…そして飛鳥は…

 

「ゴメン、雲雀ちゃん…柳生ちゃんのことを、頼んだよ!!」

 

「えっ?飛鳥ちゃん!?」

 

(柳生ちゃんや雲雀ちゃんも…命懸けで戦ったんだ!自分も…戦わなくちゃ!!)

 

動揺する雲雀を御構い無しに、飛鳥は強い決意を持ちながら走り出し、皆んなと合流する。

 

 

 

 

「皆んな、無事だったんだね!!」

 

飛鳥が声をかけると、四人は振り返る。

 

「あ、飛鳥さんまで!?」

 

「飛鳥か、これでまた戦力が増えたな……形勢逆転と言ったところか…」

 

「ハッ!どの道俺らが勝つ!以上!!」

 

「よお飛鳥!よく来たぜ、男らしいな!!あっ、男じゃねえけどな?」

 

四人はそう言うと、飛鳥はそんな四人の言葉を聞いて、クスッと笑みを浮かべた。さっきの状況がまるで嘘のように思えてしまうかのような…そして飛鳥も加わり、刀を構える。

 

 

「残りの敵は…あの主犯格だね!!」

 

「スカしてんじゃねーぞ!モヤモブが!!」

 

「テメェら如きに…平和の象徴は殺れねえよ」

 

「よっしゃあ!!気い引き締めて行くぜ!!」

 

飛鳥、爆豪、轟、切島がそう叫ぶ。

 

「かっちゃん…皆んな…!」

 

その嬉しさで、涙が出そうになる緑谷。

その一方。

 

 

「あーあ……」

 

 

爆豪に抑えられてる黒霧、左側が凍らされてる脳無…そして黒霧、脳無の二人と気絶している手下たちを見渡す死柄木。

ガリガリと指で首を掻くのであった……




一気に形勢逆転出来たヒーローたち!さて、此処からだ少年少女よ!次回も…Pulsultra!!そして柳生ファンの人、前回の話に続き、申し訳ありません!ww死柄木の性格から考えて、ね?

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